201216



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事例担当者のイニシャル[HELP]A B
事例研究のタイトル[HELP]小学部高学年の知的障害児が,登校時に自発的に靴を履きかえるための支援
対象児のプロフィール[HELP] 小学部5年生 知的障害 男児 Fさん
 PEP-R 発達年齢:1歳11ヶ月(平成23年8月)
 運動面にぎこちなさが見られるが,靴の履き替えは一人でできる。
 初めての活動,注目される場面,急に号令当番を頼むと,じっとしてしまい,活動をしたがらなくなる。慣れた場所では教員や友だちに話かけたり,笑顔を見せたりする。友だちの名前を呼んだり,「○○やな〜」と言ったりする(よくしゃべる)。友だちの様子をよく見ていて,活動中でも手を止めて見入ってしまう。
 じっとしているとき,表情が硬く,視線を落としたり,周りからの関わりに拒否的な反応を示したりする。身体的ガイダンスに拒否的な反応を示すこともあり,自分の後ろ側に立たれるのを嫌がることがある。
長期目標[HELP]登校時,玄関で一人で靴を履きかえることができる。
短期目標[HELP]登校時,教員がそばにいると,一人で靴を履きかえることができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]靴を履きかえる
標的行動を取り上げる意義[HELP]Fさんは登校時以外での靴の履き替え(運動場での運動後,外出後など)は教員の指示がなくても2分以内に履き替えることができるが,登校時は玄関でじっとしてしまい,靴を履き替えるために指示が必要であった。
 これまでに,ついたてをたてたり(気になるもの遮断),好きそうなもので誘ったり(動機付け),玄関に行くまでに会話をしながら行ったり(気分を高める),タイマーで促したり(きっかけ作り)した。
 しかし,靴をはき替えずにじっとしてしまい一人で履き替えることができなかった。玄関に人がいなくなっても,一人履き替えずにじっとしていた。
 登校時にスクールバスから降りて玄関までは一人で来ることができ,靴を履きかえてからは教室やトイレに自分から向かっていくことができ,「靴を履き替える」のみ,教員の指示が必要な状態であった。登校時でも一人で履き替えをすることができるようになると,本人の自信にもつながり,登校時から自立的に活動できるようになると考えられ,この目標を設定した。
指導場面[HELP]登校時
児童生徒玄関
指導手続き[HELP]【ベースライン:スクールバスを降りてから直接玄関に行く】
(1)スクールバスを降りたら直接玄関に向かい,下駄箱に行く。
(2)教員はFさんが履き替えるのをそばで見守る。
(3)Fさんが履き替えをしているときはほめる。Fさんが止まりそうになったときは,ことばかけ「くつ」や指さしを行う。
(4)ことばかけや指さしでも止まっているときは,足や腕をポンポン叩いたり,押したりして促す。

【指導1:スクールバスを降りて運動場方向に向かい,玄関に行く】
(1)スクールバスから降りたら教員と一緒に校舎の外周を歩き,運動場方向に向かう。
(2)運動場方向から玄関に入る(外周1周する)。
(3)玄関での支援は【ベースライン】と同様にする。

【指導2:スクールバスを降りてから校舎周りを2周歩いてから玄関に行く】
(1)スクールバスを降りてから校舎の外周を2周歩いてから玄関に向かう。
(2)玄関での支援は【ベースライン】と同様にする。

利用可能な好子[HELP]誉め言葉
教員との関わり
ふわふわしたぬいぐるみ
遊び
教材教具など[HELP]上靴
下靴
記録の取り方[HELP]靴の履き替えについて課題分析を行い,各項目に行ったプロンプトと,履き替えにかかった時間(下駄箱前に来てから教室に向かい出すまで)について記録をする。
 プロンプトは「○:一人でできた(プロンプトなし)」,「△:ことばかけ・指さし」,「×:身体的プロンプト・身体的ガイダンス」を記録する。
指導期間と達成基準[HELP]自発的に靴を履き替えることができ,履き替えにかかった時間が2分以内で3日続いたときを達成とした。
結果[HELP] スクールバスから降りて,直接玄関に入っていたころは,靴を履き替えるのに10分以上かかることも多かった。また,プロンプトや身体的ガイダンスに対しても拒否的な反応を示すことがも多く,履き替えがなかなか進まなかった。
 奥田健次先生のアドバイスから登校以外の靴の履き替えで自分でできている場面(運動場での運動後)との違いを検討した。玄関にいる児童数・ホールで遊んでいる児童・服装の違い・玄関への入り方・持っている荷物・テンションの高さなどあげられた。そして,「登校時の靴の履き替えを,運動後の靴の履き替えの状況に近づけていくことで,登校時に靴の履き替えができるようになるのでは」というアドバイスから,「運動場方向から(外周まわって)玄関に入る」という指導を始めた。
 運動場方向から玄関に入るようにしてから,自発的に靴を脱ぐようになり,履き替えにかかる時間も短くなってきた。しかし,自発的に靴を脱ぐようになったが,靴を履く部分でプロンプトが必要になることが多かった。
 Fさんの登校時と運動後の歩いている様子を比べたところ,運動後の方が教員に話しかけたり,表情がよかったり(笑顔が見られたり)していた。そこで登校時の外周を増やして(軽い運動をして),テンションが上げることをねらって取り組んだ。自発的に靴をはく様子も見られるようになり,時間にムラがあるものの,一人で履くことができるようになってきた。
 12月の学校祭前後では,学校祭の練習内容について教員に話しかけることが多く,履き替えが止まることがよく見られた。また,玄関に到着したときに登校してきた児童に気を取られたりすることもあり,安定するまでに日数が必要であった。
考察[HELP] 運動場方向から玄関に向かうことようにしたことで,できている状況(自発的に履き替えできている場面)に近づけることができ,自発的に靴を脱ぐようになったと思われる。また,校舎周り2周歩くことで,楽しそうな表情や嬉しそうに歩く様子が見られ,靴の履き替えに対する緊張感が薄れたり,気持ちを高めてから履き替えることができたと思われる。玄関でじっとしてしまうことが定着していた状況に変化を加えることができたと思われる。
 しかし,日によっては指示や時間が必要なことも多かった。今後は「玄関に入ってすぐ履き替える」という流れが定着していくように取り組んだり,スクールバスから降りて直接玄関に向かって履きかえたりと,より一人で履き替えができるように指導を展開していくが必要と考える。

ベースライン:バスから直接玄関に入る
A:先行条件 B:行動 C:結果
登校時
児童生徒多数
玄関
そばに教員
下駄箱・上靴
靴を履き替える ほめられる(↑)
できた(↑)
次の活動(?)

指導1:運動場方向から玄関に入る(外周1周)
A:先行条件 B:行動 C:結果
登校時
運動場から玄関に入った
児童生徒少数
玄関
そばに教員
下駄箱・上靴
靴を履き替える ほめられる(↑)
できた(↑)
次の活動(?)

指導2:校舎の外周を2周歩いてから玄関に入る
A:先行条件 B:行動 C:結果
登校時
少し運動(外周2周)
児童生徒少数
玄関
そばに教員
下駄箱・上靴
靴を履き替える ほめられる(↑)
できた(↑)
次の活動(?)


登校時,靴の履き替えにかかった時間(分)

一人で靴の履き替えができた割合(%)

靴を履き替える場面の課題分析

バスから玄関までのコース
記入日時 2013/03/26/18:22:40

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