2004-34



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“歯みがきの手順カード”を見て、歯の全体をみがくことができる
対象児のプロフィール
K児 
小3男児。自閉症。

諸検査結果
PEP−R 1歳8ヶ月(平成14年6月実施)
S−M社会生活能力検査 社会生活年齢 3歳2ヶ月(平成16年2月実施)

指導者
H・M

長期目標
手洗い、うがい、歯みがきなど、衛生面の習慣を身につけることができる。

短期目標
食後、“歯みがきの手順カード”を見て、歯の全体をみがくことができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
食後、“歯みがきの手順カード”で指定された箇所の順に、10回ずつ歯ブラシで歯をみがくことができる。

標的行動
【Step1】
食後、“歯みがきの手順カード”のうち、指定された一カ所の歯に歯ブラシを当てることができる。

【Step2】
“歯みがきの手順カード”のうち、指定された一カ所の歯に歯ブラシを当てて、前後に10回動かしてみがくことができる。

【Step3】
“歯みがきの手順カード”が示す順に、全ての歯に歯ブラシを当てて、前後に10回動かしてみがくことができる。

【Step4】
“歯みがきの手順カード”が示す全ての箇所の歯に順番に歯ブラシを当て、それぞれの箇所につき、タイマーが鳴るまで前後に動かしてみがくことができる。
【Step5】
歯みがきのはじめとおわりを、自分でタイマーを操作し、“歯みがきの手順カード”の順に歯をみがくことができる。

[標的行動を選択した理由]
本児は自分で歯みがきができていない。しかし、仕上げみがきができるようになり、歯ブラシで歯をブラッシングすることに対して抵抗がなくなった。教師が上下左右の歯を10回ずつブラッシングする間は口を開けたままでいることができる。口の中全体をみがいたらうがいをするということは定着している。手順カードを見ながら自分で歯をみがく習慣をつけることができるようになるのではないかと考えた。手順カードは、プリントとりのお手伝いでめくり式(文字のみ)のものを使用している。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
本児は歯みがきがあまり好きなほうではなかった。教師が行う仕上げみがきも嫌がっていたが、昨年度、仕上げみがきをお願いすることができるようになった。自分では、歯ブラシを持つと、噛んだままでいる、歯ブラシにつけた水を吸う、前歯の裏側をブラッシングして水を飛ばして遊ぶ、といった状態である。

〈ベースラインの取り方〉
Step1のカードを見せ、「みがくよ。」と声をかける。
カード1枚につき、5秒間見せる。カードは教師がめくる。
カード\x{2460}から\x{2465}まで、カードが示す位置の歯に歯ブラシをあてているかどうかの記録をとる。

般化場面
(1)担任以外の教師が横にいても歯をみがくことができる。
(2)家庭でも自分で歯をみがくことができる。
(3)あさひ学園でも自分で歯をみがくことができる。

指導場面
給食後の歯みがきの時間

指導手続
歯磨きの手順カードを用意する。カードは全部で5枚。\x{2460}前歯上部分\x{2461}前歯下部分\x{2462}左上部分\x{2463}右上部分\x{2464}右下部分\x{2465}左下部分、の5カ所をそれぞれ色塗りしておく。

【Step1】
\x{2460}〜\x{2465}の順にカードを見せ、「みがくよ。」と言う。

【Step2】
歯磨きは、\x{2460}〜\x{2464}の順にカードを見せ、色がついている部分を指さし、「まえば、うえ、みがくよ。」「ひだり、うえ、みがくよ。」等と言い、本児の手をとり一緒にみがく。歯ブラシを前後に動かして1回と数え、1カ所につき10回動かす。教師が右隣にいて10回カウントする。最後に、\x{2465}左下部分のカードを見せ、「ひだり、した、みがくよ。」と言い、10回カウントをする。この時、身体的ガイダンスはなし。

【Step3】
“歯みがきの手順カード”を使用できるよう準備しておき、「みがくよ。」と声をかける。歯ブラシを前後に動かして1回と数え、1カ所につき10回動かす。教師が右隣にいて10回カウントする。この時、全ての箇所について、身体的ガイダンスはなし。

【Step4】
“歯みがきの手順カード”を使用できる状態にしておき、「みがくよ。」と声をかける。本児が、カードが示す歯に歯ブラシを当てることができたら、「スタート」と言って目の前でタイマーを押す。タイマーが鳴ったら、カードをひっくり返すよう指さしで知らせる。\x{2460}〜\x{2465}全ての箇所で、同様に行う。

【Step5】
“歯みがきの手順カード”の上部分にタイマーを設置する。本児が歯ブラシを歯に当てたら、「スタート。」と声をかけ、タイマーを指さす。タイマーが鳴ったら、タイマーを止めるよう、タイマーを指さす。その後、カードをめくるようカードを指さす。

教材教具など
歯みがきの手順カード
タイマー

達成基準
【Step1】
“歯みがきの手順カード”で指定された箇所の歯に歯ブラシを当てることが、3日間続いたら達成とする。

【Step2】
“歯磨きの手順カード”を見て、示された部分の歯(左下部分)を前後に10回以上動かしてみがくことが3日間続いたら達成とする。

【Step3】
“歯磨きの手順カード”を見て、示された部分の歯(\x{2460}〜\x{2465}の全ての歯)を前後に10回以上動かしてみがくことが3日間続いたら達成とする。

【Step4】
“歯みがきの手順カード”が示す全ての箇所の歯に順番に歯ブラシを当て、それぞれの箇所につき、タイマーが鳴るまで前後に動かしてみがくことが3日間続いたら達成とする。

【Step5】
歯みがきのはじめとおわりに、自分でタイマーを操作し、“歯みがきの手順カード”の順に歯をみがくことが3日間続いたら達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
【Step1】
“歯みがきの手順カード”で示された箇所の歯に歯ブラシを当てることができているかどうかを記録する。

歯磨きの時間に、カードで示された部分の歯(\x{2464}左下部分)をみがくことができているかどうかを記録する。

各行動において
プロンプトなしでできた…2点
声かけ、指さしあり…1点
身体的ガイダンス…0点

合計12点満点

【Step2】
歯みがきの手順カードで示された部分の歯(左下部分)に歯ブラシをあてることができているかどうか、また、前後に10回動かして磨くことができているかどうかを記録する。

各行動において
プロンプトなしでできた…2点
声かけ、指さしあり…1点
身体的ガイダンス…0点

合計4点満点

【Step3】
歯みがきの手順カードで示された部分の歯(\x{2460}〜\x{2465}の全ての歯)に歯ブラシをあてることができているかどうか、また、前後に10回以上動かして磨くことができているかどうかを記録する。

各行動において
プロンプトなしでできた…2点
声かけ、指さしあり…1点
身体的ガイダンス…0点

合計24点満点

【Step4】
歯みがきの手順カードで示された部分の歯(全ての部分)に歯ブラシをあてることができているかどうか、また、タイマーが鳴るまで前後に動かして磨くことができているかどうかを記録する。

各行動において
プロンプトなしでできた…2点
声かけ、指さしあり…1点
身体的ガイダンス…0点

合計24点満点

【Step5】
歯みがきの手順カードで示された部分の歯(全ての部分)に歯ブラシをあてることができているかどうか、また、自分でタイマーを操作し、タイマーを押してから鳴るまで前後に動かして磨くことができているかどうかを記録する。

各行動において
プロンプトなしでできた…2点
声かけ、指さしあり…1点
身体的ガイダンス…0点

合計24点満点

グラフ下
第一系列のタイトル: “歯みがきの手順カード”で指定された箇所の歯に歯ブラシを当てる
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4
第二系列のタイトル: 歯磨きの手順カードを見て、示された部分の歯(左下部分)をみがく
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4

指導期間
2004年9月15日〜2005年3月7日
(現在も指導継続中)

結果
 ベースラインでは、一日目から、\x{2465}の左下部分の歯には、正しく歯ブラシを当てることができた。右手で歯ブラシを持った時、最も当てやすい箇所であると考えられる。しかし、手順カードが示されているのに、教員からの声かけや賞賛が一切なかったことで、本児はとても不安そうに教員の顔をのぞきこんでいた。そこで、すぐ指導1を開始することにした。 
 指導を始めた2日目から、上下の前歯に歯ブラシを正しく当てることができるようになった。手順カードを見て歯ブラシを歯に当て、その後、教員の方を見て確認を求めてくるようになった。歯ブラシの持ち方や向きを変えなければ当てることができない右側の歯や歯の上部分については、まだ声かけや指さしが必要であった。しかし、カードを見て、自分で考えながら歯ブラシの向きを変える姿が見られた。正しい箇所に歯ブラシを当てた時には、すかさず褒め、一緒に歯をみがいた。Kくんも、その時はとても嬉しそうに微笑んでいた。グラフからもわかるように、指導1を始めて7日目には、手順カードが示す6カ所全ての歯に正しく歯ブラシを当てることができるようになった。教員が笑顔で褒めたことや、言葉での賞賛が、Kくんにとってはとても効果的であったと思われる。
 10月19日から、指導2を開始した。Kくんが、\x{2465}の左下部分の歯に正しく歯ブラシを当てた後、10回カウントをしたが、3回ほど歯ブラシを動かすと途中でやめ、歯ブラシを教員に手渡そうとした。Kくんが、歯ブラシを左下部分に当てると同時に、「10回だよ。」と、まず声をかけてからカウントするようにした。その結果、11月2日からは、10回カウントするだけで、歯ブラシを10回以上動かすことができるようになった。また、担当教員以外の教師が隣にいても、できるようになった。歯みがきの指導を始めていくうち、Kくんが、以前のように歯ブラシで水を飛ばして遊ぶことも見られなくなった。11月の後半には、手順カードが示す全ての箇所の歯に、歯ブラシを正しく当て、前後に動かすことができるようになった。しかし、\x{2465}の箇所以外の歯について、10回以上動かすことが定着しなかったため、1月25日から、 Step3を開始し、終了の合図をタイマーで知らせるようにした。すると、\x{2460}〜\x{2465}の全ての箇所において、タイマーが鳴るまで歯ブラシを動かし続けることができた。この指導と同時に、本児が、自分で終わったカードをめくっていくことも定着した。
2月15日からは、Step4を開始した。始めてから4日間は、タイマーの押し忘れや、タイマーを押すことに意識が集中して、磨く箇所を間違えたりすることがあった。しかし、5日目からは、タイマー、カード共にひとりで操作し、歯みがきに取り組むことができるようになった。この時、担当教師以外の教師が隣にいてもできていた。また、教師が2メートルほど離れた位置から見守っていても、手順カードにそって歯をみがくことができていた。 

考察
 今回の実践で、Kくんは、初めて歯ブラシの正しい使い方や、歯みがきの活動で何をするのか、ということを学習できたと思われる。日常生活の活動一つひとつを、それぞれの児童に合った方法で、丁寧に指導していくことの大切さを改めて実感した。 

【Step1】“歯みがきの手順カード”で指定された一カ所の歯に歯ブラシを当てることができる。
A:先行条件 B:行動 C:結果
“歯みがきの手順カード”を見る。 《正反応》
a)カードが示す部分の歯に、歯ブラシを当てることができる。

《誤反応》
b)カードを見ない。
c)カードが示す位置と異なる部分の歯に歯ブラシを当てる。

《無反応→5秒間》
d)無反応
《正反応》
a)「そうそう。」と言ってほめ、歯ブラシを当てた直後に10回カウントしながら、手を添えてみがく。

《誤反応》
b)5秒間は無反応で待つ。それでも正反応が見られない場合は、「カード」と声をかけ、カードを指さす。
c)カードを指さし、「前歯」「左上」など、カードが示している箇所を言う。それでも正反応が見られない場合は、手をとり正しい位置に歯ブラシを持っていく。

《無反応→5秒間》
d)「次は?」と声をかける。それでも正反応が見られない場合は、カードを指さし、カードが示す箇所を言う。

【Step2】“歯みがきの手順カード”で指定された一カ所の歯(\x{2464}左下部分)に歯ブラシを当てて、前後に10回動かしてみがくことができる。
A:先行条件 B:行動 C:結果
“歯みがきの手順カード”(\x{2464}左下部分)を見る。 《正反応》
a)カードを見てひとりで10回みがくことができる。

《誤反応》
b)カードが示す位置と異なる位置に歯ブラシを当ててみがこうとする。
c)正しい位置に歯ブラシを当てるが、動かさない。
d正しい位置に歯ブラシを当てるが、10回動かさずに途中で終わる。
《無反応→5秒間》
e)無反応
《正反応》
a)「上手にみがけたね。」と言ってほめる。

《誤反応》
b)カードを指さし、「ひだり、した、みがくよ。」と声をかける。それでも正反応が見られない場合は、手をとり正しい位置に歯ブラシを持っていく。
c)5秒待つ。それでも動かさない場合、「1、2、3…」とカウントする。それでも正反応が見られない場合は、手をとりカウントしながら一緒に歯ブラシを動かす。
d)「10回だよ。」と言う。それでも正反応が見られない場合は、カウントする。

《無反応→5秒間》
e)「次は?」と声をかける。それでも正反応が見られない場合は、カードを指さし、「ひだり、した、みがく。」と声をかける。


記入日時 2006/02/24/16:32:34  No.237
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