概 要 |
対象児は、周囲の音が気になるときに、大きな声を出すことがある。対象児自身は自分の声で周囲の音を聞こえないようにしていると予想される。 また、対象児の声に周囲が静かになることもあり、そのことも対象児にとって好子の出現となっていると考えられる。
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長期目標 |
家族との外出先で、周囲の音が気になるときに、ヘッドフォンや耳栓を使用することができる。
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短期目標 |
課題学習や朝の会など学校生活で、周囲の音が気になるときに、ヘッドフォンや耳栓を使用することができる。
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指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
連絡帳を書くときに、周囲の音が気になる場合、ヘッドフォンと耳栓を使用(併用)することができる。
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指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
・ベースライン 1)大声の有無を、次の方法で記録する。 2点:大声「ぎゃーぎゃー」+両手を叩く+体を前後に揺らすあり。 1点:「んーんー」(「ぎゃーぎゃー」のときよりも静かな声だが、周囲の音は気になっている様子。) 0点:大声なし。 ・実態 ヘッドフォンと耳栓が、嫌がらずに使用できるかを試してみた。周囲の音が気になり「んーんー」と言っているときに渡すと、使用することができた。(※その後すぐに連絡帳に取りかかることができた。)「ぎゃーぎゃー」と言っているときには指示が通りにくいため、渡さなかった。 ヘッドフォンは防音できるものではないので、単独での使用をしたときにはあまり効果がなかった。
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般化場面 |
1)課題学習で周囲の音が気になっているとき 2)朝の会で 3)サーキットで 4)ホールでの遊びの時間に 5)家族と外出した先で
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指導場面 |
連絡帳を書いているときに、周囲の音が気になっている場合
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指導手続 |
【STEP1】対象児が「んーんー。」と言っているとき、連絡帳を書く机の上(対象児から手が届くところ)に耳栓とヘッドフォンが入ったかごを置く。 10秒ほど待って、対象児が耳栓とヘッドフォンを使用しないようであれば、ヘッドフォンと耳栓は?と声をかける。 【STEP2】 STEP1で、耳栓とヘッドフォンを自分から使用できることが5回あれば、耳栓とヘッドフォンの入ったかごを、対象児から見えて、歩いて取りに行く位置に置く。
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教材教具など |
ヘッドフォン 耳栓 ヘッドフォンと耳栓を入れるかご
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達成基準 |
【STEP2】で、ヘッドフォンと耳栓を自分から使用できることが5回あれば、達成とする。 ※続けて5回でなくてもよい。
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記録の取り方(般化場面と指導場面) |
・指導場面 1)ヘッドフォンと耳栓を使用する前と使用中に、大声があったか、なかったかを、次の方法で記録する。 2点:大声「ぎゃーぎゃー」+両手を叩く+体を前後に揺らすあり。 1点:「んーんー」(「ぎゃーぎゃー」のときよりも静かな声だが、周囲の音は気になっている様子。書く作業は中断している。) 0点:大声なし。 ※記録例:ヘッドフォンと耳栓使用前→大声あり(2点)、使用中→「んーんー」(1点)
2)ヘッドフォンと耳栓の自発的な使用ができたかを記録する。 3点:自発的に使用。 2点:「ヘッドフォンは?」の声かけで使用。 1点:渡されて使用。 0点:使用しない。
グラフ下 第一系列のタイトル: 大声の有無 2点:大声あり,1点:「んーんー」,0点:大声なし Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4 第二系列のタイトル: 耳栓+ヘッドフォン着用中の大声の有無 2点:大声あり,1点:「んーんー」,0点:大声なし Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4
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結果 |
【STEP1】では、ヘッドフォンと耳栓が入ったかごが置かれると、1回(11/1)を除き、自分から使用することができた。自分から使用した4回のうち、3回(10/21、10/29、11/4)は、使用中大声がなくなったり、手を休めずに連絡帳を書いたりと効果が見られた。 【STEP1】で11月5日にヘッドフォンと耳栓を使用して以降、12月3日まで大声は見られなかった。 12月3日より【STEP2】に入った。12月3日のみ「んーんー」という声があり、その後大声はない。
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考察 |
12月3日に【STEP2】に入る直前の、11月24日と29日、課題学習の時間に「(ヘッドフォンと耳栓)ください。」と自発的な使用をすることがあった。【STEP1】でヘッドフォンと耳栓の自発的な使用は4回であり、達成基準の5回に到達していなかったが、連絡帳を書くときにも自発的な使用ができるかもしれないと考えて、【STEP2】に入った。 教室の外から聞こえてくるビデオの音に耳をふさぐなど、周囲の音を気にする様子はあるが、「んーんー」「ぎゃーぎゃー」といった大きな声は減っている。
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