2004-37



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学校で約束を守って生活する
概 要
本児は一人で過ごしているとき,暴力や暴言,非常ベルを押す等の問題行動が見られる。
そこで,まず,トークンを得ることにより,学校での生活を送る中でお手伝いをすることや自己決定目標を達成すること,自立活動時静かに学習すること(向社会的な行動)に対する意識を高めたい。
また,問題行動についても,トークンを得ることを目標に先生との約束を守る意識を高め,約束を守って生活ができるようにしたいと考える。

対象児のプロフィール
T 小5男子 知的障害(てんかん有り)

諸検査結果
WISC-R VIQ49 PIQ61 IQ46
S-M社会生活能力検査SA5-10

指導者
H ,O

長期目標
学校で約束を守って生活する

短期目標
・お手伝いをする
・自立活動(課題学習)時,静かに学習する
・自己決定目標(1日の目標)を達成する
・先生との4つの約束を守る
(友だちを叩かない,友だちを蹴らない,友だちをおどさない,ものを壊さない)

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
トークンの利用により,お手伝い,静かに学習する,自己決定目標を達成する,特にお手伝いのような向社会的な行動が強化され,4つの約束の内容(問題行動)を起こす機会や気持ちを消去(減少)できるように、まず、学校生活の中で取り組むため。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
・気に入らないことがあると他児を叩く,蹴る,おどす行動がある。(自分より力の弱い者に対して)
・物を盗る,非常ベルを押す行動も頻度は少ないがある。
・一人の時に問題行動を起こすことがほとんどである。
・1学期は指導期間48日中,12日で問題行動が生起しており,その生起率は25%であった。

般化場面
1 まず学校生活の中で,教師が本児に付く度合いが少  なくても,向社会的行動の増加と問題行動の頻度減  少ができるようにしたい

2 一人でいるときの,向社会的な行動の増加と,問題  行動なく生活できる頻度の増加(今後,家庭や施設  での生活のなかで般化できるようにしたい)

指導場面
お手伝い(主に「日常生活の指導」の時間)
課題学習時(自立活動)
自己決定目標(学校生活全般)
約束を守る(学校生活全般)

指導手続
・登校してから下校するまでの間,教師と共に行動する
・お手伝い1回ごとにトークン1枚を渡す
・自立活動時,静かに学習できればトークン1枚
・4つの約束を守ることができれば,トークン2枚
・約束に違反すれば,ペナルティとして,トークンを該当項目の個数分減らす
・約束違反の場合,適切な対応の仕方のモデルを,その時点と放課時に示して伝える
・トークンは,活動後すぐに本児と増減させる
・30枚トークンがたまれば,CD1枚(本児希望曲)と交換する
・お手伝いは教師側が基本的に毎日最低限5つ用意しておく
1出席黒板(大)の準備
2出席黒板の片付け
3廊下の掃除
4廊下の遊具の片付け
5洗濯
・お手伝いをするしないは,本児の意志に任せる。

教材教具など
トークン(シール)
トークンを貼る表
4つの約束が記入されているカード
トークン30枚達成時の音楽入りCD(本児希望の曲入り)

達成基準
問題行動(約束に該当)が10日に1日以内(10%以内)

記録の取り方(般化場面と指導場面)
1・手伝いの回数(枚数)と具体的な手伝いの内容
 ・自立活動,自己決定目標が達成されて得た枚数
 上記については,枚数と内容を記録に文章表記

2 約束については,守ることができた場合,トークン 2枚と表記。守れなかった場合は,トークンが減った 枚数と問題行動の前後状況を記録に文章表記

3 1日の手伝い,自立活動,自己決定目標のトークン 合計枚数をグラフ化する

4 問題行動がなければ0,あれば約束の中での該当個 数をグラフ化する

グラフ下
第一系列のタイトル: トークン合計枚数
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4
第二系列のタイトル: 問題行動の生起数
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4

指導期間
2004年10月4日〜12月20日

結果
・問題行動生起率は,指導期間内の指導実施50日で5日生起しているため,10%であった(達成基準を達成)。
・問題行動が生起した5日で,全問題行動生起回数は,8回であった。
・トークン獲得枚数は,1日平均8枚であった。(総獲得枚数400枚)
・お手伝いによるトークン獲得枚数は,1日平均4.6枚であった。(総獲得枚数230枚)

考察
指導期間全体における問題行動生起率は10%であり,残り90%は問題行動無く生活できたが,問題行動が生起した日には,トークン獲得枚数も減っている。ペナルティがあるため当然だが,なかなか落ち着くことができず,腹を立てた状態では,お手伝いも引き受けてくれにくかった。また,同じ日に複数回問題行動が生起した日もあった。一度腹を立てることがあると,落ち着くのに時間がかかるのが本児の特徴であるが,指導手続きに則り,一貫した指導を進めることで,様子を見ながら指導の仕方を模索していた先学期までと比較すると,腹を立てても本児が納得し,通常の状態に戻るまでの時間が短くなった印象がある。1学期と比較すると問題行動生起率も15%減少しており,教師のかかわり方も重要であることを実感することができた。
 指導手続きとして教師が共に行動しているため,環境を調節して未然に問題行動の生起を防ぐ配慮を行うことがあったが,本児が腹を立てる場面や状況を記録し,毎日の指導にフィードバックして生かすことができた。しかし,次のステップとしては,全ての場面において教師が共に行動するのではなく,配慮が必要な場面を絞り込み,その場面において必要な指導を進めたいと考える。まず学校生活の中で,教師が本児に付く度合いが少なくても,向社会的行動の増加と問題行動の頻度減少ができ,今後,家庭や施設での生活の中で般化できるようにしたい。
本児はトークンを獲得して対価(CD)と交換する際に本当に喜んでいた。このシステムにより,本児が学校生活において,約束を守って生活しようという意識につながってきている。お手伝いに関してはまだまだ受身ではあるが,拒否することなく素直に引き受けてくれるようにはなってきている。自己決定目標を達成しようとする意識も高い。これからもスモールステップではあるが,一歩一歩確実に指導を進めていきたい。 

お手伝いをする
A:先行条件 B:行動 C:結果
1,お手伝いをする機会があり,先生から「手伝って」と頼まれたとき

2,自分から手伝いをみつけたとき
手伝いをする 先生からほめられる(↑)

トークンをもらう(↑)

自立活動を静かに学習をする
A:先行条件 B:行動 C:結果
自立活動時 静かに学習する 先生からほめられる(↑)

トークンをもらう(↑)

自己決定目標(一日の目標)を達成する
A:先行条件 B:行動 C:結果
自分で目標を決め、その目標とする行動をするとき 目標となる行動をする  

先生との4つの約束を守る
A:先行条件 B:行動 C:結果
気に入らないことがあったとき 1,先生に思いを伝える(暴力を振るったり,おどしたりせ  ずに先生に気に入らないことを報告する)
2,暴力をふるう(たたく・ける),おどす,ものにあ   たってこわす
1,適切なかかわり方ができたことをほめられる(↑)
  トークン(2枚)をもらえる(↑)

2,トークンを該当数減らされる(↓)
  適切なかかわり方(暴力を振るったり,おどしたりせ  ず,先生に報告することで問題解決を図ろうとする)  を先生から聞く(?)


記入日時 2006/02/24/12:54:18  No.218
記入者 管理者  E-Mail

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