201018



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事例担当者のイニシャル[HELP]h
事例研究のタイトル[HELP]定時排尿で,排尿した後にビックマックを押して教員に伝えることができるための支援
事例の概要[HELP]授業が終わるごとにトイレットチェアーに座るが,排尿する時としない時がある。排尿後や排尿がない時には,トイレットチェアーのすぐ右横にあるホワイトボードをたたく場面が見られる。VOCAを使用して,排尿できたことを伝える手段を教えたい。
対象児のプロフィール[HELP]特別支援学校小学部3年 男子 知的障害、肢体不自由

MEPA-R検査(平成22年11月)
 姿勢:ステージ3  移動:ステージ2  技巧:ステージ3
 受容:ステージ2  表出:ステージ1  対人関係:ステージ3

〔その他の特徴〕
人や乗り物が好きで,大勢の人がいたり,バスなどに乗ったりすると興奮状態になる。
また,人が見える状態では,そちらの方ばかりが気になり,学習や活動に集中できない。
指導者の役割と人数[HELP]【指導1:即時プロンプト指導】
指導者A:プロンプター,エラーレス指導者
指導者B:Pさんの行動への評価者

【指導2,指導3】
指導者A:Pさんの行動への評価者〔長期目標〕
排泄後,ビックマックを押して教員に伝えることができる。
長期目標[HELP]排泄後,ビックマックを押して教員に伝えることができる。
短期目標[HELP]定時排尿で,排尿した後にビックマックを押して教員に伝えることができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]排尿後,ビックマックを押す
標的行動(減らしたい行動)[HELP]排尿していない時に,ビックマックを押す
標的行動を取り上げる意義[HELP]今回の指導で,排泄後ビックマックを押して自分で教員に伝えられることを目指したい。自分から報告をできることで,排尿後すぐに教員が来て教室に行くことができることの喜びを感じたり,教員とのコミュニケーションを図る手段を身につけたりすることをねらう。将来的には,自分から報告ができるようになることで,課題終了後の報告など,いろいろな場面への般化をねらう。
事例に関する情報[HELP]・Pさんは肢体不自由を併せもっているため,教員がトイレまで介助して移動している。
・危険防止のため,排泄をするときはトイレットチェアーに座っている。
・4月ごろから,トイレットチェアーに座った状態で排泄がない時や排泄した後に右横の壁をたたく行動が見られるようになった。
・ビックマックは,トイレットチェアーの右横の壁に設置する。
・ビックマックには,「でました」と声を入れている。
問題の推定原因[HELP]1.排尿がないから
2.することがないから
3.スイッチを押すと声が出ておもしろいから
4.スイッチを押すと教員が来るから
5.排尿が終わったから
6.近くにスイッチがあるから
想定される解決策[HELP]1.排尿のタイミングを計り,定時排尿にする。
2.すぐに排尿できるように,定時排尿にする。排尿が終わったらすぐに教室へ戻るようにする。
  トイレットチェアーの机に好きな本を設置し,スイッチで遊ばないようにする。
3.正しい使用の仕方をエラーレス指導で教える。
4.正しい使用の仕方をエラーレス指導で教える。排尿をしていない時にビックマックを押した時   は,無表情で立ち去るようにする。
5.排尿した後にビックマックを押して報告できた場合は,本児にわかりやすい方法で賞賛する。
6.スイッチは近すぎて気にならないように,手を伸ばせば届く位置に設置する。トイレットチェア  ーに座るまでにスイッチが視界に入らないようにする。
選択した原因と解決策[HELP]原因1.トイレに座っていて,することがなく退屈なため

解決策1.すぐに排尿できるように,定時排尿にする。排尿が終わったらすぐに教室へ戻るようにする。トイレットチェアーの机に好きな本を設置し,スイッチで遊ばないようにする。
般化を狙う場面[HELP]課題学習後の終了の報告
指導場面[HELP]トイレ

【ベースライン】5日間
(1)トイレットチェアーのすぐ右横にビックマックを設置しておく。
(2)休み時間ごとにトイレへ行き,トイレットチェアーに座る支援を行う。
(3)座ったら,教員はその場を離れる。
(4)Pさんがビックマックを押したら,排尿の確認に行く。
(5)排尿ができていたらことばでほめ,できていなかったら排尿するように伝える。
指導手続き[HELP]【指導1:即時プロンプト指導】1ヶ月
(1)トイレットチェアーに座った時に,手を伸ばして届く位置(右側)にビックマックを設置しておく。
(2)朝の排尿時刻から排尿時刻を予測してタイマーをセットし,タイマーが鳴ったら,教員Aはトイレの写真カードを見せてトイレに行くことをPさんに伝え,トイレットチェアーに座る支援を行う。(紙パンツに排尿している場合は,紙パンツを履き替え,次のタイマーをセットし,教室へ戻るようにする。)
(3)教員Aは,Pさんの近くに座って待機する。排尿できたら,すぐにビックマックを指さして押すように伝える。排尿していない時にビックマックを押そうとしたら,押す前に手で制止する。
(4)教室にいる教員Bは,ビックマックの声が聞こえたら,すぐに無言でトイレへ確認に行く。  
●排尿できている場合は,ハンドベルを鳴らして賞賛する。
●排尿できていない場合は,無言でその場から立ち去る。
(5)排尿後,次の排尿時刻をタイマーでセットする。
【指導2】8日間
(1)トイレットチェアーに座った時に,手を伸ばして届く位置(右側)にビックマックを設置しておく。  
(2)朝の排尿時刻から排尿時刻を予測してタイマーをセットし,タイマーが鳴ったら,教員Aはトイレの写真カードを見せてトイレに行くことをPさんに伝え,トイレットチェアーに座る支援を行う。(紙パンツに排尿している場合は,紙パンツを履き替え,次のタイマーをセットし,教室へ戻るようにする。)
(3)教員Aは教室に戻り,Pさんからの報告があるのを待つ。ビックマックの声が聞こえたら,すぐに無言でトイレへ確認に行く。
●排尿できている場合は,ハンドベルを鳴らして賞賛する。
  ●排尿できていない場合は,無言でその場から立ち去る。 
(4)排尿後,次の排尿時刻をタイマーでセットする。
【指導3】3日間
(1)トイレットチェアーに座った時に,手を伸ばして届く位置(右側)にビックマックを設置しておく。机には,Pさんが好きな本を着けておく。
(2)〜(4)【指導2】と同様
利用可能な好子[HELP]絵本
ハンドベル


教材教具など[HELP]トイレットチェアー
ビックマック
絵本
ハンドベル
記録の取り方[HELP]指導場面:トイレットチェアーに座った後

・記録項目
 ●正反応:排尿後にビックマックを押して伝えられた時(回)/1日  
    排尿後に押した…○
 ●誤反応:排尿前にビックマックを押した,または,排尿後にビックマックを
      押さなかった時(回)/1日
      排尿前に押した…×   排尿後に押さなかった…△

 *同時に,トイレットチェアーに座った時刻と排尿時刻,紙パンツに排尿した時刻を記録した。
  1回の指導場面で,誤反応後正反応が見られた時は,ビックマックを押した時にたまたま排尿し  ていた場合もあるため,その指導場面では誤反応だったと記録する。

・グラフの書き方
 タイトル:排尿後ビックマックを押して伝えられた割合
 横軸:日付      縦軸:割合(%)
 
 正反応率=排尿後にビックマックを押して伝えれた時(回)/1日の指導場面(回)×100
指導期間と達成基準[HELP]【指導期間】
ベースライン:1週間
指導1(エラーレス指導):1ヶ月
指導2:8日間
指導3:3日間

【達成基準】
正反応率が100%の日が3日続いたら達成とする。
結果[HELP] 指導1を始めて2週間経った頃に,排尿前にビックマックを押す行動が減ってき始めた。その時点で指導2に移ろうとしたが,まだ誤反応が見られるため,指導1を継続した。1ヶ月以上にもわたる指導1であったが,排尿するまでビックマックを押さないようにすることやPさんが排尿後すぐにビックマックを押すように教えることで,排尿するまでにビックマックに手を伸ばすことがほとんど見られなくなった。
 寒い時期ということもあり,排尿時刻がずれ,指導回数(トイレットチェアーに座っての排尿)が1日1回になってしまう日もあったが,おおむね1日3回以上,多い時には7回指導を行うことができた。指導2では,100%の確率で報告できる日も見られたが,その日の体調や気分によって,トイレ指導以外の部分でも集中が持続しにくく,排尿するまで待てずにビックマックを押してしまう時が見られた。
 指導3では,指導2に加えてトイレットチェアーの机上に絵本を設置しただけであるが,排尿までに5分程度かかる場合の暇つぶしができ,排尿前にビックマックを押す行動が見られず,正反応が続いた。100%の確率で報告できる日が出てきた頃に冬休みに入ってしまったが,冬休み明けも変わらず確実に報告することができた。
考察[HELP] ビックマックが目に入るとすぐに押そうとしたPさんだったが,指導1を1ヶ月以上時間をかけて丁寧に行うことで,「排尿後に押す」ということの理解に繋がっていったと考えられる。また,今回の研究で,トイレットチェアーに座った時のビックマックの距離や高さも大きな要因の一つとなっていたことに気づいた。腕を伸ばさなくても届く距離にあった時は,目に入るとすぐに押しだし,連打をして声が出るのを楽しんでいた。そのため,右腕の長さとトイレットチェアーからビックマックまでの距離を同じ(45cm)にすることで,ビックマックを見てもすぐには押さずに,「排尿後に押す」という行動が増えたと考えられる。
 指導3から,机上に本を設置するようにしたのは,指導2の段階で,排尿までの時間が5分程度かかると手持ち無沙汰でビックマックを押す場面が何度か見られたためで,本を設置することで排尿が終わるまでの時間を静かに過ごすことに繋がった。また,本に集中しすぎてビックマックを押すのを忘れるということも考えられたが,トイレットチェアーに座ってから5分以内にビックマックを押していることが多いことから,排尿後すぐに押せていることが推測される。

指導前
A:先行条件 B:行動 C:結果
授業後に
トイレットチェアー
尿意がない
排尿前
目の前にビックマック
することがない
教員はいない
ビックマックを押す 声が出る(↑)
おもしろい(↑)
教員が来る(↑)
教員が声をかけてくれる(↑)
教員に怒られる(?)
感触が気持ちいい(↑)
教室に戻れない(?)

指導1後
A:先行条件 B:行動 C:結果
排尿予測時刻(定時)に
トイレットチェアー
排尿後
手を伸ばして届く位置にビックマック
すぐ隣に教員がいる
教員の指さしあり
エラーレス指導あり
ビックマックを押す 感触が気持ちいい(↑)
声が出る(↑)
教員が来る(↑)
ベルが鳴る(↑)
教員に誉められる(↑)
教室に戻れる(↑)

指導2後
A:先行条件 B:行動 C:結果
排尿予測時刻(定時)に
トイレットチェアーに座って
排尿後
手を伸ばして届く位置にビックマック
教員はいない
ビックマックを押す 感触が気持ちいい(↑)
声が出る(↑)
教員が来る(↑)
ベルが鳴る(↑)
教員に誉められる(↑)
教室に戻れる(↑)

指導3後
A:先行条件 B:行動 C:結果
排尿予測時刻(定時)に
トイレットチェアーに座って
排尿後
手を伸ばして届く位置にビックマック
教員はいない
トイレの机上に絵本
ビックマックを押す 感触が気持ちいい(↑)
声が出る(↑)
教員が来る(↑)
ベルが鳴る(↑)
教員に誉められる(↑)
教室に戻れる(↑)


排尿後,ビックマックを押して伝えられた割合
FILE 178_184_4.ppt

ビックマックの位置

机上に本を設置
記入日時 2010/10/19/16:11:53

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