201113



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事例担当者のイニシャル[HELP]Y
事例研究のタイトル[HELP]小学部低学年の肢体不自由児がお茶を飲みたいことを伝えるための支援
事例の概要[HELP] 意思が明確であり,嫌なことは手で払いのける,顔を背ける,泣く等で表現している。 手伝って欲しい時に,クレーンハンドで要求する場面(教室のドアを開けて欲しい,水道の蛇口をひねって欲しい,お茶を入れて欲しい等)が見られる。
 褒められると笑顔が見られたり,叱られると声が低くなり表情が曇る。
対象児のプロフィール[HELP]小学部1年 女児 Fさん
精神運動発達遅滞 てんかん 自閉症
新版K式発達検査:姿勢・運動 386日
         認知・適応 265日
         言語・社会 198日
         全領域   292日(平成23年11月)
指導者の役割と人数[HELP]担任1名
長期目標[HELP]給食でお茶が飲みたい時,写真カードを使って要求することができる。
短期目標[HELP]給食でお茶が飲みたい時,コップを自発的に教員に手渡すことができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]給食でお茶が飲みたい時,コップを自発的に教員に手渡すことができる。
標的行動を取り上げる意義[HELP]誰にでも分かりやすく要求を伝える事で要求が叶えられ,本児のコミュニケーション能力を高めることができると考えられるから。
事例に関する情報[HELP] Fさんがお茶の要求を「伝える」ことに関して,指導前は教員がFさんからの要求を待たずに,お茶を入れたコップを目の前に見せて聞いていたため,欲しかったらコップを受け取り,欲しくなかったら払いのけたり,顔を背けたりしていた。水筒とコップを目の前で見せて待つと,水筒を触りコップの方に傾けるようになった。水筒を見せる距離を伸ばすと,手が届かなくても水筒に手を伸ばすようになった。また,手を伸ばした後で教員を見るようにもなった。給食場面で直接水筒に手が伸びそうになった時にクレーンハンドで要求するように身体的ガイダンスで教えると,数日で直接水筒に手を伸ばすことが少なくなり,クレーンハンドでの要求が増えていった。
 しかし,何をして欲しいのか親しい人でないと分かりにくい場合がある。誰にでも分かるように将来的にはカードを使って要求できるようにしたいが,具体物と写真カードのマッチングがまだできず,「ください」のことばかけやサインで物を手渡すことが難しい。そこで,本児の要求が強い食事場面で,お茶のおわかりを「コップ=具体物」を使い,
“コップを手渡す”ことで伝えるようにしたい。
問題の推定原因[HELP]1.クレーンでも伝わるという経験をしてきているから。
2.「手渡す」行動を知らないから。
3.飲めないならそれでもいいから。
4.待っていたら教員がお茶をいるか聞いてくれたり,入れてくれたりするから。
想定される解決策[HELP]1.クレーンで要求した時はお茶をあげない。
2.身体的ガイダンスで教える。
3.給食までお茶を飲まない。
4.要求があるまでお茶を入れたり聞いたりしない。
選択した原因と解決策[HELP]原因  「手渡す」行動を知らないから。
解決策 身体的ガイダンスで教える。
般化を狙う場面[HELP]家庭での食事場面
指導場面[HELP]給食場面
指導手続き[HELP]【ベースライン(クレーンハンドによる要求)】
(1)視界に入るが手が届かないところに水筒を置く。 
(2)コップをトレイの中に置く。
(3)クレーンハンドが出たら,要求していることを予測して水筒やおかずを見せる。
(4)水筒をFさんの目の前で見せ,水筒を傾ける仕草があったらコップにお茶を入れ,   トレイに置く。

【コップを手渡す】
(1)視界に入るが手が届かないところに水筒を置く。 
(2)コップを机の利き手側に置く。
(3)クレーンハンドで要求しそうな時,又は出した時は身体的ガイダンスでコップを手   渡すようにする。
(4)とびきりの笑顔で褒める。
(5)すぐにお茶を入れてコップをトレイに置く。
(6)飲み終わってコップをトレイに置いた時は,コップを元の場所(机の利き手側)に   戻す。
利用可能な好子[HELP]お茶
「よろしい」等の賞賛のことばかけと教員の笑顔
教材教具など[HELP]お茶用のコップ
水筒
記録の取り方[HELP]自発的にコップを手渡すことができた回数を記録する。
正反応の割合(%)=自発的に手渡した回数/1日の指導回数×100
指導期間と達成基準[HELP]正反応の割合が3日連続100%で達成とする。
結果[HELP] ベースラインでは,水筒を見ながらコップを噛んだり,カタカタ机にたたきつけることが2回あった以外は,飲む時以外にコップに触ることはなく,お茶が飲みたい時はクレーンハンドで要求していた。
 指導開始後,直接水筒に手を伸ばしたり,水筒や教員の手にクレーンハンドが出かけた時(または出た時)に身体的ガイダンスでコップを教員に手渡すよう指導した。1週目(10月31日〜11月4日)はすべてクレーンハンドでの要求であった。2週目(11月7日〜11日)からクレーンハンドも出るが,教員や水筒を見ながらコップに触る行動が見られるようになってきた。コップを触るようになってすぐに,飲み終わったコップを机に戻さず,教員に自発的にコップを手渡すこと(おかわり)ができるようになった。しかし,机に置いた状態からコップを手渡すことはできず,机にコップがあるときは直接水筒に手を伸ばしたり,クレーンハンドや水筒と教員を見ながらコップを触っていた。
 5週目(12月5日〜9日)半ばに,初めて机上のコップを自発的に手渡すことができ,目標を達成することができた。達成1ヶ月後も行動が維持されていた。
考察[HELP] 今回の事例で有効だったのは,標的行動を「コップを渡す」にしたことである。Fさんにとって,コップはお茶を要求するための道具として分かりやすく,Fさんができる方法として適していたと考えられる。指導を始めて2週間目の後半からおかわりの要求が出始めたことから,Fさんは「コップを手渡す」ことでお茶がもらえることを学習したと思われる。そのため,手にコップを持っていない時も,机上のコップを渡すという行動が身に付いたのだと考えられる。また,10週目(1月23日〜27日)からは指導者を他の担任と代わったが,それまでと同じように自発的にコップを手渡して要求することができた。
 さらに,うまくスプーンですくえない時やデザートのヨーグルトやプリンの蓋を開けられない時にも,スプーンやデザートを手渡して「開けて」「手伝って」と要求できるようになった。そのため,以前のようにスプーンで食器を叩いたり,スプーンを投げたりしなくなった。
 今回の事例を等して,Fさんにとって「手渡したら要求をかなえてくれる」という経験が積み重なり,コップ以外の物への般化が促されたと思われる。将来的には,手渡すものを具体物からカードに置き換えていくことで要求をより伝わりやすくし,Fさんの人との関わりを増やしFさんの豊かな生活を支えていきたいと考えている。

ベースライン
A:先行条件 B:行動 C:結果
給食
教室
目の前にいる教員
お茶が飲みたい
水筒に手が届かない
クレーンハンドをする ・すぐに伝わらない(↓)
・時々お茶が飲めない(↓)
・要求が伝わった時には,すぐにお茶を入れてもらえる(↑)

指導後
A:先行条件 B:行動 C:結果
給食
教室
目の前にいる教員
お茶が飲みたい
水筒に手が届かない
同じ場所にコップがある
コップを手渡す ・すぐに伝わる(↑)
・褒められる(↑)
・教員の笑顔(↑)
・すぐにお茶をもらえる(↑)


自発的にコップを手渡すことができた割合
記入日時 2011/11/25/16:59:39

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