2005-06



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小学部中学年の自閉症児がトイレカードを教員に手渡してトイレに行きたいことを伝えるための支援
概 要
・一日の流れを写真カードを用いたスケジュールで把握し、活動している。
・コミュニケーション手段では、クレーンハンドが多いが、制服のボタンはずしでは「手伝って」カードを渡せるようになってきたり、給食時では「ふりかけください」「お茶ください」カードを手渡して伝えることができている。

対象児のプロフィール
F
小学部3年生
自閉症

諸検査結果
PEP−R発達検査 2歳1ヶ月

障害の特性
聴覚過敏(嫌いな音楽、友だちの泣き声を聞くと動けな
い)
コミュニケーション

指導者
担任2名

長期目標
トイレに行きたいとき、自分からカードを手渡してから
トイレに行くことができる。

短期目標
トイレに行くとき、ポケットに入れてあるカードを渡してからトイレに行くことができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
(指導目標)
トイレの写真カードを見て「トイレに行く?」と聞かれた時、ポケットに入れてあるトイレの写真カードを教員に渡してからトイレに行くことができる。
(選んだ理由)
学校では、トイレに行きたい時伝える手段がなく、急に教室を飛び出し、トイレに向かっているのを教員が分からず、制止されてしまうということが多い。制止される
と、その場でズボンを下ろして教員が気づいてトイレに
行く。
外出時には、トイレの場所が分からないこともあり、そ
の場でズボンを下ろしたり、排尿してしまうことがあっ
たので、トイレに行きたいことを伝える方法を身につけることでこれらの行動を改善できればと考えた。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
・トイレは、スケジュールの中に入れていて、給食後と
帰る前に行っている。学校でトイレに行く回数は少ないが、スケジュール以外で行きたくなった場合、突然トイレに走る。
・家では、行きたい時にひとりでトイレに行っているが、外出時、突然ズボンを下ろして走りだしたり、その場でしようとする。



般化場面
(1)教室以外の場所(音楽室・体育館など)にいて
も、カードを手渡してからトイレに行く。
(2)外出時でもカードを手渡してからトイレに行く。
最終的には、トイレに行きたくなったら自らカードを手
渡してトイレに行く。

指導場面
給食後
6時間目終了後

指導手続
※指導場面

【指導場面1】教室にいる時にカードを手渡してからト
イレに行く指導
【指導場面2】教室にいる時にカードを手渡してからト
イレに行く指導(指導手続きを遅延プロンプトに変更)

※指導手続き
○ベースライン
ポケットにトイレの写真カードを入れておく。トイレの
写真カードを教員が見せて、本児が写真カードを手渡し
てトイレに行くことができたかを記録する。

  着替えコーナーにトイレの写真カードを置いてお
  く。(ポケットに入れ忘れた時には指さしで入れる
  よう伝える。)
○指導場面1
  正反応:一人の教員がトイレの写真カードを見せて
  「トイレ行く?」と促し、トイレの写真カードを受  け取る。
  誤反応(手渡せない時)
  別の教員がカードを手渡すよう、身体的ガイダンス
  を行う。

○指導場面2
  正反応:教員が入り口の前に立ち、トイレの写真カ      ードを見せてトイレに行くように促しカー      ドを受け取る。
  誤反応(手渡せない時)
  促してから3秒待ち、それでも手渡せない時には別  の教員がカードを手渡すよう、身体的ガイダンスを  行う。



教材教具など
トイレの写真カード(促し用カード、本児の携帯用カード)

達成基準
身体的ガイダンスなしで正反応1回以上、誤反応なしが3日連続で続くと達成。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
(ベースライン)
促されてからポケットの写真カードを教員に手渡すことができた回数。

(指導場面1・2)
正反応・・・促されてからポケットの写真カードを教員
      に手渡すことができた回数

誤反応・・・カードを渡さずにトイレに行く。
      トラジッションコーナーの終了ボックスに
      カードを入れる。

それぞれの反応数を日ごとに記録していく。



指導期間
10月17日〜11月31日までの平日

結果
指導場面1では,指導初日から正反応が見られたが,後半は誤反応が出ない日が無く,誤反応数が正反応を上回る日が増えた。カードを教員に手渡してからトイレに行くことができていたが、誤反応が続き,達成はできなかった。1日2回の促しを行ったのだが,初めの1回については手渡さずにトイレに行こうとする誤反応が見られ,カードを手渡すためのプロンプトが必要であった。

指導場面2では,正反応は見られたが、誤反応が無くならず指導1から大きな変化は見られなかった。遅延プロンプトにしたことや教員の位置を固定化したことでプロンプト無く,手渡せることも見られたが指導を続けるうちにいくつかの問題点がみられた。トイレカードをポケットに入れることを拒否したり,教員がトイレを促すと促されたカードを伏せたりして,トイレに行くことが嫌であるような反応をみせた。また,カードを手渡し,トイレに向かったもののトイレに行かずに教室まで戻ってくることがあった。トイレがしたくないのかと思っていたが,外に遊びに行っている時に外でしてしまうことがみられた。
 
 

考察
指導場面1については誤反応が見られる原因として,プロンプトを出すタイミングと教員が受け取る位置が問題ではないかと考えた。渡せないと思われた時にすぐFさんを制止していたことがプロンプトによりカードを手渡すという行動を強化することになっていると考え、指導手続きに遅延プロンプトを加えることにした。
また,教員がトイレを促し,カードを受け取る位置が様々であったのを動線を考慮し,教員の立ち位置を出入り口に固定することにした。この2点を付け加え,指導2を行った。 
しかし,指導場面2についてもさまざまな問題点が出てきたことにより,改めて整理し直し,指導を改めることにした。Fさんは促しがないとトイレに行かずに我慢をしたまま下校してしまうので,促しは必要であると考え,指導を進めてきた。だが,指導を進めるうちに,促しカードを提示されることがトイレに行かなくてはならないと思い,促しカードを提示されるとカードを伏せたり,ポケットに入れることを嫌がったりすることになったのではないかと考えられた。また,検討していくうちにFさんのトイレに行くことの負荷が原因として出てきた。Fさんは聴覚過敏があり,教室からトイレに向かうまでの廊下でも苦手とする音が聞こえる環境にあることが,問題点にあがった行動に関係しているのではないかと考えられた。そこで指導手続きを見直し,日常的に教員が側にいることで音に対する不安が軽減することがみられるため,トイレカードをFさんが手渡した際には教員がトイレまで付いていくことでトイレへの負荷が軽減するのではないかと考えた。また,トイレに行くことがFさんにとって良いこととなるように,好子を用意することにした。さらに,カードを手渡してからトイレに行くということは定着してきたので,教員の促しを無くし,行きたい時に行く経験が増えるようにした。これらのことを踏まえて新たに指導をし直すことにした。 


第一系列のタイトル: 写真カードを教員に手渡せた回数(正反応)
Baseline: ベースライン   Intervention1: 1教室にいる時にカードを手渡してからトイレに行く指導   Intervention2: 2教室にいる時にカードを手渡してからトイレに行く指導(指導手続きを遅延プロンプトに変更)   Intervention3:   
第二系列のタイトル: 写真カードを教員に手渡すことができなかった回数(誤反応)
Baseline1: ベースライン   Intervention1: 1教室にいる時にカードを手渡してからトイレに行く指導   Intervention2: 2教室にいる時にカードを手渡してからトイレに行く指導(指導手続きを遅延プロンプトに変更)   Intervention3:   
記入日時 2005/09/07/16:43:15  No.10
記入者 MT.HK  E-Mail

小学部中学年の自閉症児がトイレカードを教員に手渡してトイレに行きたいことを伝えるための指導
指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
<指導目標>
トイレに行きたいときポケットに入れてあるカードを教員に手渡し、トイレに連れて行ってもらうことができる。
<選んだ理由>
指導を続けていく上で、トイレに行きたいことを伝える手段がないだけではなく、トイレに行くまでに苦手な音がする、外ですると気持ちが良い等の要因が考えられるようになった。そこで教員がトイレに付いていくことでトイレに対する負荷が軽減でき、トイレに行きたい時ににはカードを手渡して、トイレに行くことができるようになるのではないかと考えた。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
・トイレカードを見せて促すと嫌がりカードを押しのけることが多い。
・トイレに行きたい時にスムーズに教員に手渡してトイレに行くこともあり、手渡さないでトイレに行くことはなくなった。
・外にいる時、教員が側にいないと外で排尿することがある。(その場合、ポケットのカードをその場に捨ててからしている。)
・トイレに行こうとして廊下を通っている時に苦手な音がすると、トイレに行かずに戻ってくることがある。

般化場面
家庭でトイレに行きたい時にカードを手渡し、トイレに連れて行ってもらうことができる。

指導場面
学校にいる間

指導手続
着替えコーナーにトイレの写真カードを置いておく。(ポケットに入れ忘れた時には指さしで入れるよう伝える。)
○指導場面1
・正反応 本児が写真カードを手渡したら、トイレまで付いていく。トイレが終わったたら、石けんを手渡す。手洗いが終わったら、好きなキャラクターのシールを手渡す。
・誤反応(外で排尿しようとする時)
外でパンツを下ろそうとする時には、パンツを下ろすのを制止してポケットを指さす。それでも手渡せない場合は身体的ガイダンスを行う。 

教材教具など
トイレ標示の写真カード
ウルトラマンのシール
石けん

達成基準
誤反応がない日が3日間続いたら達成(トイレに行った日のみでカウントする。)

記録の取り方(般化場面と指導場面)
正反応…ポケットの写真カードを教員に手渡し、トイレで排尿することができた回数。

誤反応…外で排尿しようとするとき。

結果
 指導をはじめて9日目から誤反応がみられなくなり、達成することができた。
トイレを促すことを指導手続きからなくすことで,行きたくない時に促されるというFさんにとって分かりにくい場面がなくなり,行きたい時にトイレカードを渡すとトイレに行くことができるという分かりやすい場面になったと考えられる。
また,教員がトイレに付いていくことで,トイレに対する不安を軽減することができ,トイレに行かずに教室に戻ることがなくなった。

参考にした先行研究や事例など
2003国府小学部ケース4(おしっこに行きたいことを伝える)
2003国府中学部ケース(トイレに行こう)
    高等部ケース(先生と一緒にトイレに行こう)

トイレに対する負荷
A:先行条件 B:行動 C:結果
トイレに行きたい時 トイレに向かう 廊下で苦手な音が聞こえることがある(不安あり)↓

カードを手渡してトイレに行くとき
A:先行条件 B:行動 C:結果
\x{2460}\x{2461}トイレに行きたい時 \x{2460}\x{2461}カードを手渡してトイレに行く \x{2460}先生が付いてきてくれる(不安軽減)、トイレができてすっきり↑
\x{2461}石けんで手が洗える、シールがもらえる↑

外でトイレをしようとする時
A:先行条件 B:行動 C:結果
現在:トイレがしたい時

指導時:トイレがしたい時
現在:外でトイレをする

指導時:外でトイレをしようとする
現在:苦手な音が聞こえない、トイレができる↑

指導時:ズボンを下ろすのを止められる、トイレができない↓


第一系列のタイトル: 写真カードを教員に手渡せた回数(正反応)
Intervention1: カードを教員に手渡してからトイレに行くことができた回数   Intervention2:   
第二系列のタイトル: 外で排尿した回数(誤反応数)
Intervention1: 外で排尿した回数   Intervention2:   
記入日時 2006/01/31/17:22:10  No.107
記入者 MT.HK  E-Mail

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