200809



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事例担当者のイニシャル[HELP]M.K
事例研究のタイトル[HELP]目覚まし時計の音を手がかりに,自発的に遊びを終え教室に戻るための支援
事例の概要[HELP]休み時間は,おもに遊びのスペースで特定の遊びを楽しむことが多い。特定の遊びができない時は,遊びのスペースをうろうろしたり教員の誘いで別の遊具で遊んだりしている。ビデオを見ることも好きで,自分のクラス以外の教室に行ってビデオを見せてもらうこともよくある。遊びの終了は,教員の「あそびおしまい」のことばかけやクラスの友だちが遊びが終わる時刻を教員に知らせるのを聞いて行っている。遊びのスペースで遊んでいるときは,教員のことばかけですぐ遊びを終えることができるが,ビデオを見ているときは,夢中になるため教員のことばかけがあっても,すぐにその場から離れることができないこともある。本児は,時計をよむことはできるため,4月から腕時計をつけ,自分で時計を見て遊びを終えるように指導したが,時計を見る習慣もなく,遊びに夢中になり自主的に遊びを終えることはできなかった。
対象児のプロフィール[HELP]小学部5年生,女児,自閉症
PEP−R 4.1歳 (平成20年)
 模倣-3歳,知覚-5.4歳,微細運動-6歳,粗大運動-5歳,眼と手の供応-5歳,
 言語理解-3.6歳,言語表出-3.11歳
指導者の役割と人数[HELP]学級担任2名
長期目標[HELP]休み時間,目覚まし時計の音で自発的に遊びを終え,スケジュールを確認することができる。
短期目標[HELP]休み時間,ビデオ以外で遊んでいるときに、目覚まし時計の音で自発的に遊びを終え,教室に向かうことができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]朝の休み時間、目覚まし時計が鳴ると自発的に遊びを終え,教室に向かう。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]目覚まし時計が鳴っても,遊びを続ける。
標的行動を取り上げる意義[HELP]時計を見て活動の終わりが分かり,自主的に次の活動に移れることは,将来自立した生活を送る上でたいへん重要なスキルである。本児は,聞かれたら時刻を答えることはできるが,自分から時計を見ることはない。また,教員の指示があるとその通りの行動を起こすことができるが,自分から行動を起こすことは少ない。そこで,音を手がかりに,自分で行動を切り替える練習をすることで,将来、見通しを持って主体的に行動できる力を育てたいと考え本テーマを設定した。
事例に関する情報[HELP]・遊びの時間は,一日4〜6回ある。
・1回の遊びの時間は,昼休みや前の活動が早く終わったときなどは20〜30分程度ある。通常の休み時間は10分程度である。
・遊びの種類は,ブランコ・ビデオ・バスやスクーターボードに乗る・シャボン玉などで,特にビデオを好む。
・苦手な児童が数人いて,その児童が近くにいると好きな遊びをしていても自分から逃げていく。
・文字によるスケジュールを理解し,スケジュールに従って行動することができる。
・自分の要求(したい遊びや欲しいもの,いやなこと)をことばや態度で教員に伝えようとする場面は少ない。
・人から指示されて行動することが多い。
・目覚まし時計の音が大きいときは気がついている。
・目覚まし時計が鳴っても,無視したり自分で止めたりして,平気で遊びを続けようとしている。
問題の推定原因[HELP]原因1.もっと遊びたい。
原因2.ビデオがまだ続いている。
原因3.先生や友だちのことばかけがない。
原因4.目覚まし時計が鳴ったら途中でも今している活動を終えなければならないことが理解できていない。
原因5.嫌いな子がいるから動けない。
原因6.目覚まし時計は鳴っても止めると音がしなくなる。
原因7.遊びの後の活動に魅力がない。
原因8.まだ遊んでいる子がいる。
想定される解決策[HELP]解決策1.次に遊べる時間をスケジュールで知らせる。
解決策2.ビデオを止め、テレビのスイッチを切る。
解決策3.目覚まし時計の音を聞いて行動するように教える。
解決策4.目覚まし時計が鳴ったら今している活動を途中でもすぐに終える練習をする。
解決策5.嫌いな子と本児の間に教員が立ち,動きやすくする。
解決策6.目覚まし時計を止めることができないようにする。
解決策7.遊びの後にビデオを見る時間を作る。
解決策8.自分のスケジュールを見るように知らせる。
選択した原因と解決策[HELP]原因3.先生や友だちのことばかけがない。
解決策3.目覚まし時計の音を聞いて行動するように教える。
原因6.目覚まし時計は鳴っても止めると音がしなくなる。
解決策6.目覚まし時計を止めることができないようにする。
原因7.遊びの後の活動に魅力がない。
解決策7.遊びの後にビデオを見る時間を作る。



般化を狙う場面[HELP]全ての休み時間。教員がそばにいないとき。
指導場面[HELP]朝の着替えの後、わくわく広場での遊びの時間
指導手続き[HELP]指導1(担任がそばにいるとき)
1.遊びに行く前にスケジュールを確認し、「あそび」の時間はわくわく広場で遊ぶこと、「あそび」の次の活動は「ビデオをみる」であると伝える。
2.目覚まし時計が鳴るまで教員がそばで一緒に遊ぶ。
3.目覚まし時計が鳴っても、5秒以内にAさんが時計を見ないときは、時計を指さし鳴っていることに気づかせる。
4.目覚まし時計の音に気づいても5秒以内に遊びを終えようとしないときは、「時計が鳴ったら・・・」とことばかけを行う。
5.5秒待っても遊びを終えようとしないときは、「あそびおしまい」と伝える。

指導2(担任が3m以上離れた場所にいるとき)
1.遊びに行く前にスケジュールを確認し、「あそび」の時間はわくわく広場で遊ぶこと、「あそび」の次の活動は「ビデオをみる」であると伝える。
2.目覚まし時計が鳴る前に、教員はAさんのそばから離れる。
3.目覚まし時計が鳴っても、5秒以内にAさんが時計を見ないときはAさんに近づき、時計を指さして鳴っていることに気づかせる。
4.目覚まし時計の音に気づいても5秒以内に遊びを終えようとしないときは、「時計が鳴ったら・・・」とことばかけを行う。
5.5秒待っても遊びを終えようとしないときは、「あそびおしまい」と伝える。

指導3(担任がわくわく広場にいないとき)
1.遊びに行く前にスケジュールを確認し、「あそび」の時間はわくわく広場で遊ぶこと、「あそび」の次の活動は「ビデオをみる」であると伝える。
2.Aさんがわくわく広場にいることを確認したら、教員はわくわく広場から離れる。
3.目覚まし時計が鳴る時刻が来てもAさんが帰ってこないときは、Aさんのそばに行く。
4.Aさんが時計に気づいていないときは、時計を指さして鳴っていることに気づかせる。
5.目覚まし時計の音に気づいても5秒以内に遊びを終えようとしないときは、「時計が鳴ったら・・・」とことばかけを行う。
6.5秒待っても遊びを終えようとしないときは、「あそびおしまい」と伝える。


利用可能な好子[HELP]・ビデオ
・ほめことば「時計の音で帰ってこれてえらいね。」「まるです。」など

教材教具など[HELP]デジタルの目覚まし時計、
記録の取り方[HELP]1.目覚まし時計が鳴ったとき,自ら遊びを終え教室に向かおうとする:4点
2.目覚まし時計が鳴ったとき,教員の目覚まし時計への指さしを見て,自ら遊びを終え教室に向かおうとする:3点
3.目覚まし時計が鳴ったとき,教員の「とけいがなったら・・・?」のことばかけを聞いて,自ら遊びを終え教室に向かおうとする:2点
4.目覚まし時計が鳴ったとき,教員の「あそびおしまい」のことばかけを聞いて,自ら遊びを終え教室に向かおうとする:1点
5.自ら遊びを終えることができない:0点

指導期間と達成基準[HELP]<指導期間>

ベースライン:11月5日〜11月12日(6試行)

指導1(担任がそばにいるとき):11月13日〜11月21日

指導2(担任が3m以上離れた場所にいるとき):11月22日〜12月1日

指導3(担任がわくわく広場にいないとき):12月2日〜12月12日 


<達成基準>

4点が連続で5日以上続いたら達成。
結果[HELP]




ベースライン期は、目覚まし時計がなっても教員の声かけがないと遊びを終えることができなかった。指導1では、指導開始の次の日から欠席日を除いて5日連続で正反応がみられた。指導2でも5日連続で正反応が見られた。指導3では、時計が鳴ったことに気づかなかった日が1日あったが、その日以降は5日連続で正反応が見られ短期目標を達成することができた。
考察[HELP] ビデオ以外の遊びをしているときは、目覚まし時計の音を手がかりにすることで、自主的に遊びを終え教室にもどることができた。
 指導開始日以降、順調に目標を達成できたのは、目覚まし時計を本児が操作できないようにしたことや音が通常遊んでいるときには聞きのがすことがないくらい大きかったこと、さらには、本児にとって、わくわく広場で遊具を使って遊ぶより格段に魅力的なものであるビデオを好子に使ったことが影響していると考えられる。
 指導開始日から徐々に担任の場所を遠ざけていったことで、目覚まし時計がなったら教室にもどるという行動が定着し、担任がそばにいなくても自主的に教室にもどることができるようになった。しかし、わくわく広場が特別さわがしかった時や別の教員と夢中で遊んでいるときは時計の音に気づかないこともあり、今後も継続して指導していくことが必要である。
 また、目覚まし時計のような大きな音は日常生活ではまれであることから、日常生活にも般化できるようにするために、通常のタイマー音でも行動の切りかえができるよう考えていきたい。

指導前(減らしたい行動)
A:先行条件 B:行動 C:結果
わくわく広場や他の教室
朝の遊びの時間(遊具で遊んでいるとき)
朝の遊びの時間(友だちとビデオを見ているとき)
目覚まし時計が鳴る
先生がそばにいる
遊びの途中
次のスケジュールは朝の会
目覚まし時計が鳴っても遊びを続ける 教員の「あそびおしまい」のことばかけがある(↑)
好きな遊びを続けられる(↑)
友だちと好きなビデオを見続けることができる(↑)
目覚まし時計が鳴り続ける(↓)



指導前(望ましい行動)
A:先行条件 B:行動 C:結果
わくわく広場や他の教室
朝の遊びの時間(遊具で遊んでいるとき)
朝の遊びの時間(友だちとビデオを見ているとき)
目覚まし時計が鳴る
先生がそばにいる
遊びの途中
次のスケジュールは朝の会
目覚まし時計が鳴ったら遊びを終え、教室に向かう 目覚まし時計が鳴りやむ(↑)
教員のほめことば(↑)
朝の会をはじめられる(−)
遊具で遊び続けることができない(↓)
ビデオを見ることができない(↓)
友だちがいない(↓)

指導後(望ましい行動)
A:先行条件 B:行動 C:結果
わくわく広場
朝の遊びの時間(遊具で遊んでいるとき)
目覚まし時計が鳴る
先生がそばにいる
遊びの途中
次のスケジュールはビデオ
目覚まし時計が鳴ったら遊びを終え、教室に向かう 目覚まし時計が鳴りやむ(↑)
教員のほめことば(↑)
友だちとビデオを見ることができる(↑)
遊具で遊び続けることができない(↓)


指導後(減らしたい行動)
A:先行条件 B:行動 C:結果
わくわく広場
朝の遊びの時間(遊具で遊んでいるとき)
時計が鳴る
先生がそばにいる
遊びの途中
次のスケジュールはビデオ
目覚まし時計が鳴っても遊びを続ける 教員の「あそびおしまい」のことばかけがある(↑)
好きな遊びを続けられる(↑)
目覚まし時計が鳴り続ける(↓)
友だちと好きなビデオを見る時間が少なくなる(↓)
教員のほめことばなし(↓)


正反応が起こるまでに必要だったプロンプトの点数
記入日時 2008/11/06/19:05:07

現行ログ/ [1]
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