201116



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事例担当者のイニシャル[HELP]N.D
事例研究のタイトル[HELP]中学部知的障害のある生徒が集団場面で教員の話をメモするための指導
事例の概要[HELP]本生徒は,教員や大人に対して,自分から積極的に関わることができており,困ったことや嫌なことがあったときにも,教員に報告することができる。また,教員の話を聞きながら質問や分からないことは手を挙げ,名前を呼ばれてから聞くことができた。一方で,教員の話を聞く場面では,爪をかんだり,外を見たり,机に落書きをするなどの行動が見られ,話が終わった後に,教員に活動内容を聞く様子が見られている。本事例は,メモをとるという行動を加えることで,爪をかんだりするような行動が非両立行動として生起しないようにし,姿勢がどの程度変化するか,また,メモの有無によって,その後の話の内容に関する質問に対して,どのように正答率が変化するのか考察した。
対象児のプロフィール[HELP]中学部1年男子。 知的障害。[
WISC-3(FIQ=54,VIQ=56,PIQ=61)
他の生徒や教員,大人の行動や話が気になり,話に入ってきたり,本人には伝えていない情報も知っていたりすることがある。学校行事など楽しいことには質問をよく行い,スケジュールもしっかりと覚えて行動することができる。
また,仲の良い生徒,関わりの多い教員の名前などをよく覚え,他学部の情報も豊富である。一方で,教科の学習で本人が好きでない文字を埋めるような課題に対しては消極的な部分があり,教員が話をしている場面で頭を横にして鉛筆で遊び,課題が始まると同時に「何をしたらいいかさっぱりだ。」と機嫌悪く訴える場面が見られている。
姿勢に関して,書字の場面では頭が肘につくほど横にして文字を書いたり,ノートとの距離も近く決していいとは言えない。食事場面でも食器を置いたまま,肘をついて食べることがある。それぞれ,注意をするとすぐに直すが,しばらくすると,再び戻っていることがある。
指導者の役割と人数[HELP]指導者A:ND(担任)
指導者B:IY(教科担任)
指導者C:IA(教科担任)
長期目標[HELP]教員の話を聞き,自分にとって必要な情報をメモをとり,教員の質問に答えることができる。
短期目標[HELP]教員の話を聞き,選択肢式のメモ帳や記述式のメモ帳をうめ,教員の質問に答えることができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]メモをとり,教員の質問に答える。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]教員が話をしているとき,外を見たり,指で遊んだり,頭を机上で横にする。
事例に関する情報[HELP]検査結果から,VIQとPIQに有意差は見られない。
書字に関して,他の生徒よりも文字を書く速さが遅く,気に入らないと字が合っていても消して書こうとする。頻度では1,2文字に一回は消している。また,書いた字の上からさらに書き足す様子も見られている。
問題の推定原因[HELP]1.教員の話が長い。
2.言語情報が多い。
3.話を聞かなくても,後で質問をしたら話の内容が分かる。(話を聞かなくても困らない。)
4.鉛筆や消しゴム,外の風景など気になるものがある。
想定される解決策[HELP]1.情報の選択を行い,不必要な情報は省き,話の時間を短くする。
2.板書をしたり,コンピュータを用いたりするなど,視覚的情報を増やす。
3.教員の話の後に,質問タイムを設け,正解したら言語賞賛をするなど,話を聞くことに動機付けを行う。
4.必要ないものは片付けるなど環境を整え,メモをとる課題を加える。
選択した原因と解決策[HELP]原因1.話を聞かなくても,後で質問をしたら話の内容が分かる。(話を聞かなくても困らない。)
解決策1.教員の話の後に,質問タイムを設け,正解したら言語賞賛をするなど,話を聞くことに動機付けを行う。

原因2.鉛筆や消しゴム,外の風景など気になるものがある。
解決策2.必要ないものは片付けるなど環境を整え,メモをとる課題を加える。
指導場面[HELP]朝の会(毎日)
帰りの会(毎日)
生単(月,木)
美術(水)
国語(金)
指導手続き[HELP]1.教員の話の前にメモ用紙を渡す。
2.教員の話をメモしたら,話を続ける。メモをとっていない場合はメモ帳を指さしたり,話を復唱する。
3.話が終わった後,質問を5つする。
4.正答したら言語賞賛する。
利用可能な好子[HELP]「すごいね。」「よく聞いていたね。」などの言語賞賛。
質問に正解する。
記録の取り方[HELP]【教員の質問に対する正答率】
教員の話をしたあと,内容に関する質問を5つして正答率を求めた。
(1)ベースライン期=メモなし
(2)介入1期=選択式メモ(図1)
(3)介入2期=記述式メモ(図2)
(4)介入3期=記述式メモ+略記(図3)
【姿勢の評価】
各指導期で生徒の様子をビデオ撮りをし,ExcelのRAND機能を用い,ベースライン期と選択式をメモを用いた加入1期から無作為に3日間を選び評価した。評価は,BL期から見られていた「外を見る」「指で遊ぶ」「頭を机上で横にする」「鼻をいじる」の行動が「ずっとしていた=3点」「ときどきしていた=2点」「ほぼしなかった=1点」「全くしなかった=0点」で合計を出し,平均点を求めた。
結果[HELP](1)姿勢について
各実施場面でベースライン期よりも選択式メモを用いた介入1期のほうが,姿勢が良くなった。
(2)正答率について
すべての実施場面と介入期で正答率がほぼ100%を維持できた。
多層ベースライン法を用いたため,正答率の上昇がメモの導入によるものであることが明らかになった。

考察[HELP]メモを用いることで,生徒は話を聞き取る必要性ができ,その結果,教員の質問に対する正答率もあがった。
メモを用いることで,教員が話す内容に見通しをもたせることができた。生徒は姿勢がくずれたり,外を見ることがあっても,メモをしなければいけない内容の話になると鉛筆をもってメモをしていた。
今後の展望として,メモ用紙を自分から準備したり,教員の話から必要な部分を自分で判断してメモをとったりするための指導へと発展していきたい。

現状のABC分析
A:先行条件 B:行動 C:結果
朝の会
授業場面
教員
答えが分からない
質問に答える 誤答(↓)
教員の叱責(↓)

解決策のABC分析
A:先行条件 B:行動 C:結果
朝の会
授業場面
教員
答えが分かる
メモ帳
質問に答える 正答(↑)
教員の誉め言葉(↑)


姿勢の評価

正答率

図1:選択式メモ

図2:記述式メモ

図3:記述式メモ+略記
記入日時 2012/04/04/01:20:00

現行ログ/ [1]
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