事例担当者のイニシャル[HELP] | hs
|
事例研究のタイトル[HELP] | 中学部の生徒が目標カードとトークンを使って苦手な活動に取り組むための支援
|
事例の概要[HELP] | 夏休みより多動を抑える薬の服薬をやめた。そのためか2学期より常にテンションの高い状態にあり,授業中に活動を拒否したり,離席や逸脱行動が多くなった。男性担任が授業に入っているときは落ち着いているが,授業に入っていなかったり,出張の時には問題行動が顕著に現れるようになった。そのために授業に対する目標を本生徒とともに考え,守れるとトークン(キャラクターカード)が貰えるよう約束し,指導を行った。
|
対象児のプロフィール[HELP] | ・中学部2年生 男子 ・ADHD ・太田のSTAGE:STAGE4(H20.5.28実施) ・S−M社会生活能力検査:4歳7ヶ月(H19.6.5実施)
|
指導者の役割と人数[HELP] | ・担任(3名)及び教科担任
|
長期目標[HELP] | ・視覚的に提示された約束を守って,授業に意欲的に参加することができる。
|
短期目標[HELP] | ・約束を守って学習に取り組むことができる 約束1「返事は,はい」 約束2「いすに座って勉強する」 約束3「友だちに優しくする」
|
標的行動(増やしたい行動)[HELP] | 授業に主体的に参加できる
|
標的行動(減らしたい行動)[HELP] | 活動の拒否,離席,友達への他害
|
標的行動を取り上げる意義[HELP] | これまでも本生徒は同じような問題を常に抱えてきた。男性教員が関わっているときはよいが今後,関わる教員が男性でなくなることもある。叱られて活動するのではなく,主体的に落ち着いて活動を行うために目標カードとトークンを使い,指導を行おうと考えた。また,落ち着いて活動を行うことで将来の働くことを考える上でも大切なことであると考える。
|
事例に関する情報[HELP] | 当初,事例研究目標は「席に座って勉強する」だった。しかし,ベースライン中,正反応率100%が続いたが課題拒否や友だちへの他害等,問題行動が新たに出てきた。そこで目標を変更し,ベースラインは取らずに指導を開始した。
|
問題の推定原因[HELP] | 午前中は比較的、落ち着いているが,午後から調子が崩れることが多い。原因として午後から2時間続きの作業的な学習が多く,集中力が落ちる(作業は基本的に苦手)。 基本的に男性教員の言うことはよく聞く(叱られると怖い)。 やらなければいけないことは分かっているが拒否等をしてしまうことがある(注意喚起)。 注意や叱責を受けたときに,意味が分からず混乱してしまうことがある。
|
般化を狙う場面[HELP] | ・日常生活全般(学校・寄宿舎) ・将来の働く場(作業所・施設)
|
指導場面[HELP] | ・各授業(2〜6校時すべてにおいて約束の確認,評価は行うが主にねらいとする時間は国語,数学,美術,総合的な学習の時間,自立活動〈月4校時〉
|
指導手続き[HELP] | 1.登校後,好きなカードを選ぶ 2.目標を教師と一緒に確認する 約束1「返事は,はい」 約束2「いすに座って勉強する」 約束3「友だちに優しくする」 3.授業に参加する ・約束したことを忘れているような時は,もう一度約束カードを提示し,再確認する 4.授業終了後に担当教師と一緒に目標の評価を行う ・一つずつ確認し,その時間の担当が記入する 5.手順1〜3を2校時から6校時まで行う 6.帰りの会前に1日の評価を行う 7.○が13個以上ある場合は好きなキャラクターのカードがもらえる *他に問題行動があった場合も目標が達成された場合には○とする
|
利用可能な好子[HELP] | ・キャラクターカード ・言語による賞賛
|
教材教具など[HELP] | ・約束シート(約束を守れたらシールを貼ったり丸印を付ける,設定数たまるとご褒美〈キャラクターカード〉がもら える) ・キャラクターカード
|
記録の取り方[HELP] | ・1時間ごとに評価を行い,1日単位で集計 ・目標は3個まで ○…できた(1点) ×…できなかった(0点)で評価 ・獲得した点÷1日の総得点(15点)で正反応率を出す ・評価の詳細 目標1:○→活動の拒否なし ×→活動の拒否(イヤと言う) 目標2:○→学習中の離席なし ×→声かけで着席できない(身体的ガイダンス等を要する) 目標3:○→活動に集中できる ×→活動中友だちや友だちの物に触る 友だちに暴力的な言動をする
|
指導期間と達成基準[HELP] | ・指導期間:11月1日から2月末日まで ・達成基準:正反応率が86%が5日以上で目標達成 ・中止基準:正反応率が40%以下が3日以上で指導中止,目標・指導内容の再考
|
結果[HELP] | トークンの理解は高く,指導開始直後から高い達成率が続いた。 正反応率の特に低い日・授業の特定ができた。 大きな行事の直後に正反応率が大きく下がった。(運動会・文化祭) 男性教員がいないときでも落ち着いて活動できる時間が増えた。 目標1『返事は「はい」』が守れないときに目標2,3と徐々に崩れる事が分かった。
|
考察[HELP] | 成果 ・トークン(カード)は本生徒の要求に沿って作成したため,トークンに対する高いモチベーションを保つことができた。→朝の活動(指導手続き)を一人でできるようになった。 ・指導開始前は一度崩れてしまうと,すぐに気持ちを切り替えることが難しかったが,指導後は崩れても気持ちを早く切り替えることができるようになった。 今後の課題 ・特定できた要因をどのように指導するかが課題 →行事やクラスイベントの設定 →高いモチベーションを保つ ・『返事は「はい」』を確実に定着するために支援 ・外発的な動機付けから内発的動機付けへの移行(○を付けてくれることに対して喜びを感じつつある)
|