201115



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事例担当者のイニシャル[HELP]ND
事例研究のタイトル[HELP]中学部生徒へのThe CAT Kitを用いた感情コントロールの指導
事例の概要[HELP]本生徒には4月から特定の生徒への押す,叩く,蹴るなどの行動がよく見られたため,トークンエコノミー法と目標を自分で決めるという指導を行い,そのような行動が見られなくなったという経緯がある。しかし,夏休み後,特定の生徒に対して手で払いのける仕草をしたり,「嫌い」「同じグループは嫌」と言ったりする行動が見られてきた。本生徒に話を聞くと,叩いたり,相手が傷つくことばを言うのは悪いことだと自覚しているが,どうしても言ってしまう,と報告した。そのため,トークンエコノミー法を続けながらも,感情をコントロールし,適切な形で自分をコントロールする方法を教える指導を始めた。
対象児のプロフィール[HELP]中学部1年女子。 
知的障害。
知能検査結果:WISC-3(FIQ=74,VIQ=75,PIQ=79) 
聴覚過敏があり,大きな音や突然の音に対して,身体をびくっとさせたり,過度に離れたりすることが見られる。
衝動性が見られ,指示を聞くと同時に行動してしまうことがある。
勝ちへの執念も強く,負けることは許されない,どんなことがあっても,負けたら駄目だ,と言うことがある。
運動会ではリレーに対して特に勝ちへの執念が強く,負けそうになると地団駄を踏んだり,砂を蹴ったり,涙を浮かべたりすることもあった。
指導者の役割と人数[HELP]指導者A:N.D(担任)
長期目標[HELP]様々なグループでの活動に参加することができる。
短期目標[HELP]様々なグループでの活動で,教員に自分の気持ちを伝えながら参加可能な活動に参加することができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]活動に参加する。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]嫌いな活動や音に対して,その場で「やらない」と言ったり,後ろを向いたりする。
事例に関する情報[HELP]聴覚過敏があり,高い音や突然の音が嫌い。
人が近づかれるのが苦手。特に,大きな声を出す人が近づいてきたら怖いと言っている。
前期に取り組んだトークンエコノミー法で用いたトークンは好きで貯めている。
問題の推定原因[HELP]1.大きな声を出す友だちが近くにいるから。
2.苦手な活動(ダンスなど)だから。
3.望ましい行動を知らないから。
想定される解決策[HELP]1.大きな声を出す友だちから離れる。イヤーマフをつける。授業中に出す声の大きさのルールをつくる。
2.苦手な活動に対して,本生徒ができているところを誉めたり,できそうな課題にする。
3.望ましい行動を教え,その行動ができたときは誉める。
選択した原因と解決策[HELP]原因1.苦手な活動(ダンスなど)だから。
解決策1.苦手な活動に対して,本生徒ができているところを誉めたり,できそうな課題にする。

原因2.望ましい行動を知らないから。
解決策2.望ましい行動を教え,その行動ができたときは誉める。
指導場面[HELP]日常生活の指導(木)
帰りの会の前
指導手続き[HELP]1.日常生活の指導の時間,教員と本生徒と対面で感情の意味とレベルについて生徒に指導する。指導する感情は以下の通り。(図1)
10月27日 【喜び】
感情の意味:たのしい、感激、興奮する、うれしい、しあわせ、希望のある、夢中になっている、だいすき、気楽な/楽観的、刺激的
11月4日 【悲しみ】
感情の意味:落ち込んでいる、がっかりする、落胆する、ふさぎこんでいる、やきもち/嫉妬、さびしい、申し訳ない、涙ぐむ、みじめ、心配している
11月11日 【安心感】
感情の意味:やる気満々,落ち着いている,心地良い,満足,平和な,リラックスしている,ほっとした,安全,穏やか,静か
11月18日 【恐怖心】
感情の意味:ぎょっとした,不安になっている,不安そう,おびえている,自信がない,臆病な,驚いた,ぞっとしている,内気な,悩んでいる
11月29日 【親しみ】
感情の意味:好き,気にかけている,心配して,没頭している,親しげである,恋をしている,親切な,愛する,同情している
11月17日 【怒り】
感情の意味:攻撃的,怒っている,いらいらした,不満がある,カッカしている,悔しい,激怒した,敵意のある,気難しい,暴力的
2月14日 【誇り】
感情の意味:傲慢,勇気がある,得意な,うぬぼれている,光栄である,恩着せがましい,前向き,満ち足りている,自信のある,優越感

2.それぞれのレベルについて,どのような場面があるか生徒に考えさせる。
3.毎日の帰りの会の前に,一日の感情レベルについて報告させる。(図2)
4.感情レベルが高かったり,低かったりしたとき,どのように行動したか聞く。
5.望ましい行動をとれていた場合,言語賞賛する。望ましくない行動をしていた場合,望ましい行動を教える。
利用可能な好子[HELP]トークン
「すごいね。」「いいですね。」などの言語賞賛。
記録の取り方[HELP]すべての授業場面で,本生徒の以下の3つの行動がだれに対して,どのくらいの頻度であったか,授業をした先生方に記録していただく。
1.友だちに対する攻撃的な行動(叩く,払うなど)の回数。
2.相手が傷つくようなことば(「嫌い」「一緒は嫌」など)の回数。
3.活動に対して否定的な行動,ことば(顔を背ける,「つまらない」「やりたくない」など)の回数。
指導期間と達成基準[HELP]ベースライン期(10月13日〜26日)
介入期(10月26日〜3月23日)
結果[HELP]介入を始めて,すぐには大きな変化は見られず,特に活動に否定的な行動は続いていた。
1月17日に【怒り】の学習をして以降,すべての行動は4回以下に減った。
考察[HELP]感情のフィードバックを行うことで,生徒が嫌な活動の時間でも「先生に誉められて嬉しかった」など喜びを見つけることができ,活動に対して肯定的に参加することができるようになった。
怒りの感情があったが,我慢することができたなど報告することで,教員の誉め言葉を得られ,強化されたり,本人にも自信につながったりしていた。
感情のフィードバックとともに,望ましい行動のフィードバックも行う機会が得られ,望ましい行動を学ぶきっかけにもなった。

現状のABC分析
A:先行条件 B:行動 C:結果
活動が進まない
高い声
活動がうまくできない
後ろを向く 活動なし(↑)
教員が近付く(↑)
教員の叱責(−)

解決策のABC分析
A:先行条件 B:行動 C:結果
活動が進まない
高い声
活動がうまくできない
感情の意味の学習
感情のレベル分け
望ましい行動の学習
後ろを向く 活動なし(↑)
教員の近づく(↑)
感情のフィードバック(↓)
行動のフィードバック(↓)

解決策のABC分析
A:先行条件 B:行動 C:結果
活動が進まない
高い声
活動がうまくできない
感情の意味の学習
感情のレベル分け
望ましい行動の学習
活動をする 活動あり(−)
教員の言語賞賛(↑)
感情のフィードバック(↑)
行動のフィードバック(↑)


グラフ1

グラフ2

図1:感情の意味とレベル分け

図2:帰りの会での指導
記入日時 2012/04/04/00:48:56

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