200921



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事例担当者のイニシャル[HELP]N.S T.K A.H
事例研究のタイトル[HELP]遊びの時間に遊びのカードを教員に手渡すことができるための支援〜不適切な要求の行動(教室を飛び出す行動)の減少をめざして〜
事例の概要[HELP]休み時間、遊びの選択カードを選んだ後、教員にカードを手渡す行動が身についていないため、教員がそばにいないときなどは、カードを手渡さずに教室を飛び出したり、教室内をウロウロしたりするなど不適切な手段で遊びの要求をすることがある。そこで、遊びのカードを教員に手渡す行動を身につける支援を行うことによって、教室を飛び出すなどの不適切な要求表現を減らしたいと考え、この実践を進めることにした。 
対象児のプロフィール[HELP]小学部3年 男児 自閉症
PEP-R発達検査結果:1歳7ヶ月(平成19年8月)
指導者の役割と人数[HELP]担任3人
長期目標[HELP]休み時間、遊びのカードを選択した後、教室内の本児の視覚に入っていない場所に教員がいても、選択した遊びのカードを教員に手渡すことができる。
短期目標[HELP]休み時間、遊びのカードを選択した後、2メートルほど離れた目の前にいる教員に遊びのカードを手渡すことができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]休み時間、遊びのカードを選択した後、50センチほど離れた目の前にいる教員に遊びのカードを手渡すことができる。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]教室を飛び出したり、教室内をウロウロ歩いたりする行動
標的行動を取り上げる意義[HELP]・給食時、「おかわりください」カードは教員に手渡すことができており、「手渡す」行動は本児にとって獲得しやすい行動といえる。
・「カードを手渡す」行動を獲得することで、離れた場所にいる相手にも適切に自分の要求を伝えることができると考えられる。
・自分の要求を適切に伝えられる手段を身につけることは情緒の安定につながるものと考えられる。
・家庭でも不適切な要求表現がみられるので、家庭での般化をねらうことができる。
事例に関する情報[HELP]・休み時間に「遊びの選択ボード(写真カード3枚)」を使って遊びを選択している。写真カードと遊びの内容はマッチングできており、選択することもできている。
・本児がよく選択する好きな遊びは、「ビデオを見る」、「ノートに自分で文字を書いたり、教員が書いた文字をなぞったりする遊び」である。
・しかし、遊びをしていても落ち着かず、教室を飛び出して他の教室に入っていって教員が迎えに来るのを待っていたり、教室内をウロウロして教員にかまってほしそうにするなど、不適切な要求表現と思われる行動がみられることがある。

問題の推定原因[HELP]1、担任が3人とも本児のそばではなく、教室内の離れた場所にいるとき
→遊びのカードを選択しても、カードを教員に手渡す行動がまだ定着していないので、教員が気づくのが遅れたり、タイミングよく対応できずに遊び道具の準備が遅れたりすることが多いためか?

2、自分の見たいビデオを最後まで見終わったとき
→「巻き戻しをしてほしい」という要求をうまく伝えられないためか?

3、他の児童がビデオを見ているとき
→自分の見たいビデオを見ることができないためか?
想定される解決策[HELP]1、「遊びのカードを手渡す手段が定着する」ように支援する。
2、ビデオの巻き戻しの要求があった場合は、必ずすぐに対応する。
3、他児がビデオを見ているとき、順番カードとタイマーを使用し、順番の交代をわかりやすく知らせる。また、「ビデオ」「なぞり」以外にも好きな遊びを拡げるよう、「わくわく広場」で遊ぶ時間を1日1回設定する。
選択した原因と解決策[HELP]<選択した原因>担任が3人とも本児のそばではなく、教室内の離れた場所にいるとき
→遊びのカードを選択しても、カードを教員に手渡す行動がまだ定着していないので、教員が気づくのが遅れたり、タイミングよく対応できずに遊び道具の準備が遅れたりすることが多いためか?

<解決策>「遊びのカードを手渡す手段が定着する」ように支援する。
般化を狙う場面[HELP]遊びの選択時以外の要求場面
家庭
指導場面[HELP]休み時間
指導手続き[HELP]1、本児が遊びのカードを選択した後、本児の前に立つ。(50センチほど離れた位置)
2、カードを手渡すことができた場合は、「じょうずにわたせたね」「まる」などと言って褒め、すぐに遊べるように用意をする。
3、カードを手渡さずに教員の前を通り過ぎようとした場合は、通り過ぎないように目の前に立って本児の動きを止めるか、身体的ガイダンスで本児の身体の向きを教員に向けるかの支援を行う。
4、カードを手渡せない場合、本児の前に立ち、30秒ほど待つ。その際、教員からの「ください」のことばや身振りのプロンプトは出さない。30秒ほど待っても手渡せない場合は、もう一人の教員が本児の後方から身体的ガイダンスによって手渡す動作を支援する。
5、課題学習後の休み時間においても、担任の中で一人は必ず本児の支援ができる状況をつくる。
6、飛び出し行動については教室から出てしまう前になるべく止める。教室から飛び出した場合は、すぐに追いかけず、しばらく様子を見守る。
利用可能な好子[HELP]すぐに遊びの用意をしてくれること、教員の賞賛
教材教具など[HELP]遊びの選択ボード、遊びのカード、遊びの道具(ビデオ、文字のなぞりなど)
記録の取り方[HELP]カードを手渡すことができたかどうかについて、次のように点数化して記録する。
2点:自発的にできた
1点:本児が教員の前を通り過ぎないように目の前に立って本児の動きを止めるプロンプトあり
0点:身体的な補助あり

指導場面のプロンプトの平均点数を出してグラフに記入する。。
指導期間と達成基準[HELP]平成21年10月15日〜

1日の全ての休み時間において、身体的ガイダンスやその他のプロンプトなしで、教員にカードを手渡すことができた日(平均点数2点)が3日間続いたら目標達成とする。
結果[HELP]<指導目標1>10月19日から指導を開始した。最初は、カードを手渡さずに教員の前を通り過ぎようとすることが多かったので、本児の動きをいったん止めて教員に注目できるような姿勢をとることができるようにするため本児の目の前に立ったり、身体を教員のほうに向けるように身体的ガイダンスを行ったりした。また、教員の手を取りにきて、「ください」の身振りをしてほしそうな様子がみられることが多くみられたが、それには反応しないようにした。指導開始10日目くらいから、徐々に本児の目の前に立って動きを止めるプロンプトや身体的ガイダンスの支援が減り始め、20日目に目標達成した。手渡した後、すぐに遊びの用意をしてもらえ、自分の要求がタイミングよく通じるようになったことで、不適切な要求がほとんどみられなくなり、遊びの間も落ち着いて遊ぶ姿がみられるようになった。
<指導目標2>11月18日から指導を開始した。1日目からプロンプトなしで手渡しすることができ、3日間で達成することができた。指導目標1で、カードを手渡す動作がしっかりと身についていたため、距離を伸ばしてもすぐに達成できたと思われる。
<指導目標3>11月30日から指導を開始した。指導目標2と同様、3日間で達成した。全目標より少し距離を伸ばしても、教員のところまできちんと手渡しに来ることができていた。
考察[HELP]今回の指導を通して、要求を適切な手段でしっかり相手に伝えるスキルを身につけることで、教室を飛び出すなどの不適切な行動による要求表現が減少し、遊び時間を穏やかな表情で過ごすことができるようになった。相手に伝えるための適切なコミュニケーション手段の獲得が児童の情緒の安定につながるということを改めて実感することができた。また、手渡す行動がきちんと身につくように、最初は50センチ離れたところから始め、徐々に距離を伸ばしていくというスモールステップによる指導も本児にとってとても有効であったように思う。さらに、担任間で細かな指導手続きや記録の取り方等について話し合い、共通理解を持って実践を進めることができたことも、今回の大きな収穫だったと思われる。
 今後は、長期目標達成に向けて引き続きスモールステップで取り組みを続けたり、要求をカードで伝える場を学校内だけでなく家庭においても増やしたりすることで、本児がさらにコミュニケーション手段を幅広く獲得できるように支援していきたい。

指導前
A:先行条件 B:行動 C:結果
休み時間
遊びのカードを選択したとき
教室から飛び出す
教室内をウロウロする
教員が迎えに来てくれる(↑)
教員がかまってくれる(↑)
好きな遊びができる(↑)

指導後
A:先行条件 B:行動 C:結果
休み時間
遊びのカードを選択したとき
遊びのカードを手渡す 好きな遊びがすぐにできる(↑)
教員に褒められる(↑)


データとグラフ:第一系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
データとグラフ:第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2010/01/04/16:46:33

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