概 要 |
・スケジュールに空き時間ができると問題行動が起こりやすい児童に対し、社会的妥当性の高い活動を増やすため掃除の指導を行った。 ・ステップを設け、最適と思われる作業量で指導した結果、ほうきを扱う技能の向上等がみられた。
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対象児のプロフィール |
氏名:I.N. 障害名:てんかん後遺症,自閉症
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諸検査結果 |
太田のStage\x{2160}-3 津守式乳幼児精神発達質問紙 発達年齢2−6
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障害の特性 |
・周りの環境を認知することの困難さから「自分は何をすればよいか, 何を期待されているか」が分からず混乱したり,文脈上不適切な行動をとることがある。
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短期目標 |
・いくつかの課題を5〜10分程度持続して行う。
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指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
・標的行動:罫線状に並んだ新聞紙片のゴミを,教師の声かけや身体的な促しなしで,ちり取りに掃き集めることができる。 ・選んだ理由:構造化された場面では,課題の内容が分かり集中できることも多い。通常の場面では周囲の物に影響され,触ったり壊したり等,不適切な行動として表れることがある。掃除は好きで,自分で新聞紙をまいて掃こうとする。掃除のように社会的妥当性が高い行動のスキルを高めておくことは,進路指導の面からも有用と考えられる
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指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
・標的行動について、2005年10月28日,11月1 日,11月2 日の3回の記録をとる。新聞紙4枚分のゴミを掃く。
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般化場面 |
1.指導場面で得た最適の課題量に対し、新聞紙の並び方を不ぞろいにする。 2.好子提示の低率化を5試行行う。3回目と5回目の試行では対象児から要求があっても好子を提示しない。 3.床に引いたガイドラインのガムテープを取り除く。 4.それまでの試行と直角方向にゴミを配置する。
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指導場面 |
・場所:登校後のリズム室 ・人:人の出入りはとくに制限しない。
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指導手続 |
・ステップを設けて,分布面積とゴミの数量を漸増する。2mの直線上に並べたゴミを基準として,最大,直線10本分まで増やす。 ・床に張ったガムテープの直線をガイドラインとし、その端にちりとりを置く。床板の升目を利用して,新聞片のゴミを罫線状に並べる。ステップ9で新聞紙2枚を100片程度に分ける,ステップ13で4枚とする。 ・指導者が,ちり取りをテープで留め,ほうきを手渡す。掃除をした後、片づけは自分で行う。
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達成基準 |
・行動の修正(リズム室を出るのを阻止。教師が音声言語で指示,手を添える等の促しなしで課題を遂行できない場合)が3回以上あった時,1つ前のステップを最適な課題量とみなす。その課題量で3回続けて遂行できたとき,達成とする。
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記録の取り方(般化場面と指導場面) |
・指導場面:指導者が様子を記録紙に記入,後でビデオで確認をする。 ひとりでゴミを集めることができた。=1点 行動の修正が必要だった=0点
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指導期間 |
2005年10月28日〜11月2 日(ベースライン) 2005年11月4日〜指導中 (介入期)
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考察 |
・ゴミの量がステップ9になると,急に課題に集中できない状況が増えたため,ステップ8を最適の課題量と判断した。 ・7回目の試行(ステップ7)では,少しだけちり取りと逆向きに掃く技能で,近くのゴミを集めることができた。また,10回目の試行(ステップ8)でも同様の技能を使うことができた。 ・対象児の掃き方は,ほうきを浮かさずに,ゴミを引きずるように移動させることがほとんどだが,課題の最適化を行ってからは,ほうきを振る動きが少し見られるようになった。 ・以上のことから,最適の課題量で試行を行うことにより,課題への集中力が高まり,そうじの技能も向上させることが示唆される。
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