2004-32



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ズボンの前後を正しくはく
概 要
ズボンの前後の確認が難しい本児に、前部分にマジックテープのついたマークを貼ることで前を確認してはき、一人で正しく着衣できるようにする。

対象児のプロフィール
T児.小2男児
自閉症

諸検査結果
PEP−R 1歳5ヶ月(平成15年3月)

障害の特性
身辺処理は自立している。しかし、身だしなみ、衣服の前後の確認は援助が必要である。スケジュールは絵・写真カードで理解することができる(一日四分割)。カードでの要求を習得しているが、拒否は身体表現が主である。好きな遊びは本・ビデオ・砂遊び・チップ遊び・絨毯や マットの感触遊び。

指導者
N.K

長期目標
衣服の前後を確認して一人で正しく着衣できる。

短期目標
学生服、体操服のズボンのマジックテープ部分に「スマイルマーク」を貼って、前後を正しく着衣し、着衣後にマークをはずす活動が一人でできる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
【標的行動】
 着替えの手順カードに提示された「スマイルマーク」をズボンに貼って、前後を正しく着衣し、着衣後にマークをはずす活動が一人でできる。

【選んだ理由】
 6月半ばより、ズボンにマジックテープを付け、その部分にスマイルマークをつけてからズボンをはく指導を始めたが、スマイルマークの付けはずしに援助が必要である。また、マジックテープをつけた後に、集中力がそれ、スマイルマーク部分を意識してはけず、援助なしでは前後が反対になってしまうこともある。そこで、着がえの手順カードを提示し、援助なしでスマイルマークに注意して一人で前後を間違うことなく着衣できるようになってほしいと考え、目標を設定した。 

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
本児は衣服の着脱の際、一連の行動の一つ一つはほぼ一人できる(途中で逸脱してしまうこともある)が、ズボンの前後の確認が難しい(反対であることに気づいていない)。ズボンの前部分にシンボルカラーである黄色または、スマイルマークを付けているが、自分からマークを探してはくという行動がほとんどみられなかった。(マークが前を示すことは理解しているようであるが、着がえの際にそのマークを探してはくと言う行動が定着していないように思われる。)そこで、ズボンの前部分にシンボルカラーである黄色のマジックテープをはり、着衣前にスマイルマークを貼る指導を始めた。マークを貼ることで前を意識する事はできてきたが、マークを貼ってからズボンをはくまでに時間を要してしまうと、マークを意識できないことが多い。

般化場面
(1)家庭でズボンをはく時に、一人でマジックテープのつけ外しができる。
(2)前後のわかりにくいシャツを着るとき、同様の方法で一人で着衣できる。

指導場面
朝と帰りの着がえ

指導手続
[指導の手続き1]
本児が着替えに可能な最小の広さを確保したボックス型の着替えゾーンを設置する。スマイルマークを活用して前後を正しくはける活動の課題分析を行い、それぞれの活動について記録する。

マークを貼る課題分析
1.目の前にあるスマイルマークを取る
2.ズボンのマジックテープにマークをはる  
3.ズボンを正しくはく
4.ズボンのスマイルマークをはずす
5.目の前のマジックテープにマークをはる
 
【正反応】
手順に沿って一人でできる
      ↓
ほめる(ことば「よくできたね。」と軽く身体接触)

   
【誤反応】
・マジックテープをはらない
・マジックテープをはずさない
・反対をはく
      ↓
1.指さしプロント
2.身体的介助
      
【無反応】   
着替えに取り組まない(指導1・2においては5秒間)
          (指導3においては20秒間)
      ↓
1.指さしプロント
2.身体的介助

      
[指導の手続き2:手続き1の記録において20日間(指導回数40回)で達成基準に達しない場合、手続き2をおこなう。]
手続き1の着替えゾーンの設置に加えて、マイルマークを含めた着替えの手順カードを提示する。

〔指導の手続き3:手続き2の記録において達成基準に達しなかったため手続き3を追加〕
手続き2において手順書を使用するためのプロンプトを必要とし、着替えに集中することができなかった。マークをとることはできるが、外すことができないため、マークを戻す位置を机上に変更する。
〈机上に変更した理由〉
 本児の着替えの手順が、ズボンをはく→机上の上着を着るという手順のため、上着を着る前にマークを戻すことに気づくようにしたい。(手順カードではなく具体物表示とする。)
 プロンプトは指導2までの5秒後のプロンプトから
20秒後のプロンプトに変更。
〈プロンプトを15秒延長した理由〉
 課題分析の1〜3におけるマークをズボンに貼り、貼ったマークの部分を持って〈意識して)正しくはくという行動は指導2までにおいて定着した。しかし、着替えに集中できない場合、2〜3において5秒後のプロンプトはタイミングが早く、定着しているにもかかわらずプロンプトを出すことになるようになった。そこで、指導3においては20秒待つことにする。

教材教具など
[指導の手続き1]
着がえゾーン
スマイルマーク

[指導の手続き2]
着がえゾーン
着がえの手順カード
スマイルマーク

〔指導の手続き3〕
STEP1
着替えゾーン
スマイルマークの置き場所変更
 マークをはるとき :目の前(目の高さ)の壁
 マークをはずすとき:机上中央

STEP2
 スマイルマークをはずすときの置き場所を机上上方に移動する。

STEP3
 スマイルマークをはずすときの置き場所はマークを貼るときと同じ場所とする。

達成基準
一人でマークのつけ外しが5回連続できたとき。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
指導の手続きの課題分析においてそれぞれのプロンプトを点数化(1人でできた:3点、声かけ:2点、指さし:1点、身体的プロンプト0点)する。達成基準はすべての活動において3点が5回連続続いたときとする。

グラフ下
第一系列のタイトル: 朝(登校後)
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4 : 指導方法4
第二系列のタイトル: 帰り(下校前)
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4

指導期間
平成16年9月22日〜平成17年1月21日

結果
 指導1においては、開始後すぐに「スマイルマーク」を所定の場所からとって、ズボンに貼ることができるようになった。しかし、ズボンをはいた後に、「スマイルマーク」を外す際には、ほぼ毎回プロンプトを必要とし、グラフからも読み取れるように、点数は12点から14点で平行線をたどってしまった。
 指導2においては、目標とした「スマイルマーク」を使用してズボンの前後を正しくはく行動を獲得するための指導ではなく、手順カードを使用するためのプロンプトを必要としたため、10回で指導を切り上げ、指導3を検討することにした。
 指導3のSTEP1においては、机上に衣服を置いて着替えているEくんが、一番目につきやすい所に「スマイルマーク」を戻すためのボードをおくことで、すぐに達成基準に達することができた。STEP2では途中に長期の休み(冬休み)をはさんだこともあってか、1月に入ってからマークを戻すために指さしプロンプトが必要であった。

考察
 マッチングが得意な本児にとって、黄色のマジックテープの上に黄色の「スマイルマーク」をマッチングさせると行動は、すぐに理解できたようである。しかし、ズボンをはいた後に「スマイルマーク」を外す際には、ほぼ毎回プロンプトを必要とした。その原因として、本児にとって「スマイルマーク」を外さなければならないという必要性がなく、ズボンをはき終わることで、着替えが終了していたと考えられた。そこで、手順カードを使用することで、ズボンをはき終えても着替えは終了ではなく、マークを外すことを意識して欲しいと考え、指導2を開始した。しかし、着替えの手順がほぼルーティン化している本児は、わざわざ手順書を用いて着替えをする必要がなかったようである。また、一日のスケジュールや課題学習などのワークシステムでのカードによる提示は理解し、一人で活動することができるが、一連の活動を行うためのカードによる手順書を使用した経験がなかった。そのため、標的行動の指導ではなく、手順カードを使用するための指導が必要になった。そこで、指導3に移行した。STEP1においては、机上に衣服を置いて着替えている本児が、一番目につきやすい所に「スマイルマーク」を戻すためのボードをおくことで、すぐに達成基準に達することができた。要するに指導2で準備した手順書カードではなく具体物による提示が有効であることがわかった。指導2では、目標とする行動と手順カードの活用という2つのことを同時に指導しようとしたため、目標とする行動への指導の焦点が薄れてしまった。手順カードの活用について別の場面で指導、練習し獲得した上で、今回の指導場面において活用すれば手順カードの使用も般化として活用できたかもしれない。 
 現在、机上に設置したボードを机上から少し離した壁へ(指導3のSTEP2)移動して行っているが、指差しのプロンプトが必要である。ボードを机上に置くことで、達成しているため、「スマイルマーク」を外すボードは机上に設置するように変更しようと考えている。そして、マークのつけ外しによって一人でズボンの前後を正しくはくことで他の衣服の場合へ般化させていきたい。

ズボンの前後を正しくはく指導
A:先行条件 B:行動 C:結果
ズボンをはくとき 【正反応】
手順に沿って一人でできる
【誤反応】
・マジックテープをはらない
・マジックテープをはずなない
・反対をはく
【無反応】
着替えに取り組まない(5秒間)
【正反応】
「上手だね」とほめる。
【誤反応】
指さしプロンプト→本児の後ろから身体的介助
【無反応】
指差しプロンプト→本児の後ろから身体的介助


記入日時 2006/02/26/14:19:15  No.249
記入者 管理者  E-Mail

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