201228



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事例担当者のイニシャル[HELP]
事例研究のタイトル[HELP]ハンカチを携帯し,口の周りの汚れや手についた汚れを拭くことができる。
事例の概要[HELP]本児は,就学前から現在に至るまで施設に入所している。施設面談での話の中で,何か困っていることはないか尋ねると,食事時のマナーで困っているとお聞きした。お箸の持ち方が不十分なので,手づかみで食べて手が汚れると,服で拭いてしまい,本児の服が大変汚れて困るとのことだった。お箸の持ち方を以前指導したらパニックになったので今は指導していないと言うことだった。本児の近くにふきんは置いてあるが,「ふいて」と伝えると,服で拭いてからふきんで拭くといった状況だった。そこで,学校では給食を食べる機会がないので指導する場面が少ないが,ハンカチを常時携帯できるように設定し,対面学習などで何か物を食べて手が汚れたときは,ハンカチで手を拭く指導をしていきたいとお話しした。センターでの1日3回の食事の時には,本児の好きなキャラクターのハンドタオルを横に置くことにしますと言ってくれた。
学校でもおやつを食べたときや粘土で遊んだときに,服で拭く様子が見られていた。ハンカチを携帯する習慣はついていなかった。
対象児のプロフィール[HELP]PEPーR (H25.3.25実施)
発達年齢  5歳9ヶ月 芽生え反応 4歳9ヶ月       


AAPEP (H23.8.10実施)
・直接観察尺度での芽生え(食習慣の適切さ等)食習慣の適切さの検査では当日もスナック菓子を食べたときに服で拭く行為が見られていた。
・特に自立機能やコミュニケーションの項目が低い。
指導者の役割と人数[HELP]指導者A(担任)
指導者B,C,D,E,F(担任外)以上計6名
標的行動を取り上げる意義[HELP]■AAPEPの検査結果より
 直接観察尺度検査結果では,『食習慣の適切さ』『言語指示や身振りの理解』が芽生えだった。動詞の理解が苦手なことも分かり,動詞の理解を促していくことも本児にとって生活しやすい環境になっていくと思う。
 他の項目に比べて対人関係も低く出ており,日常生活の中でどのように振る舞うのが好ましいかを本人に分かりやすくルールとして提示して理解を促すことは有効である。
 学校で学習したことや直接尺度で観察できたスキルも,センターでは発揮できる機会がないのか,般化できていないのか十分には活用されてない結果だった。芽生えの部分を生かし般化を想定して,学校での学校を行うことが重要になってくると考えた。
■また,自分がしようとしていることを止められたり,何回も言葉かけの注意を受けたりすると不安定になることがあるので,そのような状況(食べているのを止められて何回も拭いてと注意されること)を回避する場面を本児が作っていくことは重要である。
指導場面[HELP]前期
対面学習時(教室内)

後期
教室のスケジュール付近で
利用可能な好子[HELP]プラレールで遊ぶ
トーマスの本
褒め言葉
お菓子
DVDを見る

記入日時 2012/12/25/17:00:38

長期目標[HELP]ハンカチを携帯し,口の周りの汚れや手に付いた汚れを拭くことができる
短期目標[HELP]前期目標
・登校後の着替えが終わった後,ハンカチをポケットに入れることができる。
・対面学習の時間に,手についた汚れを服で拭かずに,ハンカチで拭くことができる。


後期目標
トークンのおやつを食べているときに,担任教員(I)が近くにいない状態で口の周りの汚れや手についた汚れをハンカチで拭くことができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]口の周りの汚れや,手についた汚れをハンカチで拭く。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]口の周りの汚れや,手についた汚れを服で拭く。
事例に関する情報[HELP]・文字式の全日スケジュールを使用しスケジュールに沿って活動することができているが,興味関心があるとその場の状況に関係なく衝動的に行動する傾向にある。
・教員の目がないことが分かると逸脱行為をするときがある。
・手順書があると手順書通りに活動を進めることができるが慣れてくると,手順書に書いていない細かいところで逸脱したり,自分のやり方にこだわり修正しようとすると混乱するときがある。
・担当の教員がプロンプトになり,他の教員では般化しにくい場面がある。
・ルールを視覚的に提示することで守ることができる。何かのルールを提示すると「おやくそく」と自ら言って守ろうとする様子が見られる。
・センター(施設)には本児の担当者がいるが,食事指導をするにあったってはたくさんの支援員さんが入り,指導を統一しにくい。
問題の推定原因[HELP]1.服で拭いても注意を受けないときもあるから
2.ハンカチをポケットから取り出す手間をしなくても,服ですぐに拭けるから
3.服に手を当てて引くことですぐに汚れが取れるから
4.ハンカチで拭くには指先で何回か拭かなければならないから
5.服ですぐに拭けたら,次の活動に移れるから
6.服が汚れても気にならないから
7.気になることや情報がたくさんあるから
8.箸の使い方が十分でなく手づかみで食べるから
9.ハンカチで拭いても良いことが起きないから
10.ハンカチで拭く習慣がないから
11.求められている行動が分からないから
想定される解決策[HELP]1.指導を統一する
2.本児が見たくなるような,好きなキャラクターのハンカチを用意する
3と4.指を細かく動かすことができるように指の巧緻性を高める活動をする
5.次の活動のスケジュールを『○○くん待つ』にする
6.本児がハンカチで汚れを拭けたときは大いに賞賛する
7.構造化された場所で指導をする
8.お箸の正しい使い方を指導する
9.好子を出現する
10.ハンカチで拭く場面を1日1回は設定する
11.指示書を用意する
選択した原因と解決策[HELP]原因1.ハンカチをポケットから取り出す手間が無くても,服ですぐに拭けるから
解決策1.本児が見たくなるような,好きなキャラクターのハンカチを用意する

原因2.服が汚れても気にならないから
解決策2.本児がハンカチで汚れを拭けたときは大いに賞賛する

原因3.ハンカチで拭いても良いことが起きないから
解決策3.好子を出現する

原因4.ハンカチで拭く習慣がないから
解決策4.ハンカチで拭く場面を1日1回は設定する

原因5.求められている行動が分からないから
解決策5.指示書を用意する

記入日時 2013/03/29/18:42:16

般化を狙う場面[HELP]センター食堂での食時の時
外食したとき
お弁当を食べるとき

鼻水や涙を拭くとき
手を洗った後

多種多様なハンカチやタオル
濡れたふきんで拭ける
ウエットティッシュ
外食時のおしぼりやペーパー

担任外の教員
センターの職員
教材教具など[HELP]指示書
お菓子
粘土

指導期間と達成基準[HELP]指導1『登校後の着替えが終わった後、ハンカチをポケットに入れる』
指導期間 2012/4/24〜2012/7/20
達成基準 正反応率が100%以上が10回連続
中止・改善基準 誤反応が5回連続

指導2『対面学習の時間に,手に付いた汚れをハンカチで拭くことができる』
指導期間 2012/5/17〜2012/10/30
達成基準 プロンプトなしで正反応率が100%以上が4回連続
中止・改善基準 誤反応が5回連続

指導3『教室のスケジュール付近でおやつを食べているとき,担当の教員が居ない状態で,口の周りの汚れや手に付いた汚れを拭くことができる』
指導期間 2012/10/23〜2013/2/25
達成基準 正反応率が100%以上が4回連続
中止・改善基準 誤反応が5回連続

結果[HELP]指導1 
担当外の教員でもポケットにハンカチを入れることができるようになった。
6月の末からは13日連続で自らハンカチをポケットに入れることができた。

指導2 
プロンプト(指示書・言葉かけ・指差し)有りのエラーレスの指導を行うことにより,2回目からは自らハンカチを出して指示書を見ながらハンカチで拭く様子が見られた。しかし,4回目に手が汚れるとズボンで拭こうとした。指示書を指差しすることで拭くことができた。
プロンプトが無い状態で服で拭いたのが11試行中1回だった。11試行中ハンカチで拭いたのは7回だった。
9月13日はポテトチップスを食べて少しの汚れを肩で拭いた。
9月18日は粘土があまり手につかずそのままにしていた。
10月11日はパイの実のおかしを食べて少しの汚れをそのままにしていた。

指導3
トークンが貯まったときにのおやつの種類を選ぶのは本人の選択制だったので,選んだおやつでは手や口が汚れないときがあった。拭くときと拭かないときがあったので,少しの汚れだと汚れが気にならずそのままにしていて拭かないのか,拭くことが習慣になっていないのか判断するため,次は手によくつくおやつを用意して,拭く拭かないの判断は自分でしているのかどうか確認することにした。
手:自分で拭いた     (90%)
  靴下で拭いた     (10%)
口:自分で拭いた     (80%)
  そのままにした    (20%)
口の汚れは本人には分かりづらく,指差しが必要だったがそれに応じて拭くことができた。手の汚れは,本人が気になるぐらい汚れたら拭くことができた。
指導者の般化を見るため指導者は5人で行ったところ,手を拭くは担当者A100%,担当外の教員(B,C,E,F)で88%の確率で拭くことができた。口を拭くは担当者A66%,担当外の教員(B,C,E,F)で88%の確率で拭くことができた。

考察[HELP] ハンカチを携帯するのが習慣になると,涙が出たり,足の指に砂が詰まったときに拭いたり,手を洗った後に拭いたり,お茶がこぼれたときに拭いたりと食べ物を食べる以外の様々な場面でも,自らハンカチを使用して拭くことができるようになった。急ぐ状況(急いで次の活動に行きたい,トイレを我慢していていきたい)のときは,手や口を拭く余裕がないときも1度あったが,本児か気になるぐらいの汚れだと,ハンカチで手や口を拭くことができた。センターの昼食後本児の服を見てもいつもきれいで汚れは見られなくなった。
 指先を使ってハンカチを使用し,丁寧に拭き取りとることにはまだ課題が残り,「ここまだついているよ」「もう一回拭いて」等の言葉かけが必要な時がまれにある。指を自在に動かすことができるように巧緻性を高めることは必要である。元々お箸を持つのが握り箸であることから,手が汚れその手を服で拭き,服も手も汚れているので,指の巧緻性を高め箸を正しく持って使用する練習も必要である。
 また,履いていた長靴に泥がついているのをハンカチで拭いたり,床にこぼれたお茶もハンカチで拭くことがあり,汚れに応じで拭く材料の分別が今後必要と思われる。そのためにも,いろいろな材料(ペーパー・布お手ふき・紙お手ふき・台ふき・ティッシュペーパー・ウエットティッシュ・ぞうきん等)を状況に応じて実際に使い分ける機会を設定できたら良い。
褒められることでハンカチで拭くという行動が強化されている所があるので,本児が自分のしていることは良いことだと認識し,今後も継続できるように担当者以外の教員がその行動を見たときは「いいね」と褒めて,支援していく必要がある。

記入日時 2013/03/29/19:08:15

指導手続き[HELP]■指導1 
指導期間:2012/4/23〜2012/7/20
1.着替えコーナーにトーマス(好きなキャラクター)のハンカチを毎日置いておく。
2.着替えコーナーの着替え手順書に『ハンカチをズボンのポケットに入れる』を付け加える。
3.本児が「できた!」と言って着替えコーナーから出てきて報告したときは,ハンカチが入っているか確認する。
4.本児がポケットにハンカチを入れるのを忘れたときは,スケジュールの『ハンカチをズボンのポケットに入れる』を指差しする。  
5.着替え手順書通りに行えているときは賞賛し『できたね』カードを渡す。
■指導2 
指導期間:2012/5/17〜2012/5/30
1.対面学習時に『手が汚れたときにハンカチで拭く○』『手が汚れたときに服で拭く×』の文字とイラストが描かれた指示書1を提示する。
2.ハンカチを出すように促す。
3.うまい棒を3分割して1つ渡すごとにハンカチで拭くように指示書を指差しする。
4.ハンカチで拭けたら,「マル!」と賞賛する
指導期間:2012/9/11〜2012/10/30
1.対面学習時に,手に汚れがつくお菓子を手渡したり,のりや粘土を使用したりした活動を行う。
2.本児の手が汚れていても無反応。
3.本児が自らハンカチを出して汚れを拭いたときは大いに賞賛する。拭けなかったり,服で拭いたときは指示書1を出してきて指差しをする。
■指導3 
指導期間:2012/12/10〜2013/1/28
1.トークンが貯まったら,おやつボックスからおやつを一つ選択できるようにする。
2.本児の手が汚れていても無反応。
3.本児が自らハンカチを出して汚れを拭いたときは
  大いに賞賛し,記録表に○を付ける。
4.拭けなかったり,服で拭いたときは壁に貼った指示書2を指差し,記録表に△や×を付ける。
指導期間:2012/2/4〜2013/2/25
1.スケジュールの中に「おやつ」と提示する。(様々な時間帯で,変化をつけて)
2.お菓子を手渡しして,本児の手につくように渡す。
3.本児が自らハンカチを出して汚れを拭いたときは大いに賞賛し,記録表に○を付ける。
4.拭けなかったり,服で拭いたときは壁に貼った指示書2を指差し,記録表に△や×を付ける。

記入日時 2013/08/30/14:31:03

結果[HELP]【般化の日にちと例】
・5/23自分の机にお茶がこぼれたのをハンカチで拭く(教室:DVD視聴中)
・6/1 クッキーを食べていたときハンカチで拭く(教室:生活単元学習中)
・9/10買い物に行っているときに長靴に泥がついた。手で拭いて汚れるとハンカチで拭く(校外)
・9/11鼻水がでた・手が水で濡れたときハンカチで拭く(教室内:遊び中・お手伝い中)
・9/12足の指に挟まった砂をハンカチで拭く(教室:園芸後)
・9/24アイスクリームを食べているときハンカチで拭く(教室:生活単元学習中)
・9/25手に砂がついたときハンカチで拭く(運動場:運動会の練習中)
・9/25トーマスがお茶の中に入ったときハンカチでトーマスを拭く(教室:遊び中)
・10/16マジックが手についたときハンカチを出して拭く(教室:対面学習中)
・11/6洗剤が手についたときハンカチで拭く(リネン室:お手伝い中)
・12/10プレイルームで集会の時間,糊が手についたとき服で拭こうとして,自らハンカチを出して拭いた。(プレイルーム:集会)
・12/18泣いて涙が出た時、ハンカチで涙を拭いた。(教室:遊び中)
・2/12生卵を割った後,手が汚れるとさっとハンカチを出して拭いた。(調理室:調理)
・3/14フジグラン阿南の食堂で,ハンカチで手を拭き,ドーナツ屋で口と手を拭いた。汽車の中で,鼻がかゆいときハンカチで鼻を拭いた。(校外学習時)
・3/25お菓子を食べたとき,ハンカチを要求して手や口を拭いた。(休養室:PEP−Rの検査中)

記入日時 2013/03/29/19:17:42

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