200711



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事例担当者のイニシャル[HELP]AM  TY
事例研究のタイトル[HELP]ことばで援助要求するための支援
事例の概要[HELP]車椅子を使用している本児さんは,普段耳にしている日常会話や歌の歌詞についてはよく覚えていて自分から発することはできるが,まだ語彙数が少ないため,適切なことばでやり取りすることが難しい場面も多い。学習場面において物を落としてしまったときも,「おちた」ということばのみを教員に伝えて要求する。場面に応じたことばを教員が伝えるとそのときはすぐに言い直すことができるが,ことばの定着が難しいため,場面が変わったり時間が経過したりするとまた「おちた」ということばだけで伝えてしまう。
対象児のプロフィール[HELP]養護学校小学部1年生、女子、両上肢機能障害、移動機能障害
太田のstage 3−2(H19、9)
新版K式発達検査 姿勢・運動 6ヶ月
         認知・適応 3歳2ヶ月
         言語・社会 3歳2ヶ月
         全領域 2歳6ヶ月(H19,11)

   
指導者の役割と人数[HELP]指導者A:AM(担任)
指導者B:TY(担任)
以上2名
長期目標[HELP]長期目標:先生を呼んでから「とってください」「○○をしてください」と場面に応じたことばで要求を伝えることができる。
短期目標[HELP]短期目標:手の動作の課題(玉をスコップですくい容器に入れる)で、玉を落としてしまった場合に「○○先生、とってください」と言うことができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]物を落としてしまったとき、「○○先生、とってください」と言う
標的行動(減らしたい行動)[HELP]物を落としてしまったとき、「おちた」ということばのみを教員に伝える
標的行動を取り上げる意義[HELP]本児はいろいろなことを自分でやりたいという思いを持っており、難しい課題においても繰り返し学習することで定着し自信を持って取り組めることが増えてきている。手の機能の向上を目指した活動においても積極的に取り組んでいるが、本児の身体の機能面から物を落としてしまうということにつながることがよくある。このことはJさんにとって、これから先も続いていくことである。このような場面において「おちた」という言葉のみで要求を伝えることと「とってください」と伝えることとでは、相手が受け取る印象が違ってくる。また、「とってくだい」と適切な言葉を使うことはいろいろな人たちと関わっていく上で必要なコミュニケーションのスキルである。そこで、さまざまな場面において、場面に応じた適切な言葉を使えるよう般化を目指したいと考えている。
事例に関する情報[HELP]入学当初は常に教員を呼んだり、「むり〜」としたくないのをアピールしたり、うつむき加減になったり、泣きべそをかいたりと教員に関わってほしい様子が伺え、教員が常に声をかけることで活動に取り組んでいるという状態であった。
言葉使いにおいても、「〜して」「むり〜」「〜やもん」「なんでよ」など相手が聞いて不愉快な言葉が多かった。これまで、適切でない発言がみられた場合は、その都度適切な言葉を伝え指導してきた。物を落として「おちた」と伝えてきた場合も教員の指摘でその時は、すぐに言い直すことができるが、なかなか効果がみられない。また、「おちた」という言葉で伝えてきた時に、どういう言葉を使うのがいいのか尋ねると4,5月は「わからん」という言葉が返ってきていたが、最近は考える時間があれば「とってください」と言うこともある。他にも、鼻水が出た時に、「鼻が出た〜」と自分の状況を伝えることはできるが、だからどうしてほしいのかを伝えることが難しく、教員が「どうしてほしいの?」「何が取ってほしいの?」等と言葉で要求を整理することで「ティッシュ下さい」と言う事ができる。現在、物が落ちた場合は教員がプロンプトとして「と」と頭文字をあたえると「とってくだい」と言うことができるが、違う場面になるとまたでてこない。
問題の推定原因[HELP]1.正しい言い方が分からないから。
2.今までは周りの人に言葉で伝えなくても、または「落ちた」というだけで取ってくれていたから。
3.定着に時間がかかる。
想定される解決策[HELP]1.適切な言い方を教える。
2.「おちた」という言葉が出たら無視し、適切な言葉が出たら賞賛する。
3.繰り返し学習する。
選択した原因と解決策[HELP]原因1.正しい言い方が分からないから。
解決策1.適切な言い方を教える。

原因2.定着に時間がかかる。
解決策2.繰り返し学習する。
般化を狙う場面[HELP]その他の物を落とした場面先生を呼んで「○○をとってください」、「○○してください」と要求する場面
指導場面[HELP]玉をスコップですくい容器に入れる学習場面、教室で、車椅子に机をつけた状態で
指導手続き[HELP](指導目標1)
手の動作の学習場面で玉が落ちた時の適切な言葉で伝える方法を次の手順で1回、ソーシャルスキルトレーニングとして行った。
1.玉が落ちた時は、担任に「とってください」と言えば玉を取ってくれることを伝える。(教示)
2.担任Bが玉をスコップですくい容器に入れる課題をして玉を落とし、担任Aに「とってください」と言う。担任Aは「はい、どうぞ。」と言い、玉を拾って渡す。(モデリング)
3.Jさんが玉を落とし、担任Aに「とってください」と言うようにする。(リハーサル)
4.「とってください」と言えた時は担任Aが「はい、どうぞ」と言い、玉を拾って渡す。担任に「おちた」という言葉のみで伝えた場合は「と」とプロンプトを出し、「とってください」と言えるまで繰り返しプロンプトを出す。(フィードバック)
(指導目標2)
手の動作の学習場面で玉が落ちた時の適切な言葉で伝える方法を次の手順で1回、ソーシャルスキルトレーニングとして行った。
1.玉が落ちた時は、担任に「○○先生、とってください」と言えば玉を取ってくれることを伝える。(教示)
2.担任Bが玉をスコップですくい容器に入れる課題をして玉を落とし、担任Aに「○○先生、とってください」と言う。担任Aは「はい、どうぞ。」と言い、玉を拾って渡す。(モデリング)
3.Jさんが玉を落とし、担任Aに「○○先生、とってください」と言うようにする。(リハーサル)
4.「○○先生、とってください」と言えた時は担任Aが「はい、どうぞ。」と言い、玉を拾って渡す。担任に「おちた」という言葉のみで伝えた場合は、教員の名前の頭文字をプロンプトとして出し、「○○先生、とってください」と言えるまで繰り返しプロンプトを出す。(フィードバック)
利用可能な好子[HELP]「きちんと言えたね」という声かけ、賞賛。
玉を取ってもらうことができ、課題が続けられる。
教材教具など[HELP]3色の玉、3色の容器、スコップ
記録の取り方[HELP](指導目標1)
1日のうち、プロンプトなしで「とってください」と言えた回数を記録し正反応率を出す。
(指導目標2)
1日のうち、プロンプトなしで「○○先生、とってください」と言えた回数を記録し正反応率を出す。
指導期間と達成基準[HELP]正反応率100%が6日間続いたら達成とする。
結果[HELP]指導目標1)
 指導開始日の1回目は適切なことばを学習した直後ということですぐに「とってください」と言うことができたが,数分経って玉を落としてしまったときには「おちました,おちました」と「おちた」より丁寧なことばで伝えてきた。また,数回正しく言えた後に黙ってしまいことばが出てこないということもあった。2日目には,1回目だけ「おちた」と伝えたが2回目以降は適切なことばで伝えることができた。指導開始日や2日目の1回目の反応は時間が経ってしまうと適切なことばを忘れてしまったり,何か適切なことばを言わなければいけないけれど,それがどんなことばだったのかはっきりと思い出せなかったりという様子がみられた。また,玉が落ちたときに担任がJさんに視線を向けていると言うことができるが,視線を外すと自信がなく小声で言ったり黙ってしまったりすることがあった。視線を向けないことと適切に言えたときはJさんに伝わるよう少し大げさなぐらい十分にほめるということを徹底した。その後は,順調に正反応率が上がっていき5日目の1回目に正しく言えなかっただけで11日目には目標を達成することができた。
 


指導目標2)
 指導開始3日目に1回,正しく答えられなかっただけで9日目には目標を達成した。
考察[HELP](指導目標1)
Jさんにとって「とってください」ときちんと担任に伝えることができたときや伝えたことで担任にほめられたときに喜びを感じている姿がみられ,ほめられることが非常に有効な好子になったと考えられる。また,玉をスコップですくい容器に入れるという課題の場面を設定して取り組んできたが,指導開始9日目(2月7日)から設定した場面や時間以外でも「とってください」と伝えることができるようになってきた。いろいろな場面で少しずつ般化がみられるようになったことから,指導目標2は般化場面を設定するのではなく,先生の名前を呼ぶという注意喚起の方法をプラスした「○○先生,とってください」と要求を伝えることに取り組むことにした。
(指導目標2)指導目標1で「とってください」が定着していることから,Jさんにとって「○○先生」と呼んでから「とってください」と言うことはそれほど難しいことではないようであった。3日目の正しく答えられなかったのは「とってください・・・・,○○先生」と「とってください」と言った後で先生を呼ぶことを思い出し付け加えたという感じであった。他のさまざまな場面で担任に援助要求をする際,「〜ください。○○先生,・・・」という場面がよくみられるようになり,先生を呼ばなくてはと意識が定着したと考えられる。

A:先行条件 B:行動 C:結果
玉を落としてしまった時 「おちた」と言う
「とってください」と言う
玉を拾ってもらえず、担任の賞賛なし(↓)
玉を拾ってもらえ、担任の賞賛あり(↑)

A:先行条件 B:行動 C:結果
玉を落としてしまった時 「おちた」と言う
「○○先生,とってください」と言う
玉を拾ってもらえず、担任の賞賛なし(↓)
玉を拾ってもらえ、担任の賞賛あり(↑)


データとグラフ:第一系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
データとグラフ:第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2007/10/12/17:19:20

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