201005



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事例担当者のイニシャル[HELP]O
事例研究のタイトル[HELP]上靴のかかとを入れる指導
事例の概要[HELP]本児は手すりなどにつかまり立ちしたり,椅子に座ったりした状態で靴のかかとを入れて履くスキルを持っている。しかし,登校時などに上靴を手に持ったり,上靴のかかとを踏んだりしたまま教室まで移動する姿が見受けられる。教員に言葉かけされるとその場で履くこともあるが,聞かずにそのままやり過ごそうとすることもある。下駄箱で上靴を取ったら,その場でかかとを入れて適切に履くことを習慣づけることができたらと考え,この実践に取り組んだ。

対象児のプロフィール[HELP]小学部6年、知的障害
○ 諸検査の結果
 ■  新版K式(2001)
 姿勢・運動領域 3歳10ヶ月以上
 認知・適応領域 4歳2ヶ月
 言語・社会領域 3歳9ヶ月
(平成22年3月18日 実施)

○ 実態
 ■昨日あった出来事について話したり,本やビデオの場面について話したりすることができるので,大人との簡単な会話をすることができる。
 ■靴のかかとを入れて履く時は,立位で手すりを持った状態か,椅子に座った状態で履くことができる。
 ■身体の動きや手先の動きが拙いために,みなりを整えたりすることが苦手である。
 ■失敗することへの苦手意識があるため,失敗や教員からの指摘が続くと情緒が不安定になり,自傷や他害として現れることがある。
指導者の役割と人数[HELP]教科担任3名、担任1名
長期目標[HELP]靴を履く場面でかかとを入れることができる。
短期目標[HELP]下駄箱で下靴から上靴に履き替える時にかかとを踏まずに履くことができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]玄関で上靴を履く場面で、下駄箱横の手すりにつかまった状態で、上靴のかかとを入れて履く。
標的行動を取り上げる意義[HELP]かかとを入れて歩くことで、脱げにくくなり安全で歩きやすい。
自発的に履けるようになることで、『ちゃんと履きなさい』と指示されることがなくなり、ストレスが減らせる。
問題の推定原因[HELP](1)かかとを踏んでいる違和感が気にならない。
(2)かかとを入れる行動を強化している好子がない。
(3)かかとを入れるように指示がある時とない時がある。
(4)かかとを入れることを忘れてしまう。
想定される解決策[HELP](1)かかとを踏んでいる違和感を強くする。(かかとにリングをつける。)
(2)かかとを入れれたら、恐竜カード(トークン)が得られるようなルールにする。
(3)毎回必ず、かかとを入れるようにプロンプトする。
(4)かかとを入れる写真を下駄箱に貼る。
(5)かかとを入れる写真を、恐竜がしゃべっている絵にして下駄箱に貼る。
選択した原因と解決策[HELP]介入1
 原因(2)(4)
 解決策(2)(4)

介入2
 原因(2)(4)
 解決策(2)(5)

介入3
 原因(1)
 解決策(1)
般化を狙う場面[HELP]下靴を履く時,
入所施設玄関で上靴を履く時
指導場面[HELP]朝の登校時,昼食後の登校時,校外での活動後校内へ入る時
指導手続き[HELP]<介入1の準備>
 本児の下駄箱に上靴のかかとを入れている写真を貼っておく。
 下駄箱横の手すり付近に,トークンである恐竜カードを貼っておく。
<介入2の手続き>
1.本児が下駄箱から上靴を取り,下駄箱横の手すりに掴まって上靴のかかとを入れるのを見守る。
2.かかとを入れて履くことができれば,言葉で賞賛しながら,恐竜カードを取るように促す。
3.かかとを入れないまま歩き出したり,上靴を持ったまま下駄箱横の手すりの場所を通り過ぎたりしようとしたら,本児の手を取り下駄箱から上靴を取り出す所からやり直すように促す。(バックステップエラー修正)かかとを入れて履くことができれば,言葉で賞賛しながら,恐竜カードを取るように促す。

<介入2の準備>
 本児の下駄箱に恐竜が「かかとを入れる」ように言っている写真を貼っておく。
 下駄箱横の手すり付近に,トークンである恐竜カードを貼っておく。
<介入2の手続き>
 介入1と同様

<介入3の準備>
 上靴のかかとに、リングをつけておく。
<介入3の手続き> 
 介入1と同様
利用可能な好子[HELP]トークン(恐竜カード)、ほめ言葉など人の注目、
教材教具など[HELP]上靴のかかとを入れている写真

トークン(恐竜カード)
記録の取り方[HELP]朝の登校時,昼食後の登校時,校外での活動後校内へ入る時など本児が玄関で下靴から上靴へ履き替える機会に測定する。

 支援なしでかかとを入れて履けた…○
上記以外…×

正反応率(%)=1週間の○の数/1週間の測定機会の回数の合計
指導期間と達成基準[HELP]9月13日〜
結果[HELP]介入1では、指導開始3週目から正反応が見られるようになった。その後,通算8週間指導を行ったが,正反応率は徐々に高くなってきている傾向が見られた。最大の正反応率は91%だったが、その後は、正反応率が伸び悩んだ。測定機会のうち,朝と昼の登校時という定期的にある機会は正反応率が高く,校外活動の後などの不定期な機会は正反応率が低い傾向が見られた。
介入2では、きっかけとして恐竜の写真カードを使用することで、やや正反応率が上がったが達成には至らなかった。
介入3では、指導1週目から高い正反応率が見られた。

考察[HELP]介入1で、正反応が見られるようになったのは,バックステップエラー修正により,下駄箱横の手すりや下駄箱に貼った上靴のかかとを入れている写真が靴をはくための先行条件としてはたらくようになったためと考えられる。長期間の指導の割に正反応率が伸びない原因としては,玄関先での刺激の多さや不定期な機会には,先述の先行条件がはたらかないためと考えられる。
介入2で、恐竜が「かかとを入れる」ように言っている写真を使ったことで、本児が自ら気づくことが増えたが、慣れてくるにつれて効果が薄れたと思われる。
介入3で指導初期から高い正反応率が見られたのは、かかかとを踏んでいる違和感が嫌子として働きかかとを入れることで嫌子消失の強化が起こったためと考えられる。
介入1,2で視覚的な手がかり刺激を用いて指導を行ったが、ある程度の成果しか得られなかった。本児にとっては、介入3のような身体的な刺激の方が伝わりやすいと思われる。

『かかとを入れる』のBefore
A:先行条件 B:行動 C:結果
玄関の下駄箱
上靴あり
先生の言葉かけ
かかとを入れる フィット感あり(−)
先生のほめ言葉(↑)

『かかとを入れる』のAfter
A:先行条件 B:行動 C:結果
玄関の下駄箱
上靴あり
先生の言葉かけ
かかとを入れている写真
かかとを踏んでいる感覚あり
かかとを入れる フィット感あり(−)
先生のほめ言葉(↑)
恐竜カードあり(↑)
かかとを踏んでいる感覚なし(↑)


週ごとの正反応率の推移
記入日時 2010/10/15/17:08:02

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