200703



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事例担当者のイニシャル[HELP]NS,HU,YN
事例研究のタイトル[HELP]小学部低学年の自閉症児に対する休み時間、離れたところにいる教員に行き先を伝えてから遊びに行くことができるための支援
事例の概要[HELP]Bさんは休み時間、遊びに行くために教室を出るとき、教員からの「どこに行きますか?」の問いかけがあれば、「わくわく(ひろば)に行ってきます」「お外に行ってきます」「さんりんしゃにのってきます」などの二語文や、まれに「○○くんと自転車でレースしてきます」などの三語文で答えることができている。しかし、教員からの問いかけがないと、何も言わずに黙って教室を出て行くこともある。家庭においても、買い物に行った場所(ショッピングセンター内)などで黙っていなくなったり、次々に一人で勝手に居場所をかえてしまうことがあり、保護者の方が困ることが度々あるとのことである。
そこで、遊びに行くときに、必ず自分から行き先をことばで伝えてから行くという行動と居場所を変えるときには伝えに戻るという行動を身につけたいと考え、この実践をすすめることにした。
視覚的な手がかりがあれば、ことばが出やすいというBさんの特徴を考慮し、カードブックと文章シートを使用し、Bさんが「○○と△△で〜〜したいです。」という三語文伝えることができるようにと考え、この目標を設定した。

対象児のプロフィール[HELP]養護学校小学部2年生Bさん、女子、自閉症
PEP−R発達検査:4歳11ヶ月(H19、6月)
その他の特徴:
・視覚優位
・パターン的に繰り返されるものは得意
指導者の役割と人数[HELP]指導者A:NS(担任)
指導者B:HU(担任)
指導者C:YN(担任)
以上3名
長期目標[HELP]休み時間、居場所を変えたいとき、離れたところにいる教員に対して、カードブックと文章シートを手がかりに自分から次の居場所を伝えてから遊びに行くことができる。
短期目標[HELP]【STEP1】
休み時間、傍にいる教員に対して、カードブックと文章シートを手がかりに自分から「○○と△△で〜〜したいです。」という三語文で伝えてから遊びに行くことができる。
【STEP2】
休み時間、教室内の5m程度離れたところにいる教員に対して、カードブックと文章シートを手がかりに自分から「○○と△△で〜〜したいです。」という三語文で伝えてから遊びに行くことができる。
【STEP3】
休み時間、教室外の離れたところにいる教員に対して、カードブックと文章シートを手がかりに自分から「○○と△△で〜〜したいです。」という三語文で伝えてから遊びに行くことができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]休み時間、傍にいる教員に対して、自分から三語文で伝えてから遊びに行く
標的行動(減らしたい行動)[HELP]何も言わずに遊びに行く、教員からの問いかけがあるときしか伝えていかない
標的行動を取り上げる意義[HELP]遊びに行くときに何をしたいのかを教員に伝えてから行く行動を身につけることを通して、何も言わずに教室を出て行く行動を減らすとともに、適切な三語文での伝え方の獲得を目指す。
事例に関する情報[HELP]・「どこに行きますか」という問いかけがあれば、「〜行ってきます」などの二語文・三語文で答えることができるが、問いかけがなければ何も言わずに遊びに行くことがある。
・遊びに行くときに、何をどう伝えていったらいいのか、わからない。また、語彙が限られているため、パターン的に話をすることが多い。
・Bさんは視覚的な手がかりがあれば、ことばがでやすい。
問題の推定原因[HELP]1、早く遊びに行きたい気持ちが強く、何も言わずに教室から出て行く。
2、遊びに行くとき、何をどう伝えていったらいいのか、わからない。
3、したい遊びがあっても、語句が出てこない。
想定される解決策[HELP]1、教員に伝えてから遊びに行くという行動を身につける。
2、適切な三語文での言い方を文章シートを使って教える。
3、Bさんが普段よく遊んでいる場所や好きな遊び、一緒に遊んでいる友だちや教員を文字付の写真カードにして、カードブックに貼り、それを手がかりとして語彙を増やす。
選択した原因と解決策[HELP]原因1、2、3
解決策1、2、3
般化を狙う場面[HELP]家庭
指導場面[HELP]休み時間
指導手続き[HELP]【STEP1】
1.Bさんのスケジュールの横にカードブック・文章シートを設置しておく。
2.指導開始一日目の登校時に、カードブック・文章シートの使い方などをことばや指さしで説明する。
3.教員はBさんの傍に立つ。最初は、Bさんが自分からカードを選んだり、貼ったりできるように、5秒待つ。5秒待っても自分でできないときには、「どこであそびますか?ここから選んでね。」などのことばかけを行い、カードを文章シートに貼るように指さしを行う。徐々にプロンプトを減らしていく。
4.構成した三語文を最初は教員と一緒に読む。徐々に一人で読めるようにプロンプトを減らしていく。

【STEP2】
1.Bさんのスケジュールの横にカードブック・文章シートを設置しておく。
2.教員はBさんから5m程度離れた位置に立つ。
3.Bさんが教員のところまで伝えに来ない場合はことばかけや身振りのプロンプトを行う。徐々にプロンプトを減らしていく。

【STEP3】
1、Bさんのスケジュールの横にカードブック・文章シートを設置しておく。
2、教員は教室外ではあるが、Bさんがすぐに探すことができる位置に立つ。
3、Bさんが教員のところまで伝えに来ない場合はことばかけや身振りのプロンプトを行う。徐々にプロンプトを減らしていく。


利用可能な好子[HELP]賞賛のことば(上手に言えたね〜、など)
自分のしたい遊びができる
教材教具など[HELP]カードブック
文章シート
写真とひらがな付きのカード
白カード(写真カードに提示された事柄以外に、遊びたい人・場所・活動があるときに使用する)
記録の取り方[HELP]・記録項目
  プロンプトの回数を記録する。(カードを貼るとき、文章を読むとき、伝えに行くとき)
  ・プロンプトあり(ことばかけ、指さし、身振り)1点
  ・プロンプトなし 0点

・グラフの描き方
  タイトル:自分から伝えてから遊びに行くことができた割合
指導期間と達成基準[HELP]1、指導期間
  平成19年11月12日〜12月7日

2、達成基準
   プロンプトの割合が0%の日が3日連続したら達成とする。
結果[HELP]【STEP1】
 指導開始2日目までは,文章シートを「△△で○○と〜〜したいです」というように,場所を先に言うようにしていた。Bさんは,文章シートに写真カードを貼ることは自分でできていたが,文章を読むときに「○○と」の方を先に言ってしまうことが多く,そのことに対しての指さしのプロンプトが必要となった。そのため,3日目から本児が言いやすいよう,文章シートを「○○と△△で〜〜したいです」に変更した。変更後は,シートどおりに読むことができるようになったが,早く遊びに行きたくて文章をとばして読んでしまうことがあり,文章シートへの指さしが必要であった。また,初めてカードブックにない遊び(たこあげ)をしたいときにも,白カードを使うようにことばかけや指さしが必要であった。白カードも一回使い方を伝えると,その後は自主的に使用することができるようになり,5日目からはプロンプトなしで三語文で伝えてから遊びに行くことができるようになった。7日目に目標達成した。
【STEP2】
 指導開始1日目からプロンプトなしででき,3日目に目標達成した。
【STEP3】
 指導開始1日目は,教室内に教員がいないことで,どうしたらいいのかわからない様子であり,教室外にいる教員を教室から呼び,教員の「ここまで持ってきて」ということばかけが必要であった。2日目からは教室外にいる教員を見つけて自分から伝えに行くことができるようになり,指導開始4日目に目標達成した。
考察[HELP] この実践をとおして,休み時間遊びに行くときに教員からの問いかけがなくても,自分でカードブックと文章シートを使って,必ず教員に伝えてから遊びに行く習慣が身についた。指導を始めた頃は,三語文で言うことに対して不安そうに小さな声で言っていたが,慣れてくるとだんだんとはっきりした声で伝えることができるようになり,今では自分の行きたい場所などを自信を持って伝えることができている。
 また,遊びに行く前に広場を覗き見て,「今,広場には○○ちゃんがいるから○○ちゃんとあそぼう」と自分で考えてから,文章シートを構成する姿もみられるようになるなど,周囲の状況に合わせて自分の行き先や遊びたい人を選択する力も育ってきた。
 新しい行動を身につける場合であっても,視覚的な手がかりがあれば,数回の説明やプロンプトによって短期間で獲得することができたこの実践を通して,Bさんにとって視覚的手がかりの有効性を改めて実感した。今後もBさんにとって分かりにくい状況や衝動的に行動してしまう場面において,視覚的な手がかりを使用し,自分の行動を調整しながら自信を持って生活できるように支援していきたい。            

指導前
A:先行条件 B:行動 C:結果
休み時間、遊びに行くとき
教員からの問いかけがない場合
黙って遊びに行く 好きな遊びができる(↑)

指導前
A:先行条件 B:行動 C:結果
休み時間、遊びに行くとき
教員からの問いかけがある場合
遊びに行く場所などをことばで伝える
(語彙が限られているので、ことばはパターン的である場合がある)
好きな遊びができる(↑)

指導後
A:先行条件 B:行動 C:結果
休み時間、遊びに行くとき
カードブックと文章シートがある場合
遊びに行きたい場所などを適切な三語文で伝える 好きな遊びができる(↑)
教員に褒められる(↑)
伝わってうれしい(↑)


データとグラフ:第一系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
データとグラフ:第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2007/10/18/16:46:27

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