2005-01



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小学部低学年の知的障害児が遊びから次の活動への切り替えをスムーズに行うための支援
概 要
本児は、一日の活動の流れを理解できており、自分の好きな活動や自信の持てる活動には、意欲的に取り組むことができている。しかし、新しいことや苦手なことに対しては、逃避的で、姿勢を崩し、そのまま活動が止まってしまったり、乱暴なことば(独り言)を発したりする様子がみられる。好きな活動については、意欲的に取り組めるもののその活動をなかなか終えることができず、次の活動に移れないことも多い。そのため次の活動へスムーズに取り組めるよう、支援を考えた。Aさんは,一日の活動の流れを理解できており,自分の好きな活動や自信の持てる活動には,意欲的に取り組むことができている。しかし,新しいことや苦手なことに対しては,逃避的で,姿勢を崩し,そのまま活動が止まってしまったり,乱暴なことば(独り言)を発したりする様子がみられる。また好きな活動についても,意欲的には取り組めるもののその活動をなかなか終えることができず,次の活動に移れないことも多い。そのため次の活動へスムーズに取り組めるよう,支援を考えた。


対象児のプロフィール
Aさん 小学部1年生 女児 知的障害

諸検査結果
ITPA (言語学習能力診断検査)言語学習年齢2歳10ヶ月(H17.5実施)
新版K式発達検査2001 3歳1ヶ月(H17.5実施)

障害の特性
概念の形成や経験を応用することが難しい

指導者


長期目標
タイマーの音で、自発的に次の活動へ行動を切り替えることができる。

短期目標
遊び終了のタイマー音で、自発的に遊びを終え、教室へ戻り、着席することができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
帰りの会前の休み時間が終わるときに、遊び終了のタイマー音で、自発的に遊びを終え、教室へ戻り、着席することができる。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
 本児は、休み時間前に、教室でビデオを見て過ごすこともあるが、わくわく広場や玄関ホール、中庭などで自転車(三輪車)やブランコに乗ったり、砂場で砂遊びをしたりし、活動的に遊ぶことが多い。最近は、他のクラスの友だちとの関わりも増え、一緒に遊ぶことを楽しんでいる。現在、朝や帰りの着替え後、また5時間目前の昼休みの時間など休み時間が少し長くなった場合に、遊びが終われないことが多く、次の活動に移れなかったり、遅れてしまったりすることがみられる。朝の会では、係活動を行うことを楽しみにしているものの、自分の係活動の順番だけを意識して途中から朝の会へ参加する場面がみられる。また、教室入り口まで帰ってきても、入り口付近でうろうろして自分から席に着けないこともある。
 タイマーには、興味を持ち、タイマーを渡すとタイマーの動きを見つめていることも多いが、最近ではタイマーの使い方を覚え、タイマーが鳴っても、再び自分でスタートボタンを押し、遊びを続け、決められた時間に教室へ戻れないこともみられるようになってきた。そのため、教員のことばがけが必要であるが、教員のことばがけを待っている様子も伺える。
 そこで、遊び終了のタイマー音で自発的に遊びを終えて、次の活動へスムーズに取り組めるようこの目標を設定した。

般化場面
指導場面以外の休み時間終了時

指導場面
帰りの着替え後の休み時間終了から帰りの会開始までの場面

指導手続
<ベースライン>
従来使用しているタイマーを提示し、帰りの会開始までの時間を本児に伝え、本児がスタートボタンを押し、本児に渡す。
<指導方法1>
\x{2460}着替え終了後、帰りの会開始までの時間を本児に伝え、タイマーが鳴ったら帰りの会を始めることを教示し、タイマーの「スタート」ボタンを本児が押す。(タイマーを本児が操作できないようケースに入れる)
\x{2461}トークンエコノミーシステムを活用する。タイマーの音で自発的に遊びを終え、教室に戻り、帰りの会に初めから着席し、参加することができた場合のみ帰りの会終了後、トークン(青シール)を1個渡し、カレンダーに貼る。その週のカレンダーにシールをすべて貼ることができると「はなまる」を渡すようにする。

教材教具など
・タイマー
・タイマーケース
・タイマーケースを入れる肩下げ袋
・青シール
・「はなまる」
・シールを貼るカレンダー

達成基準
・点数評価(2点満点)で、2点が5日間続いたら達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
記録の取り方:ベースラインは、3日間記録する。
指導場面:帰りの着替え後の休み時間終了後帰りの会開始までの場面
・プロンプトなしに教室へ戻り、着席する:2点
・プロンプトなしに教室の入り口まで戻る:1点
・プロンプトあり:0点
般化場面:指導場面以外の休み時間終了時

指導期間
ベースライン 10月31日〜11月2日
指導方法1  11月7日〜12月21日

結果
【指導方法1】
 ベースラインを三日間記録した。ベースラインでは、普段使用しているタイマーを手渡したところ、一日目は教室へ戻り、着席することができたものの(正反応が出たものの)残り二日間は、タイマー音が鳴った後も遊び続け、戻ってくることができなかった(誤反応であった)。
 帰りの会開始前の休み時間にタイマーを渡し、遊び終了のタイマー音で、自発的に遊びを終え、教室へ戻り、着席することができるよう指導を開始したところ、指導開始から5日間で達成した。一日目から正反応が出、タイマー音で遊びを終え、教室へ戻り、着席し、帰りの会を始めることができた。タイマーが鳴るとすぐに教室へ戻ってきたり、友だちを誘って戻ってきたり、タイマーが鳴る15〜30秒前に教室へ戻り、「もう鳴りまーす」と教員へ伝え、着席することもみられた。その後も連続して五日間正反応が続き、達成した。達成後も教室へ戻り、着席し、帰りの会へ参加することができるようになった。(誤反応が出ることなく正反応が継続している。)

考察
 本児の好きな青色のタイマー、青色シール、「はなまる」が好子となり、強化につながったと思われる。タイマーが鳴り、教室へ戻ると活動の最後には好きなシールがもらえるという手続きが本児にとってわかりやすく、魅力的であったため、帰りの会に初めから参加することができ、タイマーの押し直しもなくなり、教室入り口付近でうろうろすることもなくなったと考えられる。

参考にした先行研究や事例など
コラボレーションプロジェクト2004 5−1:遊びから次の学習の始まりまでの切り替えを指導する

スタートボタンを再び押す(指導前)
A:先行条件 B:行動 C:結果
タイマーの音が鳴ったとき スタートボタンを再び押す ・先生が呼びに来てくれる(↑)
・遊びが続けられる(↑)

教室に戻る(指導後)
A:先行条件 B:行動 C:結果
タイマーの音が鳴ったとき 教室に戻る ・シールがもらえる(↑)
・先生にほめられる(↑)

スタートボタンを再び押す(指導後)
A:先行条件 B:行動 C:結果
タイマーの音が鳴ったとき スタートボタンを再び押す シールがもらえない(↓)


第一系列のタイトル: プロンプトの合計点数
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導方法1:帰りの会開始前の休み時間終了後、タイマー音で遊びを終え、着席できるまでの指導  
第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2005/09/21/19:32:47  No.22
記入者 Y.T  E-Mail

小学部低学年の知的障害児が遊びから次の活動への切り替えをスムーズに行うための支援
指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
帰りの会前や自立活動前の休み時間が終わるときに、遊び終了のタイマー音で、自発的に遊びを終え、教室へ戻り、着席し、次の活動を始めることができる。

指導場面
自立活動前の休み時間から自立活動開始までの場面
帰りの着替え後の休み時間終了から帰りの会開始までの場面

指導手続
<指導方法2>
\x{2460}着替え終了後、自立活動(帰りの会)開始までの時間を本児に伝えタイマーが鳴ったら次の活動を始めることを教示し、タイマーのスタートボタンを本児が押す。(タイマーを本児が操作できないようにケースに入れる。)
\x{2461}トークンエコノミーシステムを活用する。タイマーの音で自発的に遊びを終え、教室に戻り、着席し、次の活動を行い始めることができた場合のみ、それぞれの活動終了後にトークンとしてカレンダーに青色の●を付ける。2場面ともできた場合のみ青シールを1個渡し、貼る。その週のカレンダーに青シールを全て貼ることができると本児の好きな「はなまる」(または、青色大玉シール、青色の入ったキャラクターのシール)を渡すようにする。

達成基準
点数評価(4点満点)で、4点が5日間続いたら達成とする。行事などで指導場面が1場面であった場合については、本児に対しては達成としてシールを渡す。グラフは、帰りの会開始前の場面と自立活動開始前の場面を分けて記録する。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
指導場面:自立活動前の休み時間終了後、自立活動開始までの場面
帰りの着替え後の休み時間終了後、帰りの会開始までの場面
記録の取り方
・プロンプトなしに教室へ戻り、着席し、活動を始める:2点
・プロンプトなしに教室に戻り、着席する:1点
・プロンプトあり:0点

指導期間
指導方法2 11月14日〜12月21日

結果
遊びから次の活動への切り替えをスムーズに行うための支援として、帰りの会開始前の休み時間終了後の場面を継続して行うとともに、「指導方法2」では、般化場面として自立課題開始前の休み時間終了後の場面に焦点を当て、指導を行った。指導開始後、タイマー音で遊びを終了し、着席することについては、初日から正反応が続き、五日間で達成した。しかし、着席することはできたものの、挨拶をして次の活動(自立課題)を自発的に始めることについては、プロンプトを必要とする場面がみられた。トークン(青シール)を渡すタイミングを変更したところ10日後に達成した。
 帰りの会開始前の休み時間終了後の場面では、トークン(青シール)がなくても教室へ戻り、着席し、帰りの会に参加できることが定着してきた。

考察
 帰りの会開始前の休み時間終了後の場面で、トークン(青シール)がなくても教室へ戻り、着席し、帰りの会に参加できることが定着してきたことについては、行動しても好子(青シール)がないこともあり、次第にその行動が維持され、部分強化されてきたと思われる。
 タイマー音で遊びを終了し、着席することはできたものの、挨拶をして次の活動(自立課題)を自発的に始めることができなかった要因については、以下の3点が考えられた。一つ目は、帰りの会開始前の場面と同様に考え、場面の般化として指導を行ったものの、目標の中に、「遊びを終える」「着席する」「活動を始める」といういろいろな課題が含まれており、帰りの会に参加する場面と自立課題を始める場面とでは、「活動を始める」条件が異なっていたと考えられる。タイマー音を「活動を終える」「始める」の両方の役目として取り入れたが、本児にとっては「終える」ものであって「始める」ものではなかった。「活動を始める」にあたって、新しいことへの取り組みや苦手なものへの取り組みなど、少し負荷がかかり、本児が、がんばらなければいけないことが活動に含まれていた場合には、本児自身が安心できるような環境設定や手だてが必要であると推察された。
 二つ目の要因として、「活動を始める」ときの挨拶場面の状況が整っていなかったことが挙げられる。着席後、本児のすぐそばに立ち、挨拶を行うこともあれば、本児の近くにはいるものの他の子どもたちを支援しながら本児の挨拶を待つこともあった。本児は普段の生活の中でも教員への注意喚起の行動が多く、自分だけに教員の注意を向けて挨拶を行いたかったと考えられる。
 また、シールを渡す場面について一貫していなかったことも要因の一つに考えられる。初めは、自立活動終了後、渡していたが、そのため課題は最後まで遂行しているもののシールをもらえるときともらえないときがあり、どうしてシールをもらえるのかが本児にとってわかりにくかったと思われる。そこで挨拶直後に渡した方が効果的と考え、挨拶直後に渡すようにしたところ、次第に青シールが好子となり、行動が強化されてきたと考えられる。



次の活動を始める(指導前)
A:先行条件 B:行動 C:結果
タイマー音が鳴ったとき 教室へ戻り着席する 先生が側に来てくれる(↑)

次の活動を始める(指導後)
A:先行条件 B:行動 C:結果
タイマー音が鳴ったとき 教室へ戻り次の活動へ取り組む(あいさつをする) シールがもらえる(↑)
教員に褒められる(↑)

教室へ戻り着席する(指導後)
A:先行条件 B:行動 C:結果
タイマー音が鳴ったとき 教室へ戻り着席する シールがもらえない(↓)


第一系列のタイトル: プロンプトの合計点数
Intervention2: 指導手続き2  
第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2005/11/15/16:52:25  No.67
記入者 A  E-Mail

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