2005-28



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高等部精神発達遅滞男児の次の活動への移行にかかる時間を減らす
概 要
一日の活動スケジュールを提示しているが,登校直後よりスケジュールに示された活動を見て,沢山の言葉を発し,特定の人との関わりを求めたり,スケジュールを勝手に差し替えようとして,次の活動へスムーズに移行できない。そのため,朝の活動である「着替え」に取りかかるまでの時間を要する。スケジュールに何か気にかかることがあると,その活動を「○○します。」と繰り返し言ったり,また,拒否したいことに対しては、言葉ではなく奇声をあげて相手やドアや壁を叩く場面や個室(トイレなど)にはいり奇声を上げることもある。そこで,まずは登校してから,一日の活動の始まりでもある「着替え」にスムーズに移行することで,一日の活動がスムーズに行えるようになるのではと考えた。

対象児のプロフィール
高等部2年,男子,精神発達遅滞・狭頭症・水頭症・てんかん

諸検査結果
SM社会生活能力検査(H17.3.8実施) 
生活年令13歳、社会生活指数32、社会生活年令4歳3ヶ月
身辺自立…5歳5ヶ月、移動…3歳9ヶ月、作業…3歳10ヶ月、
意志交換…3歳9ヶ月、集団参加…3歳7ヶ月、自己統制…4歳3ヶ月

障害の特性
バス、カセットへのこだわりが強く、気持ちの切り替えができにくく、その場から動かなくなることがある。行動を規制されたり状況が理解できなくなったりすると奇声を発して太股を叩いてアピールする。急に友だちや教師をついたり、叩いたりする行動が見られる。見通しがもてないと,奇声を上げたり,同じことを繰り返し言ったりする。

指導者
クラス担任1人

長期目標
次の活動への移行をスムーズに行うことができる。

短期目標
教室に入ってから3分以内に着替えのエリアに入り、上着のボタンに手をかける。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
登校してから着替え始めるまでの間に、提示されたスケジュールに気になる活動がある時はスケジュール表のカードを入れ替えてみたり、周囲の教師に確認してみたり奇声をあげたりすることがあり、時間がかかってしまう。また、日によって日常生活の指導にあたる教師が変わり、その教師との関わり方が違い、指導に一貫性がなかったため混乱して時間がかかっている。
そこで,次の活動へスムーズに移行できることをねらった。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
1日のスケジュール表を提示し,対象児の様子を伺うと,日によって日常生活の指導にあたる教師が変わり,提示されたスケジュールに気になる活動がありスケジュール表のカードを入れ替えた時は,教師が「入れ替えてはいけません」と言葉で注意しながらカードを直すこともあれば,何も言わずにカードを直すこともある,周囲の教師にスケジュール表を指さして「一緒に言って下さい」「○○して○○して……」と言った時は,教師が一緒に全部のスケジュールを言うこともあれば,一部のスケジュールだけ言う時もある。など,その教師によって関わり方に一貫性がなく,本児はその場から動かなくなったり,奇声を発してみたり,急に友だちや教師をついたり,叩いたりなどの行動があらわれ,着替えを始めるまでに10分前後,また長いときでは20分程度かかる日もありました。

般化場面
その他のすべての活動への移行場面

指導場面
教室に入ってから着替えのエリアに入り、上着のボタンに手をかけるまで

指導手続
指導方法1
スケジュール表だけ提示し,着替えのエリアに入り,上着のボタンに手をかけるまで,周囲の教師は対象児の様子を見守る。

指導方法2
<正反応>
着替えのエリアに入り、上着のボタンに手をかける。
         ↓
『そうそう』と言いながら肩を軽く2回たたく。
<誤反応>
・カードを入れ替える
・奇声をあげる
    ↓
  無視をする
<無反応>
スケジュール表の前で立ち止まっている。
    ↓
指さしプロンプト(『着替え』のカード,着替えの場所)

教材教具など
スケジュール表

達成基準
3分以内に着替えのエリアに入り、上着のボタンに手をかける連続5日続く

指導期間
指導方法1…12/16〜12/21(土日を除く)、1/11〜1/13

考察
 指導1では,10分以内に着替えのエリアに入り,上着のボタンに手をかけることができている。また,まわりの教師から,『カードを入れ替える』や『奇声を発する』などの行動が減った,というような意見もいただいた。私たちは,事例を進める前の指導によって『カードを入れ替える』や『奇声を発する』といった行動を強化していたことに気付かされた。
 指導2では,着替えのエリアに移動しない時に,指さしプロンプト(『着替え』のカード,着替えの場所)を行うことで,着替えのエリアに入るまでの時間を3分以内に短縮することができた。また,プロンプトの回数が0回の日がなく2回前後が多いところをみると,自発的に次の活動へ移行するようになったのではなく,指さしプロンプトに反応して移動することができたと言える。
 卒業後は施設への通所を視野にいれている生徒であり,関わる人や環境が変わってもスムーズに次の活動に移行できるような支援の方法を明確にしていくために,対象児と関わる人の共通理解や指導計画を見直す必要がある。


第一系列のタイトル: 教室に入ってから着替えのエリアに入り、上着のボタンに手をかけるまでの所要時間
intervention1: 指導方法1   intervention2: 指導方法2  
第二系列のタイトル: 教室に入ってから着替えのエリアに入り、上着のボタンに手をかけるまでに行ったプロンプトの回数
intervention1: 指導方法1   intervention2: 指導方法2  
記入日時 2005/12/07/17:42:30  No.75
記入者 A.S  E-Mail

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