概 要 |
本児のコミュニケーションの手段は、ほとんどが直接要求であるが、視線だけで要求していることもあり、担任に気づかれずに終わってしまうことがある。自分の思いが伝わらなくても、繰り返し要求したり、その場で不満を行動として表さないが、精神的に影響を及ぼしている可能性もある。そこで、本児の発達段階に合わせた方法として、自分の要求を具体物を使って、相手に確実に伝えられるようになって欲しいと考えた。
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諸検査結果 |
新版K式発達検査(平成15年9月22日) 姿勢・運動 1:6 認知・適応 1:0 言語・社会 0:10 全領域 1:1 PEP-R(平成15年3月17日) 発達年齢 0:10 S-M社会生活能力検査 社会生活年齢 1:0以下
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長期目標 |
自分の要求を具体物を使って伝えることができる。
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短期目標 |
喉が渇いた時に、自分からコップを大人に渡して要求することができる。
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指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
休み時間、ジュースが飲みたいことを、担任にコップを渡して要求する。
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指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
喉が渇いた時、手の届く場所にお茶やジュースの入ったペットボトルと空のコップがあれば、ペットボトルを自分の口に持っていったりペットボトルの口にコップをかぶせたりする。その後、教員にペットボトルを持ってきて要求できるが、ペットボトルや、コップがない場合は要求することができず、喉が渇いたことを伝えることができない。
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般化場面 |
休み時間に喉が渇いた時、自分からコップを大人に渡して要求することができる。
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指導手続 |
児童からは見えるが、手の届かない位置(setp1,ep2,step3)ペットボトル(お茶、ジュース)を用意しておく。自発的にコップ教員に手渡して、要求できない場合は、T2がプロンプトをだす。(身体的ガイダンス)徐々にプロンプトをフェイドアウトしていく。全てのステップにおいて、最初は身体的ガイダンスにより方法を伝える。 【ベースライン】 児童が椅子に座った状態で、目の前の机に空のコップを置く。向かいに教員が座りその机の上にお茶の入ったペットボトルを置く。児童からは見えるが手は届かない。(給食場面)プロンプトなしでの様子を3日間記録をとる。
【step1】 児童が椅子に座った状態で、目の前の机に空のコップを置く。向かいに教員が座りその机の上にお茶の入ったペットボトルを置く。児童からは見えるが手は届かない。(給食場面)
【step2】 児童は椅子に座った状態で、向かいに教員が座りその机の上にはお茶の入ったペットボトルを置く。児童からは見えるが手は届かない。1m離れた机に空のコップを置き、立ち上がって取りに行く。(給食場面) *【step3】に変更
【step3】 児童が椅子に座った状態で、隣の机に空のコップを置く。向かいに教員が座りその机の上にジュースの入ったペットボトルを置く。児童からは見えるが手は届かない。(給食場面) ※ジュースを少しずつ入れて要求の機会を増やす。
【step4】 教室の決められた場所(教室の前方の机の上)に空のコップとジュースの入ったペットボトルを置 く。T2が後方から身体的ガイダンスでコップが取れるように支援する。徐々に遅延プロンプトにしていく。
【step5】 教室の決められた場所(教室の後方のロッカーの上)に空のコップを置く。児童がコップを見て振り向いたら、T2が後方から身体的ガイダンスでコップが取れるように支援する。徐々に遅延プロンプトにしていく。
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教材教具など |
コップ、お茶、ジュース、机、ロッカー
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達成基準 |
【step1】 3日間プロンプトなしでコップを教員に手渡して要求。 【step2】 3日間プロンプトなしでコップを教員に手渡して要求。 【step3】 5日間プロンプトなしでコップを教員に手渡して要求。 【step4】 5日間プロンプトなしでコップを教員に手渡して要求。 【step5】 5日間プロンプトなしでコップを教員に手渡して要求。
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記録の取り方(般化場面と指導場面) |
【ベースライン】 step1と同じ条件の基プロンプトなしでの正反応回数と誤反応回数を記録する。
【指導場面】 正反応回数・・・コップを教員に手渡して要求した回数 誤反応回数・・・その他の方法で要求した回数 正反応回数と誤反応回数を1日ごとに記録する。
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指導期間 |
【step1】 平成17年10月4日〜10月14日 【step2】 平成17年10月17日〜10月25日 (step3に変更) 【step3】 平成17年11月2日〜11月16日 【step4】 平成17年11月17日〜11月25日
【step5】 平成17年12月
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結果 |
【step1】給食時(お茶) 指導開始初日は、身体的ガイダンスによりコップを手渡す回数を増やした。その後、自発的にコップを5回手渡すことができた。2日目から4日目までは最初に身体的ガイダンスが必要であったが、4連休明けの7日目からは、3日連続ガイダンスなしで要求することができた。11日目で達成した。(おかわりとして差し出した回数を全てカウント) 【step2】給食時(お茶) 9日間(土、日を含む)身体的ガイダンスをだして指導したが、自発的にコップを取りに行くことはなかった。指導方法を【step3】に変更することにした。 【step3】給食時と休み時間(ジュース) 6日間(土、日、祝日を含む)身体的ガイダンスが必要であったが、7日目からはガイダンスなしで5日連続(土、日をはさむ)要求することができた。 【step4】休み時間(ジュース) 9日間(土、日を含む)のうち2日間のみガイダンスなしで要求することができた。 【step5】休み時間(ジュース) 最初の2日間は身体的ガイダンスが必要であったが、次の日からの3連休をはさみ2日連続ガイダンスなしで要求することができた。冬休みをはさみ4日連続(土、日をはさむ)要求することができた。
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考察 |
【step1】給食時 指導開始前は、直接ペットボトルに手を伸ばすことが多かったが、お茶を注ぐ量を少なくし要求回数を増やした。最初は身体的ガイダンスが必要であったが、まだ暑い時期でもあり、4連休明けでもガイダンスなしでお茶を要求することができた。ここでは、おかわりとしてコップを差し出した回数もカウントしている。11日で達成した。(うち4日間休み) 般化場面として、お皿を手渡しておかわりを要求することができるようになった。 【step2】給食時 9日間(土、日を含む)の身体的ガイダンスを行っての指導であったが自分からの要求はなかった。原因として、お茶が好子として機能しなくなり、給食の方に集中してしまったこと。1メートルという距離が離れすぎだったこと。座っている状態から一度立ち上がって、コップを取りに行かなければならなかったことが考えられる。そこで【step3】に指導を変更した。 【step3】 グループでの検討の結果、好子として機能を果たしていないお茶をジュースに変更し、コップの位置を児童が椅子に座った状態から手を伸ばせば取れる隣の机に変更して指導を行った。6日間(土、日、祝日を含む)身体的ガイダンスが必要であったが、7日目からはガイダンスなしで5日連続(土、日をはさむ)要求することができた。ジュースが好子としての機能を果たし、座った状態でコップに手が届いたことが児童にとって分かりやすかった。この結果から、より一層のスモールステップでの指導が必要であることがわかった。 【step4】 9日間(土、日を含む)のうち2日間のみプロンプトなしで要求することができた。要求がない日もあり、指導が定着せず、児童にとって分かりにくい環境であった。また、普段からおこなっている目をあわせるなどの対応もプロンプトの1つとなり、児童にとっては、かなりの重要なポイントであった。コップを渡すとジュースがもらえることは理解しており、コップの位置も把握できている。stepが変わるごとに環境が変わるため、飲んでもよいかという確認を求めていることがABC分析で分かった。【step5】に変更。
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参考にした先行研究や事例など |
コラボレーションプロジェクト2004 1−2自分の要求をことばやカードで教師に伝えられる
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step4教室の決められた場所に空のコップとペットボトル(ジュース)を置く\x{2460}
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
コップと離れた位置にあるジュースを見て、それを飲みたい時 |
教員に近づいてくる |
教員が気づいて、目をあわしてくれる(↑) |
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step4教室の決められた場所に空のコップとペットボトル(ジュース)を置く\x{2461}
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
教員が気づいて、目をあわしてくれた時 |
教員を見つめる(許可) |
教員が声かけ(指差し)をしてくれる(↑) |
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step4教室の決められた場所に空のコップとペットボトル(ジュース)を置く\x{2462}
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
教員が声かけ(指差し)をしてくれた時 |
コップを取りに行く |
ジュースが飲める(↑) |
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step4教室の決められた場所に空のコップとペットボトル(ジュース)を置く
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
\x{2460}決められた場所にコップがあり、ジュースが飲みたい時 \x{2461}決められた場所にコップがない時 |
コップを取りに行く |
\x{2460}ジュースが飲める(↑) \x{2461}ジュースが飲める(↓) |
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第一系列のタイトル: 正反応数(コップを渡して要求) |
Baseline: ベースライン
Intervention1: step1:コップを手の届くところに提示(お茶)
Intervention2: step2:コップを1m離れた場所に提示(お茶)
Intervention3: step3:コップを手を伸ばした場所に提示(ジュース)
Intervention4: step4:教室の決められた場所に空のコップを置く。(ジュース)
Intervention5:
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第二系列のタイトル: 誤反応数(そのほかの方法で要求) |
Baseline: ベースライン
Intervention1: step1:コップを手の届くところに提示(お茶)
Intervention2: step2:コップを1m離れた場所に提示(お茶)
Intervention3: step3:コップを手を伸ばした場所に提示(ジュース)
Intervention4: step4:教室の決められた場所に空のコップを置く。(ジュース)
Intervention5:
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記入日時 2005/09/16/18:02:50
No.16
記入者 HS TM
E-Mail
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