概 要 |
活動し慣れた教室外に出て、適切な手順に従って行動し、活動の終了を報告できるスキルは、将来の職業行動の前段階として、非常に重要なスキルである。ここでは、手順書に示された教師(担任以外)の写真を見てその人に手紙を届け、その後担任に終了の報告をするお手伝い活動について、指導を行う。
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諸検査結果 |
S-M社会生活能力検査 4才0ヶ月(H18.2.14実施)
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長期目標 |
写真に示された教師に手紙を手渡し、渡したたことを担任に報告することができる。
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短期目標 |
手順書に従って、写真に示された教室・教師(小2組)の写真を見てそこへ行き、その教師に手紙を手渡し、担任に『できました』カードで報告をすることができる。
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指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
手順書(\x{2460}指定教室・教師の写真 \x{2461}封筒 \x{2462}できましたカード)に従って、\x{2460}で示した教師に\x{2461}の封筒を手渡し、担任に\x{2462}のできましたカードを渡して報告することができる。 〔指導1〕小2組のI先生に手紙を渡し、担任に『できました』カードで報告をする 〔指導2〕小2組のN先生に封筒を渡し、担任に『できました』カードで報告をする 〔指導3〕小2組の指定された教師(I先生もしくはN先生)に封筒を渡し、担任に『できました』カードで報告をする
これまでお手伝い活動として、「スケジュールに従って自分の教室以外の部屋へ牛乳を届けに行く(プリントを取りに行く)」というように、遠隔の目的地へ1人で行き、簡単なお手伝いを遂行することはできている。しかし、指示された人物を介したお手伝い、いわば伝達・報告を含んだ叙述的コミュニケーション能力が必要なお手伝い活動は行っていない。人に伝言をすること、人に報告することは、社会的なやりとりを通したスキルであり、将来の職業行動の前段階として必要なスキルである。
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指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
本児の目的地への移動については、行き慣れた場所であれば、写真カードの提示によってほぼ一人でできる。遊びの時間、自分が行きたい場所を要求するときにも、実際の場所と写真カードが一致し、教師に渡すことで要求ができている。 本指導計画におけるベースラインは9月14日に取った。
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般化場面 |
1 学校:指定場所は小1組と小2組の教室をランダムで指定 指定する教師は小1組と小2組の人をランダムに指定 2 学校:指定場所は1)に加え、教材室・事務室・保健室を含む 指定する教師は各教室内にいる人をランダムに指定
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指導場面 |
封筒を届けるお手伝い活動の時間(サーキット運動後、11:15頃) ※12月よりお手伝いの時間を変更(朝の着替え後、9:45頃)
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指導手続 |
スケジュールにお手伝い活動のカードを入れる手順を示したボードは、本児が自分で取れないところに担任が保管する。 本児がスケジュールからお手伝い活動のカードをとり、担任に渡してきたら、手順ボードを渡す。
〔指導1〕小2組のI先生に手紙を渡し、担任に『できました』カードで報告をする条件 スケジュールで示している手紙配達のカードを本人が持ってくると、担任は手順書を本児に渡す。教室内より、本児が写真に示した小2組に行ってノックし、入室するのを見守る。写真に示したI先生のところにいき、封筒を手渡したかどうかは後で確認する。戸を閉めるのを教室内より見守り、自分の教室に戻って担任に『できました』カードを渡すのを待つ。
〔指導2〕小2組のN先生に手紙を渡し、担任に『できました』カードで報告をする条件 指定する教師をN先生に変更し、指導1と同様の手順で進める。
〔指導3〕小2組の指定された教師(I先生もしくはN先生)に手紙を渡し、担任に『できました』カードで報告をする条件 手紙を届ける教師はランダムで指定し、指導1、指導2と同様の手順で進める。
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教材教具など |
伝言お手伝いカード、手順書(教室・教師の写真、封筒、『できましたの報告カード)
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達成基準 |
指定された目的地(小2組)・目的教師のところへ行って手紙を渡し、担任に『できました』カードで報告ができることが3日続いたら達成。
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記録の取り方(般化場面と指導場面) |
・プロンプトなくて正しくできた・・・1点 ・プロンプト(声かけ・指さし・身体的ガイダンス)あり・・・0点
・課題分析 指導1、指導2、指導3 1 写真に示した教室の前まで行く 2 教室の戸をノックする 3 教室の戸を開ける 4 写真に示した教師に封筒を渡す 5 教室を出て戸を閉める 6 自分の教室に戻る 7 担任に「できました」の報告カードを渡す 1〜7においてすべてプロンプトなくできたときには7点満点とする。
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結果 |
指導1では、指定された教室(小2組)に入室するまではできるものの、\x{2460}手順書に示した教師(I先生)に手紙を渡さず、近くにいるN先生に渡す行動(9試行中4回)\x{2461}教室内を散策して歩き、遊びコーナーに入るなどの逸脱行動(9試行中4回)が見られ、指定されたI先生にすぐに手紙を渡さなかった。\x{2460}の行動には、手順書の写真と実物(I先生)を指差しして渡す相手が異なることを伝えることで対応した。\x{2461}の行動には、本児の前でブロックし、それ以上散策しないように対応した。しかし、正反応の定着は見られなかった。そこで10月4日よりお手伝い活動終了の報告後にチョコレートのご褒美を渡すと、指定された教室(小2組)での逸脱行動は減り始め11月7日に目標達成となった。 指導2では、指定教師をN先生に変更した。11月10日に教室の戸を閉め忘れ達成が遅れたが、達成が指定された教師(N先生)に渡さないことはなく、6試行目の11月24日に目標達成できた。 指導3では、12月6日と12月7日の2日間、指定された教師が不在もしくは対面課題コーナーにいて発見できないという不測の事態が生じ、手紙が渡せられなかった。しかし、7試行目の12月13日に目標を達成した。
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考察 |
指導1の指導中、逸脱行動が見られた(誤反応)ときには本児の前をブロックすることで逸脱を遮ると、手紙を渡すことができた。しかし、ブロックがなければ遊びを続けた。これは、指定された教師に手紙を渡した後、教室に戻って言葉による賞賛を受けるよりも、届け先の教室にあるものへの興味が強く、それが本児にとって好子となっていたのではないかと考えられる。
A・・・指定した教室に入る B・・・手紙を渡さず教室内を歩く C・・・好きなものが見られ、たのしい
そこで、お手伝い活動の終了報告をすると、チョコレートがもらえるというように、別の好子を準備した。すると、徐々にではあるが逸脱行動が少なくなり、スムーズに教室に帰ってこれるようになった。
A・・・指定した教室に入る B・・・手紙を指定された教師に早く渡し、教室に帰る(報告をする) C・・・チョコレートがもらえる
指導2、指導3については、指導1の学習を踏まえ、チョコレートが効果的な好子となり、達成までの試行回数は少なかった。
指導3の指導中、指定された教師が不在もしくは教室内にいるが発見できないということが続き、現在、指導4として不在時の対応も含めたお手伝い活動を指導中である。手順書の変更に加え、課題分析を以下のようにして、指導を継続中である。
1 写真に示した教室の前まで行く 2 教室の戸をノックする 3 教室の戸を開ける 4 写真に示した教師に封筒を渡す。不在時は渡さない。 5 教室を出て戸を閉める 6 自分の教室に戻る 7 担任に「いませんでした」の報告カードを渡す
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1 写真に示した教室の前まで行く
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
指定教室前まで行くとき |
《正反応》 a)指定した教室の前まで行くことができる 《誤反応》 b)指定した教室前を通り過ぎて、他の場所へ行く(指定場所が分からない) c)指定場所に行く前に別の場所に寄り道をする
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《正反応》 a)次の課題行動を見守る。
《誤反応》 b)本児の元に行き、写真を確認しながら正しい教室を指さしや身体的ガイダンスで誘導。 c)そのまま5秒待つ。その後、教室に行かないならば、本児の元に行き写真を確認しながら正しい教室を指さしや身体的ガイダンスで誘導。
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2 指定教室の戸をノックする 3 教室の戸を開ける
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
指定教室前まで来たとき |
《正反応》 a)指定した教室の戸をノックできる 《誤反応》 b)ノックせずに教室の戸を開ける。
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《正反応》 a)教室内から「はい」と返事をする
《誤反応》 b)教室内の教師は、「ノック」と声かけをしながらノックのジェスチャーをする。それでも本児が自ら教室外にでない場合は、身体的ガイダンスにて本児を教室外に戻す。担任は本児の元に行き、横でノックの見本を見せて再試行を促す。
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4 写真に示した教師に封筒を渡す。
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
指定教室に入ったとき + 指定教師の写真カードを見たとき
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《正反応》 a)指定した教師の前に行き、封筒を差しだし渡す。 《誤反応》 b)指定した教師の所まで行かず、教室の中を散策する。 c)指定した教師とは別の教師の前に行き、封筒を手渡そうとする。 d)指定した教師の前まで行くが封筒を差し出さない。
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《正反応》 a)笑顔で「ありがとう」と言う
《誤反応》 b)指定した教師は5秒待つ。そのまま本児が教師の所に来ないときには、本児の前で散策をブロックし、「何?」と尋ねる。尋ねても封筒を差し出さないときには、封筒を指さしする。 c)別の教師は封筒を受け取らず、指定した教師の写真と実際の人物を交互に指さしする。 d)指定した教師は5秒待つ。そのまま差し出さないときは「何?」と尋ねる。尋ねても差し出さないときには、封筒を指さしする。
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5 教室を出て戸を閉める
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
指定した教室から出たとき |
《正反応》 a)指定した教室の戸を閉める 《誤反応》 b)戸を閉めずに自分の教室まで帰ろうとする
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《正反応》 a) 次の課題行動を見守る。 《誤反応》 b)教室内の教師は帰る本児を制止させ、戸の所まで戻るよう促す。戸を指さしし、再試行を促す。
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第一系列のタイトル: |
baselaine: ベースライン
intervention1-1: 指導1
intervention1-2: 指導2
intervention2: 指導3
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第二系列のタイトル: |
Baseline: ベースライン
Intervention1: 指導手続き1
Intervention2: 指導手続き2
Intervention3: 指導手続き3
Intervention4: 指導手続き4
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記入日時 2005/09/20/16:43:37
No.17
記入者 YM
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