200803



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事例担当者のイニシャル[HELP]CT、NS(担任2名)
事例研究のタイトル[HELP]小学部低学年の知的障害児に対する、朝の会で係活動をしながら他児を叩かずに参加することができるための支援
事例の概要[HELP] 本児は朝の会や帰りの会、集団での学習、休み時間等において他児を叩く行動がみられる。朝の会においては、することがないときに他児を叩く行動がみられることが多い。そこで、朝の会において本児がやりがいを持って活動できる係活動を設定し、他児を叩くという不適切な行動ではなく、係活動という適切な行動をしながら朝の会に参加できることを目指したいと考えた。
対象児のプロフィール[HELP]Tくん。小学部1年生男子。知的障害。
新版K式発達検査1歳9ヶ月(H20.7.7)

・限られた場面や慣れた人に対してであれば、単語や二語文で要求を伝えたり、簡単な会話をすることができる。
・実物と写真カードのマッチングができる。また、他児に興味があり、他児本人と顔写真カードのマッチングや顔写真カードを見て名前を言うこともできる。
・他児と関わることが好きであるが、適切に関わることが難しく、叩く行動がみられる。
長期目標[HELP]朝の会や生活単元学習などの小集団の活動において、係活動をしながら、他児を叩かずに参加することができる。
短期目標[HELP]朝の会で、3種類程度の係活動をしながら、他児を叩かずに参加することができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]朝の会の呼名の順番を決めるときに、4枚の顔写真カードの中から1枚を選択し、1.5メートル程度離れたところにあるホワイトボードに貼ることができる。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]朝の会の呼名時に、他児を叩く。
標的行動を取り上げる意義[HELP] 本児は朝の会においてすることがないときに、他児を叩く行動に出ることが多い。そこで、朝の会において本児が行う係(時間割カードを貼る係)を設定し、することがない時間を少なくした。その場面での叩く回数は減ったが、呼名の場面等で叩く行動がまだみられることから、呼名時に係活動を設定することで叩く行動の減少を目指したいと考え、この標的行動を設定した。
 本児は、「カードを1枚選ぶ」ことや「選んだカードをボードに貼る」こと、「他児本人と顔写真カードのマッチング」ができる。また、他児の顔写真カードが好きで、顔写真カードを見ながら他児の名前(愛称)を言うこともできる。このような実態から、この標的行動は本児にとって、興味を持って取り組むことができ、やりがいのある係活動となると思われる。クラスの中で、本児がやりがいを持って取り組むことができる係活動を設定することで、満足感を得たり、自信を持ったりすることが期待できる。このことを通して、不適切な行動を減らし、活動への適切な参加の仕方を身につけてほしいと考えた。
問題の推定原因[HELP]1、朝の会ですることがない
2、教員への注目の要求
3、パターンになっている
想定される解決策[HELP]1、朝の会の呼名の順番を決めるときに、4枚の顔写真カードの中から1枚を選択し、ホワイトボードに貼るという係活動を設定する。
2、適切なコミュニケーション手段を身につけることで、注目の要求を満たす。
3、パターンを崩す。
選択した原因と解決策[HELP]推定原因:朝の会ですることがない
解決策:朝の会の呼名の順番を決めるときに、4枚の顔写真カードの中から1枚を選択し、ホワイトボードに貼るという係活動を設定する。
般化を狙う場面[HELP]生活単元学習の授業、体育の授業
指導場面[HELP]朝の会
指導手続き[HELP]STEP1:朝の会の呼名の順番を決めるときに、4枚の顔写真カードの中から1枚を選択し、すく側にある(50センチ程度離れたところにある)ホワイトボードに貼ることができる。

1、朝の会の呼名時に教員1が「誰にする?」と言いながら、4枚の顔写真カードが貼ってあるボードを本児の目の前で提示する。
2、4枚のカードから1枚を選択できるように、ことばかけや指さしで促す。徐々にプロンプトを減らす。
3、選択したカードをホワイトボードに貼ることができるように、ホワイトボードを本児のすぐそば(本児から50センチ程度離れたところ)まで持っていく。最初は後方から教員2が手を添え、貼る場所を伝える。5秒待ってもカードを選んで貼ることができないときには、指さしとことばかけのプロンプト→指さしのみのプロンプト→プロンプトなしの順序で徐々にプロンプトを減らして行く。
4、選んだカードをホワイトボードに貼ることができたら、「できたね」と言って賞賛する。
5、本児が選んだ児童をカードを指さしながら確認し、呼名する。
6、叩く行動がみられたときは、前に注目するように促す。それでもまだ叩く行動がみられたときは、本児を他児から離す。

STEP2:朝の会の呼名の順番を決めるときに、4枚の顔写真カードの中から1枚を選択し、1.5メートル程度離れたところにあるホワイトボードに貼ることができる。

1、2、4、5、6については、STEP1と同様。
3、選択したカードを本児から1.5メートル程度離れたところにあるホワイトボードに貼ることができるように、最初は後方から教員2が手を添え、貼る場所を伝える。5秒待ってもカードを選んで貼ることができないときには、指さしとことばかけのプロンプト→指さしのみのプロンプト→プロンプトなしの順序で徐々にプロンプトを減らしていく。
利用可能な好子[HELP]顔写真カード、教員の賞賛
教材教具など[HELP]顔写真カード、ホワイトボード
記録の取り方[HELP]プロンプトの種類を次のように点数化する。1回の朝の会で行ったプロンプトの種類と回数を記録する。
・ガイダンスとことばかけ・・・3点
・指さしとことばかけ・・・・・2点
・指さしのみ・・・・・・・・・1点
・プロンプトなし・・・・・・・0点


1回の朝の会において、次の2つの行動で必要だったプロンプトの種類と合計点数を記録する。
1回の朝の会において呼名は4回あるので、その4回におけるプロンプトの合計点数をグラフ化する。
・カードをえらぶ
・カードを貼る

また、叩く行動の生起回数についても記録する。
指導期間と達成基準[HELP]指導期間:STEP1・・・2008年12月1日〜12月5日
     STEP2・・・2008年12月8日〜12月11日
 
達成基準:プロンプトなしの日が3日連続したとき達成とする。
結果[HELP]STEP1:指導1日目の呼名1回目においては、選んだり貼ったりする活動を本児に説明することが必要であったため、指さしやことばかけの支援が必要であった。本児は支援を受けながらも写真カードに注目し興味を持って活動することができた。また、本児にとって貼る位置が分かりにくかったようで、ホワイトボードの下にある箱に入れようとすることが多かった。指導2日目からは、選ぶ活動においてはプロンプトなしでできるようになった。しかしホワイトボードに貼る活動では、やはり箱に入れようとすることが多く、教員がそれを制止してホワイトボードに貼るように指さしで促すと、怒ってカードを捨てたり、他児を叩こうとすることがみられた。そのため、3日目からは箱を外すことにした。指導3日目からは、選ぶ活動・貼る活動において全くプロンプトなしでできるようになり、指導5日目に達成した。

STEP2:指導1日目に貼る場所が分からない様子だったため、指さしの支援を行った。2日目以降は自分で場所を確認し、貼ることができるようになり、指導4日目で達成した。

係活動が本児にとって分かりやすい活動であったため、短期間で達成できたものと考えられる。

考察[HELP] この実践を通して、他児を叩く行動については、STEP1では指導2日目に2回(原因は自分は箱にカードを入れたかったのを教員に制止されたため)、指導4日目に1回(原因は自分が一番に選んだ児童がその順番に対して拒否したため)みられたが、その他は0回であった。STEP2においては、叩く行動は全くみられなかった。指導前は多いときには10数回みられたことと比べると、指導後は激減したといえる。指導を通して、朝の会で自分のするべき活動ができ、活動に集中できるようになったことで、呼名時の待ち時間に注意が逸れることがなくなり、他児を叩くことが激減したと考えられる。
 また、指導前の本児の様子と比べると、「始まりの歌や呼名時の歌を自分から歌うことができるようになった。」「呼名時に自分から他児の名前を大きな声で呼ぶことができるようになった。」「活動している他児に注目し、『まる』と言って他児を褒める姿がみられるようになった。」「活動中に『なまえ』『おしまい』、時間割の名称など、よくことばが出るようになったり(発音は不明瞭であるが)、身振りや挨拶の礼などができるようになった。」「自分の名前カードを貼るとき、停滞することがなくなり、スムーズに貼ることができるようになった。」などの行動がみられるようになった。係活動を設定することにより、朝の会に満足感を持ちながら参加できるようになり、そのことを通して叩く行動の減少だけでなく、朝の会の他の活動においても意欲的に活動する姿がみられるようになったと考えられる。
 今後の課題としては、朝の会が始まるまでの待ち時間が長すぎるとまだ叩く行動がみられることがあるので、待ち時間の間に他の係活動を設定することが必要であると考えている。また、大集団の活動でもまだ叩く行動がみられるときがあるため、他の授業における般化も目指したい。今後も本児がやりがいを持って活動できる場面を設定していくことで、不適切な行動を軽減し、社会的に適切な行動を身につけて集団活動に満足感を持ちながら参加できるように支援していきたいと考える。

叩く行動がみられるとき
A:先行条件 B:行動 C:結果
朝の会
呼名時
することがない
他児を叩く 他児の反応がある(↑)
手ぶち無沙汰が解消される(↑)

指導場面
A:先行条件 B:行動 C:結果
朝の会
呼名時
4枚の顔写真カードあり
顔写真カードを1枚を選択し、ホワイトボードに貼る 教員にほめられる(↑)
手持ち無沙汰が解消される(↑)


データとグラフ:第一系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
データとグラフ:第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2008/11/13/19:59:24

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