200620



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排尿を確実に伝えるための支援
概 要
 Iさんは四肢にマヒがあり,移動手段は寝返りと車イスである。日常生活で毎日繰り返し聞いていることばはほぼ理解できており,それを手がかりに状況判断をしているのではないかと考えられる。発声はあるが,発語はみられず,視線を向けて声を出したり,手を伸ばしたりという動作で要求を伝えている。
 排尿については,以前はトイレットチェアーを使用していたが,座位姿勢がとりにくかったためか,学校で排尿することはほとんどなかった。そこで,マットで横になった状態で紙パンツに排尿をするようにすると,毎日定時排尿ができるようになった。排尿した後には,発声し担任に知らせることができるが,声の種類に一貫性がみられないため,担任以外の教員には伝わりにくい状態である。
 そこで,担任以外にも排尿したことを確実に伝えられるよう,声とともに動作を加えて伝える手段を獲得するよう実践を進めることにした。

対象児のプロフィール
小学部5年生 女児
I さん
脳性マヒ

諸検査結果
新版K式発達検査(H19.2.1)
姿勢・運動 0:3
認知・適応 0:3
言語・社会 0:8
全領域 0:4

障害の特性
発声はあるが,発語がない。
四肢マヒがあり,寝返りで移動することができるが,普段は車イスを使用。
日常生活で,毎日繰り返し聞いていることばは理解していると思われる。

指導者
H,T(クラス担任)

長期目標
学校で2回紙パンツに排尿し,教員に知らせることができる。

短期目標
昼食後、紙パンツに排尿し,発声した後,連続5回以上自分の腰を叩いて教員に知らせることができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
昼食後、紙パンツに排尿した後、発声し、自分の腰を叩いて教員に知らせることができる。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
昼食後,Iさんがマットの上で横になり,紙パンツに排尿する体勢をとった状態。
1日間。

般化場面
家庭で紙パンツに排尿した後,母親に知らせる。

指導場面
昼食後,紙パンツに排尿した時

指導手続
【指導開始日のみ】
1)昼食後,Iさんがマットの上で横になり,紙パンツに排尿する体勢で,「オシッコします」「出たらトントンしてよ」とことばかけをする。
2)Iさんが発声し,教員に知らせることができた後,後方から他の教員が近づき,紙パンツに排尿しているか確認する。
3)*紙パンツに排尿していた場合
  教員が「出たらトントンしてよ」とことばかけをした後,他の教員がIさんの手を持ち,Iさんの腰を5回叩く。その後,教員はIさんに近づき,手を叩いて「かしこい,おしっこでたなぁ。」と賞賛する。「おしっこ替えるな」と伝え,紙パンツを交換する。
 *紙パンツに排尿していなかった場合
  他の教員はその場を離れる。教員は関わりを持たないようにする。

[step1] ことばかけで自分の腰を叩くことができる
1)昼食後,Iさんがマットの上で横になり,紙パンツに排尿する体勢で,「オシッコします」「出たらトントンしてよ」とことばかけをするとともに,Iさんの手を持ちIさんの腰を5回叩く。
2)Iさんが発声し,教員に知らせることができた後,後方から他の教員が近づき,紙パンツに排尿しているか確認する。
3)*紙パンツに排尿していた場合
  教員が「出たらトントンしてよ」とことばかけをした後,自主的に行動が出るのを待つ。10秒経って行動が出ない場合は,他の教員がIさんの手を持ち,身体的ガイダンスで腰を叩く動作を促す。  

 *紙パンツに排尿していなかった場合
  他の教員はその場を離れる。教員は,「オシッコします」「出たらトントンしてよ」とことばかけをする。

 *5日目からの変更点
  ・排尿前のことばかけを「出たらトントンしてよ」から「出たら叩いてよ」に変更。
  ・排尿していた場合のことばかけは「出たらトントンしてよ」から「出たらどうするんだった?」に変更。
  ・関わる教員を2人から1人に変更。



[step2] 身体的ガイダンスで自分の腰を叩くことができる
1)昼食後,Iさんがマットの上で横になり,紙パンツに排尿する体勢で,「オシッコします」「出たら叩いてよ」とことばかけをするとともに,Iさんの手を持ちIさんの腰を5回叩く。
2)Iさんが発声し,教員に知らせることができた後,後方から教員が近づき,紙パンツに排尿しているか確認する。
3)*紙パンツに排尿していた場合
  教員が「出たらどうするんだった?」とことばかけをした後,自主的に行動が出るのを待つ。10秒経って行動が出ない場合は,教員がIさんの手を持ち,身体的ガイダンスで腰を叩く動作を促す。  
 *紙パンツに排尿していなかった場合
  教員は「オシッコします」「出たら叩いてよ」とことばかけをし,その場を離れる。



達成基準
[step1]
ことばかけで,5日連続自分の腰を叩くことができる。
[step2]
身体的ガイダンスで,5日連続自分の腰を叩くことができる。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
[step1]
・ことばかけで腰を叩く動作がでた場合…2点
・ことばかけ→身体的ガイダンスで,腰を叩く動作がでた場合…1点
・ことばかけ→身体的ガイダンスで,腰を叩く動作がでなかった場合…0点

[step2]
・ガイダンスなしで,腰を叩く動作がでた場合…3点
・身体的ガイダンスで,腰を叩く動作がでた場合…2点
・身体的ガイダンス→ことばかけで,腰を叩く動作がでた場合…1点
・身体的ガイダンス→ことばかけで,腰を叩く動作がでなかった場合…0点

結果
[step1]
 5日目と7日目は,ことばかけと身体的ガイダンスが必要であったが,8日目(11月21日)からは,5日連続でことばかけのみで腰を叩くことができ目標を達成した。

[step2] 
 4日目(12月7日)を除き,身体的ガイダンスの後の「出たらどうするんだった?」ことばかけで9日目(12月15日)まで腰を叩く動作がみられた。10日目(12月18日)には,身体的ガイダンスのみで腰を叩く動作がみられ,11日目(12月20日)には,ガイダンスなしで自発的に腰を叩く動作がみられた。その後冬休みに入り,休み明けの12日目(1月11日)から17日目(1月22日)までは,16日目(1月18日)を除き,再び身体的ガイダンスの後のことばかけが必要となった。18日目(1月23日)以降は身体的ガイダンスのみで腰を叩く動作がみられ,目標を達成した。19日目(1月24日)には,ガイダンスなしで自発的に腰を叩く動作がみられた。

考察
[step1]
 3日目からの2日間は,排尿後に「出たらトントンしてよ」とことばをかけると目の前で手をパチパチと叩く動作がみられた。その原因としては,Iさんにとって「出たらトントンしてよ」の「トントン」ということばが目の前で手をパチパチと叩く事につながっていたのではないかと考えられる。
 そこで,5日目から排尿前のことばかけを「出たらトントンしてよ」から「出たら叩いてよ」,排尿後のことばかけを「出たらトントンしてよ」から「出たらどうするんだった?」に変更したところ,次の2日間は目の前で手を叩く動作がみられたが,7日目(20日)以降はその動作はみられなくなった。
ことばかけのみで継続して腰を叩く動作出て,目標を達成したことから,この動作は定着したと考えられる。

[step2]
 4日目(12月7日)は,クラスにいつもと違った環境が生じたため,集中することができなかったと考えられる。11日目(12月20日)にガイダンスなしで自発的に腰を叩く動作がみられた後,4日間ことばかけが必要となったのは,長期休業をはさんだためであると考えられる。
 Step1の変更後から8日で目標を達成したのに対してStep2では達成までに22日間を要したことについては,Iさんにとってはことばかけより身体的ガイダンスの方が理解しにくく,定着までに日数を要したと考えられる。

A:先行条件 B:行動 C:結果
おしっこが出る 発声して,自分の腰を叩く 褒められる(↑)

A:先行条件 B:行動 C:結果
おしっこが出る 教員を見て発声する 褒められない(↓)

A:先行条件 B:行動 C:結果
おしっこが出る 発声して,自分の腰を叩かない 褒められない(↓)

A:先行条件 B:行動 C:結果
おしっこが出ていない 発声して,自分の腰を叩く 褒められない(↓)


第一系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2006/11/01/19:09:35  No.308
記入者 H、T  E-Mail

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