200631



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ぞうきんを使用した階段の拭き掃除のスキルを教える
概 要
清掃活動は、衛生的な生活を送るために必要不可欠な活動である。清掃のスキルを一つでも多く身につけ、身の回りを清潔に保つことは望ましい。また、階段掃除の場合、一つの清掃方法を獲得することで、ほぼどのような階段でも般化して清掃できると考えられる。この事例では、ほうきで階段を掃いた後、ぞうきんがけをして仕上げるという階段掃除の指導を行う。さらに、家庭での般化をねらう。

対象児のプロフィール
小4女児 自閉症

諸検査結果
PEP-R 1歳8ヶ月(H15.3)

障害の特性
視覚的な認知力が高く、文字に興味がある。習得した活動は確実に一人で行うことができる。
手先が不器用で、身体模倣はあまり得意ではない。

指導者
担任1名(Step1)・保護者(Step2)

長期目標
清掃道具を使用して、掃除をすることができる。

短期目標
階段2階から1階(学校では踊り場)までを、ほうきで掃いた後、ぞうきんがけをすることができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
階段2階から1階(学校では踊り場)までを、ほうきで掃いた後、ぬらしたぞうきんを絞った後に階段を拭くことができる。
【Step1】教室横の階段2階から踊り場までを掃除する条件
【Step2】家庭の階段2階から1階までを掃除する条件

(標的行動とこれを選んだ理由)
前年度にほうきでの階段掃除の指導を行い、スキルを身につけることができた。今年度はステップアップし、ぞうきんを使用した掃除に取り組むこととした。ぞうきん絞りは両手を動かすため、手先が不器用なJ児にとってはよい手の運動となると考えた。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
ぞうきん絞りは両手で握るのみであり、水が垂れ落ちて絞ることができていなかった。また、階段をぞうきんで拭くことに関しては、階段の横幅がぞうきんよりも大きいこともあり、全面を拭くことができていなかったがそれで掃除を終わろうとする様子が見られた。

般化場面
1.家庭での階段掃除
2.教室横、家庭以外の階段掃除

指導場面
お手伝いの時間(月〜金曜日)

指導手続
【ベースライン】
スケジュールに「かいだんそうじ」を提示し、トランジッションコーナーには手順書を用意しておく。
【Step1】教室横の階段2階から踊り場までを掃除する条件
【Step2】家庭の階段2階から1階までを掃除する条件

1.ほうきを使用して階段の掃き掃除を行う。
2.バケツを取り出す。
3.バケツ内の線まで水を入れる。
4.ぞうきんをバケツに入れる。
5.5秒間水が垂れ落ちない程度にぞうきんを絞る。
  (左端5回→真ん中5回→右端5回)
6.階段を拭く。
  (左→右→左の1往復)
7.ぞうきんをバケツに入れる。
8.5秒間水が垂れ落ちない程度にぞうきんを絞る。
  (左端5回→真ん中5回→右端5回)
9.ぞうきんを洗濯ばさみではさむ。
10.バケツの水を捨てる。
11.バケツを片づける。
12.手を洗う。

教材教具など
ほうき、ちりとり、ぞうきん(3本ライン入り)、バケツ(カラーテープ付)、洗濯ばさみ、手順書、数字カード

達成基準
【Step1】【Step2】とも、12項目全てが満点(36点)で5回連続することができた場合。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
◎(3点):一人でできる
○(2点):声かけでできる
△(1点):指さしor模倣でできる
×(0点):身体的プロンプト

指導期間
2006年11月8日〜12月30日

結果
 手先が不器用なため、指導開始直後はぞうきんを握るのみで絞ることができなかったが、指導を重ねるにつれ、手をねじるという行動が学習できた。また、専用の3本ライン入りのぞうきんを使用したり、絞る回数を設定することで手順書も十分に理解でき、有効に利用できていた。絞り方が緩い場合もあるが、現在は5カウント目で特に力を入れて絞ることができるようになっている。
 バケツへの水の入れ方は、バケツ内のラインを超えて水を注ぎ続けるという状態が継続した。そこで、対面学習の時間帯に取り出し学習を行い、容器内のラインまで水を注ぐ練習を行った。身体的プロンプトで最初は練習し、次に声かけでの支援で何度も繰り返し練習を行うと、注いでいた水をラインで止めることができるようになった。翌日階段掃除の場面に変更しても、バケツ内のラインで水を止めることができた。
 上記の指導後、達成基準に近づき、Step1は12月19日に達成することができた。また、達成2日前より手順書を使用しなくても(手順書を持ち運ぶことを忘れたと思われる)全ての手順を確実におさえて階段掃除することができていた。
 Step2では、家庭の階段で行った。保護者の方に協力を得て、記録も取っていただいた。指導初日は、場所や状況が異なることもあり、ほとんど声かけや指さしが必要であったようだ。しかし2日目以降、必要時の支援は声かけのみで、4日目には満点を得ることができた。それ以降満点が続き、達成している。
 指導前、保護者の方から階段の面全てを拭くことが困難であると相談を受け、今回の指導形態(1往復拭く)を進めた結果、家庭の階段でも面全てを拭くことができるようになったようである。また、長方形ではない三角形の部分も、角をなぞるように全て拭くことができたと記録されている。
 Step2では、達成直後も階段掃除を継続してくださり、正月3日間を休んでもその後も一人で最後まで掃除できていたようだ。

考察
 今回の指導を振り返り、練習の積み重ね、指導方法変更を行う教員側の思考の柔軟性、家庭との連携など、大変重要であるポイントを理解することができた。
 J児にとって、継続した指導は、手順書と行動、行動と理解など、全てを結びつける結果となった。また、指導途中で伸び悩んでいる行動についてさまざまな先生方からアドバイスをいただいたことで、指導方法を見直し、目標達成することができた。家庭との連携に関しても、学校だけで終わっていては全く意味がないと強く感じた。
 J児にとって、写真付き手順書や、回数や位置を設定した指導方法、見てわかる教材などが非常に有効であったと思われる。さらに、それを教員は十分に理解すべきであり、今後も活かし、家庭にも般化できるよう連携をとっていかなければならないと考える。

ベースライン ぞうきんの絞り方
A:先行条件 B:行動 C:結果
ぬれた通常のぞうきん

手順書の活用なし
ぞうきんを両手で握る 教員が上から手を添えてぞうきんを絞らされる(↓)
いつが終わりかわからない(↓)

Step1 ぞうきんの絞り方
A:先行条件 B:行動 C:結果
ぬれた専用ぞうきん(3本ライン入り)

手順書の活用(写真)
左から順番に5回ずつ両手をねじってぞうきんを絞る
(左端→真ん中→右端)
教員に「よくできました。」と誉められる(↑)
活動を止められない(↑)
終わりがわかる(↑)

Step1(11/20まで) バケツへの水の入れ方
A:先行条件 B:行動 C:結果
手順書あり

教員の指さしあり
水がバケツのラインを超えても出したままにしておく 再度水を入れるよう促される(↓)
教員の「とめる」の声かけで水を止め、次の活動に進むことができる(↑)

Step1(11/27から) バケツへの水の入れ方
A:先行条件 B:行動 C:結果
手順書あり

前日に対面学習での指導あり
バケツのラインまで水がたまると蛇口をひねって水を止める 教員に「そうそう。ピンポン。」と誉められる(↑)
次の活動に進むことができる(↑)


手順書

スケジュール

第一系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Step1: Step1   Step2: Step2  
第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Step1: Step1   Step2: Step2  
記入日時 2006/11/10/00:56:19  No.319
記入者 YC  E-Mail

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