201010



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事例担当者のイニシャル[HELP]MH
事例研究のタイトル[HELP]小学部低学年自閉症児に対する室内遊びの種類を増やすための支援
対象児のプロフィール[HELP]小学部2年 女児 A 知的障害・自閉症
PEP-R発達検査結果 2歳5ヶ月(平成21年5月)
太田のStage Stage1ー3(平成21年4月)
困ったときや手伝ってほしい時に、クレーンハンドで要求することがある。
好きなキャラクターの名前を叫んだり、踊ったりしはじめると、指示に従うことが難しくなる。好きになる遊びやキャラクターにブームがあり、ある期間でそのブームが終わるという傾向がある。
指導者の役割と人数[HELP]担任2名
長期目標[HELP]家庭で一定時間一人で遊ぶことができる。
短期目標[HELP]コミュニケーションブックの中から遊びを選んで、一定時間一人で遊ぶことができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]3種類の遊びカードから、したい遊びを選んで、プレイエリア内で3分間遊ぶことができる。
標的行動を取り上げる意義[HELP]7月上旬より頭頂部辺りの髪の毛を抜くことがみられるようになった。髪の毛を抜く行動は遊びの時間にもみられ、抜いた髪の毛を指にくるくる巻きつけたり、並べたりして遊ぶことがあった。他の時間では、自立課題中やバスに乗っているときや待ち時間が多かった。
 家庭では、一人でいるときや大人の目の届かないところで髪の毛を抜くことがみられるようになった。また、台所の調味料を勝手に持ち出し、ボウルに混ぜたり、炊飯器の中に入れたりすることも多い。
 室内で一定時間、一人で遊ぶことができるようになることで、家庭で髪の毛を抜いたり、調味料で遊んだりせず落ち着いて過ごすことができるようになると思われる。また、学校での遊びの種類が増えることで充実した遊びの時間になると思われる。
事例に関する情報[HELP]遊びの時間はコミュニケーションブックの中の選択カードから選んでいる。選ぶのは、「わくわく広場」や「お絵かき」「キャラクターや料理の絵本」が多い。「わくわく広場」では、セーフティマットに寝ころんだり、高いところに上って眺めたりする行動が見られる。
自立課題はワークシステムに沿って、課題に取り組もうとするときもあったが、自分でするときとしないで髪の毛を抜いてしまうときがあった。取り組もうとした課題は、好きなキャラクターの絵を使用した課題や目新しい課題が多かった。
授業では、調理や製作の時間が好きで積極的に取り組むことができている。手順書や指示に従うのではなく、自分流にアレンジして作ってしまうことが多い。
学校で遊びの選択をするときには,ブームになっている遊びを連続して選んだり、「わくわく広場」を選んで寝ころんで時間を過ごしたりすることが多くなっている。また、6月にはスケジュールの「遊び」を見て「あそびなしです」と自分で言うこともあった。
問題の推定原因[HELP]1 頭への痛み刺激が気持ちいい。
2 指に巻いたり並べたりするのが遊ぶことができる。
3 髪の毛を抜くことが楽しい。 
4 髪の毛を抜いたときのプチッとするのか楽しい。
5 することに飽きて、暇つぶしになる。
6 注意引き
7 遊びがおもしろくない。
想定される解決策[HELP]1 頭に帽子やヘアキャップをかぶる。
2 指に巻いたり並べたりするひもやリボンを用意する。
3 本児が好みそうな遊びを探す。
4 遊びの種類を増やす。
5 過剰な反応を示さないようにする。
6 遊び時間をタイムログで設定し、目でみてわかるようにする。
7 最初は教員が一緒に遊ぶ。
選択した原因と解決策[HELP]原因  髪の毛を抜くことが楽しい。
解決策 本児が好みそうな遊びを探す。
般化を狙う場面[HELP]家庭や病院の待合室など
指導場面[HELP]遊びの時間
指導手続き[HELP]1 スケジュールに「遊び1(設定遊び)」(3分)と「遊び2(自由遊び)」(5分)を設ける。1日2回設定する。遊び1には、本児が興味をもちそうなもの、本児に試してもらいたい遊びを準備する。
2 「遊び1」の時間にコミュニケーションブック1(写真1遊びのカードが3枚)を本児に渡す。遊びを選んで教員に「○○ください。」(二語文)のカードを渡すことができるように促す。3枚の中から選んでもらうようにする。
3 選んだものを渡し、プレイエリアに行くように促す。
4 タイマーで3分をセットする。タイマーが鳴るとプレイエリアから出て、スケジュールを確認するようように促す。
5 スケジュールを確認したら、コミュニケーションブック2(写真2遊びのカードが20枚程度)を本児に渡す。遊びを選んで教員に二語文のカードを渡すことができるように促す。コミュニケーションブック1に入っていた3枚のカードも入れておく。
6 タイムログで5分をセットする。タイマーが鳴るとプレイエリアから出てくるように伝える。要求の物を渡し、プレイエリアに行くように促す。
「遊び1」で、同じ遊びを選択する機会が3回連続すると、その遊びカードをコミュニケーションブック2に移動させ、新しい遊びカードを加える。 
「遊び2」で、同じ遊びを選択する機会が3回連続すると、その遊びカードをコミュニケーションブック2から外す。
教材教具など[HELP]コミュニケーションブック1、2 タイマー タイムログ
記録の取り方[HELP]1 「遊び1」で何を選択したか  
2 「遊び2」で何を選択したか
3 遊んでいるときの様子、気になったこと
指導期間と達成基準[HELP]達成基準 「遊び1」で選んだ遊びを「遊び2」で2種類選ぶことができたとき(別の日に選んでも可)
結果[HELP]「遊び1」「遊び2」を通して、遊びの累計が29個になった。
「遊び1」で選択した遊びを「遊び2」でも選択した遊びの累計は10個となった。
考察[HELP]指導開始当初、遊びの時間を2回設定したことについては、あまり戸惑う様子がなく、スケジュールに対応した行動をとることができた。
 「遊び1」では、3種類のうち2種類をAの好きなキャラクターの遊びにして開始した。好きなキャラクターに関する遊びを選択する機会が続いたが、日が経つごとに好きなキャラクターに関する遊び以外でも、いやがることなく選ぶ様子がみられた。 
 「遊び1」「遊び2」を通して、遊びの累計が29個になった。好きなキャラクターや以前より興味があった料理に関する遊びの選択が多かったが、「遊び1」のときに新しい遊びも経験することができた。今まで経験したことのない遊びをする機会作りとしてはよかったと考えている。
 「遊び1」で選択した遊びを「遊び2」でも選択した遊びの累計は10個となった。遊んでみてAにとって「また遊んでもいい」と思わせる遊びだったのだろうと推測する。
 スケジュールであらかじめ示していたこととコミュニケーションブックを2冊用意したことで、Aが「遊び1」の時間に自分が選びたい遊びがなくても「遊び2」の時間に遊ぶことができるというシステムを理解しやすかったと思われる。また、「遊び2」の遊びが、「遊び1」で選んだもので遊ぶことを強化できたのかもしれない。遊びの種類が少ない児童にとっては、このように遊びの時間を二段階設定することは遊びの種類を増やすために有効な手法であると考える。
また、「遊び1」の遊び中には、タイマーを見て、鳴るのを待っているような素振りもあった。自分の気持ちをコントロールして時間を過ごしているようになってきていると感じた。見通しをもって時間を過ごすという点でタイマーやタイムログを用いることも必要であると考えた。
 今後、Aの遊びの種類をさらに増やすために指導を続けていくとともに、学校以外の場所や場面になっても何かで遊んで時間を過ごすことができるよう指導を考えていきたい。

解決策のABC分析(1)
A:先行条件 B:行動 C:結果
プレイエリア
本やおもちゃ
いすやマット
カーテン
近くに教員
頭や手に感覚なし
遊びが楽しくない
コミュニケーションブック
髪の毛を抜く 頭にプチッという感覚
抜けた髪の毛
並んだ髪の毛
指に巻ける
楽しい
チーってできる
引っ張る感覚
止められる
遊びが終了

解決策のABC分析(1)
A:先行条件 B:行動 C:結果
プレイエリア
本やおもちゃ
いすやマット
カーテン
近くに教員
頭や手に感触なし
コミュニケーションブック1
遊びの時間
タイマー
たまごっちハウスで遊ぶ 楽しい
たまごっちのキャラクターを並べられる
時々新キャラクターが登場
時々教員が「まめっちは」とごっこ遊びに参加する
プチッという感覚なし
引っ張る感覚なし
指や口に髪の毛なし

解決策のABC分析(2)
A:先行条件 B:行動 C:結果
コミュニケーションブック1
スケジュールに「遊び1」
教室
近くに教員
少し好きな遊び
3種類の遊びのカード
横にタイマー
「コミュニケーションブック1」から選んだ遊びで3分間遊ぶ
楽しい
教員の賞賛
「遊び2」で好きな遊びができる
自分の好きな世界(たまごっち)に入っていられる
新しい楽しみ発見
タイマーで見通しがもてる
新しい遊びに不安
おもしろくないときもある


図1 「遊び1」で選んだ遊びを「遊び2」で選んだ遊びの種類の累計

図2 「遊び1」で選んだ遊びと「遊び2」で選んだ遊びの種類の累計

コミュニケーションブック1

コミュニケーションブック2

コミュニケーションブック2の選択カード
記入日時 2011/03/25/13:34:49

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