201017



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事例担当者のイニシャル[HELP]YM
事例研究のタイトル[HELP]小学部高学年自閉症児が一人で着替えるための支援
事例の概要[HELP]Tさんは一人で着替えるスキルは持っているものの,紙パンツを脱ぐにはことばかけが必要であった。ことばかけをすれば,一人で紙パンツを脱ぎ布パンツとずぼんをはいて着替えエリアから出てくることができている。Tさんはことばや視覚的支援で物事を理解することができる。すでに定着している「ゴミ箱に紙パンツを捨てる」「3段ボックスの服を着る」を利用して,視覚的に脱ぐことを忘れないように支援していく。
対象児のプロフィール[HELP]小学部6年 男児 Tさん 知的障害,自閉症
S-M社会生活能力検査 2歳10ヶ月(平成21年1月)
要求をことばで伝えることができる
ことばでの指示を理解することができる
指導者の役割と人数[HELP]担任2人
長期目標[HELP]朝の着替えの時間に1人で着替えることができる
短期目標[HELP]写真カードを見て,朝の着替えの時間に自主的に紙パンツを脱ぐことができる
標的行動(増やしたい行動)[HELP]写真カードを見て,朝の着替えの時間に自主的に紙パンツを脱ぐことができる
標的行動(減らしたい行動)[HELP]紙パンツをはいたまま着替えエリアから出てくる
標的行動を取り上げる意義[HELP]1人で着替えができるようになる
事例に関する情報[HELP]・紙パンツの上に布パンツをはいている
・紙パンツをはいたままエリアから出てきた時は,「紙パン脱いで」のことばかけで自分からエリアに戻り,紙パンツを脱いで布パンツと体操ズボンをはくことができる。
・脱いだ紙パンツはエリア内のゴミ箱に,脱いだ服はエリア内の脱衣カゴに自分で入れることができる
・着替えのスケジュールを確認すると,自分で鞄をもって着替えエリアに入る。着替えの手順は(1)つなぎを脱ぐ(2)ポロシャツを脱ぐ(3)鞄から体操服を出して3段ボックスにセットする(4)体操服を着る(5)体操ズボン。(2)と〈3〉は入れ替わることがある。
・着替えエリアに入る前に「紙パン脱いでな」とことばかけをすると,忘れずに脱ぐことができる
・朝,紙パンツが汚れていることはほとんどない

Tさんは日常生活の中で「人を叩く」「服を破る」「服をぬらす」「お茶をこぼす」の4つの不適切な行動が多く,トークンシステムを取り入れて指導している。スケジュールに示されている活動中に4つの不適切な行動をしなかったときには,○カード(スケジュールの活動をしている写真カードに○印をつけたもの)を見せた後,スケジュールの「遊び」のカードを5分割した物の1パーツを手渡し,ことばで賞賛する。パーツは教員が持っている台紙に本児が貼るようにする。このパーツを5枚台紙にすべて貼ることができたときに,スケジュールに「遊び」の活動を挿入するようにする。各活動時に不適切な行動をしたときには,×カード(それぞれの不適切な行動をしている写真カードに×をつけたもの)をUに見せた後,台紙より1パーツを教員がTさんの目の前ではがすようにしている。
問題の推定原因[HELP]1.紙パンツをはいていても気持ち悪くない
2.教員に「紙パン脱いで」と言ってもらえる
3.はいていても脱いでもどっちでもいい
4.いつも着替え終わってから「脱いで」と言われるから習慣化できない
5.脱いでもこれといってご褒美がない
6.脱がなくても4つの行動(叩く,ぬらす,こぼす,破る)をしなければ「○カード」がもらえる
想定される解決策[HELP]1.着替えの手順の中に「紙パンツ脱ぐ」を入れて習慣化する
2.無言で紙パンツを脱ぐ絵カードを見せられ着替えエリアに戻す
3.着替えの手順の中に「紙パンツ脱ぐ」を入れて習慣化する
4.脱ぐタイミングの時に教員が支援する
5.脱いだ時にはご褒美をあげるようにする
6.「着替え○」ど同時に「紙パンツ脱ぐ○」カードを用意する
選択した原因と解決策[HELP]原因 いつも着替え終わってから「脱いで」と言われるから習慣化できない
解決策 脱ぐタイミングの時に教員が支援する
 
指導場面[HELP]朝の着替えの場面で,登校後に(着替え前に)トイレで大便をしなかった時
指導手続き[HELP](1)着替えエリアの脱衣カゴの横に青いゴミ箱を置く
(2)3段ボックスの上に紙パンツをゴミ箱に捨てている写真カード(A6サイズ)を貼る
(3)3段ボックスの1段目に体操服の写真(定期券サイズ),2段目に体操ずぼん(定期券サイズ)の写真を貼る
(4)本児がつなぎとポロシャツを脱いだら,ボックス上の写真を指さしして,「ここ見て。」とことばかけをする。見たのを確認したら,「紙パン脱いで」とことばかけをする。脱がないようなら,身体的支援で紙パンツと布パンツを脱ぎ,紙パンツをゴミ箱に捨てるように支援する。支援をしたら教員はエリアから出てくる。
(5)鞄から体操服の上下を出して3段ボックスにセットするのを見守る。

*(4)と(5)は入れ替わることがある。

教材教具など[HELP]写真カード
紙パンツを入れるゴミ箱
脱衣カゴ
衣類を入れる3段ボックス
記録の取り方[HELP]どのようなプロンプトが必要だったかを次のように得点化した。
  一人で脱いだ…3点
 指さしのみで脱いだ…2点
 指さしとことばかけで脱いだ…1点
  できなかった/身体的ガイダンスが必要だった…0点
指導期間と達成基準[HELP]ベースライン 10月18日〜10月29日
指導期間 11月1日〜
土日を挟んで5回連続3点が続いたら達成
結果[HELP]11月15日から24日まで土日を挟んで5回連続で3点だった
考察[HELP] 視覚的な支援をして,タイミング良く指さしとことばかけをすることで,Tさんに「紙パンツを脱ぐ」ことを有効的に伝えることができた。指導を初めて3日目には成功し,11月15日から24日まで,登校後に大便をして指導機会が無い日もあったが,土日を挟んで5回連続で成功した。その後も12月3日まで連続で成功し,紙パンツを脱ぐことが定着したと思われた。
 しかし,1ヶ月後を見てみると,12月6日から12月22日までは4回しか3点を取ることができなかった。連続3点は2日のみであった。Tさんが着てくる洋服や着替えエリアの環境,また指導者の対応も変えていない。Tさんは0点だった時も着替える時に写真カードを指で弾いたり,「パンツの」と独り言を言ったりしていた様子から,脱ぐことを忘れているのではないと考えられる。
 行動を維持できなかった原因として,行動を強化できなかったことが考えられる。Tさんは1つ1つのスケジュールの行動を○×カードで評価している。そちらを優先しているため,着替えの場面で「紙パンツをはくことができた」とういう行動を○カードを使って評価せず,ことばで「紙パンツ脱いだね。よろしい。」と褒めるだけにしていた。「紙パンツ脱いだね。よろしい。」と教員に言われるより,「着替え○カード」をもらえることの方がTさんにはご褒美になっていたと考えられる。着替えエリアで視覚的に“紙パンツをぬぐ”ことが示され,脱ぐことは分かっても,これまで通り紙パンツを脱いでも脱がなくても同じように「着替え○カード」をもらうことができるため,行動を強化することができなかったと思われる。
 行動の継続が今後の課題であったが,2ヶ月後,11月11日から2月3日まで,1月20日を除いて連続で3点を取った。教員の対応は変えていないが,毎日の活動のために習慣として紙パンツを脱ぐことが定着したのだと考えられる。

指導前
A:先行条件 B:行動 C:結果
教室
着替えエリア
児童2人
朝紙パンツをはいてくる
紙パンツの上から布パンツをはいている
紙パンツをはいたまま着替えエリアから出てくる 「紙パン脱いでな」と言われる(↓)(↑) 
着替え直す(↓)
着替え○カードをもらえる(↑)

指導後
A:先行条件 B:行動 C:結果
教室
着替えエリア
担任2人
朝紙パンツをはいてくる
紙パンツの上から布パンツをはいている  
着替えエリアに「紙パン脱ぐ」の写真カード
紙パンツを脱いで着替えエリアから出てくる 教員に「よろしい」と褒められる(↑)
着替え直さなくてもいい(↑)
着替え○カードをもらえる(↑)


紙パンツを脱ぐことができたかどうかの得点

着替えエリア

紙パンツ脱ぐ 写真カード

3段ボックス
記入日時 2010/10/22/18:44:15

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