200623



[TOP]  [新規データ登録]  [検索]  [修正・削除・データ処理


中学部1年の自閉症児が教員の質問に対して、質問にあった返答をすることができるための指導
概 要
本生徒は、今年度地域の小学校から本校中学部に入学してきた。入学当初は、質問や促しを行えば、簡単な言葉(単語や二語文)で答えることができるが、自発的な発話は非常に少なかった。6月ごろより、好きな友だちや教員ができ、自発的な発話がたくさん増えた。相手とのコミュニケーションを楽しむようになった反面、友だちを挑発するような言葉かけや好きな教員に対して「〜先生一番大好きです」等の言葉かけが目立つようになってきた。特に、特定の教員への「〜先生大好きです」「〜先生お姉さんです」の言葉かけは、記録をとってみると1日に20〜30回程度、生起していた。また、その言葉かけは特定の教員を目にした時と登校後、休み時間等、本生徒が特に何もすることがない時に頻繁に見られた。また、言葉かけを行った後、その教員から「ありがとう」等の承認もしくは注目を求めていることもわかった。
 そこで、本生徒の特定の教員に対する不適切な言葉かけの代替行動として教員の質問に適切に答える行動を設定し、その場にあった返答を行うことで特定の教員の承認もしくは注目を受けるようにしていくよう進めていくこととした。

対象児のプロフィール
中学部1年 自閉症 男児

諸検査結果
WISCー3  IQ55(動作性IQ75 言語性IQ46) (2005年8月)

障害の特性
儀式的、パターン的な行動が見られる こだわりがある

指導者
A&M

長期目標
特定の教員に対する不適切な言葉かけ「〜先生大好きです」を減らす。
(教員や友だちの質問に対して適切な返答をすることができる。)

短期目標
色々な教員の質問に対して、質問にあった返答をすることができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
特定の教員の質問に対して、質問にあった返答をすることができる。
〈理由〉
本生徒の特定の教員への不適切な言葉かけ「〜先生大好きです」は、特定の教員の注目あるいは承認を獲得するための行動であると考えた。そこで、不適切な言葉かけにはは消去し、その代わりに質問に対して適切な返答をすることで特定の教員の注目や承認を獲得できるよう指導を行うことにした。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
・不適切な言葉かけ「〜先生大好きです」及び「〜先生お姉さんです」は、登校後や休み時間、その他特定の教員を見かけるたびに生起していた。〈1日20〜30回程度〉
・質問に対して返答するコミュニケーションスキルとしては、日常的な簡単な質問に対して、首を縦もしくは横に振ることでYES・NOを示したり、単語や短い言葉で答えることができる。(「8日は何がありましたか」→「運動会」など)

般化場面
色々な教員や友だちの質問に答えることができる。

指導場面
特定の教員に「〜先生大好きです」「〜先生お姉さんです」と言ってきたとき

指導手続
1.本生徒が、特定の教員に「〜先生大好きです」「〜先生お姉さんです」と言ってきたとき、その言葉かけには反応を示さない。
2.「あっ、そうそう」等本生徒の注意喚起をしてから、「**くん、昨日何食べた?おいしかった?」
「**くん、さっき誰先生と勉強したの?」「**くん、カレーとシチューどっちが好き?」等の質問をする。
3.質問を数回行った後、「次、何するの?」と質問し、次の活動に促す。

教材教具など
特になし

達成基準
5日間連続して80%質問に合った返答ができたら、達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
質問した回数をカウントし、その中で質問にあった返答ができた回数をカウントして、1日ごとの適切な返答の割合を記録していく。
特定の教員への不適切な言葉かけの回数も日ごとにカウントしていく。

指導期間
2006.10.

結果
「〜先生大好きです」という言葉かけに対しては無視をして消去し、質問に答えることで好きな教員と会話ができるという代替行動を設定することで、速やかに不適切な言葉かけは減少した。

考察
最初に不適切な言葉かけを無視しただけのときは、どうしたら反応してもらえるうだろうと考えて、「こっちを見てくれ」等色々な反応が見られたが、代替行動を設定することで適切な行動がすぐに身に付いた。その他、「おはよう」「こんにちは」等の適切な言葉かけには、反応するように設定しておいたので、挨拶等の言葉かけも増えた。
般化場面のその他の教員への質問に答えるという行動は、質問が答えられる内容のものであれば、すでに習得していたので、指導としては実施しなかった。
2ヶ月後の12月地点でも、特定の教員への言葉かけとして「〜先生大好きです」は1度も生起しておらず、言葉かけが全体的に半減し、挨拶が中心となり、対象の教員が気になるほどのことはなくなったとの報告を受けている。

Before
A:先行条件 B:行動 C:結果
〜先生を見かけたとき 「〜先生大好きです」「〜先生お姉さんです」 「ありがとう」(↑)
〜先生と話ができる(↑)
期待した返答が返ってくる(↑)
承認が得られる(↑)

After
A:先行条件 B:行動 C:結果
〜先生を見かけたとき 「〜先生大好きです」
「〜先生お姉さんです」
期待した返答がない(ー)〜先生と話ができない(−)

After
A:先行条件 B:行動 C:結果
〜先生が質問をしたとき 質問にあった返答をする 〜先生と話ができる(↑)


第一系列のタイトル: 不適切な言葉かけの回数
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導場面1  
第二系列のタイトル: 質問に対して適切な返答をした割合
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導場面1  
記入日時 2006/11/02/22:02:06  No.309
記入者 A  E-Mail

現行ログ/ [1]
++コラボネット++

++マニュアル++
TOP
shiromuku(h)DATA version 4.00