200727



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事例担当者のイニシャル[HELP]t.m.m.
事例研究のタイトル[HELP]登下校時の着替えの後、更衣室で上靴のかかとを踏まずに履く。
事例の概要[HELP]上靴、下靴ともにかかとを踏む癖がついている。教員からかかとを入れて靴を履くよう指示されても「めんどくさい。」「あとで。」「無理。」などの返事が戻ってくる。指示に応じて靴をはき直せる時とそうでない時がある。授業中は靴をはくよう指導し靴を履ける場面が増えてきたが、着替え後、更衣室から教室までの移動の際は靴のかかとを踏んでいることがほとんどである。
朝の着替え後、すぐに靴を履くことで、その後の活動(朝の活動)を始めるまでの所要時間の短縮をねらうことができるとともに、本人にとっての不安定要因となる靴履きがスムーズに行えれば1日を安定して過ごすことではないかと考えた。「着替え後は靴を履く」という行動が習慣化するよう、下校時の着替えの際にも同様の指導を行うこととした。

対象児のプロフィール[HELP]特別支援学校高等部3年生、女、知的障害

・話し言葉によりコミュニケーションがとれる。
・読字、書字は難しい。
・自信のあること、経験したことがある活動に意欲的に取り組める。しかし、心理面が活動に対する意欲に大きく影響を及ぼす。活動への取り組みは気持ちが安定しているかに大きく左右される。
・周囲の状況をよく見ており、状況判断して行動できる。周りの環境や状況に行動が左右される。
・不安定になったときは、周囲からの指示はとおらず、その場に座りこんだり靴を投げるなどの行動がみられる。
指導者の役割と人数[HELP]指導者A:担任
指導者B:担任
指導者C:同じ学習グループの教員(旧担任)      合計3名
長期目標[HELP]靴のかかとを踏んでいる時、教員の指示に応じて、かかとを踏まず靴を履くことができる。
短期目標[HELP]学校の上靴のかかとを踏んでいる時、教員の指示に応じて、かかとを踏まず上靴を履くことができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]登下校時の着替えの後、更衣室で、靴のかかとを踏まず上靴を履く。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]登下校時の着替えの後、靴のかかとを踏む。
標的行動を取り上げる意義[HELP]・授業への集中を促す(靴がはけてないと靴が気になり集中できない場面がある)
・移動時の安全
・教員からの指示が減り、本人にとっての不快場面が減る
・卒業後の施設で上履きを履く
・一日のスタートである着替え後の靴はきができることにより、その後の授業が靴をはいてうけられる
・不安定になった時、靴へのこだわり行動になりうる要因を予防する(靴をはいていない場合に不安定になったら靴を投げたり靴をいじって教員の指示が入りにくくなることがあるのでその要因の事前に予防する)
事例に関する情報[HELP]・上靴は2足ある。ひも靴とスリッポン靴。スリッポン靴の方がかかとを踏む回数が少なく、履く時の所要時間も短い。2足ともかかとに踏み癖があり、ひも靴の方が激しい。本人はスリッポン靴の方が履きやすいと自覚している。
・立位で靴を履くとバランスが崩れるため体を支える支柱などが必要であるが、履くことはできる。
家庭では立って履くように言われている。本人は椅子に座ったり床に座った姿勢で履くことがほとんど。立位で履くよう促しても座りたがることが多いが、座って履くよう促すと「立って履ける」と言うこともある。
・靴を履いている方が安全で動きやすいことは自覚している。
・授業中は上靴を履くことを担任と約束している。
・上靴以外の靴でもかかとを踏むが、新品の靴やお出かけ用の革靴はかかとを踏むことが少ない。
・靴を履く手順は理解できてる。
・手先が不器用だが靴を履くための技能的な問題は少ない。
・靴を履くよう指示されることは好きではない。「後で履く。」「靴がきつい。」「なんで履けんのんかな。」「もういい。」などの発言が見られる。
・教員の指示がなくとも自分で上靴を履ける場面もある。
・着替え後は更衣室から教室まで靴を踏んで歩く。教室までたどりついてからア,自分で履く、イ,教員の指示に応じて履く、ウ,教員の指示があっても踏んだまま、エ,教員の指示がなく踏んだままのいずれかのパターン。
・靴を踏んでいるため、体のバランスを崩し転びそうになることがある。
・靴以外の原因により、気持ちが不安定になった時でも、靴を投げたり、靴や靴ひもを気にしていじり授業が受けられないことがある。
問題の推定原因[HELP]1,更衣室に靴を履くための椅子がないから立ったまま履くのはめんどう。
2,手に着替え後の服を持っているから靴を履けない。
3,上靴を履く必要性を感じていないから。
4,上靴を履いても教員からほめられないから。
5,かかとを踏んでいても教員から注意されないから。
6,かかとを踏むと早く更衣室から出られ教員や友達と関われるから。
7,かかとを踏むと次の活動へ早く進めるから。(上靴をはくと着替え時間が長くなるから。)
8,ひも靴+踏み癖ありの靴は靴を履くのに時間がかかるから。
想定される解決策[HELP]1,更衣室内に椅子を置き、そこに座って靴を履くよう伝える。
2,更衣室内に着替え置き場(ハンガーかけ)を設置する。
3,上靴を履く理由を説明する。
4,5,かかとを踏まずに履けた時は賞賛する。トークンエコノミーシステムを用い、履けた時にポイントをゲットできるようにする。
6,上靴をはいて出てきた時のみ教員が過度に関わり賞賛する。
7,スリッポン靴かスリッパにかえる。(靴をはくのにかかる時間の短縮)
8,スリッポン靴かスリッパにかえる。(靴をはくのにかかる時間の短縮)
選択した原因と解決策[HELP]1,3,4
般化を狙う場面[HELP]登下校の着替え後以外の学校生活
 ・登校時、玄関にて
 ・昼食後、玄関にて

就業体験先
 ・上靴を履く場面
指導場面[HELP]・登校時の着替えの後
・下校時の着替えの後
指導手続き[HELP]<ベースライン>
1,教員は、更衣室出口が見える場所(5メートルくらい離れた場所)で待つ。
2,靴を履かずに更衣室から出てきた場合、「更衣室で靴を履いてください。」と1回言葉かけ。

<介入1>
1,靴履き用の椅子を更衣室に据え置く。
2,介入開始日、登下校の着替え前に、「更衣室内に椅子があることを伝える。」「文化祭までの目標を更衣室で上靴を履くことにする。」と確認する。
3,登下校の着替え前に目標を伝える。
4,更衣室出口の扉に「くつをはきましょう(絵と文字)」の張り紙をする。
5,教員は、更衣室出口が見える場所(5メートルくらい離れた場所)で待つ。
6,靴を履かずに更衣室から出てきた場合、「更衣室の中で靴を履いてきてくださいね。」と1回言葉かけ。
7,履き直せずに教員を通り過ぎた場合、更衣室まで戻り、更衣室内の椅子に座って履いてくるよう励ます。
8,プロンプトなしもしくは1回の言葉かけで履けたら大げさに褒める。
9,着替えをして更衣室を出てきた直後でなくとも、その日の指導担当教員でなくとも、登下校時に靴をはけている姿を見たら褒める。(指導者A)

<介入2 介入1で標的行動が生起しなかった場合に実施>
10,更衣室内に制服をかける用のハンガーを置く。

<介入3 介入1・2で標的行動が生起しなかった場合に実施>
11,トークンエコノミーシステムを用いる。
  ア、更衣室から出てきた時、かかとを踏まずに靴を履けている:3点
  イ、更衣室から出てきた時、かかとを踏んでいた場合
  ウ、教員が離れた場所から言葉かけ1回「更衣室の那賀で靴を履いてきてくださいね。」
    ・更衣室の中に入り履ける:2点
    ・その場で座り込んで履ける:1点
  エ、上記以外:0点
    ・教員が靴のかかとや靴ひもをいじり、履きやすくする。
    ・身体ガイダンスで更衣室内へ誘導する。
    ・靴をはき直さず教員を通り過ぎる。
  オ、更衣室前の廊下にトークン表を貼る。
  カ、得点に応じた色シールを自分で貼る。
  キ、1週間で約束したポイントをゲットできたら、CDゲット。
利用可能な好子[HELP]ほめ言葉「すごい。」,スペシャルシール,CD
教材教具など[HELP]スペシャルシール,トークン表,CD,「靴を履きましょう」の張り紙,いす
記録の取り方[HELP]1.更衣室から出てきた時、かかとを踏まずに靴を履けている:3点
2.更衣室から出てきた時、かかとを踏んでいた場合
   ア、教員が離れた場所から言葉かけ1回
     「更衣室の中で靴を履いてきてくださいね。」
    ・更衣室の中に入り履ける:2点
    ・その場で履ける:1点
3.上記以外:0点
   ア、教員が靴のかかとや靴ひもをいじり、履きやすくする。
   イ、身体ガイダンスで更衣室内へ誘導する。
   ウ、靴をはき直さず教員を通り過ぎる。    
指導期間と達成基準[HELP]<指導期間1>
ベースライン:10月29日〜11月2日  5日間
介入1   :11月6日〜22日    13日間
介入2   :実施せず
介入3   :実施せず
<達成基準>
2週間で1点以上が70%を占めたら達成
結果[HELP]1,ベースライン:5日間で9回の指導場面があった。1点を獲得したのは1回、2点を獲得できることはなかった。
2,介入1:13日間で18回の指導場面があった。1点を獲得したのは5回、2点を獲得したのは8回であった。1点以上の獲得率は72%。
3,介入1:朝の着替え後は指導場面10回。1点以上を獲得したのは90%。
4,介入1:帰りの着替え後は指導場面8回。1点以上を獲得したのは50%。
5,達成基準を満たすことができた。
6,登校時が下校時に比べて、1点以上の獲得率が高い。
7,下校時は、達成基準に達することができなかった。
考察[HELP]指導場面や指導場面以外で、教師が靴を履くよう言葉かけをした場合、以前は「めんどくさい。」「あとで。」などと返答し靴のかかとを踏んだままやりすごしていたが、その行動が減った。そのかわりに、教師の言葉かけに対して「わかっとうよ。」「はけるもん。」「ほこで履くわ。」などの返答が増え、かかとを入れ直して履ける場面が増えた。
このことより、「1場面における指導がその他の場面への般化を促した」「本人にとって苦手としていた靴履きが少なからずめんどうなものでなくなり、靴を履くことへの自信となった」のではないかと考える。

減らしたい行動 Before
A:先行条件 B:行動 C:結果
着替えの後
上靴を履く約束なし
ひも靴
かかとに踏み跡あり
上靴のかかとを踏む 教員からの注意なし(↑)
朝の会までに履けば教員からの賞賛あり(↑)

減らしたい行動 After
A:先行条件 B:行動 C:結果
着替えの後
上靴を履く約束あり
ひも靴
かかとに踏み跡あり
トークンの説明あり
上靴のかかとを踏む ダメシール(↓)
教員からの注意あり(↓)

増やしたい行動 Before
A:先行条件 B:行動 C:結果
着替えの後
手に着替え後の衣服あり
ひも靴
かかとに踏み跡あり
更衣室に椅子なし
上靴を履く約束なし
上靴のかかとを踏まずに履く めんどう(↓)
床に座り込む必要あり(↓)
教員からのほめ言葉なし(↓)

増やしたい行動 After
A:先行条件 B:行動 C:結果
着替えの後
ひも靴
かかとに踏み跡あり
更衣室にハンガーあり
更衣室に椅子あり
上靴を履く約束あり
上靴のかかとを踏まずに履く スペシャルシールゲット(やがてCDゲット)(↑)
教員からのほめ言葉あり(↑)
床に座り込む必要なし(椅子に座ってはける)(−)



FILE 54_32_3.xls

データとグラフ:第一系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
データとグラフ:第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2007/10/09/15:00:34

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