201106



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事例担当者のイニシャル[HELP]KH,MM
事例研究のタイトル[HELP]中学部1年生の知的障害児が、対面課題時にやり直しを要求された際、それを受け入れてやり直すことができるための指導
事例の概要[HELP]本児は,特定の教員の指示には従うことができるのに,他の教員の指示には従いにくいといったことが見られる。特に女性の教員と1対1の場面では,活動からの逸脱が増え,指導しようとすると徐々に情緒が不安定になり,最終的に他害につながといったことが小学部時代から見られる。現在は,男性の教員が主に関わるようにしたり,女性教員との活動の際は,活動の負荷をさげたり,トークンの頻度を上げたりすることで,情緒不安定になることを予防する対応をとっている。そして,それは効果をあげ他害はほとんど見られていない。
しかし,今後のことを考えると色んな支援者の指示にスムーズに応じれるようになることは,本児にとっても支援する側にとってもとても大事なことだと考えている。そこで,まず課題のやりなおしという負荷のかかる場面を意図的に設定して,それに応じることができることをねらって指導している。
対象児のプロフィール[HELP]中学部1年 知的障害
<新版K式> 全領域4歳 0ヶ月 姿勢・運動 3歳10ヶ月以上 
              認知・適応 4歳 2ヶ月
  言語・社会 3歳 9ヶ月 (平成22年3月18日) 

○言語での日常会話が可能であり、大人との関わりが好きである。
○やりたいことがかなわなかったり、きつい口調で言われたり、急ぐように言われたりすることにより情緒が不安定になりやすく,自傷・他害がある。
○言葉の意味や教員の説明を,十分に理解できず約束を破られたと思い,他害・自傷行為がある。本人の誤解がないように,理解しやすいルール提示をすることで他害・自傷行為は減る。
○興味関心があるとその場の状況に関係なく行動することがある。その行動を強く制止すると,怒ったり教員がいないときに学校を抜け出したりすることがある。
○言葉がすぐに思い出せないことがあり、文字や数の学習に対して苦手意識がある。
○指先や身体運動は不器用であるが、絵を描くのは好きで動物や恐竜の線画を好んで描く。
○小学部3年生の頃より、学校の併設の自立生活支援センターで集団生活をしている。
○学校生活では、写真5,6枚のパートスケジュールを使って活動している。
指導者の役割と人数[HELP]指導者A:KH(男性担任)
指導者B:MM(女性担任)
長期目標[HELP]対面課題・自立課題を間違った場面や手洗いや着衣が不十分な場面で,教員のやり直しの指示に従いやり直しに取り組む
短期目標[HELP]対面課題時,課題を間違った場面で教員のやり直しの指示に従い課題のやり直しに取り組む
標的行動(増やしたい行動)[HELP]対面課題時,課題を間違った場面で教員のやり直しの指示に従い課題のやり直しに取り組む
標的行動(減らしたい行動)[HELP]対面課題時,課題を間違った場面で教員のやり直しの指示に従わない
標的行動を取り上げる意義[HELP]スキルとしては獲得した行動(ブレザーのボタンを止める,自立課題など)が間違っていた場合や不十分な場合にやり直しの指示を口頭で出すと,不安定になり指示に応じることができず自傷・他害が起こる場面があった。そこで他の授業で効果を上げているトークンエコノミーシステムを導入した。そのことで自傷や他害はずいぶん減少した。しかし,対応する教員が女性の場合に他害にいたることがあった。新しい課題や苦手な課題については,取り組めるものの間違ったときにやり直しを求めると不安定になり指示に応じることができず自傷・他害が起こった。毎日の学校生活の中で,やり直しを求められることは避けようがなく本人にとっても非常に辛い状態であった。
また支援する側としてもやり直しの指示を出すと本人が不安定になり他害に至ることがわかっているので,指示をだしにくく指導がしにくい状態であった。 そのため,今回の標的行動では,指導をしやすい対面課題時でのやり直しを取り上げた。
問題の推定原因[HELP]1手間がかかる
2疲れる
3同じ作業や活動の繰り返しが嫌
4やり直しの指示が理解できない
5やり直しをしても良いことがない
想定される解決策[HELP]4やり直しの指示が理解しやすいように視覚的に提示する
5やり直しができればトークンのポイントを与える
選択した原因と解決策[HELP]介入1
〈選択した原因〉
5やり直しをしても良いことがない
〈選択した解決策〉
5やり直しができればトークンのポイントを与える

介入2
〈選択した原因〉
4やり直しの指示が理解できない
〈選択した解決策〉
4やり直しの指示が理解しやすいように視覚的に提示する

般化を狙う場面[HELP]日常生活や作業学習の活動などで、やり直しを要求された際
支援者が男性・女性にかかわらずやり直しを要求された際
指導場面[HELP]対面学習 週4回
指導手続き[HELP]介入1
1 課題を間違ったときは,もう一度はじめからやり直しをする約束を言語でしておく。
2 『先生がやり直しを求めた際に、タイマーが鳴るまでにやり直しができたらトークン1枚あげる』という約束を言語でしておく。
3 本児がパッキングする課題を終えた時に、「残念、ここが不十分やな、やり直して下さい。」などと言い、課題を元に戻して提示しやり直すように促す(タイマーを20秒セットする)。
4 20秒以内に,やり直しができるかを見守る。
5 20秒以内にやり直しに応じることができた時は、言語賞賛しながらトークンを首から提げたトークン表に貼る。
6 20秒以内に,やり直しができないときは、言葉かけをして待つ。

介入2
1 本児が3つの袋のパッキングを終えた時,教員がチェックをする。
  できた袋は完成品ボックスにいれ,不十分な袋は材料ボックスに戻す。《ここが不十分やな、やり直して下さい。》などと言い、写真と絵1のルール表を見せ説明をする。課題を材料ボックスに戻しやり直すように促す。
2 やり直しはじめ,パッキングをし始める前に,モデリングしながら《はじめにパチパチととめて,ギューとひっぱる。裏返してギューとひっぱる。》と口頭で説明する。
3 パッキングが十分にできたときは,言語賞賛しながらトークン1ポイントを首から提げたトークン表に貼る。パッキングが不十分なときは,1,2の要領でやり直しを促す。
4 やり直しに応じず話しかけてきたときは,写真と絵2のルール表を見せ説明する。課題ボックスの次の課題の前にお話しカードを貼る。カードを貼ったときは,この課題が終わったあとにタイマーと砂時計をセットして1分間お話しをする。
5 やり直しに応じず,トークン表の反応コストにあたる行動をでた場合は,ルールに沿って対応する。
利用可能な好子[HELP]恐竜・妖怪のもの(写真、図鑑、フィギア、ビデオやパソコンの映像)
お菓子、ミニカー
トークン(5枚たまるとミニカー1個)
教材教具など[HELP]具体物をパッキングする課題,トークン表,写真と絵1のルール表,写真と絵2のルール表,砂時計(1分計),タイマー
記録の取り方[HELP]やり直しに応じることができた…○(1点)
     〃     できなかった…×(0点)
指導期間と達成基準[HELP]ベースライン
介入1
介入2

男性担任
女性担任
結果[HELP]介入1では,他の授業で成果を上げていたトークンエコノミーシステムを活用した。しかし女性教員のやり直しの口答指示に応じることはできなかった。

介入2では,課題を間違えたときに写真と絵のルール表を使用した。また,やり直しに応じるまでの時間制限もなくした。そのことで,女性教員の指示にも応じることができるようになった。
考察[HELP]やり直しを求めるには
ほぼ獲得したスキルに関して,
1 トークンのルール表を提示すること
2 対応する教員が男性であることでやり直しに応じることができた。

新しい課題や苦手な課題・学習に関して,
1 どうすればトークンのポイントをもらうことができるのかを写真・絵のルール表を提示し説明することで男性,女性関係なくやり直しに応じることができた。

今後の課題
対面課題の場面以外でも,本人が理解できるように写真・絵のルール表を提示し説明を行う。

ベースライン時
A:先行条件 B:行動 C:結果
対面課題時
先生のやり直しやの口答指示あり
苦手な課題あり
課題を間違ったとき
課題をやり直す 先生の褒め言葉あり(↑)
次の課題あり(↓)

介入1、2
A:先行条件 B:行動 C:結果
対面課題時
先生のやり直しの口答指示あり
苦手な課題あり
課題を間違ったとき
口頭での約束あり(トークンポイントを与える)《介入1》
写真と絵のルール表あり(トークンポイントを与える)《介入2》
課題をやり直す 先生の褒め言葉あり(↑)
次の課題あり(↓)
トークンのポイントあり(↑)《介入1》《 介入2》

FILE 216_233_1.pdf
記入日時 2012/02/20/14:29:53

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