200920



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事例担当者のイニシャル[HELP]T,I
事例研究のタイトル[HELP]小学部低学年の自閉症児に対する人をつねる行動を減らすための支援
事例の概要[HELP]Bさんは、人の多い場所や休み時間などに大人をつねる行動が多い。多いときは休み時間など自由に過ごす時間を中心に、一日に10回以上みられている。遊びの要求などの際につねる行動は、徐々にことば「あそんでください」「こちょこちょしてください」などに置き換えられている場面もあるが、人の多い場所で特定の教員を見た瞬間に衝動的につねってしまう等、原因の推定が難しいことが多くあった。
対象児のプロフィール[HELP]Bくん。小学部2年生。自閉症。
PEP−R発達検査 2歳7ヶ月(H20.7.2)
指導者の役割と人数[HELP]担任2名
長期目標[HELP]人をつねらずに登校後の時間や休み時間を過ごすことができる。
短期目標[HELP]登校時にスクールバスから教室まで、人をつねらずに行くことができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]スクールバス下車後に、トレーニングルームで10分程度活動してから、教室に行くことができる。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]人をつねる。
標的行動を取り上げる意義[HELP]本児は、登校後の混雑した玄関や、着替えの前後で教員をつねることが多い。現在は、つねった時はタイムアウト(1分)を行うことにし、本児もつねらないように調節しようとする様子が見られるようになってきている。しかし、登校時のスクールバスや混雑した玄関では調節が難しく、まだつねる行動が見られている。そこで、バス下車後すぐにトレーニングルームでの活動を設定し、混雑時に玄関を通らなくて良い環境を設定した。
本児は体を動かす活動が好きで、トレーニングルームのウォーカーやステッパーで笑顔で活動することができる。また、長時間のスクールバス乗車の後に体を動かせることで、学校での活動にもスムーズに移りやすいと考えた。
事例に関する情報[HELP]Bさんは、人の多い場所や休み時間などに大人をつねる行動が多く、多いときは休み時間など自由に過ごす時間を中心に、一日に10回以上みられている。遊びの要求などの際につねる行動は、徐々にことば「あそんでください」「こちょこちょしてください」などに置き換えられている場面もあるが、人の多い場所で特定の教員を見た瞬間に衝動的につねってしまう等、原因の推定が難しいことが多くあった。
 傾向を知るために、まず初めにつねった場面や回数の記録を取ることにした。回数は毎日大きなバラつきがあったため、2ヶ月程度記録を取りながら傾向を見ていくことにした。その結果、曜日による回数の偏りは少なく、時間帯によって増減が大きいことが分かった。特に多いのが、朝登校するスクールバスから降りて教室で着替えるまでの時間帯で、ほぼ毎日1〜3回程度見られていた。そのため今回、朝スクールバスから降りて教室で着替えるまでの時間帯に焦点を当て、トレーニングルームでの活動を設定して、混雑時に人の多い玄関を通らなくて良い環境を設定した。
問題の推定原因[HELP]・混雑が苦手である。
・長時間バスに乗って疲れている。
・関わりの要求
想定される解決策[HELP]・混雑を回避する。
・バス下車後に体を動かせるようにする。
・遊んでほしいときにことばで要求できるようにする。
選択した原因と解決策[HELP]原因:混雑が苦手である。
   長時間バスに乗って疲れている
解決策:スクールバス下車後に、10分程度トレーニングルームでウォーカー等の運動器具で体を動かした後、玄関に向かうようにする。

般化を狙う場面[HELP]休み時間 昼休み
指導場面[HELP]登校時
指導手続き[HELP]1、スクールバス下車時に、教員がトレーニングルームのカードを提示する。
2、トレーニングルームに移動できるように促す。
3、入室後、タイマーを10分に設定して鳴ると終わりであることを伝える。
3、タイマーがなったら、トレーニングルームを施錠して、玄関に向かう。
4、くつを履き替えて教室に入れるよう促す。
5、つねる行動がみられたときは無反応で、別室に行ってイスに座る(1分間)ように促す。タイマーが鳴ったら教室に戻り、次の活動に移るように促す。
利用可能な好子[HELP]トレーニングルーム(運動器具)、教員の賞賛
教材教具など[HELP]トレーニングルームの写真カードと鍵、タイマー
記録の取り方[HELP]つねった回数
指導期間と達成基準[HELP]ベースライン:9月7日〜11月11日
指導期間:11月16日〜
達成基準:つねる回数の1週間(5日間)の合計が1回以下のことが2回続けば達成とする。
結果[HELP]指導1日目には、トレーニングルームの場所や活動内容を伝えることが必要であったため、写真カードを提示して一緒に場所移動をしたり、ステッパーや自転車こぎの仕方を示範したりした。Bさんはすぐに興味を持ち、3種類程度の運動器具を使用して、一緒に体を動かすことができた。2日目からは、写真カードを見て一人で場所移動ができるようになり、タイマーでの終了もできるようになった。トレーニングルームの鍵の開け閉めは、はじめは難しかったが、徐々に回す方向を伝える示範のみで一人でできることが増えてきている。
 つねる行動は、指導前は登校してから着替えるまでに毎日1〜3回程度あったが、ベースラインを記録している際には、教員が近くにいることもあり徐々に減少がみられた。指導開始後は、教員が登校時にバスに迎えに行った際、写真カードと鍵を手渡して後方2m程度から促すだけで、周りの人を気にすることなく走ってトレーニングルームに向かっている。バスから玄関に向かう途中にトレーニングルームがあることもあり、行動が分かりやすかったようで1日目からとまどうことなく活動することができた。活動終了後にトレーニングルームを出て玄関に向かうことで、玄関や靴箱付近にいる人数が10人程度と少なくなり、落ち着いて靴の履き替えを行うことができるようになった。また、バス下車後に好きな活動を静かな空間で行うことできるため表情が良くなり、長時間バスに乗っているストレスや疲れも解消されているようである。表情良く登校できることもあって、つねる回数の1週間の合計が平均して減少した。
考察[HELP]登校時、スクールバス下車後にトレーニングルームで10分活動してから、教室に行くことができるようになった。つねる行動については、指導前は多いときには一週間(5日)に合計10回以上見られていたが、指導後は1週間(5日)に合計0〜1回程度と減少している。バス下車後にトレーニングルームに行くことで、静かな環境でBさんの好きな体を動かす活動ができること、そのため長時間バスに乗っていたストレスや疲れも緩和されていることから減少したと考えられる。更に、活動後に玄関を通ることで混雑を避けることもできるため、表情良く教室に向かうことができるようになったため、減少したと思われる。
 指導前の様子と比べると、玄関前を通る際に落ち着いて「おはよう」や「おはようございます」と言えることが増え、玄関を入るとスムーズに靴箱に行くことができるようになってきた。また、日々の体調等には影響されるが、着替えへの取りかかりも以前より早くできることが増えてきている。
 今後の課題としては、登校時以外の休み時間が長すぎるとまだつねる行動がみられるため、休み時間が長くなりすぎないように活動を設定していくことが必要であると思われる。また、関わりの要求や拒否の際につねる行動がみられるため、それぞれの場面を捉えて、一つ一つを適切な方法で伝えられるようにスモールステップで支援していきたい。

指導前
A:先行条件 B:行動 C:結果
登校時
長時間バスに乗った後
まわりに大勢の人がいる
靴箱前が混雑している
つねる つねった感触がある(−)
イライラが解消される(↑)
相手の反応がある(↑)

指導後
A:先行条件 B:行動 C:結果
登校時
長時間バスに乗った後
混雑の中を通らない
静かである
運動器具がある
トレーニングルームで体を動かす 体を動かすことができる(↑)
イライラが解消される(↑)
ほめられる(↑)
玄関の前を通る時に空いている(−)


データとグラフ:第一系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
データとグラフ:第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2010/01/22/22:07:27

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