2004-03



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要求のスキル向上をめざして
概 要
本児は慣れない場所や活動への不安が強く、比較的大人に依存的な傾向のある児童である。遊びは感覚遊びが中心で遊びの種類も少ない。活動と活動の合間など、何をしていいかわからない時間などは大人(担任など)の指示がないと、物を放る、倒すなどの行為が頻繁に見られることもある。物を放る、倒すなどの活動は遊びの延長でもあり、現在は給食時間に液体を混ぜる行為を頻繁に行っている。その行為は、感覚自体を楽しんでいるときもあるが、伝えたい要求等をうまく伝えられずに混乱している状態で起こったり、大人の注目を引くために行っているときもある。本児は動きも速く、衝動的な部分があるので、次々に物を放る、倒す、器に入っている液体をひっくり返す等の行動がエスカレートすることがある。
 日頃の学校生活では、写真カードを直前に提示した形のスケジュールを手がかりに教室移動などを行うことができている。
 また、給食中や学習活動において、大人の援助が必要な場合は、クレーンハンドや具体物、必要なものがある方向に手を伸ばす等を行って要求を示すことができている。しかし、近くに大人がいない場合は、呼びに行くことまではせず、感覚遊び等の違う活動を行ってしまうことが多い。
 そこで本児が、援助が必要なときに確実に伝わる要求スキルを身につけることによって、どうしていいかわからないときや援助が必要なときに援助を得て、将来にわたって少しでも混乱やフラストレーションを軽減できるよう取り組んでいきたいと考えた。

対象児のプロフィール
Nくん:小学部2年生 男児 自閉症

諸検査結果
PEP−R発達検査結果 1歳5ヶ月(H15年12月実施)
SM社会能力検査 1歳8ヶ月(H16年2月実施)

障害の特性
感覚遊びが中心
文脈依存傾向
多動傾向
指示待ち傾向(依存タイプ)

指導者
T.A. 
N.A.

長期目標
援助が必要なときにカードを使って、大人に援助要求することができる。

短期目標
食事場面で、カードを使って「ふりかけ」や「おかわり」、「手伝って」を担任や家族に要求することができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
1.給食時間にご飯にふりかけをかけてほしいとき、「ふりかけ」カードを担任に渡して、要求することができる。

2.家庭での食事場面で、ご飯にふりかけをかけてほしいとき、「ふりかけ」カードをお母さんに渡して、要求することができる。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
偏食が強く、日常の給食は、ご飯、パンの皮、汁物、魚を中心に食事を摂っている。主食がパンのときは家庭よりご飯を持ってきている。ご飯を食べるときは、ふりかけがほぼ毎回必要であり、クレーンハンドや具体物を渡してふりかけを要求していた。2学期に入り、ふりかけの要求を「ふりかけ」カードを渡すことによって伝える学習を行っており、カードでの要求回数が増えてきている。

般化場面
(1)給食時間から家庭での食事場面へ
(2)「ふりかけ」→「おかわり」→「手伝って」

指導場面
給食時間にご飯を食べる場面

指導手続
ベースラインは3日間。「ふりかけ」カードを用意し、プロンプトなしでカードを渡して要求できた回数を記録する。ふりかけは10回分を一袋に入れて、なくなったら終わりとする。(ふりかけは10回分用意しておく。)
指導方法として、カードを使用して要求できなかったとき(クレーンハンドでの要求のとき)は、3秒間無視をして、その後指差しのプロンプトを出す。

教材教具など
「ふりかけ」カード、ふりかけ

達成基準
ベースライン後、指導を開始する。指導開始後、プロンプトなしで3日間連続して「ふりかけ」カードで80%以上要求できたら達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
自発的にカードで要求した場合を正反応(○)とし、その他の方法で要求した場合を誤反応(×)とする。それぞれの反応数を日ごとに記録していく。

指導期間
ベースライン 9月27日〜29日までの3日間
学校での介入 10月5日〜25日まで
家庭での般化 10月26日〜11月10日まで

結果
学校での介入 10月5日指導開始 19日達成
家庭での般化 10月26日指導開始 11月10日達成
指導開始当初、達成基準を5日間連続で100%カードで要求すると設定していたため、なかなか達成しなかったが、達成基準を3日間連続して80%と変更後は、すぐに達成基準に達した。
家庭での般化は、家庭ではふりかけご飯を毎日食べるということもなく、また途中ふりかけの種類に飽きが見られ要求が減少したことなども影響して、定着に少し時間を要したが、ふりかけの種類を変えたり増やしたりすることによって、要求が続くようになり達成基準に達した。

考察
カードを用いて要求するスキルの獲得として、「ふりかけ」カードでの要求に初めて取り組んだ。最初は、クレーンハンド等での誤反応もあったが、ふりかけの要求が高かったことや要求回数を増やすよう1回でかけるふりかけの量を少しにしたこともあり、比較的早くカードの使用は定着が見られた。
また、本児は文脈依存傾向の児童であり、家庭での般化は難しいと思ったが、要求という本児にとって好子が得られる行動であったためか、家庭でも比較的早くカードを使用することができた。

ふりかけの要求
A:先行条件 B:行動 C:結果
ふりかけがほしいとき (正)「ふりかけカード」を隣に座っている担任に渡す。

(誤)クレーンハンドや具体物でふりかけを要求する。
(正)ふりかけをふってもらえる
(誤)ふりかけをふってもらえない


第一系列のタイトル: カードで要求できた正反応数  Baseline: ベースライン Intervention1: 「ふりかけ」カード(学校) Intervention2: 家庭での般化 Intervention3: 「手伝って」カードとの併用 Intervention4:   第二系列のタイトル: 誤反応数Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 家庭での般化、「手伝って」カードとの併用 Intervention3:Intervention4:
記入日時 2006/02/21/15:21:32  No.182
記入者 管理者  E-Mail

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
1.給食時間におかわりがほしいとき、「おかわり」カードを担任に渡して、要求することができる。

2.家庭の食事時間におかわりがほしいとき、「おかわり」カードを渡して要求することができる。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
「ふりかけ」については、カードで要求することが定着してきつつある。現在、給食時間のおかわり要求は多く、ほぼ毎日1回〜7・8回程度クレーンハンドで要求している。直接おかわりをとりにいくことも稀にある。

般化場面
学校での「おかわり」カードが定着したら、家庭で同じような指導を行い、家庭での般化を行う。

指導場面
給食時間

指導手続
ベースラインは3日間。「おかわり」カードを用意し、プロンプトなしでカードを渡して要求できた回数を記録する。おかわりは本児専用のおかわりボックスに入れておき、なくなったら終わりとする。おかわりは1品3回までとし、1回の要求でもらえるおかわりは1皿とする。
指導方法として、カードを用意して要求できなかったときは(クレーンハンドでの要求のとき)、すぐに指差しのプロンプトを出す。

教材教具など
「おかわり」カード、おかわりボックス、おかわり

達成基準
ベースライン後指導を開始する。指導開始後、プロンプトなしで3日間連続して「おかわり」カードで80%以上要求できたら達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
「ふりかけ」と同じ

指導期間
ベースライン 11月1日〜4日までの3日間
学校での介入 11月8日〜12月4日まで
家庭での般化 12月6日〜12月16まで

結果
学校での介入 11月8日指導開始 17日達成
家庭での般化 12月6日指導開始 8日達成

考察
「ふりかけ」カードでの取り組みにより、カードで要求することは定着していたため、「おかわり」カードの機能を理解すると「おかわり」カードで要求することはすぐにできるようになった。しかし、1品につきおかわりは3回までとしていたので、好きなメニューのときはもっとほしいがカードで要求してももらえず、他児のおかわりをクレーンハンドで要求したり、直接とりに行ったりして誤反応が残った。
家庭での般化場面では「おかわり」カードをすぐに使用でき、おかわりの量も充分であったため、誤反応はなく3日間で達成基準に達した。
また、「おかわり」カードでの要求を通して、2種類の中からカードを選択して要求するスキルを身につけることもできた。しかし、おかわりの終わりを伝える方法などに課題があるため、おかわり要求の環境設定や方法には再検討の必要性を感じている。
また、カードを渡すときに視線を相手に向けるなど、さらに相手に要求を受け止めてもらいやすいように要求できるよう気をつけていきたいと思う。
今後は給食場面で「手伝ってください」カードを用いて援助要求できるよう取り組んでいきたいと思う。

おかわりの要求
A:先行条件 B:行動 C:結果
おかわりがほしいとき (正)「おかわり」カードを担任に渡す。
(誤)クレーンハンドや直接的行動でおかわりを要求する。
(正)おかわりがもらえる。
(誤)おかわりがもらえない。


第一系列のタイトル: カードで要求できた正反応数Baseline: ベースライン Intervention1: 「おかわり」カード(学校) Intervention2: 「おかわり」カード(家庭) Intervention3: 「手伝って」カードとの併用 Intervention4:  第二系列のタイトル: 誤反応数Baseline: ベースライン Intervention1: 「おかわり」カード(学校)、「おかわり」カード(家庭)、「手伝って」カードとの併用 Intervention2:Intervention3: Intervention4:
記入日時 2006/02/21/15:25:32  No.183
記入者 管理者  E-Mail

要求のスキル向上をめざして
指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
1.給食時間に援助が必要なときに「手伝ってください」カードを担任に渡して、要求することができる。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
牛乳やパンの袋などを開けてほしいとき、担任にクレーンハンドや具体物を渡して要求を示している。

般化場面
(1)給食時間から家庭での食事場面へ
(2)さらには学校での課題学習の場面へ般化していく。

指導手続
ベースラインは3日間。「手伝ってください」カードを用意し、プロンプトなしでカードを渡して要求できた回数を記録する。
指導方法として、カードを使用して要求できなかったときは3秒間無視をして、その後指差しのプロンプトを出す。

教材教具など
「手伝ってください」カード

達成基準
ベースライン後、指導を開始する。指導開始後、プロンプトなしで3日間連続して「手伝ってください」カードで要求できたら達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
NO.182 NO.183と同じ

指導期間
1月17日よりベースライン
その後、指導は1ヶ月行う。


第一系列のタイトル: Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4  第二系列のタイトル: Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4
記入日時 2006/02/21/15:29:20  No.184
記入者 管理者  E-Mail

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