201001



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事例担当者のイニシャル[HELP]W.U
事例研究のタイトル[HELP]精神発達遅滞の生徒が朝の日生で行う,対面課題をひっくり返さずにやりとげるための指導法。
事例の概要[HELP]本児は課題学習の時間に,課題をひっくり返す行動がよく見られる。課題をひっくり返すことによって教員が「怒る」「反応してくれる」「かまってくれる」が本児にとってとても大きな好子となっている。課題をひっくり返したときのその好子を取り除くことで,ひっくり返す行動を減らし,「ひっくり返さないことで「褒められる」「うれしい」という好子で課題をする行動を強化し,達成感を感じられるような指導を行うことにした。
対象児のプロフィール[HELP]精神発達遅滞(ダウン症症候群)
自閉傾向あり
平成19年4月13日 新版K式発達検査 1歳5ヶ月
最重度障害療育手帳A1判定

指導者の役割と人数[HELP]教員1
長期目標[HELP]日常生活の中でのものをひっくり返す行動を減らす。
短期目標[HELP]糸通しの課題ができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]課題をする。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]課題をひっくり返す。
標的行動を取り上げる意義[HELP]本児はひっくり返すのがとても好きである。大きいものを倒すなど,度が過ぎて危険な場合もある。自宅ではブラウン管のテレビを倒して壊している。卒業までにこの行動を減らすための効果的な指導の手立てを探しだし,実践し,少しでも改善できればと考えてる。
事例に関する情報[HELP]・2語文は話すが会話が難しい。意味のない言葉やオウム返しの言葉が多い。
・登校時の「おはようございます」下校時の「さようなら」の挨拶を自発的にすることがある。
・下着やシャツ,ベルトを使用しないズボンなどは少ない支援で着脱はできるが,ボタン付きのシャツやベルト,ホックを使うズボンの着脱は支援が必要である。
・細かい作業は苦手であるが,糸通し課題は,手元を目で確認しながら課題ができるようになった。
・入浴や排便時に支援を必要とする。
・困ったときや助けが必要なときに「いる」と援助要求ができる。
・言葉かけに沿って動くことができる。
しかし,行事後にストレスで生活が乱れることがあり,言葉かけの指示が通りにくいことや多動が見られることがある。
・ものをひっくり返したり,倒したりして出る音や,イタズラをしたときの周りの人の反応を楽しむことが好きである。テレビや家具などの大きなものもひっくり返すことがある。
問題の推定原因[HELP]・課題をひっくり返したときに周囲の人間が「怒る」「反応する」「声を出す」がとても大きな好子 になっていると考えられる。
想定される解決策[HELP]・ひっくり返したときの好子を取り除く。
・「ひっくり返さないことで褒められる」「うれしい」の賞賛という好子を強化する。
選択した原因と解決策[HELP]原因
・課題をひっくり返したときに周囲の人間が「怒る」「反応する」「声を出す」がとても大きな好子 になっていると考えられる。
解決策
・ひっくり返したときの好子を取り除く。
・「ひっくり返さないことで褒められる」「うれしい」の賞賛という好子を強化する
般化を狙う場面[HELP]・自立課題の時間にすべての課題をすることができる。
・日常生活でのひっくり返す行動を減らす。
指導場面[HELP]日生で行う活動の中に対面課題を入れ,毎朝行う。
指導手続き[HELP]3段式棚で3種類の課題を上から順に行う。

1.課題を行う机の横に教員が座る。
 以前は正面,もしくは本児から離れた場所からなど,決まった場所から指導を行っていなかったため,指導を行う教員の位置を机の横とした。
2.課題中にほめ言葉,言葉かけを多く行う。
 課題中に集中力が切れることが多く,課題をひっくり返したり,次の課題をしなかったりなどがあったため,教員が生徒に対し,ほめ言葉,言葉かけを多くすることとした。
3.課題ができたら、拍手をしながらとても大げさに賞賛する。
 課題ができたという達成感を持ってもらうため,以前より大げさに賞賛し,拍手や頭をなでるなどのコミュニケーションを取り入れることとした。
4.ひっくり返した場合。
 言葉かけなどをせずに無言で課題を教員が拾い,再度課題に取り組ませる。また,課題中のほめ言葉,言葉かけを極端に少なくし,課題ができても賞賛をしない。
利用可能な好子[HELP]・「すごい!」「かしこい!」「すばらしい!」などの賞賛の言葉。
・拍手
・頭をなでる
教材教具など[HELP]糸通し課題
プルタブ入れ課題
カードいれ課題
ペットボトルふた外し課題
型はめ課題
洗濯ばさみつけ課題
ペグ差し課題
記録の取り方[HELP]・3種類の課題のうち1つでもひっくり返す。もしくはひっくり返そうとしたら×。
・課題をひっくり返さなかったら○。
・記録は日生のみとし,他の時間での課題は含まないものとする。
※ベースラインから介入までに就業体験があり,その間は課題を行っていない。
指導期間と達成基準[HELP]指導期間
・ベースライン9月
・実践10月〜11月
達成基準
・1ヶ月間指導し、正反応が90%を超えることができたとき。
手立て変更基準
・1ヶ月間指導し、正反応が80%以下であるとき。
結果[HELP]9月6日から9月22日にとったベースラインでは31%の確率で課題をすることができていた。
 10月5日から指導開始した。グラフでわかるように,指導を開始した日から指導の成果が見られた。しかし,記録としては残っていないが,10月の上旬に指導場面以外の時間で課題をひっくり返す行動が数回みられた。
 10月15日から不定期ではあるが,3つの課題が1つできるごとにの拍手をするようになった。10月16日に運動会があり,休みを挟んだ後の19日,20日の2日間だけ課題をひっくり返した。その後は時間に関係なく課題に集中して取り組むことができ,10月は88%の確率で課題ができた。
 11月に入ってからは課題ができた後に「よくできました」などの教員のほめ言葉をまねるようになった。この頃から達成感を感じるようになり,他の作業学習や自立課題でも活動に集中して取り組むことができるようになった。
 11月には文化祭という大きな行事があり,不規則な時間割が続いたが,活動に影響は出なかった。
11月は指導の成果が確実なものとなり,100%の確率で課題をすることができた。
考察[HELP] 10月の結果と本児の様子から,課題をひっくり返す行動の原因の1つとして,教員のほめ言葉,言葉かけが少なかったことがわかった。また,指導場面以外で課題をひっくり返したときに,指導手続き4.で表記した対応ができたことが指導場面でのひっくり返す行動の抑制につながったと考えられる。
 11月の結果と様子からでは,課題をひっくり返したときに発生していた好子の「怒る」「反応してくれる」「かまってくれる」がなくなり,かわりに「いいことをするとほめてもらえる」の好子が強くなったことがはっきりとわかった。また,文化祭で時間割が不規則になったときも,目の前にある活動にまじめに取り組むことでほめてもらえることが達成感につながり,生活が乱れることがなくなったと考えられる。
 今回の指導の結果は,対面課題の場面だけでは収まらず,本児の学校生活そのものに大きく広がりを見せた。

減らしたい行動Before
A:先行条件 B:行動 C:結果
・教室
・対面課題のとき
・両手を使う課題 
・友だちあり
・先生が無言 
・先生が毎回違うところにいる 
・飽きている課題
・ひっくり返しやすいかご
・課題をひっくり返す ・先生が気にかけてくれる↑
・先生の声↑
・視線がなくなる↑
・先生が近くに来る↑
・先生が怒る↑
・音が鳴る↑
・課題を拾いに行ける↑

減らしたい行動After
A:先行条件 B:行動 C:結果
・教室
・対面課題のとき
・両手を使う課題 
・友だちあり 
・先生が机の横にいる。 
・飽きている課題
・ひっくり返しやすいかご
・前回課題ができたときにとてもほめてくれた記憶
課題をひっくり返す ・先生が怒らない↓
・全部やったのにほめてくれない↓
・話しかけてくれなくなる↓
・音が鳴る↑
・課題を先生が拾う↓

増やしたい行動Before
A:先行条件 B:行動 C:結果
・教室
・対面課題のとき
・両手を使う課題 
・友だちあり
・課題中に教員が無言 
・先生が毎回違うところにいる
・飽きている課題
・ひっくり返しやすいかご
課題をする ・普通にほめてくれる−
・達成感なし↓
・音が鳴らない↓
・課題が終わったのに先生のリアクションが薄い↓


増やしたい行動After
A:先行条件 B:行動 C:結果
・教室
・対面課題のとき
・両手を使う課題 
・友だちあり 
・先生が机の横にいる。 
・飽きている課題
・ひっくり返しやすいかご
・前回課題ができたときにとてもほめてくれた記憶
課題をする ・少しのことでもほめてくれる↑
・全部できたらすごくほめてくれる↑
・ほめてくれるので達成感がある↑
・音が鳴らない↓

記入日時 2010/12/02/09:57:47

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