200804



[TOP]  [検索


事例担当者のイニシャル[HELP]K.K.N
事例研究のタイトル[HELP]小学部低学年の自閉症児に対する活動後トランジッションカードを受け取り、遊びカードを取ることができるための支援
事例の概要[HELP] Bさんは写真によるスケジュールを使用している。
朝の着替えから給食までの半日スケジュールの提示をしていたが、次のカードではなく、二枚目三枚目のカードをはずしたり、カードを取ることに指差しや言葉がけ等のプロンプトが必要な状態であった。
9月より活動・遊びの二枚のスケジュール提示に変更したところ、スケジュールカードを上から自主的に取ることが増えた。
記録を付けてみるとスケジュールの一枚目のカードは自主的に取ることができるが、二枚目のカード(遊びカード)を取らずに広場や中庭等の自分の好きな場所に行ってしまうことが多いことがわかった。
トランジッションカードを受け取り、スケジュールカードの上から順番にはずす行動の定着を図ることをねらってこの実践を進めることにした。
対象児のプロフィール[HELP]小学部2年 男児 Bさん 自閉症
PEP-R:1歳5ヶ月(平成19年8月30日)
指導者の役割と人数[HELP]3人
長期目標[HELP]スケジュールカードを上から下へ順番にはずすことができる。
短期目標[HELP]活動後、トランジッションカードを受け取り、トランジッションエリアに戻り、遊びカードを取ることができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]活動後トランジッションカードを受け取り、スケジュールに戻り、遊びのカードを取る。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]活動後スケジュールに戻らずに広場や中庭で遊ぶ。
事例に関する情報[HELP]   PEP-R発達検査結果:1歳5ヶ月(H19.8)
問題の推定原因[HELP]<ベースライン> 
 ベースラインでの正反応率は0パーセントであった。「遊び」の終わりには,次の活動を促すためトランジッションカードを手渡していたが,活動終了後の「遊び」に移る時にはトランジッションカードを使用していなかった。Bさんは活動が終わると「遊び」であることが解っているため,「遊び」のスケジュールカードを取らず,そのまま行きたい場所に行くことが多かった。   「遊び」のスケジュールカードがpcsカード(絵カード)で あったため,写真カード中心のスケジュールを使っているBさんにとっては意味のわかりにくいカードとなっているのではないかということも考えられた。
般化を狙う場面[HELP]課題の場面でのワークシステムの使用。
指導場面[HELP]すべての休み時間
指導手続き[HELP]指導1 1 教員はBさんに活動後にトランジッションカードを渡す。
    2 教員はBさんがトランジッションカードを持ちトランジッションエリアまで帰ることができるように(逸脱しないように)Bさんの横を歩く。
    3 トランジッションエリアに帰り、次の活動のカードを取るようにプロンプトを出す。(指さ し・ことばかけ・身体的ガイダンス)
    4 遊びカードを取ることができたら、遊びの選択ボードを渡す。
指導2 1 教員はBさんに活動後にトランジッションカードを渡す。
    2 教員はBさんがトランジッションカードを持ちトランジッションエリアまで帰ることができるように(逸脱しないように)Bさんの横を歩く。
    3 トランジッションエリアに帰り、3秒経ってもカードを取らない場合はプロンプトを出す。(指さし・ことばかけ・身体的ガイダンス)
 指導1を10日間行う。11日目は指導2に移行する。
 指導2でプロンプトが必要な場面が3回続けば、指導1に戻り、エラーレス指導を5日間行う。

教材教具など[HELP]トランジッションカード、スケジュールボード、遊びカード
記録の取り方[HELP]ベースライン4日間
正反応:自発的に遊びカードを取ることができた。
誤反応:プロンプトにより、カードを取ることができた。
指導期間と達成基準[HELP]指導期間:11月17日〜

達成基準:3日間でプロンプト無しで遊びカードを取ることができた総計の成功率が90%になれば達成とする。
結果[HELP]<指導1> 
 エラーレス指導は10日間行った。教員の見守りの中で「遊び」カードを自主的に取れることが多くなってきた。それと同時に,pcsカードの「遊び」がBさんにとっての「遊び」と結びつき「遊び行くか」(遊びに行きます)と言いながら「遊び」カードを取る場面も見られるようになった。

<指導2>(教員との距離0・5m、プロンプトを出す時間3秒)
 5日間で達成した。5日間という短期間で達成したのは,活動後にもトランジッションカードを手渡すことで、次にするべき行動が明確となり、自分の行動が整理されたためにスムーズに目標を達成したのではないかと考えられる。また、0・5mという距離にいる教員の視線が気づかない内にプロンプトとなっていたことも考えられる。

<指導2>(教員との距離1m、プロンプトを出す時間5秒)
 10日目で達成した。教員の場所が離れ,プロンプト(視線)が少なくなったため,前半の正反応率は低下したのではないかと考えられる。誤反応の時はトランジッションカードを手渡すところまで戻りやり直すことを繰り返し行った。5日目で正反応率が100%となる日が2日続いた。この頃から遊びカードを取り,遊びに行くという行動がルーティン化されたと思われる。


考察[HELP] 今回の実践を通して,活動後トランジッションカードを受け取り,トランジッションエリアに行き,「遊び」カードを取るという一連の行動が身につき,活動終了後スムーズに遊び場所に行くことができるようになった。活動後にトランジッションカードを渡してスケジュールの確認をする機会を設定したことで行動を整理することができたのではと考えられる。また指導開始から10日間のエラーレスでの指導が,標的行動を一連の行動の流れとして理解するのに有効であったと感じている。
 Bさんは,要求が満たされない,生理的要因等が原因となり情緒が不安定になることがある。情緒面での不安定さがみられた日は顕著に行動面にも表れ,その日の正反応率は下がっている。このことから標的行動に着眼しつつ,Bさんの体調面、情緒面、コミュニケーションスキルやその他,Bさんを取り巻く様々な要因を考えた指導支援を行っていかなければいけないことを改めて実感した。
 「遊び」カードを取ることができるようになり,現在Bさんは日常生活全般においても絵カードや写真カードへの興味関心が高まり、本や絵カードを眺めて過ごす時間が増えてきた。今後はスケジュールを2枚提示から4枚提示へと増やし,長期目標であるスケジュールを上から順番に取る、般化場面である課題学習でのワークシステム使用への指導へと継続していきたいと考えている。  

指導前
A:先行条件 B:行動 C:結果
活動後
トランジッションカードが無い
教員からのことばかけが無い
「遊び」カードを取らずにそのまま遊びに行く  好きな遊びができる(↑)

指導指導後 指導後
A:先行条件 B:行動 C:結果
活動後
トランジッションカードが手渡される
トランジッションエリアにもどらずに,そのまま遊びに行く
トランジッションエリアに帰り「遊び」カードを取る
教員に遊びに行くのを止められる(↓)▼
好きな遊びを選んで遊びに行くことができる(↑)


図1 遊びカードが取れる
記入日時 2008/11/11/16:02:15

現行ログ/ [1]
++徳島ABA研究会++

++マニュアル++
TOP
shiromuku(h)DATA version 4.00