200608



[TOP]  [新規データ登録]  [検索]  [修正・削除・データ処理


携帯カードのコミュニケーション
概 要
アイコンタクトやクレーンや噛みつき等にかわるコミュニケーション手段として,携帯したカードを使用できるようにしたい。自分の要求を伝え,応えてもらう成功経験を増やすことにより,情緒の安定につなげたい。本児の好子は,食べ物であり,遊ぶことが大変難しい。そのため遊びの場面で自発的な要求の表出がみられないので,今回の研究でひきだしていくこととした。

対象児のプロフィール
Oくん
小学部4年生
男児
自閉症

諸検査結果
PEPーR1歳7ヶ月 
(H18.8.29)

障害の特性
・言語はなく,「んー」「だー」の発声が時々みられる。

・スケジュールを具体物で示すと一人で移動することができる。

・課題・遊びともに1分〜最大15分くらいの細かいスケジュール設定が必要である。

・遊びの幅は少なく,感覚刺激を好む。
(砂・水・ツバを手にとって上から落とす,おふろ,台車,トランポリン)

・好んでいた遊びも時期,日によって全く受け付けなくなり継続が難しい。

・抱っこやおんぶが好きで,拒否されると情緒不安定になることもある。

・情緒不安定になると,泣く・うずくまる・噛みつく・ひっくり返って後頭部をぶつける等の行動がみられる。

・集団での活動・座っていることが苦手で,その場から走って逃げる。

・食に対する関心が非常に高く,食べ物があると一瞬で取って食べる。また,砂・ガラス・段ボール・洗剤・ 絵の具・尿等食べる。

・色分けのマッチングが得意である。

・嫌いな音には,耳ふさぎがみられる。









指導者
担任 S
授業の担当教員 A /B /C /D

般化場面の公園はEが担当

長期目標
日常生活場面で携帯の要求カードが使えるようになる。

短期目標
台車を押してもらう時に,プロンプトなしで携帯カードを教師に手渡すことができる。


指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
標的行動

1.教師が台車の横に立った時に,携帯カードを手渡す  ことができる。  

選んだ理由
  概要と同じ

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
・昨年度は,「課題を手伝ってほしい」「お菓子の袋を開けてほしい」場面で,机上に青いカードがあると教師に手渡すことができた。

・今年度当初は,携帯することを嫌がり捨てていた。生活単元の調理でウエストポーチの中にカードを入れ,「材料」を要求して応えてもらう学習により,一日携帯をすることができるようになった。

・遊びに関しては,好む活動をみつけることが難しい。前期の個別の指導計画で「遊びの時に10〜15分できる遊びが2つある」という目標で達成した遊びの一つが台車遊びであった。

・スケジュール箱に体育館を示すオブジェクトがある時,体育館へ行き台車に座ることが多かった。すぐに教師が押していた。

・ウエストポーチを1日中つけていることができるようになり,座った時に台車をたたくプロンプトをしてカードを手渡したら教師が動かしていた。

・ポーチをたたくプロンプトがないと,少し待って,あきらめてトランポリンを跳ぶ,ウロウロしてツバ遊びをする,体育館からでたがって不安定になる。

般化場面
廊下以外(体育館・公園)で台車に乗る場面

    

指導場面
学校生活の中で
・スケジュールに台車遊びのオブジェクトが置いてある時

・活動の選択場所で台車遊びのオブジェクトを選んだ時

指導手続
〈ベースライン〉
台車あそびのオブジェクトを新しくつくり,廊下で活動する。
台車に座った時,教師が横で立って20秒間待つ。
20秒後に自らウエストポーチを開ける行動がでないようなら,プロンプト(ポーチをたたく)をだす。

〈介入1〉
台車に座った時,教師が横に立って30秒待つ
手渡してこなければプロンプト(横に座って目を合わす)をだし,1分30秒待つ。
手渡してこなければプロンプト(ポーチをたたく)をだす。

〈介入2〉
台車に座った時,教師が横に立ったまま2分待つ。
手渡してこなければプロンプト(ポーチをたたく)をだす。






教材教具など
台車(Oくん専用で本物の車の座席つき!!)
台車置き場
ウエストポーチ
青色のカード
タイマー
台車のオブジェクト
活動の選択のオブジェクト

達成基準
私は,達成基準をどう決めたらよいのかわからなかったのです・・・

Oくんの特性から
・日によって試行回数が変わる
・少しの達成回数では,達成とすると定着されないのでは?との観点から

今回は,次の達成基準でしてしまいました。

〈介入1〉
 15日間で○と▲が90%以上
〈介入2〉
 7日間で○が90%以上
〈介入3〉
 7日間で○が90%以上

(全回数÷○(+▲)×100で算出)


しかし,本当は次の達成基準が理想だったのでしょうか・・・わからなくなってきました・・・

(介入1)
3日間続けて1試行中の生起率が80%以上
(介入2)
3日間続けて1試行中の生起率が80%以上

この場合,1試行中の回数を増やす
例:台車を動かして途中で止めて標的行動を生起する機会を増やす。

みなさんは,達成基準を決める際どう考えていますか?


記録の取り方(般化場面と指導場面)
〈ベースライン〉
横に立った時手渡せた ○ 2点
20秒後ポーチをたたくプロンプトあり △ 1点 
プロンプトありでも手渡さない × 0点

〈介入1〉
横に立った時手渡せた○ 2点
教師が目線まで座るプロンプトあり ▲ 1点
2分後ポーチをたたくプロンプトあり △ 1点 
プロンプトありでも手渡さない  × 0点

〈介入2〉
横に立った時手渡せた ○ 2点
2分後ポーチをたたくプロンプトあり △ 1点 
プロンプトありでも手渡さない  × 0点



指導期間
〈ベースライン〉
10月26日(木)〜11月2日(木)の5日間
〈介入1〉
11月8日(火)〜12月1日(金)の15日間
〈介入2〉
12月4日(月)〜12月13日(水)の7日間

結果
〈介入1〉
  達成(12月1日)
〈介入2〉
  達成(12月13日)


その他教師にカードを使って援助を求めた場面

 ・家庭科室や校門を開けてほしい
 ・遊びを終了したい(台車やプレイルーム)
 ・もう一度遊びをしたい(台車や足マッサージ)
 ・その場を退席したい
 ・うるさい音を静かにしてほしい
 ・高い所に登りたいので手伝ってほしい
 ・活動の選択場面で砂遊びがなかった時
 ・ジュースがほしい
(交流会でジュースを持っている小学生に渡そうとして 気づかれず,通りがかった教師に渡そうとした)


このように多くの般化場面がみられ,何かを伝えたい時にカードを手渡そうとしている。
以前なら泣く・噛みつく・ひっくり返って頭を打つ・直接取る等の行動がでていた。
応えてもらった後には笑顔がでていた。

考察
1.先行条件の操作
 「活動場所を変更し,刺激を少なくした」「遅延プロンプトを用い,少しずつプロンプトを少なくした」ことに効果があった。

2.標的行動に対する下位行動の獲得
・登校時から1日携帯し続けることの理解が難しかったため,調理の材料(好子)の要求学習を前期に行い,携帯し続けることができるようになっていた。
・「活動の選択学習」に取り組み,台車に乗った時の要求をできるかぎり高く設定できるようになってきていた。

3 共通の手続きのもとでの指導
 担任が手続きを考えて実践し,教科担任にも同じ手続きで実践していただけた。記録を取って気づいたことの報告を受けることができた。記録用紙に共通の手続きを記載しておくことで,確認ができた。数多くの教師に理解していただけると,Oくんが表出した時に即受容してもらえ,般化も多くでたと思われる。

4.情緒の安定への効果
体が大きくなるにつれ,情緒不安定になるとOくんにとっても教師にとっても危険な状態になっていた。自分の意思を伝えるスキルをつけ,伝わることが増えたことにより,噛みつく・ひっくり返る行動がなくなっている。


現在は,「台車遊びで離れた所にいる教師に手渡す」ことと「ドリンクのおかわり学習」実践を行っているところである。

研究前
A:先行条件 B:行動 C:結果
1.台車に乗ってやがて押してもらえる時
2.ポーチをたたくプロンプトある時
3.体育館で台車以外の遊具がある時
4.体育館でいる時
1.ななめ上をみている
2.カードを教師に手渡す
3.ちがう遊具の方へいく
4. ウロウロ歩く
1と2.教師が台車を押してくれる(↑)
3.トランポリンで遊ぶ(↑)
4. うまく遊べずに不安定になる(↓)

ベースライン時
A:先行条件 B:行動 C:結果
台車に座った時
教師が横で立つ
20秒後ポーチをたたくプロンプトあり
カードを教師に手渡す 教師が台車を押してくれる(↑)
自分の気持ちが通じる(↑)

介入1
A:先行条件 B:行動 C:結果
台車に座った時
教師が横で立つ時
教師が座って目を合わせるプロンプトあり
1分30秒後ポーチをたたくプロンプトあり
カードを教師に手渡す 教師が台車を押してくれる(↑)
自分の気持ちが通じる(↑)

介入2
A:先行条件 B:行動 C:結果
台車に座った時
教師が横で立つ時
カードを教師に手渡す 教師が台車を押してくれる(↑)
自分の気持ちが通じる(↑)


第一系列のタイトル: プロンプト(ポーチをたたく)なしでカードを手渡せた割合
Baseline: ベースライン    Intervention1: 指導手続き1    Intervention2: 指導手続き2    Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2006/10/03/19:38:51  No.285
記入者 S  E-Mail

現行ログ/ [1]
++コラボネット++

++マニュアル++
TOP
shiromuku(h)DATA version 4.00