201215



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事例担当者のイニシャル[HELP]SN,YN
事例研究のタイトル[HELP]小学部中学年の自閉症児が,ほしいものがあるとき,「〜ください」とことばで伝えるための支援
事例の概要[HELP]Eさんは,決められた場面(課題や給食の時間)であれば,カードでの手がかりがなくても,「えんぴつください」「めんつゆください」など適切なことばでの要求ができる。しかし,それ以外の場面でほしい物があるときなど(特に休み時間)は,ほしそうにじっと見つめるままだったり,手を伸ばして取ろうとしたりすることが多い。休み時間に,広場で友だちが遊んでいるおもちゃなどがほしくなったときに,何も言わずに友だちから奪い取ろうとすることがよくみられる。側にいる教員が要求のことばを言うまでおもちゃを渡さずに待つようにすると,「ありがとう」と繰り返し言ったり,「はじめます,れい」などと言うこともあり,設定された場面以外では,「〜ください」ということばでの要求が般化していないことがほとんどである。
 家庭においても,「〜ください」のことばでの要求はほとんどなく,ほしい物があるときは手を伸ばしたり,勝手に取ったりなどの直接的な動作が多いということである。
 そこで,まずは「教室で遊ぶ」という時間を設定して,Eさんが興味を持つようなおもちゃなどで,「〜ください」という適切なことばでの要求を練習して,広場などへの般化を目指し,この事例に取り組むことにした。
対象児のプロフィール[HELP]小学部3年 女児 Eさん 自閉症・知的障害
PEP-R発達年齢:3歳1ヶ月(平成24年4月)
指導者の役割と人数[HELP]担任2名
長期目標[HELP]教室以外の場所(広場など)で,ほしい物があるとき,「〜ください」とことばで伝えることができる。
短期目標[HELP]教室内で,ほしい物があるとき,「〜ください」とことばで伝えることができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]教室内で,ほしい物があるとき,文カードを手渡しながら,「〜ください」とことばで伝えることができる。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]休み時間,ほしい物があるとき,ほしそうにじっと見つめたり,手を伸ばして取ろうとしたりする。
標的行動を取り上げる意義[HELP]・適切な二語文で要求を伝えることができるようになることで,相手にも適切に伝えることができる。
・要求のことばのパターンを拡げることができる。
問題の推定原因[HELP](1)自分の言うべき適切な要求のことばがわかりにくい。
(2)ほしそうにじっと見つめたり,手を伸ばして取ろうとしたりしても,ほしい物がもらえることがある。
想定される解決策[HELP](1)言うべき適切なことばをカードで視覚的に提示する。
(2)適切なことばで要求ができたときのみ,ほしい物を手渡すようにする。
選択した原因と解決策[HELP](1),(2)
般化を狙う場面[HELP]教室以外の場所(広場,家庭)
指導場面[HELP]教室内,休み時間
指導手続き[HELP]【ベースライン】
 Eさんが興味を持てそうなおもちゃや本などを見せて,要求を促す。
(コミュニケーションブックには提示するおもちゃなどのカードは貼っていない。)

【ステップ1:教員に文カードを手渡して「〜ください」とことばで要求する】
(1)コミュニケーションブックに提示するおもちゃなどの名称のカードと「ください」のカードを貼っておく。
(2)Eさんが興味を持てそうなおもちゃなどを見せて,要求を促す。
(3)自分からコミュニケーションブックを使って,カードで「〜ください」と文を構成し,「〜ください」とことばで伝えながら文カードを手渡すことができたら,ほめて,おもちゃを手渡す。
(4)おもちゃに直接手を伸ばしたときは,コミュニケーションブックを指さし,カードを貼って文を構成するように促す。
(5)ことばで要求せずに文カードのみ手渡したときは,文カードを指さし,文を読むように促す。
(6)指さしは徐々に減らしていく。
(7)1種類のおもちゃにつき,3日連続でプロンプトなしで伝えることができたら,おもちゃを新しい物に変更する。達成していなくても,おもちゃに飽きている様子がみられたら,おもちゃを変更する。

【ステップ2:「〜ください」とことばで要求する】
(1)Eさんが興味を持てそうなおもちゃなどを見せて,要求を促す。
(2)「〜ください」とことばで要求できたら,ほめて,おもちゃを手渡す。
(3)「〜ください」とことばでの要求ができないときや,ことばが間違っていたときなどは,コミュニケーションブックを指さし,カードを貼って文を構成して正しいことばでの要求ができるように促す。
利用可能な好子[HELP]本児の興味のあるおもちゃ,キャラクターのカード,絵本など
教材教具など[HELP]コミュニケーションブック,おもちゃなど
記録の取り方[HELP]【ベースライン】
 提示したおもちゃなどで,遊んだかどうか。どのような手段で要求したか(文カードがなくても「〜ください」のことばでの要求ができたかどうか)を記録する。

【ステップ1】
(1)コミュニケーションブックを使って,カードで文を構成し,教員に手渡すことができたか。
(2)文カードを手がかりに,ことばで要求できたか。

【ステップ2】
 文カードがなくても「〜ください」のことばでの要求ができたか。
指導期間と達成基準[HELP]・指導期間
平成24年11月13日〜平成25年2月15日

・達成基準
【ステップ1】
 3日連続で文カードを手渡しながら「〜ください」とことばで伝えることができたら,そのおもちゃは達成とする。伝えられたおもちゃが10種類になったら,次のステップに移る。
【ステップ2】
 ステップ1で達成した10種類のおもちゃのうち,文カードなしでも8種類以上ことばでの要求ができたら,達成とする。
結果[HELP] ステップ1では,まず「ジャンプボール」を使って3日間指導を行った。指導2日まではコミュニケーションブックへの指さしなどが必要であったが,3日目は指さしがなくても自分からコミュニケーションブックで文を構成し,文カードを教員に手渡して「〜ください」とことばで自発的に要求することができるようになった。ジャンプボールで遊ぶときに,少し飽きている様子が伺えたため,ジャンプボールでの指導は中止し,他のおもちゃに変更した。
 誘うおもちゃを次々と新しく変えながら指導を行ったところ,文カードとことばで要求できる物を10種類まで増やすことができた。
 ステップ2では,ステップ1で使った10種類のおもちゃについて,文カードがなくても,自発的に「〜ください」とことばで要求することができ,目標を達成することができた。
 指導を通して,ステップ1で練習していない物(ティッシュや連絡帳がほしいときなど)についても,「ティッシュください」「連絡帳ください」と自分から要求ができた。広場でも教員がボールやロープを持っていると,近寄ってきて自分から「ボールください」「ひもください」などと要求でき,教室以外の場所での般化もみられた。
考察[HELP] Eさんの要求を促すために興味がありそうな物を探すことで,感触系(スライムやねんど)や動く物(ヨーヨーやくるまのおもちゃ),キャラクター系(ゆるキャラのカード)などに興味を持っていることを知ることができた。
 指導前は,ほしい物があっても手を伸ばすだけでことばが出なかったが,指導を通して,教室内では「〜ください」のことばでの要求が自発的にみられるようになった。ステップ1で視覚的な手がかりを活用して,二語文での要求が定着してきたものと思われる。Eさんにとっては,ことばによるプロンプトよりも,視覚的な手がかりを活用して,練習を積み重ねたことが有効であり,より明確に自分の言うべきことばの理解につながり,定着も早かったのではないかと思われる。
 いろいろなおもちゃを使って要求を伝える指導ができたことが,「〜ください」の般化につながったと思う。指導を通して,コミュニケーションスキルを高めるためには,子どもたちが自ら要求したいと思えるような楽しい場面をいかに設定できるかということや,要求物を頻繁に変えながら少しずつ般化につなげていくことなどがポイントになることを改めて実感した。
 今後は,教室以外の場所(広場や家庭)での般化につなげていくために,引き続き興味のあるものを探して,文カードを手がかりにことばで要求する練習をしたり,おもちゃ以外の物でも要求を伝える場面を設定したりすることが必要であると考えている。そして,文カードをなくしても自発的に要求ができるようにすることで,場所や物の般化につながっていくように指導を展開していきたい。

ベースライン
A:先行条件 B:行動 C:結果
文カードなし
ほしいおもちゃあり
教室
教員がいる
おもちゃをじっと見つめるおもちゃに手を伸ばす
「ありがとう」などと言う
おもちゃをもらえる(↑)(↓)
遊べる(↑)
ほめことばなし(?)

ステップ1【教員に文カードを手渡して「〜ください」とことばで要求する】
A:先行条件 B:行動 C:結果
文カードあり
ほしいおもちゃあり
教室
教員がいる
「〜ください」と言う おもちゃをもらえる(↑)
遊べる(↑)
ほめられる(?)

ステップ2 【「〜ください」とことばで要求する】
A:先行条件 B:行動 C:結果
文カードなし
ほしいおもちゃあり
教室
教員がいる
「〜ください」と言う おもちゃをもらえる(↑)
遊べる(↑)
ほめられる(?)


ことばで要求することができたおもちゃの種類
記入日時 2013/03/25/22:28:12

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