200923



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事例担当者のイニシャル[HELP]Y・N,A・H
事例研究のタイトル[HELP]小学部高学年の知的障害児に対する,トイレに行きたい時,トイレカードを教員に手渡して伝えることができるための支援
事例の概要[HELP] Eさんは,半日スケジュール(文字つきの写真カード)にトイレカードを提示し、定時排尿(朝の着替え後、給食後、帰りの会前の3回)を行っていた。しかし、スケジュールからトイレカードを取り、トイレまで移動する際に、他の教室に入る逸脱行動が多くみられていた。定時排尿でトイレに行った際、尿が出ないことはなく、少しではあるが出ていた。
対象児のプロフィール[HELP]特別支援学校小学部5年 女子 知的障害
新版K式発達検査2001:1歳8ヶ月(H18.12.実施)
その他の特徴:
・文字付き(ひらがな)の写真によるスケジュールを、登校後から給食まで、はみがきから下校までの2回に分けて提示。
・本児にとってスケジュールは、次の活動を「知る」ための手がかりにはなっている。
・スケジュールに入っている写真カードを音声言語で表すことができる。
・「お願いします」「○○(ジャム、ふりかけ、など)をください」「いや」等の簡単な言葉や、クラスの友だちの名前を言うことができる。
・音声での簡単な指示は伝わる。
指導者の役割と人数[HELP]指導者A(担任)
指導者B(担任)
以上2名
長期目標[HELP]トイレに行きたい時に、トイレの写真カードを教員に手渡して伝えることができる。
短期目標[HELP]教員による「トイレは?」のことばかけとトイレの写真カードの提示に対し、トイレに行きたい時は、カードを取ることができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]教員による「トイレは?」のことばかけとトイレの写真カードの提示に対し、トイレに行きたい時は、カードを取ることができる。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]トイレの写真カードを取った後、トイレへの移動途中で、他の教室に行く。
標的行動を取り上げる意義[HELP] Eさんは、スケジュールにトイレの写真カードを提示し、定時排尿を行っていた。しかし、スケジュールからトイレカードを取り、トイレまで移動する際に、他の教室に入る逸脱行動が多くみられており、その原因として、尿意がないことが挙げられる。一人で排尿するスキルはあり、Eさんの将来的なことも考えると、トイレに行きたい時に自分から相手に伝えられることが必要である。自分から教員以外の人に伝えたり、学校以外の家庭や外出先で伝えたりすることができるようになることは、かかわる人や生活場面の拡がりにつながると考えた。
事例に関する情報[HELP] 家庭では、定時排尿である。また、尿意や便意を催している様子がみられる場合(トイレの前でウロウロする)は、母がトイレに誘っているとのことである。朝は、必ず自宅で排尿してから登校している。朝食は、軽食で、補給する水分量は年間を通して少ない。学校では、朝の体育後に、少量の水分補給はしている。給食の牛乳は全部飲んでいる。
問題の推定原因[HELP]逸脱の原因として、尿意がないことが考えられた。
般化を狙う場面[HELP]家庭生活場面全般
指導場面[HELP]学校での各活動終了時,また,モジモジして尿意を催している様子がみられる時。
指導手続き[HELP]1.各活動の終了後、指導者AがEさんの目の前にトイレの写真カードを提示し、「トイレは?」とことばかけする。

【「ある」と答えてトイレに行った場合】
2.指導者Bが背後からEさんの手に手を添え、トイレの写真カードを取る。
3.トイレへの移動の際、指導者AはEさんの2.5m後ろに付いて歩く。(徐々に距離を伸ばす)
4.排尿できたら、「おしっこ出たねー」と大げさに賞賛する。
5.手洗い後、指導者Aがトランジッションカードを手渡す。
6.トランジッションエリアに戻り、次の活動「やすみじかん」のカードを取り、カードポケットに入れた直後に、指導者Aは、遊び選択ボードにEさんの好きなメロディ絵本(トイレに行って排尿することができた時限定の絵本)の写真カードを提示し、選択できるようにする。

【「ある」と答えたが、移動途中に他の教室に行こうとした場合】
2.指導者Bが背後からEさんの手に手を添え、トイレの写真カードを取る。
3.トイレへの移動の際、指導者AはEさんの2.5m後ろに付いて歩く。
4.移動途中、他の教室に行こうとした場合は、すぐに入り口へ回って、誤った進路を防ぎ、逸脱せずにトイレに行くことができるようにする。誤った進路を防いでもなお、教室に入ろうとした場合は、身体的ガイダンスでトイレに誘導する。
5.排尿できたら、「おしっこ出たねー」と大げさに賞賛する。
6.手洗い後、指導者Aがトランジッションカードを手渡す。
7.トランジッションエリアに戻り、次の活動「やすみじかん」のカードを取り、カードポケットに入れた直後に、指導者Aは、遊び選択ボードにEさんの好きなメロディ絵本(トイレに行って排尿することができた時限定の絵本)の写真カードを提示し、選択できるようにする。

【「ない」と答えた場合】
2.指導者Aがトランジッションカードを手渡し、次の活動「やすみじかん」に移ることができるようにする。(遊びの選択ボードの中には、トイレに行って排尿することができた時限定のメロディ絵本の写真カードは提示しない)
利用可能な好子[HELP]・メロディ絵本
・教員の賞賛
教材教具など[HELP]・トイレの写真カード
・メロディ絵本
・メロディ絵本の写真カード
・遊びの選択ボード
・トランジッションカード
・スケジュールボード
記録の取り方[HELP]各活動終了後,Eさんの目の前にトイレの写真カードを提示し,「トイレは?」もしくは「トイレある?」とことばかけをした際のEさんの反応と排尿の有無を記録する。ベースラインは,11月17日〜20日の3日間,指導開始は11月24日からとする。
指導期間と達成基準[HELP]<指導期間>
ベースライン:11月17日〜20日
指導期間:11月21日〜

<達成基準>
 5回連続して、尿意がある時に提示されたトイレカードを取ってトイレに行き、排尿することができたら達成とする。
結果[HELP]ベースラインで,トイレカードの提示とともに,ことばかけを「トイレは?」「トイレある?ない?」「トイレない?ある?」「トイレある?」「トイレない?」のいずれかから選択して行った際,Eさんがオウム返しで答えたり,「ある」と答えたもののトイレカードを押しのけたり,「ない」と答えたりして,トイレに行くことはなかった。ことばかけを変えても,「ない」と答えることが全体の69%超と高かったため,ことばかけを「トイレは?」「トイレある?」の2つに限定して行うことにした。
 指導開始日(欠席,学部閉鎖のため,12月1日から指導開始に変更)から12月21日までは,自分ですぐに「ない」と訂正はしていたが「ある」と答えることが4回だけあった。しかし,それ以降は「ある」と答えることはなかった。Eさんは毎日3食摂っており,極端に水分補給量が少ない訳ではないが,頻尿の逆で排尿の回数が少なく,下校時まで排尿しなくても困った様子がみられたり,失敗したりすることもなく,尿意がある時の指導場面がほぼなかった。
 Eさんはスクールバスによる登下校のため,下校前のみ,スケジュールにトイレカードを提示してトイレに行くようにしている。そこで、トイレに行く行動のABC分析をしてみると,トイレに行った結果に得られるであろうと考えられる好子が少なく,トイレに行く動機付けが弱いことに気付いた。そこで,トイレに行った後に,Eさんの好子である教員の賞賛やメロディ絵本(トイレに行った時のみに使用)を取り入れることで,トイレに行く動機付けが高まるのではないかと考え,1月13日から実施した。

考察[HELP]これまでに,トイレカードを取ってトイレに行くことが3回あったが,2回は我慢できなくなるまでトイレに行こうとしなかった。しかし,3回目は,Eさんにとって少しは余裕のある状態でトイレカードをとることができた。現在も排尿の回数は少ないが,尿意がある時に,トイレカードをとることはできるようになってきた。
 また、定時時排尿を止め,下校前のみの提示にすることによって、トイレに行く際の逸脱行動はほとんどみられなくなった。さらに好子を取り入れてからは、下校前にトイレに行く際の逸脱行動はみられなくなった。このことから、尿意がある時に、トイレカードを取ってトイレに行くことで、すっきりする気持ちのよい感覚や賞賛、メロディ絵本などの好子が得られる経験を積み重ねることが大切であることが分かった。Eさんが、より余裕のある状態でトイレカードをとることができるように,今後も継続して指導していきたい。

記入日時 2009/11/12/15:46:24

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