200705



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事例担当者のイニシャル[HELP]t.f/h.s
事例研究のタイトル[HELP]コミュニケーションカードを使って、遊びの要求を教員に伝える。(奥田先生によるアドバイス事例)
事例の概要[HELP]特定の場面で要求や拒否を2語文で伝えることもあるが、要求を出したい場面においても自発的に要求を出すことができず待っていたり、拒否や援助要求を伝えられず不安定になってしまう場面が見られる。休憩時間中、プレイエリアで遊んでいる際に、揺れ遊具を揺らしてほしい時にも伝えることができず揺らしてもらえるのを待ち続けたり、あきらめて他のあまりしたくない遊具で遊んでしまうことが多い。
そこで、Dさんがコミュニケーションカードを利用し、自主的に教員に対して遊びたい場所、遊具、相手を伝えることができるようになって欲しいと考え事例として設定した。
対象児のプロフィール[HELP]・小学部3年生、男児、自閉症
・新版K式発達検査:全領域4歳9ヶ月(平成19年9月検査)
・その他の特徴
 写真による全日のスケジュールを提示。見通しを持って学校生活を送れている。
 聴覚過敏(特定の音域の子どもの叫び声)があり、イヤホンとイヤーマフを使用している。
 遊びの選択は選択ボードの中から選んで教員に手渡して遊び場所に移動している(選択ボードの内容は教室外は場所のみであり遊具を特定していない)。
 コミュニケーション能力に関しては、限られた場面では2語文程度のことばで伝えることができる。援助要求はほとんど出ず、合った場合にもクレーンハンドのことが多く身近な人以外には分かりにくい。
指導者の役割と人数[HELP]小学部教員(30名)
長期目標[HELP]遊び場面で離れている教員にコミュニケーションカードを手渡し、要求を伝えることができる。
短期目標[HELP]短期目標1:遊び場面で目の前にいる教員にコミュニケーションカードを手渡し、要求を伝えることができる。
短期目標2:遊び場面で近く(1メートル以内)にいる教員にコミュニケーションカードを手渡し、要求を伝えることができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]してほしい遊具の近くにいる教員にコミュニケーションカードを手渡し、要求を伝える。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]待ち続ける、クレーンハンドでの要求、したい遊具をあきらめあまりしたくない遊具で遊ぶ
標的行動を取り上げる意義[HELP]・遊びたい遊具で遊ぶことができる。
・より正確な要求を伝えることができる。
・他の場面での援助要求に般化できる。
事例に関する情報[HELP]・プレイルームで揺れ遊具を揺らしてもらうことが好きであるが、教員に伝えることが難しく待ち続けたり、他のあまりしたくない遊具で遊ぶ。
・ことばでのコミュニケーションは2語文程度は可能であるが、聴覚過敏のためプレイエリアでの言語によるコミュニケーション指導が難しい。
・遊び場面で自分からのして欲しい遊具の要求は少ないが、友だちが乗っている遊具に乗ろうとするなど遊びの幅は広がっている。
問題の推定原因[HELP]・して欲しい遊びはあるが、相手に伝えるスキルがない。
・他の友だちが遊んでいる時には一緒に乗ることができるので要求を伝える必要がない。
・教員が傍らにいない場合は教員のいるところまで行って伝えることができない。
想定される解決策[HELP]・コミュニケーションカードを手渡し、要求を伝える。
・教員が傍らにいない時にも呼びに行くことができる。
選択した原因と解決策[HELP]原因1:相手に要求を伝えるスキルがない。
解決策1:コミュニケーションカードを手渡し、要求を伝える。
   2:傍らに教員がいない時に、教員を呼びに行く。 
般化を狙う場面[HELP]・家庭、学校での日常生活場面全般
指導場面[HELP]・休み時間中。
指導手続き[HELP]短期目標1:
1 Dさんが休み時間に遊びの場所を選択ボードから選択し、教員に手渡す。
2 Dさんがコミュニケーションカードをズボンのポケットに付ける。 
3 Dさんがしたい遊具に乗った時にDさんの目の前(視線が合うよう)に教員が立つ。
4 Dさんがコミュニケーションカードの中からして欲しい遊具を選択し、教員に手渡すようプロンプトを出す。(指導1日目は身体的ガイダンスを行い2日目以降は指さしへと移行し徐々にプロンプトを少なくする。プロンプトはコミュニケーションカードに手をかけるまでに10秒待つ。)
5 カードを受け取った教員は要求に応じる。
  (はじめは5分。徐々に減らしていき指導回数を増やす)
6 設定された時間、要求に応えた後、その場で3〜5の手続きを繰り返す。
短期目標2:
1 Dさんが休み時間に遊びの場所を選択ボードから選択し、教員に手渡す。
2 Dさんがコミュニケーションカードをズボンのポケットに付ける。 
3 Dさんがしたい遊具に乗った時にDさんの近く(1メートル以内)に教員が立つ。
4 Dさんがコミュニケーションカードの中からして欲しい遊具を選択し、教員に手渡すようプロンプトを出す。(プロンプトはコミュニケーションカードに手をかけるまでに10秒待つ。近くの教員に渡しに行けない時には教員1(近くの教員)に渡すように教員2が身体的ガイダンスを行う。)
5 カードを受け取った教員は要求に応じる。
  (はじめは5分。徐々に減らしていき指導回数を増やす)
6 設定された時間、要求に応えた後、その場で3〜5の手続きを繰り返す。
利用可能な好子[HELP]したい遊びをしてもらえる。
教材教具など[HELP]コミュニケーションカード 
「○○(遊具)してください」と文字写真で提示。
 はじめは遊具のコミュニケーションカードは5種類。徐々に増やす。
 ポケットに携帯できるようクリップ付きのストラップを付ける。           
記録の取り方[HELP]指導場面:休み時間中
記録事項
・正反応:プロンプトなしでコミュニケーションカードを手渡せた時。
・誤反応:プロンプト(身体的ガイダンス、指さし)をした時。
・1日の内、正反応の回数を記録し、正反応率を出す。

グラフの書き方
・タイトル:正反応回数。横軸:日付、縦軸:正反応回数
・タイトル:正反応率。横軸:日付、縦軸:正反応率
指導期間と達成基準[HELP]達成基準:正反応率が100%で5日連続

ベースライン:3日
指導期間:ベースライン終了から1ヶ月
中止・改善基準:正反応率が20%以下が3日連続
結果[HELP]短期目標1:指導を始めて11月28日、11月30日まではコミュニケーションカードを手に持つ,選んだカードを外す,教員に渡すといった行動全てにおいて身体的ガイダンスが必要であった。12月3日にカードへの指さしのプロンプトのみで手渡せるようになり,徐々に自主的にカードを手渡すことができた。12月13日にプロンプトなしで教員にカードを手渡して要求を伝えることができるようになり,12月19日に目標を達成することができた。
指導目標2:指導開始初日より正反応がみられ,正反応率100%となる日が多かった。プロンプトが必要だったのは,広場に人が多く,教員の姿が見つけにくかったためホーススイングに乗ったまま待っていることがあった。また,教員がDさん手の届かない所にいても,Dさんはホーススイングから降りて教員の所まで来てカードを手渡すことができた。
考察[HELP]短期目標1:指導開始直後はコミュニケーションカードの使い方が未学習だったため,正反応率が0%ないし、10%未満であったがカードの使い方を理解した12月4日以降は確実にカードを手渡すことができる回数が急激に多くなったと考えられる。また12月12日に一時,正反応率が下がっている。それまではホーススイングの要求がほとんどで要求行動が定着しつつあったが,ここではそれ以外の遊具で自発的にカードでの要求を伝えることができずこの結果となったと推測される。その後は使用頻度の低いカードでも確実にカードを使っての要求を出すことができ,指導目標を達成することができた。そこで徐々に教員の距離を離していけるよう次に指導目標2を設定した。
短期目標2:指導目標1でカードを手渡すという行動が定着していたため,指導目標2をスムーズに達成することができたと考えられる。手渡すという操作を入れることによって伝わる実感を得ることができ,要求行動が定着するとともに,相手にも要求が確実に伝わるようになった。
カードを教員に渡しながら「ホーススイング揺ってください」と自発的にことばで伝える様子もみられるようになってきた。カードには遊具の写真と文字(ホーススイングを揺ってください)を記していたことで文字をことばに出して伝えるという予想以上の結果につながったと考えられる。
今後の課題
1)スモールステップで距離を離していき,最終的には離れている教員を呼んできて要求を伝えることができるよう指導が必要である。
2)生活場面においても援助要求を伝えることができるよう指導を般化させていくことが課題であると考える。 

指導前
A:先行条件 B:行動 C:結果
休み時間
ホーススイングに誰も乗っていないとき
ホーススイングに乗る 揺らしてもらえない(↓)

指導前
A:先行条件 B:行動 C:結果
休み時間
ホーススイングに誰かが乗っている時
ホーススイングに乗る 一緒に揺らしてもらえる(↑)

指導後(短期目標1)
A:先行条件 B:行動 C:結果
休み時間
教員が目の前にいる
ホーススイングが揺れていない時
目の前にいる教員にコミュニケーションカードを手渡す 揺らしてもらえる(↑)
伝わってうれしい(↑)
教員と関わることができる(↑)

指導後(短期目標2)
A:先行条件 B:行動 C:結果
休み時間
教員が近く(1m以内)にいる
ホーススイングが揺れていない時
近く(1m以内)にいる教員にコミュニケーションカードを手渡す 揺らしてもらえる(↑)
伝わってうれしい(↑)
教員と関わることができる(↑)


データとグラフ:第一系列のタイトル: 正反応率
Baseline: ベースライン   Intervention1: 短期目標1  
データとグラフ:第二系列のタイトル: 
Intervention2: 短期目標2  
記入日時 2007/11/08/17:12:54

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