概 要 |
昨年度より、給食のおかわりのときにPCSカードを差し出して要求をしている。給食のおかわりは、本児にとって要求の高いものである。今年度も初めからカードを使っておかわりがもらえていた。日常生活全般で要求行動が出るように、同じPCSカードを使って、作業の場面で1対1で指導を行う。そして、この要求行動を、他の場面に般化させたい。
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長期目標 |
幾つかの場面で、カードを使って要求をすることができる。
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短期目標 |
紙箱作業の場面で、手元の材料が尽きたときにカードを差し出して、「ください」と要求することができる。
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指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
標的行動:カードを差し出し、材料を要求する。 理由:作業場面で、材料がなくなったらカードを差し出すことで、「ください」と要求することができる。
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指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
穏やかな性格である。日常的に使う物は、音声でも絵や写真でも理解しているが、文字では理解していない。ただし、自分の名前は書くことができる。視写で平仮名を書くことができるが、意味を理解していない。数は大体20までを順に書くことができる。他者からの簡単なことばでの指示には従えるが、指示待ちの傾向がある。することを理解している行動でも、指示を待っていることがある。ことばは、例えばおしっこに行きたいときには、「こ」というように、単語の最初か最後の一言で表すことがあるが、そのような自発的な表出場面は少ない。 前年度より、給食の時間には早食い防止のためにおかずを半分に分けて食べている。タイマーをセットし、タイマーのベルが鳴ると、おかずの残りをPCSカードを差し出して要求している。中2に進級し、教室と担任が代わっても、4月の初回の給食の時からカードを使って要求ができている。 作業場面では、作業手順をすぐに理解して正確に折っている。作業量も伸びており、教師が付いていなくてもひとりで作業ができる生徒である。しかし、手元の材料が尽きると教師が声をかけてくれるのを待っている。また、ことばでの要求が難しいこともあり、個別の援助を必要とする。
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指導手続 |
・カードをあらかじめ生徒の机上に用意しておく。 ・指導者は席から離れて、材料置き場の前にいる。 ・生徒が自分でカードを出せないときには、次の順番で援助を行う。 1 目線と表情で、カードを出すように合図をする。 2 「カードを出す」と声をかける。 3 席まで行ってカードを指差す。
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教材教具など |
給食のときに使っている「PCSカード」
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達成基準 |
・1時間の授業のうち、 (指示なしでカードが出せた回数)÷(材料を要求しなければならない機会の数)×100=100% 達成率 ・達成率が、80%が2日連続で続く。
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記録の取り方(般化場面と指導場面) |
指導場面:「指示をして出した」(1目線と表情、2声かけ、3指さし)と「指示なしで出せた」の項目で記録をとる。
般化場面:同上
グラフ下 第一系列のタイトル: 紙箱作業(濃い線) Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 第二系列のタイトル: 日常生活(薄い線) Baseline: ベースライン generalization1: 般化場面1
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指導期間 |
指導場面:自立活動の指導(紙箱作業) 平成16年6月21日〜平成16年7月5日
般化場面:自立活動の指導(日常生活) 平成16年7月8日〜7月12日
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結果 |
指導場面:達成できた。
般化場面:日常生活 達成できなかった。
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考察 |
指導場面:紙箱作業 紙箱作業では、毎回決まった流れなので、本児にとっては、カードを出すと材料がもらえるというのが理解しやすかったため、早いうちに達成できたと考える。また、作業が好きであったのも達成できた要因であると思う。 般化場面:日常生活の指導 紙箱作業の場面では、カードを出すと材料がもらえ、好きな作業が継続できるという強い動機づけがある。しかし、日常生活場面のように構造化されない場面では、カードを出して要求を伝える行動がまだ形成されず、以前からの、周囲の者が彼の要求に気づくまで待つという姿勢のままであった。日常生活場面では、彼が給食以外に、強い動機を持つ場面が考えられない。そのため、人と場面を設定してカードと出せば要求が満たされるという関係を理解する指導が、さらに必要であると考えられる。
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参考にした先行研究や事例など |
メモ 達成率 指導場面:紙箱作業 6/14 33%, 6/16 60%, 6/23 80%, 7/5 80%,
般化場面:日常生活 7/8〜7/12 0%
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