2005-27



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学校で約束を守って生活する
対象児のプロフィール
Y.T
小学部6年 男子 知的障害

諸検査結果
WISC-R VIQ49 PIQ61 IQ46
S-M社会生活能力検査SA5-10

障害の特性
本児は、諸検査の結果から境界線児と言われている児童である。教室や校外での構造化、学習活動での手だて等を考慮しながら支援を行っても、関わる教師や大人によって、いろいろな場面設定や周囲の物音、雰囲気によって、反応や行動が著しく異なる。また、日常生活に必要なスキルは、ある程度、身につけているにもかかわらず、自分の感情のおもむくままに行動する傾向にある。転校する前の診断では、ADHDの疑いもあり、本校に来てからも行為障害の疑いが考えられた。騒ぎが起こる状況を好み、消火器をさわったり消防車や救急車等に異常なほどの興味関心を示す。施設や学校で問題行動の多い児童である。

指導者
F,A

長期目標
・学校で約束を守って生活する。

短期目標
標的行動と同じ

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
(指導目標)
標的行動と同じ。

(標的行動)
1.宿題を先生に出す。
2.カーテンの中で着替える。
3.ハンカチを持つ。(朝の会−清潔調べでチェック)
4.自分で選んだ目標を達成する。(プリント学習ができない日は、具体的な目標に教師が適宜置き換えて設定する)
5.集合の時、クラスの先頭に立つ。
6.集合した時、全員の点呼をする。

(標的行動を選択した理由)
・持っているスキルを有効に使い、規則正しい生活や物事の善悪の理解を促し、周囲の環境や人が変わっても、よりよい生活が送れるようにさせたい。
・昨年度の、研究の内容から指導者だけでなく、児童自身でも目標を設定し、自ら納得して活動できるよう、更に具体的な内容を提示して実践する必要性を感じた。
・できるだけ、具体的な内容での目標によるスキルを身につけ、今後、本児自身や指導者の支援に役立てられるよう、引き継ぎ資料の作成に役立てたい。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
・チェック表を作成し、できたかどうかを記録する。
平成17年9月5日(月)〜9月16日(金)

般化場面
・施設での生活

指導場面
・朝の活動 、自立活動

指導手続
・チェック表の項目ができたら(声掛けでも可)、1項目について1枚シールを貼り、シール5枚でご褒美チケット1枚を渡し、貯めていく。(本児と共に確認し、自分で貯めていけるよう支援する)

教材教具など
目標を記入したシート
トークン(シール)
トークン5枚が達成時のチケット(修学旅行時にチケット1枚につきおやつを1つ買ってもらえる)

達成基準
・5日間続けて、チェック表の項目全部にシールが貼れたら達成。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
(指導場面)
指導手続と同じ。

指導期間
平成17年9月20日(火)〜10月5日(水)

結果
標的行動1,2,3について:朝の活動(宿題を提出する,カーテンの中で着替える,ハンカチをポケットに入れる)は、行事に関係なく毎日行う活動であったため、少しの声掛けでほぼ達成することが出来た。また、宿題を担任が直接受け取る、カーテンをあらかじめ閉めておく、ハンカチを体操服と一緒に置いておく、といった状況を設定することで、声掛けなしでも行えることがあった。
標的行動4について:自分で目標を選ぶことに関しては、本児自身の意思だけでの設定ではその日の生活の見通しが立ちにくいことが多く、あらかじめ担任が目標をいくつか設定しておき、その中から本児が選択するケースが多かった。一番選択が多かった目標は『自立活動でプリントを3枚する』であった。これは年度当初から約束して行ってきていたことで本児が選びやすく、指導者側が学習内容を説明し、本児に合わせた具体的な内容であることで嫌がらずに行うことが出来ていた。しかし、行事が多かったり、友達の学習内容に影響されて本児自身の学習内容を拒否したり、内容の変更を訴えることがあった。
標的行動5,6について:修学旅行において点呼係になっていたことで、修学旅行までの2週間、整列や点呼の機会を設定し、本児も嫌がることなく行った。

考察
 トークンを用いた指導を展開していく上で、対象児の発達段階や、持っているスキルに応じた課題を設定することは不可欠である。本研究では、本児の持っているスキルを有効に使い、規則正しい生活や物事の善悪の理解を促し、周囲の環境や人が変化しても本児は変わることなく生活していくことや今後の本児の生活、指導者の支援の方向性を探る上で6つの標的行動を設定し、本児にも目標を設定させるなどして進めてきた。
 この結果から、6つの標的行動に対する本児の基本的なスキルはあると考えられる。グラフでは標的行動4〜6個の達成が見られる。しかし、本研究の『5日間続けて、チェック表の項目全部にシールが貼れたら達成。』という達成基準には到達しなかった。その理由として考えられるものとして、\x{2460}修学旅行(10月6,7日)までを一区切りとしたことから、指導期間が短かったこと、\x{2461}連休や学校行事等スケジュールによる場面設定が難しい日があったこと、が挙げられる。しかし、これらの理由によって場面設定が出来なかった項目は、場面設定が出来た日においては他の項目と同様に達成出来ており、仮に場面設定が出来ていれば達成していたと考えられる。
 以上の理由を踏まえた上で今後の課題を挙げると、\x{2460}指導者側の計画や準備などを段取り良く行い、指導期間を適切に設定すること、\x{2461}状況に応じた場面の設定、が考えられる。その他、今後の課題としては、本児は課題や目標を設定していない状況下では自分の感情の赴くままに行動することが多いことから、常に本児のスキルに合った課題や目標を設定して生活を行っていく必要があると考えられる。本研究では修学旅行までという期間を限定して行ってきたが、修学旅行中の行動から修学旅行中、修学旅行後の課題や場面設定の必要性を実感し、行事に向けて目標設定することも重要ではあるが、行事を楽しみにしながら、普段の生活にも般化出来る目標の設定を行うことが大切である。また、問題行動をさせずに学校生活を送るには、児童が意欲的に行える簡単且つ具体的な目標を設定し、達成の際に児童がその場で目標達成を確認出来る場面の設定が必要であると言える。そして、達成した実感や喜びを常に児童自身にインプットさせ、今後の活動に繋げることが大切である。以上に挙げたことを実践していくことで本児の生活、指導者の支援がよりよく行われると考える。

参考にした先行研究や事例など
コラボレーションプロジェクト2004 11−1「学校で約束を守って生活をする」の継続研究


第一系列のタイトル: トークン合計枚数
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導方法1  
第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2005/09/16/16:25:57  No.15
記入者 FM  E-Mail

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