対象児のプロフィール |
Dくん 自閉症男児、小学部1年生、PEP-R 2:06(平成15年6月) スケジュールカードのカードを見ながら次々に活動に取り組んでいる。いわゆる「Work is play. Play is work.」タイプの児童である。
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長期目標 |
おしっこ(うんち)がしたいときに「トイレ」と要求することができる
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短期目標 |
トイレに行くとき「トイレ」と教師に言うことができる
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指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
トイレに行くとき「トイレ」と教師に言うことができる
標的行動 トイレに行くとき「トイレ」と教師に言うことができる
標的行動を選択した理由 本児は鳴門からJRとスクールバスを使って通学している。片道約3時間かかっている。屋外でのおしっこの失敗もあった。本児はスケジュールにトイレカードが提示されていたり、教師からの声かけでトイレに行くことができるが、尿意を感じたときに自発的にトイレに行くことができない。その原因が、教師の声かけやトイレカードの提示がトイレに行くための弁別刺激となり、尿意は弁別刺激になっていないと考えた。
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指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
現在(平成15年9月)、スケジュールでトイレカードを提示して定時排尿を促している。スケジュールに入れる間隔は1日3〜4回、1〜2時間おきになるようにしている。排尿のときに排便をすることもあり、学校での排便は2〜3日おきにでている。また、もじもじしているとき、「トイレ」と声かけすると、トイレに行って排尿することができる。 学校と家庭では洋式トイレを使っている。ズボン(パンツ)を下ろす・便座に座る・排尿(排便)する・ズボン(パンツ)をあげる・手を洗うまでの行動はできる。また、徳島駅の和式トイレで排尿することもできる。 1学期にビデオを見ているとき、「おしっこ」と言うことが1度あった。その後、教師から「行っておいで」と言われ、トイレに行くことができた。 おしっこが出ていてもそのままの状態で、課題や遊びなどに活動に取り組んでいる。
ベースライン スケジュールにトイレカードを提示して排尿を促す。それ以外の時間にもじもじしている場合は、少し様子を見て「トイレ」と声かけをして排尿を促す。
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般化場面 |
学校:東・西ホールのトイレ 家庭:家のトイレ (地域:徳島・鳴門駅のトイレ)
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指導手続 |
指導1:Dくんがトイレカードを見ておしっこに行く前に、教師はトイレの前に立つ。Dくんが「トイレ」と言うことができたら、トイレに誘導する。Dくんがそのまま行こうとするときは、ドアの前に立ったまま「どこ行くの?」と声かけをする。黙っているときには「ト(イレ)」とプロンプトをする。
指導2:Dくんがトイレカードを見ておしっこに行く前に、教師はトイレの近く(スケジュールカードとトイレの間)に立つ。Dくんが「トイレ」と言うことができたら、トイレに誘導する。そのまま行こうとするときには「どこ行くの」と声かけをする。黙っている場合は「ト(イレ)」とプロンプトをする。 (教師は徐々にトイレから離れる)
指導3:スケジュールから1枚トイレカードをはずす。Dくんがもじもじしていたら「どうしたの?」と声かけをする。「トイレ」と言うことができたらトイレに誘導する。黙っているときは、「ト(イレ)」とプロンプトをする。 (はじめは登校時の着替えの前のトイレカードをはずす?,浪執算?涼綢悗?亜∈埜紊傍訖?阿僚腓砲呂困靴討い?
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達成基準 |
100%自発的に「トイレ」と教師に伝えることが3日連続したとき
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記録の取り方(般化場面と指導場面) |
指導1 ・自発的に「トイレ」と言うことができた ・「どこ行くの」と声かけをした ・「ト(イレ)」のプロンプトが必要であった 指導2 ・自発的に「トイレ」と言うことができた ・「どこ行くの?」と声かけをした ・「ト(イレ)」のプロンプトが必要であった 指導3 ・自発的に「トイレ」と言うことができた ・「どうしたの?」と声かけをした ・「ト(イレ)」のプロンプトが必要であった
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結果 |
ベースライン 「トイレ」と自発的に伝える行動は見られなかった。
指導1 3日目にトイレの前に立っている教師に100%自発的に伝えられるようになった。 (しかしフライング…)
指導2 自発の頻度は不安定であった。約3週間指導を行ったが不安定のままであった。
指導1’ 再度指導1の条件で行うと、2日目に100%に達し、4日目に達成基準を今度こそ満たした。
指導2’ 再度指導2の条件で指導を行った。トイレ横から1歩ずつ離れ、5歩離れた地点で達成してから指導3に移行することにした。冬休み前(12月第3週)では5歩離れた条件で指導していた。3学期は5歩の条件で再開した。約4週間指導をしたが、2日連続100%が何度かあったが、3日連続しないため、未だ達成せず…。
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考察 |
【指導において重要なこと・定着までに予想以上に時間がかかった要因など】
達成基準を満たさないままの指導は、次の指導にまで影響がある。指導2と指導2'では明らかに自発の安定度が違う。条件移行するときは安定しているときに行うことが絶対条件だった。
トイレに走りこんでいくことが時々見られた(尿意が緊迫しているときと思われる)。教員に伝える前にトイレに入ろうとしてしまう。教師に伝える余裕がなかったのかも。
一日3回トイレに行っていたが、他児の指導のため、本指導ができなかったときがある。強化できたときとできなかったときがあり、指導が長引いた要因の一つになったと思う。
教師に伝えなかったときの修正試行(教師に止められる)がDくんにとってたいして嫌ではなかったのではないか。指導が排尿をともなうものだけに負荷をかけるわけにはいかないと思い、特に条件を変えなかった。
トイレに行くまでに教師と目が合ったときに伝えることが多いような気がする。 しかし必ずしもそうとは言えず、目が合わないときや背中を向けた教師に伝えたこともある。
【指導においての疑問】 指導がうまくいっていないとき(記録が不安定・低下)、指導方法を変えなければならないと思う。このタイミングはいつがいいか?いつごと見切りをつけるべきか?
二日連続100%なのに三日目が落ち込むパターンが何度も続いている。あと1日(1回)で達成したのに…。なんでだろ〜。
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