対象児のプロフィール |
Lさん。中2女子。知的障害。
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諸検査結果 |
新版K式発達検査(2005.9.5) 姿勢・運動 1:8 認知・適応 1:5 言語・社会 1:1 全領域 1:5 SM社会生活能力検査(2005.7.21) 1:5
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障害の特性 |
・注視の持続時間が短く,他の刺激(音や人)にすぐ反応する。 ・目と手の協応,手先の細かい動作は難しい。 ・歩行や階段の上り下りは少し不安定である。 ・発声はある(楽しいときや怒ったときなどに出る)が,発語はない。
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長期目標 |
教師が次の活動場所を示す物をカゴに入れて手渡すことにより,次の活動場所に一人で移動する。
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短期目標 |
教師がボールを入れたカゴを手渡すことにより,わくわく広場に一人で移動する。
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指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
教室内で教師がボールを入れたカゴを手渡すことにより,わくわく広場に一人で移動する。
活動場所への移動は,一緒に学習する友だちについて行くか教師の言葉かけで行っており,依存的な面がある。教師の言葉かけや周囲の様子から給食時間だとわかるとエプロンやタオルが入っているカゴを棚から取ってきて食堂に行こうとしたり,活動場所が外だとわかると教師の帽子を棚から取って渡したりするなど,限られてはいるが活動に関係する物と場所が繋がっているときがある。ただ,見通しが持てずに給食時間ではないのにカゴを取ろうとするときがあること,他の刺激にすぐ反応するため活動することは直前に伝えることが必要であることから,実物直前提示により,自立的な場所移動ができないかと考えた。
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指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
給食や外へ行くときは,活動に関係する物と場所が繋がって行動できている。まず,わくわく広場にある物としてボールプールのボールを手渡すことでわくわく広場へ行けることを教えたいが,ボールとわくわく広場(活動に関係する物と場所)はまだ繋がっていない。2階の教室から1階のわくわく広場へ移動するための階段を下りるときに足元が不安定で目が離せないため,少し離れた位置から教師が見守る形にはなるが,教師に依存しない一人での移動を考えている。
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指導場面 |
帰りの用意ができてから帰りの会が始まるまでの時間
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指導手続 |
【ベースライン】 教師が教室内で座っている生徒の目前でボールを見せ,ボールをカゴに入れて手渡す。
【指導方法1】 1.教師が教室内で座っている生徒の目前でボールを見せ,ボールをカゴに入れて手渡す。 2.5秒間待ってわくわく広場へ移動しないときは「わくわく広場」と音声プロンプトをし,さらに5秒間待つ。移動しなければ階段の方を指さし,5秒間待ってそれでも移動しないときは後方から両肩を持ち階段の方を向かせて軽く押し出す。 3.わくわく広場にカゴを入れるオレンジの箱を用意しておく。わくわく広場に移動し,カゴを箱に入れないときは指さし,身体的ガイダンスを行う。 4.十分褒め,一緒に遊ぶ。
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教材教具など |
ボール,ボールを入れるカゴ,カゴを入れるオレンジの箱,遊具
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達成基準 |
ベースライン後,指導を開始する。実施後,プロンプトなしでわくわく広場へ一人で移動する正反応が5日間連続して出たら達成とする。
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記録の取り方(般化場面と指導場面) |
【ベースライン】 ベースラインは3日間。教師が教室内でボールが入ったカゴを手渡し,プロンプトなしで一人でわくわく広場への移動がどれだけできたかを記録する。
【指導場面】 プロンプトなしでわくわく広場へ一人で移動できた正反応数を記録する。また,どのようなプロンプト(音声1点,指さし2点,身体的ガイダンス3点)を出したかについても記録する。
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結果 |
最初は身体的ガイダンス,指さし,音声プロンプトを必要とし,わくわく広場へ行こうとするまでに時間がかかったが,8日目からはにボールを見ただけですぐにわくわく広場へ行こうとするようになった。プロンプトなしでわくわく広場への移動が5日間連続してできたので達成とする。
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考察 |
帰りの準備ができた後,教師からのボール提示でわくわく広場へ行くと好きな遊びができるので,それが好子となり達成できたと思われる。ただ,パターンで覚えている可能性も考えられることから,次のステップとして教室以外でボールを提示してもわくわく広場へ行けるか,他のあらゆる休憩時間にボールを提示しても行けるかを指導目標にする必要があると思われる。また,教室がわくわく広場へ繋がる階段の近くにあることから,人や音などの刺激を受けずにわくわく広場へ移動できたが,教室以外の場所でボールを提示するとわくわく広場へ行くまでに様々な刺激を受け,違う方向へ行ってしまう可能性もあることから,様々な刺激に反応しないだけの好子となる遊びの工夫と,教室以外でボールを提示する場所の検討が今後必要だと考えられる。
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参考にした先行研究や事例など |
コラボレーションプロジェクト2004 11−9「実物直前提示の児童に対するトランジッションエリアの設定」
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活動内容に関する物の手渡しによる自立的な場所移動
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
活動内容に関する物を手渡されたとき |
活動場所に移動する |
次の活動が分かる(↑) 誉められる(↑) 好きな活動ができる(↑) |
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第一系列のタイトル: 正反応数 |
Baseline: ベースライン
Intervention1: 指導方法1
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第二系列のタイトル: プロンプトの合計点数 |
baseline: ベースライン
Intervention1: 指導方法1
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記入日時 2005/09/21/08:43:07
No.18
記入者 K.M
E-Mail
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