2005-10



[TOP]  [新規データ登録]  [検索]  [修正・削除・データ処理


小学部高学年の知的障害児に対する友だちがしている遊びに「入れてください」と言うための支援
概 要
Jさんは,日常生活で必要なことばはほぼ獲得しており,何度も経験したことや繰り返し行われることについては,教員や友だちとおしゃべりすることができる。しかし,自分のしたいことや相手にしてほしいことがある時は,相手を見つめてアプローチを待つことが多く,自分から話しかけることはほとんどない。問いかけにも肯定,否定の意思表示として頭を上下,左右に振る,もしくは指差しで意思を伝えることが多い。視線や身振りでしてほしいことを表現しても相手からアプローチがない時は,その活動自体をあきらめてしまうことが多い。そこで,自分のしたいことや相手にしてほしいことをことばで伝える方法を習得して,相手に受け入れてもらう経験を増やすことで,相手に自分のしたいことを確実に伝える力を養いたいと考えた。

対象児のプロフィール
小学部6年 女児 Jさん 知的障害

諸検査結果
新版K式(H17.9.5)
  認知・適応 4:6  言語・社会 5:2
  全領域 4:9

障害の特性
いろいろな状況に合わせて柔軟に理解することが難しい。未経験のことや少しステップの高い課題になると、今までの経験を応用して理解したり行動したりすることが難しいので、関係のない瞬発的な行動を起こしたり、行動が停止したりする。

指導者
学級担任2人

長期目標
自分のしたいことを,話しことばで相手に確実に伝えることができる。

短期目標
遊びに参加したいことを,担任やクラスの友だちに伝えることができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
<指導目標>
自分がしたい遊びをしている担任に「入れてください」と言う。
<選んだ理由>
休み時間にわくわく広場で友だちが遊ぶ様子を見つめている時に,教員が誘うと喜んで遊びに参加する。このように,遊びの場面で相手からのアプローチを待つことが多いので,その場面を活用して,教員や友だちに自発的に「入れてください」と言うための指導を行う。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
遊んでいる時に,教員に何かしてほしいときには,視線や身振りで表現することが多い。要求表現に応えてもらえないときはその活動自体をあきらめがちである。また,他のクラスの先生と友だちが遊んでいるところに近づいて,一緒に遊びたそうに見ていることもよく見られる。経験したことや繰り返し入ってきたことの言葉は発するが,それ以外のことは友だちの発言をそのまま言うことが多い。そこで,自分のしたいことを表現する言葉を習得し,要求を相手に伝えられるようなってほしいと考えた。

般化場面
\x{2460}担任外の教員に「(遊びに)入れてください」と伝えることができる。
\x{2461}入りたい遊びをしている友だちに「入れてください」と言うことができる。

指導場面
朝の遊びの時間

指導手続
○ベースライン
 朝の遊びの時間にわくわく広場で遊びに参加する時の参加方法を記録した。
○指導開始前 
 友だちがしている遊びに参加するための方法を次の手順で1回,ソーシャルスキルトレーニングとして行った。
\x{2460}友だちがしている遊びに入りたい時は,一緒に遊んでいる担任に「入れてください」と言えば遊びに入れることを伝える。
\x{2461}担任Aと他の児童が遊んでいるところに,Jさんと担任Bが近づく。担任Bが「入れてください」と言う。担任Aは「いいよ」と応じて一緒に遊ぶ。
\x{2462}担任2人が遊び,Jさんがどちらかの担任に「入れてください」と言うようにする。
\x{2463}「入れてください」と言えた時は,担任は「どうぞ」と応えて一緒に遊ぶ。担任を見つめている場合は,その担任は「入れ」とプロンプトを出し,「入れてください」と言えるまで繰り返しプロンプトを出す。
○指導開始後
・担任は,Jさんがわくわく広場に出てくる前から,Jさんの関心が高い,トランポリン,長縄跳び,おにごっこ等の遊びを行う。
・Jさんが担任に「入れてください」と言った時は,「いいよ」と応じて一緒に遊ぶ。
・Jさんが遊んでいる担任を見つめ,5秒間待っても「入れてください」と言えない時は,見つめられている担任が「入れ」とプロンプトを出す。

教材教具など
トランポリン,長縄跳び,ポンポン(おにごっこ用)等
Jが興味をもつ遊具

達成基準
3日間連続して「(遊びに)入れてください」と担任の教員に伝えることができる。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
・「入れてください」と自発的に言う。 ( 2点 )
・プロンプトを行ったら,「入れてください」と言う。( 1点 )
・プロンプトを行っても「入れてください」と言えない。 ( 0点 )

指導期間
指導場面 2005年10月14日〜10月25日
般化場面 2005年10月26日〜11月9日

結果
 指導開始初日は,教員の問いかけに対してうなづいて「一緒に遊びたい」と意思を示したので,Jさんの発言を5秒間待った。しかし自発的な発言はなかったのでプロンプトを出すと,すぐに「入れてください」と言うことができた。2日目からは,担任に近づいてきて「入れてください」と言い,遊びに参加することができた。その後はスムーズに担任に近づいて自発的に伝えることができたので,目標を達成した。そこで,「入れてください」と言う対象を担任外の教員にも広げた。しかし,遊んでいる様子を見つめているが近づけないことが多く,担任のことばかけが必要であった。

考察
対象が担任の場合には目標を達成できたのは,Jさんがわくわく広場に出てくると,担任は遊びの中心から少し離れる,動作を緩やかにするなど,Jさんが近づいてことばを発しやすい環境が整えられていたからではないかと考えられた。そこで,担任以外の教員を数名に特定して,Jさんが遊んでいる様子を見つめている時の対応を統一し,指導を進めることにした。

ベースライン
A:先行条件 B:行動 C:結果
友だちや教員がしている遊びに入りたい 友だちや教員が遊んでいる様子をじっと見つめる 担任が遊びにさそってくれる(↑)
遊びに参加できる(↑)

指導場面
A:先行条件 B:行動 C:結果
友だちや担任がしている遊びに入りたい 担任に「入れてください」と言う 遊びに参加できる。(↑)


第一系列のタイトル: 選択・決定・伝達の点数
Baseline: ベースライン   Intervention 1: 友だちや教員が遊んでいるときに、担任の教員に「入れてください」と言う指導   Intervention 2: 友だちや教員が遊んでいるときに、担任外の教員に「入れてください」という指導  
第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2005/09/07/18:04:05  No.13
記入者 おたけ  E-Mail

小学部高学年の知的障害児に対する友だちがしている遊びに「入れてください」と言うための支援
指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
特定の教員に「入れてください」と言うことができる。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
自分がしたい遊びを、友だちと担任がしている時に「入れてください」という指導目標は、指導手続き1を1回行うことで達成基準に到達した。しかし、般化場面\x{2460}を行うと、担任外の教員に直接伝えることができず、遊んでいる様子を見ていることが多かった。そこで、本児が興味を持つ遊びに関わる教員を限定して、特定の教員(担任以外)に「入れてください」と伝えられるように場面設定を行った。

般化場面
\x{2460}担任以外の教員に「(遊びに)入れてください」と伝えることができる。
\x{2461}入りたい遊びをしている友だちに「入れてください」と言うことができる。

指導場面
朝の遊びの時間

指導手続
○指導開始前
朝の遊びの時間にわくわく広場にいることが多い教員6名(特定の教員)と担任で,遊んでいる最中にJさんが遊びを見つめている時の対応と教員側からは遊びに誘わないことを確認した。
○指導開始後
・特定の教員は,トランポリン,長縄跳び,サッカーのいずれかの遊びを行う。
・Jさんが特定の教員に「入れてください」と言ったときは,「いいよ」と応じて一緒に遊ぶ。
・Jさんが遊んでいる教員を見つめ,5秒待っても「入れてください」と言えない時は,見つめられている教員が「入れ」とプロンプトを出す。

教材教具など
トランポリン、長縄とび、サッカーボール

達成基準
3日間連続して「(遊びに)入れてください」と特定の教員に言うことができる。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
・特定の教員に近づいて,自発的に「入れてください」と言う。(3点)
・担任が促すと特定の教員に近づき,自発的に「入れてください」と言う。(2点)
・担任が促すと特定の教員に近づく。特定の教員が「入れ」とプロンプトを出すと,「入れてください」と言う。
・担任と一緒でも特定の教員に近づけない。(0点)




指導期間
2005年11月15日〜

結果
「入れてください」と言う相手を限定し,教員の行動を統一したことで特定の教員に言うことができる日が増えてきたが,特定の教員に近づくためには担任の促しが必要であった。これは,担任がJさんの近くにいるため,担任からの促しを待ち,特定の教員に近づくきっかけとしているのではないかと考えられた。特定の教員に近づくと必ず「入れてください」と言えることから,特定の教員に自発的に近づくための環境設定が必要だと考えた。そこで,Jさんがわくわく広場に行く時,担任は一緒に行動せず,Jさんから見えない位置で待機することにした。また,教員への第一声は「○○先生」と名前を呼んでいたが,名前を知らない時は呼びかけられない場面が見られたので,幅広く活用できる「先生」という呼びかけ方での注意喚起の方法をJさんに教示した。
 担任の行動の変更,特定の教員への呼びかけ方の教示後1日目は,友だちがサッカーをしている様子を2分近く見ていたが,特定の教員に近づけなかった。2日目からは,遊んでいる様子を見つめた後,自発的に特定の教員に近づき,「入れてください」ということができ,再指導開始後4日目で目標を達成することができた。

考察
 遊びに参加したいことを伝える相手が担任から特定の教員に変わることは,Jさんにとって大きなステップであった。教員の特定化,遊び方や対応の統一など,Jさんが相手に話しかけやすい環境を設定することで,自信を持って相手に話しかけることができたと考えられる。今後,設定の条件を少しずつ減らしていく(対象を特定の教員以外の教員や友だちに拡げる,教員が遊びの中心から離れる時間を短くするなど)ことで,自発的に行動できる機会を増やしていくことができるのではないかと考えられる。
 今回の指導は朝の遊びの時間に行ったが,指導後半になると,昼休みに集団で遊んでいる友だちに「入れてください」と言って遊びに参加したり,教員に「○○してください」と遊びの協力を依頼したりする姿が見られた。また,授業中の話し合いの場面で,提示した物の中から自分のしたいことを選んで教員やクラスの友だちに伝えることも増えてきた。

指導場面
A:先行条件 B:行動 C:結果
友だちや特定の教員がしている遊びに入って,一緒に遊びたい 特定の教員に「入れてください」と言う 遊びに参加できる(↑)


第一系列のタイトル: 
baseline: ベースライン   intervention1: 特定の教員に「入れてください」と言う指導   intervention2:   
第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2005/11/17/17:00:48  No.68
記入者 おたけ  E-Mail

現行ログ/ [1]
++コラボネット++

++マニュアル++
TOP
shiromuku(h)DATA version 4.00