2005-23



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小学部中学年の自閉症児にカードを用いた不足物の要求方法を教える
概 要
自分の要望を正確に相手に伝えることは、非常に大切なスキルである。本児が発語による伝達手段を持たないこともあり、カードによる意思伝達ができれば本児にとって大きな伝達手段となるだろう。この事例では、不足の伝達という指導を実施する。

対象児のプロフィール
小4男児 自閉症

諸検査結果
KIDS 総合発達年齢 1歳4ヶ月(平成16年5月7日)
理解言語 0歳11ヶ月
表出言語 0歳2ヶ月

指導者
OA

長期目標
自分の要望を、カードを組み合わせて、相手に分かりやすく伝えることができる。

短期目標
カードを組み合わせて、不足物の要求を教師に伝えることができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
課題の「材料集め」をする際、足りない材料を「〜が足りません。」というカードを用いて伝える。

(Step1)「〜が足りません。」のカードを教員に手渡す。(足りない材料のケースは空)

(Step2)「〜が〜個足りません。」のカードを教員に手渡す。(足りない材料のケースは空)

トイレに行きたいときは「トイレカード」を教員に渡すこと、また何か手伝って欲しいことがあるときは「てつだってくださいカード」を身近な教員に手渡すことができている。しかし、困ったことがあったとき全てに「てつだってくださいカード」を提示し、「なにを」手伝ってほしいのか分かりにくく、また担任以外に伝わりにくいため、自分の要望を少しずつ伝えることができればと思い選んだ。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
日常的に行われるスケジュール(着替え、朝の会など)の文字カードや自分の名前(ひらがな)は、文字を形として覚えているようである。発語はないが、教員の簡単な指示(「次、体育だよ。」)などは理解して、行動することができている。現在「トイレカード」と「てつだってくださいカード」を使用しており、カードを活用することができている。しかし、困ったとき、何かが欲しいとき、パソコンで遊びたいときなど全てに「てつだってくださいカード」を提示するため、内容がわかりにくい。

般化場面
1)給食のおかわり
2)遊びの要求

指導場面
対面課題→自立課題

指導手続
教員がモデリングを示す。その後、本児に同じようにカードを使用するよう促す。
(Step1)
対面課題として教員と行い、確実にできるようになったら自立課題に移行する。
(Step2)
対面課題として教員と行い、確実にできるようになったら自立課題に移行する。

教材教具など
材料あつめのケース、持ってくるものを示すジグ、「〜がありません」のカード,材料カード(わごむ、とじひも、クリップの各絵カード3枚。Step2では個数を示す1〜5までの数カード)


達成基準
教員に不足の要求が5日間連続で、正しくできた場合達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
プロンプトなし1点、プロンプトあり0点とし9点を満点とする。

(Step1)
1.材料棚に行く。
2.材料を集める。
3.要求カードを持つ。
4.足りない材料のカードを貼る。
5.要求カードを教員に手渡す。
6.材料を受け取る。
7.材料を数えてケースに入れる。
8.カードを戻す。
9.席に戻る。

(Step2)
1.材料棚に行く。
2.材料を集める。
3.要求カードを持つ。
4.足りない材料のカードを貼る。
5.足りない個数をカードに貼る。
6.要求カードを教員に手渡す。
7.材料を受け取る。
8.カードを戻す。
9.席に戻る。

指導期間
H17年10月19日〜H18年1月

結果
指導1の初日は全て教員と行い、2日目からは、できるようになったステップのプロンプトを減らしていった。指導開始5日目には「要求カードを教員に手渡す」「カードを戻す」以外は、プロンプトなしで行えるようになった。指導開始7日目から9日目までは「カードを戻す」こと以外は1人でできるようになったので、10日目からは自立課題へ移行した。自立課題初日は対面課題と異なるため、とまどい、プロンプトを必要としたが、11日目(自立課題2日目)には「カードを戻す」「席に戻る」以外はプロンプトなしでできるようになった。12日目(自立課題3日目)からは9点満点が続き、指導開始16日目に指導1は達成した。
12月2日から指導2を開始した。カードを貼る場所が2カ所になって、分かりにくかったようなので、指導2開始4日目から数字カードと数字カードを貼る場所に赤でマーキングを行った。黒のマーキングから赤に変わったことで、視覚的に分かりやすくなり、プロンプトなしで数字カードを正しい位置に貼ることができるようになった。6日目から自立課題に移行したが、プロンプトましでスムーズに行うことができ、指導開始10日目に指導2は達成した。また、担当教員がいない場合も、その場にいる教員にカードを渡すことができている。

考察
指導2がスムーズに進んだのは、指導1を全課題提示法で行い、失敗経験がないようにしたことが大きかったのではないかと思う。最終的には、ケースに1個材料があって「2個集める」→「不足分1個を要求する」ということができるようになればと考えている。また、生活のなかでカードを組み合わせて、自分の要望を相手に伝えることができるようになることを願っている。
 今回の研究で、ABC分析をしっかり行うことと、記録をとることの大切さを学んだ。ABC分析を行うことで、指導の方法や、児童に何をどのようにできるようになって欲しいのか、ということが自分自身の中で明確になった。今後もより深く応用行動分析を学び、実践に生かしていきたい。

Step1
A:先行条件 B:行動 C:結果
材料が足りないとき (正反応)
a)足りない材料を示したカードを教員に手渡す。
(誤反応)b)足りている材料のカードを教員に手渡す。

c)カードを持ってくるが、手渡さない。
d)「材料カード」「下さいカード」のどちらかを外して渡そうとする。
e)カードを手渡さない。
f)「てつだってくださいカード」を渡そうとする。
(正反応)
a)「〜ください。」とカードを見せながら読み、「どうぞ。」と言って、材料を渡す。

(誤反応)b)本児と一緒に材料棚に行って、数を確認する。確認後、気付いて足りない材料のカードを手渡した場合「わかりました。」と言って材料を手渡す。わからないようなら、足りない材料を一緒に数え「足りないね。」と言う。

c)30秒間待つ。それでも手渡さなければ、「カード。」と声かけする。
d)受け取らない。カードをもう1度貼ったら、「渡す。」とカードを指さし、声かけする。
e)足りない材料を指さしする。それでもカードを持ってこないようなら「カード。」と声かけし、カードを指さしする。
f)「違うよ。」といい、「材料カード」「くださいカード」を指さしする。

Step2
A:先行条件 B:行動 C:結果
材料が足りないとき (正反応)a)足りない材料と個数をカードに貼って、教員に手渡す。
(誤反応)b)足りない材料と個数を貼る場所を逆にして渡す。
c)要求する個数が間違っている。
(正反応)a)「〜を○個ください。」とカードを見せながら読み、「どうぞ。」と言って、材料を渡す。
(誤反応)b)「反対だよ。」と言って、貼り直させる。きちんと貼り直して手渡すことができれば、「〜を○個ください。」とカードを見せながら読み、「どうぞ。」と言って、材料を渡す。
c)持ってくる物を示したジグに書いてある数字とカードの数字を指さす。数字を貼り直すことができれば、
「〜を○個ください。」とカードを見せながら読み、「どうぞ。」と言って、材料を渡す。


指導手続き2の要求カード

第一系列のタイトル: Step1(対面課題9日、自立課題9日)
Intervention 1: 指導手続き(1)  
第二系列のタイトル: Step2(対面課題5日、自立課題8日)
Intervention 2: 指導手続き(2)  
記入日時 2005/10/01/22:52:22  No.41
記入者 OA  E-Mail

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