概 要 |
着替えのスキルを身につけることはとても大切であり、自分一人でできることが増えれば自信となっていくと思われる。Gくんの着替えは、自分一人でできることと支援が必要なことがあり、いつも教員と一緒に行っている。今回は保護者からの要望もあるボタンをはずすことを目標とした。 指導にあたっては、机上に置かれたボタンをはずすことからはじめていこうと考えている。
|
諸検査結果 |
・KIDS 1歳2ヶ月(平成16年4月29日) ・S-M社会生活能力検査 2歳1ヶ月(平成16年2月) ・PEP-R,MEPA総合発達年齢 1歳5ヶ月(平成14年9月)
|
障害の特性 |
・おもちゃをよくかじる。つばで遊ぶ。また電子ピアノ、ホーススイング、ビデオ、水遊びを好む。 ・要求はクレーンや手をパンと鳴らす。 ・拒否は「ババッ」と怒ったような声を出したり、教師の手を振り払う。 ・3年生になってから音に過敏に反応し、耳ふさぎをすることがある。
|
長期目標 |
自分の着た学生服のボタンをはずすことができる。
|
短期目標 |
机上に置かれた学生服タイプのボタンをはずすことができる。
|
指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
自分が着ている服のボタンより、課題として机上に置かれたボタンの方がまずボタンを意識することができるのではないかと思われる。自分一人で課題のボタンをはずすことができるようになることで、着ている冬の制服のボタンをはずすことにつなげていきたい。また、一つのタイプのボタンをはずすことができることで、違うタイプのボタンを意識することにもつながるのではないかと考えた。よって、机上に置かれた学生服タイプのボタンをはずすことを目標に設定した。
|
指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
着替えは自分一人でできることと支援が必要なことがあり、いつも教師と一緒に行っている。ボタンをはずす場面では、はずさずに脱ごうとしたり、自分ではずすことが難しいので手を叩くことや「ババッ」という発語により支援を要求したりする。自立課題の中で4〜6 月にかけ取り組んできた。ボタンを持つことは自分でできるが、その後どのようにしてよいか分からず左右に引っ張ろうとする。夏休みの8月16日から10月末まで失禁が続いた。
|
般化場面 |
(1)冬の学生服のボタンをはずすことができる。 (2)違うタイプのボタンも自分ではずそうと意識する。
|
指導手続 |
《指導1(1)》机上に対して平面にあるボタン課題 《指導1(2)》指導1と同様+ごほうび、褒め方を変える 《指導2》机上に対して斜めにある課題
6セットの内最初の2セットは教師と一緒にボタンをはずし、残りの4セットは一人で取り組む。 ●教師と取り組む(1、2セット目) 教師は本児の後ろから本児の手を取り一緒にはずす。 ●一人で取り組む(3〜6セット目) 教師は本児の右前に立つ。本児の取り組みに対して以下のように支援する。
【ボタンを一人ではずす】→「上手だね」と褒める。 【手伝って欲しいとの要求】→本児の後ろから身体的介助を行う 【無反応】→指さしプロンプト
|
教材教具など |
学生服タイプのボタン課題6セット(平面タイプ、斜めタイプ)
|
達成基準 |
《指導1》《指導2》 一人で取り組む4セットの内、身体的介助なしで(指さしプロンプトはよい)3セット以上自分でボタンがはずせた日が5日連続で達成。
|
記録の取り方(般化場面と指導場面) |
一人で取り組む3〜6の4セットを記録に取る。4セット中何セット自分で(指さしプロンプトはよい)はずせたか記録にする。(○/4)。 またプロンプトの内容や課題の取り組み方も記述する。
グラフ下 第一系列のタイトル: ボタンをはずす指導 《指導1》 Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4 第二系列のタイトル: ボタンをはずす指導《指導2》 Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4
|
結果 |
《指導1》では、最初の3日間どのようにしてよいか分からず、4セットとも身体的ガイダンスが必要であった。4日目以降少しずつ自分でボタンをはずすことができ始めた。《指導2》では初日からリズムよく取り組むことができ、6日で指導を達成することができた。 課題への取り組み方も記録として残した。取り組み方として《指導1(1)》では、「気持ちが課題にむかない。」「早朝からの失禁で眠たそう。」から《指導 1(2)》の10月15日以降「リズムよくできる。」に変わっていった。図よりも分かるが、《指導1(2)》の10月15日以降1日を除き3セット以上自分ではずすことができている。
|
考察 |
《指導1(2)》の10月15日以降取り組み方が変化していった理由は、\x{2460}課題後ごほうびを用意したこと、 \x{2461}褒め方を変えたこと、\x{2462}夏休みから続いていた失禁が落ち着いてきたことが考えられる。\x{2460}の課題の後のごほうびは、だんごの絵をみることができる(10月 9日〜)→だんご3兄弟の曲を聴くことができる(10月14日〜)である。ごほうびを用意することで、よい笑顔が見られた。ごほうびは、その時々により変わってくるので何がよいか考える必要があった。\x{2461}については、クラスの教員と課題の様子をビデオに撮影し、「もっとオーバーに褒めてみては…。」とアドバイスをもらった。「じょうずにできたね。」という言語賞賛から「すごいね。やった!」といいながらハイタッチをすることに変えていった。Gくんにとってオーバーに褒められることは、自信となり意欲的に取り組むことにつながっていった。 その他、ボタンはずしの教材作りでも考えることが多かった。ボタンの種類、ホールの大きさ、布の厚さなどにより、はずし難さが全く異なってきた。実態を把握し、一人一人にふさわしい課題を作っていきたい。 今回の研究で意欲的に取り組むことができる環境や賞賛の仕方、教材作りの奥深さを感じた。今後は、次のステップとなるボタンはずしの教材を作り、新たなごほうびを用意していく必要がある。そして、自信を持って意欲的に課題に取り組めることができるよう、達成した喜びを共有していきたいと改めて感じた。
|
|