2005-22



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場面に応じて「ありがとう」の挨拶をする指導。
概 要
手伝ってもらったときに「ありがとう」の挨拶をする ことは、人間関係を円滑にするためにも重要なスキルである。この事例では、ソーシャルストーリーを活用し、自発的に「ありがとう」の挨拶をする指導を実施する。

対象児のプロフィール
A児。小4男児。自閉症。

諸検査結果
S−M社会生活能力検査(SA):3歳2ヶ月

指導者
TM

長期目標
場面に応じて「ありがとう」の挨拶をすることができる。

短期目標
アイロンビーズを使った作品づくりに必要な道具を教員から受け取った時に「ありがとう」の挨拶をすることができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
▼指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)▼
アイロンビーズを使った作品づくりに必要な道具を教員から受け取った時に「ありがとう」の挨拶をすることができる。
▼ 標的行動とこれを選んだ理由▼
これまで要求のコミュニケーション機能や説明のコミュニケーション機能については、様々な場面で行うことができている。感情や共感の表現のコミュニケーション機能を促進することは、人間関係を円滑にするためにも重要なスキルであると思われる。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
感情や共感の表現のコミュニケーション機能については、教員が「行ってらっしゃい。」と声をかけると「行ってきます。」と答える指導を5月中旬より行ってきた。指導開始当初は、「行ってらっしゃい、行ってきます。」とひとまとめに答えることが多く見られていた。毎日同じ場面で指導を行うことにより、6月中旬に目標を達成することができた。 Lくんは、話しことばによる指導を行うことで、早口で叫んだり、床に寝転がり地団駄をふんだりすることがある。混乱に陥らないためにも、視覚的な方法を用いた指導が有効である。

般化場面
1)朝の会の時間にクラスメイトからペープサートを受け取った時に「ありがとう」の挨拶をすることができる。
2)連絡帳を書き終えて、教員から確認印をもらった時に「ありがとう」の挨拶をすることができる。
3)家庭で、手伝ってもらった時に「ありがとう」の挨拶をすることができる。

指導場面
給食後に行う、作品づくりの場面

指導手続
給食後に行う、作品づくりの場面の直前にLくんと教員が一緒にソーシャルストーリーを読む。Lくんがストーリーに集中できるよう教員はLくんの少し後ろに座る。
指導期間中は、毎日継続してソーシャルストーリーを読むようにする。
スケジュールを確認後「アイロンビーズの道具を貸して下さい。」とLくんが教員に要求を伝える。
教員からアイロンビーズの道具を受け取ると同時に「ありがとう」の挨拶をする。
挨拶をすることを忘れている場合は、「あ・・。」と自ら気づくように声かけをする。

教材教具など
ソーシャルストーリー『どんなとき「ありがとう」というのかな?』
・ときどき、ぼくのまわりの人がおてつだいをしてくれることがあります。
・まわりの人におてつだいをしてもらったときは「ありがとう」といいます。
・何かのどうぐをもらうこともあります。アイロンビーズのどうぐをもらったときも、「ありがとう」といってみようと思います。
・「ありがとう」というと、いい気もちになります。「ありがとう」といわれた人も、いい気もちになります。
・「ありがとう」というのはいいことです。
・ぼくが「ありがとう」というと先生が「きちんといえたね。すごい!」といってほめてくれます。

達成基準
アイロンビーズを使った作品づくりに必要な道具を教員から受け取った時に「ありがとう」の挨拶をすることが7日連続でできた場合を達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
プロンプトなし・・2点   
プロンプトあり(声かけ)・・1点  
挨拶ができない・・0点

指導期間
2005年9月26日〜2005年11月14日

結果
スケジュールに「アイロンビーズの道具を貸して下さい。」と書いた文字カードを提示し、Lくんが教員に要求を伝える指導を9月26日より開始した。指導をはじめて数日間は、スケジュールに提示している文字カードを何度か確認してから「アイロンビーズの道具を貸して下さい。」と教員に要求を伝える姿が見られた。指導開始10日目の10月13日には、スケジュールに「アイロンビーズの道具を貸して下さい。」と書いた文字カードの提示がなくても教員に要求を伝えることができるようになった。
教員からアイロンビーズの道具を受け取ると、何も言わずに作品づくりに取り組むことが2日連続で続いたため、9月28日より教員からアイロンビーズの道具を受け取ると同時に「ありがとう」の挨拶をする指導を開始した。作品づくりの場面の直前にLくんと教員が一緒にソーシャルストーリーを読むことを毎日継続して行った。指導開始2日目には、ソーシャルストーリーを読んでいる机の前に立って、にこやかな表情で、教員が来るのを待っているLくんの姿が見られた。前向きな学習態度であり、Lくんと教員のお互いが、穏やかな調子でソーシャルストーリーを読むことができた。指導開始6日目の10月7日には、教員からアイロンビーズの道具を受け取ると同時に「ありがとう」の挨拶をすることが自発的にできるようになった。「あ・・。」と自ら気づくように声かけをすることが4度あったが、指導開始29日目の11月14日に目標を達成した。
     

考察
般化をねらう場面として設定した、『朝の会の時間にクラスメイトからペープサートを受け取った時に「ありがとう」の挨拶をすることができる。』については、12月1日に目標を達成した。『連絡帳を書き終えて、教員から確認印をもらった時に「ありがとう」の挨拶をすることができる。』については、11月24日に目標を達成することができた。
11月下旬には、給食でデザートを教員から受け取った時や、連絡帳を受け取った時など、さまざまな場面において、自発的に「ありがとう」の挨拶をすることができるようになってきた。
般化することが一番難しいと考えていた『 家庭で、手伝ってもらった時に「ありがとう」の挨拶をすることができる。』については、夕食時に「ウインナー下さい。」と母親に要求を伝えて、受け取ると「ありがとう」と言うことができたとの話を12月中旬に保護者よりお聞きすることができた。『何か手伝ってもらった時には、「ありがとう」「ありがとうございます」と言うことが確実にできるようになりました。』と喜ばれていた。
今回の実践で、Lくんは、感謝の気持ちを表す「ありがとう」の挨拶をすることが、あらゆる場面でできるようになった。これからも、日常生活における実用的な意思伝達の能力を促進し、よりよい人間関係を築いていくことができるよう指導を進めていきい。   


第一系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン  
第二系列のタイトル: 
Intervention1: 指導手続き1  
記入日時 2005/10/03/14:06:13  No.42
記入者 TM  E-Mail

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