200628



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小学部中学年の自閉症児に、登校時、信号を渡るスキルを指導する
概 要
一人で通学バスの乗車場所まで登校できることは、中学部、高等部へと進むにしたがって求められる能力であり、卒業後の社会生活やこれからの家庭生活での余暇活動において自立的活動につながる重要な能力である。本児の場合、小学部3年になり、徐々に保護者が要望しはじめたこともあり、本事例で取り組むこととした。

対象児のプロフィール
P児 小3女児 自閉症

諸検査結果
S-M社会生活能力検査:4歳5ヶ月(H18.2実施)

障害の特性
初めての活動や他者に注目されることが苦手である。
手順所に示すことやスケジュールに示すことを忠実に遂行できる。

指導者
ym

長期目標
8時10分に家を出て、通学バスが停まる場所まで一人で歩いていける

短期目標
晴天日の時、8時10分に家を出て、通学バスが止まる場所まで一人で歩いていける

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
〈標的行動〉
晴天日の登校時、手順所に従って正しく信号を渡る。
【ベースライン】母(もしくは担任)がP児の横を歩く条件
【step1】母(もしくは担任)がP児の後(2〜5m後)を歩く条件
【step2】母(もしくは担任)がP児に見えない位置から見守り歩く条件
〈この標的行動を選んだ理由〉
現在、家からバス停までの登校は、母の運転する自転車の後部座席に乗って行っている。しかし、小学3年生となり、身体的成長によって自転車の後部座席に乗って登校するのに限界を感じ始めてきたことを、保護者からうかがった。
自立通学するには、公道の歩行ルールや信号の理解、横断歩道の渡り方等、あらゆるスキルが必要であり、これらの複数のスキルを身につけることが求められる。中学部、高等部、さらには卒業後に公道を歩行する機会は増加し、地域社会の中で自立生活を送る上で非常に重要な能力となってくる。
そこで、短期目標に示す行動を以下に時系列で課題分析した(課題分析A)。

1 時計の時間を確認して8:10に家を出る
2 マンション駐車場の端を歩いてマンションの敷地外に出る
3 マンションを出て向かいの歩道に渡る
4 歩道を東に向かって横断歩道に突き当たるまで歩く
5 R192につきあたるまで北に向かって歩道を歩く
6 グラウンドに向かって(東に向かって)、横断歩道の手前で一度停止する
7 a信号が青のときは横断歩道を歩いて渡る
  b信号が赤のときは横断歩道手前で止まって待ち、信号が青になるのを見る
   信号が青になったら横断歩道を歩いて渡る
8 グラウンドに向かって(東に向かって)、花壇横(歩道の左側)を歩く
9 バス停の看板前で止まり、バスが来るのを待つ
10 バスが来たら乗車する

次に、7月まで取り組んできた、指定時間が来たら、教室からバス車庫まで歩いて下校するといった行動について、課題分析して以下に示す。この行動は一人で行えている。(課題分析B)

1 指定時間(提示したデジタル数字とデジタル時計とをマッチング)がきたら、担任に時間を告げる
2 時計をトラジッションコーナーに置き、教室を出る
3 下駄箱で靴を履き替える
4 児童玄関を出てすぐ左の歩行者通路を職員玄関前に向かって歩く
5 職員玄関から運動場の間の道を車が通行していない端を歩いてバスに向かう
6 一人でバスのある車庫に向かう

課題分析AとBを比較してみると、K児の場合、朝に家を出発することと昼に教室を出発することの状況の違いはあるが、指定時間に出発することは般化しやすいと思われる。また、公道と学校敷地内の歩行者通路との差はあるが、指定したルートで歩行者通路を歩くことも可能であると考えられる。しかし、教室からバスの車庫の間は、学校敷地内であるため、横断歩道は存在しないのに反し、家からバス停までの通学路には、横断歩道(信号あり)が存在する。横断歩道の通過は、買い物学習時にクラスメートと手をつないで、担任の声かけ(赤です、止まります や 青です、車来ていません、渡ります)がある条件下では行うことができているが、一人では取り組んだことがない。そこで、課題分析Aの6と7に焦点をあて、標的行動とした。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
母(もしくは担任)がP児の横を歩く条件にて行った。
課題分析は以下のとおりである。
信号は赤であった。

1横断歩道の手前で一旦停止する ○
2信号を見る          ×(指さしあり)
3信号が青になるのを待つ    ×(声かけあり)
4青になったら歩いてわたる   ×(指さし・声かけあり)

(指導前の本児の実態)
学校の買い物学習にて、信号を渡る学習の機会があった。買い物学習の前に、信号を渡るモデリングビデオを視聴していく。実際の信号前では、一旦停止は自らで来た。教師が信号を指さしして色を尋ねると、赤(もしくは青)と言葉で答えることができていた。横断歩道を渡るときは教師や友達に続いて渡っていたため、自分で信号の色から渡ることができるか渡ることができないかを判断していたかどうかは不明である。

 

般化場面
1)登校時:手順書なし
2)学校:買い物学習の時
3)学校:校外学習(遠足等)の時
4)家庭:家族と買い物に行く時

指導場面
家からバス停まで徒歩で向かう途中にある横断歩道(信号なし)を渡る場面
Am8:20頃。

指導手続
・晴天日に家を8:10に出発した時に取り組む。(雨天時は傘を差す行動が付加されるため)
【step1】母(もしくは担任)がK児の後(2〜5m後)を歩く条件
 母(もしくは担任)がK児の後からついていく。
【step2】母(もしくは担任)がK児に見えない位置から見守り歩く条件
 母(もしくは担任)はK児に見えないようについていく。
Step1、2はともにABC分析の通りの手続きを行うこととする。

教材教具など
文字・写真で示した手順カード

達成基準
各stepとも手順カードの示すとおりに横断することが3回続けてできたら達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
課題分析に示した各行動について、赤信号のときと青信号のときの2場面について、
プロンプト(身体的ガイダンス、声かけ、指さし)なくできた・・・1点
プロンプトが必要であった・・・0点
場面1の信号が赤のときは4点満点、場面2の信号が青のときは3点満点とする。


課題分析
場面1 信号が赤のとき
1横断歩道の手前で一旦停止する
2信号を見る
3信号が青になるのを待つ
4青になったら歩いてわたる

場面2 信号が青のとき
1横断歩道の手前で一旦停止する
2信号を見る
3歩いてわたる

グラフの縦軸には、各場面の課題分析における合計点を表した。

指導期間
10月11日〜12月

ビフォー(赤信号のとき)
A:先行条件 B:行動 C:結果
横断歩道
赤信号
他者が止まっている状況
教師が後方にいる
立ち止まる 他者も同じように立ち止まっている安心感(↑)

ビフォー(青信号のとき)
A:先行条件 B:行動 C:結果
横断歩道
青信号
他者が横断している状況
教師が後方にいる
立ち止まる
→(不安であるため)後方にいる教師を見る

→(横断していいのかどうか)教師のプロンプトを待つ
教師のうなずきによるプロンプトがある
→横断できることが分かり、歩いて渡る(↑)

教師のプロンプトがない
→信号が赤に変わり横断できなくなるため、立って待つ(−)

アフター(赤信号のとき)
A:先行条件 B:行動 C:結果
赤信号
他者が止まっている状況
教師が後方にいない
手順カードあり
手順カードを見る
カードに示す信号の写真と実物の信号をマッチングさせる
歩いてはいけないことが分かる

→「青信号に変わるまで信号を見続ける」という次行うべき行動が分かる(↑)

アフター(青信号のとき)
A:先行条件 B:行動 C:結果
青信号
他者が横断している状況
教師が後方にいない
手順カードあり
手順カードを見る
カードに示す信号の写真と実物の信号をマッチングさせる
歩いてよいことが分かる
→信号を横断できる(↑)


第一系列のタイトル: 信号が赤のとき
Baseline: ベースライン   step1: step1   step2: step2  
第二系列のタイトル: 信号が青のとき
Baseline: ベースライン   step1: step1   step2: step2  
記入日時 2006/11/03/16:31:16  No.310
記入者 ym  E-Mail

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