200710



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事例担当者のイニシャル[HELP]M.K. A.H.
事例研究のタイトル[HELP]小学部高学年の自閉症児に対する登校時、一人で教室に行くことができるための指導(奥田先生によるアドバイス事例)
事例の概要[HELP]送迎での登校後、一人でスムーズに教室まで来ることができないことが多い。靴を投げたり、ドアを蹴ったりと不適切な行動が見られる場合もある。
対象児のプロフィール[HELP]Iさん。養護学校小学部6年、男子。自閉症。太田のステージStage3-1。PEP−R2歳9ヶ月。発語あり。音声での簡単な指示は伝わる。スケジュールは文字(ひらがな)カードを使用。人との関わりが好きで、興味のある児童に寄って行ったり、教員に紙芝居を読んでもらうのが好き。
指導者の役割と人数[HELP]指導者1名(学級担任)
長期目標[HELP]登校時、一人で児童用玄関から入り、靴を靴箱に入れ、教室に入る。
短期目標[HELP]登校時、車から降り、一人で児童用玄関に入る。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]登校時、車から降り、一人で児童用玄関に入る。
標的行動(減らしたい行動)[HELP]来客用玄関に入り、歩き回る。靴を投げる。自動ドアのガラスを蹴る。
標的行動を取り上げる意義[HELP]登校時に教員がいないと教室に入って行くことができないことが多い。小学部卒業後のことも考え、少しでも教員の介入なく一人でできることを増やしたい。
 また、目標を達成後は次のステップとして、入室後の朝の活動(着替え、鞄の片づけ等)においても教員の関わりなしで行えるよう指導につなげていく。
事例に関する情報[HELP]登校は母親、又は祖父による自家用車での送迎。車を降りた後、児童用玄関から入らずに、児童用玄関のすぐ側の来客用玄関に入って行くことが多い。担任教員が来ないで一人の時は、来客用の玄関を歩き回ったり、靴を放り投げたり、自動ドアのガラスを蹴ったりという不適切な行動も見られる。
問題の推定原因[HELP]1.担任教員が来て、かかわってくれる。
2.遊びたい。
3.何をしていいのかわからない。 
4.鞄を持って行くのが面倒。
5.たくさんの教員が注目してくれる。
6.教室に行っても楽しいことがない。
7.朝はしんどい。

想定される解決策[HELP]1.担任教員と一緒に教室まで行く。
2.教室に入ったら遊べるようにスケジュールで設定しておく。
3.スケジュールで朝の活動を提示する。 
4.鞄を持ちやすいようにする。軽くする。
5.注目してくれる正しい手段を教える。「おはよう」というあいさつを教える。
6.靴箱からカードを取り、教室のカードと合わせると好きなキャラクターの絵ができる。
7.教室に入ったら、好きなカードがもらえる。

選択した原因と解決策[HELP]原因:担任教員が来て、かかわってくれる。
解決策:教員と一緒に児童用玄関に入り、教室まで行く。
    教員は徐々に離れていく。
般化を狙う場面[HELP]朝の登校時。児童用玄関〜教室に行くまで。
指導場面[HELP]朝の登校時。児童用玄関前。
指導手続き[HELP]1.送迎の保護者の車は必ず児童用玄関前に駐車する。
2.教員はIさんが来客用玄関に向かわないよう,逸脱が予想される方向に常に立ち,ブロックできるようにする。
3.(指導1 エラーレス指導期)
Iさんが車から降りてすぐ,教員は「おはよう」などのことばかけを行いながら,Iさんの両手を引き,児童用玄関まで導く。
 (指導2)
Iさんが来客用玄関に入ろうとしたときは,Iさんの手を引いて,再び停車場所まで 戻す。プロンプトは手を引いての誘導→ことばかけ→指さし→教員の立ち位置(ブロック)の順に減らしていく。
4.児童用玄関に入ることができた場合は,褒めたり,Iさんの好きなことばを繰り返したりする。


利用可能な好子[HELP]ゲーム、アンパンマンやディズニー等のキャラクターの絵、紙芝居、パソコン、ほめ言葉、オーバーリアクションの教員の反応
記録の取り方[HELP]記録項目
1:車を降り、児童用玄関に入る。
2:児童用玄関から靴箱に行く。
3:靴を靴箱に入れる。
4:靴箱から、教室まで行く。
以上4つの場面でどんなプロンプトが必要だったか記録する。
手を引いての指導によるプロンプトが必要だった:3点
ことばかけによるプロンプトが必要だった   :2点
指差しによるプロンプトが必要だった     :1点
指導者の立ち位置によるプロンプトが必要だった:0点
ただし、プロンプトの種類が複数ある場合、プロンプト得点の高い方でカウントする。

グラフの書き方
タイトル:正反応の有無   横軸:日付  縦軸:得点(正反応1点 誤反応0点)
タイトル:プロンプト得点  横軸:日付  縦軸:プロンプト得点
指導期間と達成基準[HELP]指導期間:平成19年10月17日〜
達成基準:教員の立ち位置のプロンプトのみ(0点)で、児童用玄関に5日連続して入ることができた場合。
結果[HELP] 10月17日より指導開始し,1月11日(指導50日目)現在も指導継続中である。エラーレス指導期(指導1〜8日目)では指導者が児童用玄関に手を引くことに対し抵抗を示すことがみられた。
ベースラインでは標的行動の生起が27.3%(3/11日)であったのに対し,エラーレス指導後(指導9日目〜)は57.1%(24/42日)と上がっており,指導の効果がみられる。しかし,4日間連続で標的行動が生起することが3度もあったにもかかわらず,指導終了にいたらなかった。うまくいかなかったときは,宿泊学習や実習生が玄関前にならんでいる,トイレに行きたいなどの要因があり,このことから,少し環境がかわることでも,Iさんの行動に関係してくるということが明らかになった。
考察[HELP] Iさんが自発的に標的行動(又はそれに近い行動)が出るまで待つ(遅延プロンプト)という指導方法を指導計画時に考えていたが,指導初期の段階でエラーレス指導を行ったことが大変有効だったことがわかった。間違った行動を生起させない,正しい行動をわかりやすく教えるための大きな手段であった。また,Iさんの指導で,標的行動が出たとき,出なかったときが明確になり,スキルがあるがあるにも関わらず,その日の状況に行動が左右されることが明らかになった。しかし,この玄関付近の状況は,学校行事の関係などで現実的には整理しきれないものである。車から降りてスムーズに教室に入るためには、周囲の状況に左右されないほどの強力な好子を教室内に設定することが必要であると考えられる。今後,その好子を検討し,指導を続けていきたい。

問題行動のABC分析
A:先行条件 B:行動 C:結果
登校時
祖父の送迎
車から一人で降りる
玄関まで一人で行く状況
来客用玄関
(車から降りてすぐの玄関)
登校して来るたくさんの児童
登校待ちのたくさんの教員
担任教員がいない
児童用玄関に人混み
教室に行く指示なし
来客用玄関の自動ドア
鞄を持っている
来客用玄関に入り歩き回る 周りの教員からの注目あり(↑)
教員からのことばかけあり(↑)
担任教員が来る(↑)
担任教員からしかられる(↑)
楽しい(?)
児童用玄関まで教員がついて行ってくれる(↑)
靴・傘などがある(↑)

標的行動のABC分析(ベースライン)
A:先行条件 B:行動 C:結果
登校時
母親の送迎
車から母親と一緒に降りる
玄関まで母親と一緒に行く状況
来客用玄関
(車から降りてすぐの玄関)
登校して来るたくさんの児童
登校待ちのたくさんの教員
担任教員と母親が話しをしている
児童用玄関に人混み
教室に行く指示なし
児童用玄関の閉めきりの自動ドア
母親が鞄を持っている
児童用玄関から入り、一人で教室に行く。 担任教員からの注目あり(↑)
ほめことばなし(↓)
スケジュールに着替えのカードが入っている(↓)
「おはよう」ということばかけ(?)
「着替え」という教員からの指示(↓)
周りの教員からの注目なし(−)

指導場面1(エラーレス指導)のABC分析
A:先行条件 B:行動 C:結果
登校時
祖父の送迎
車から一人で降りる
目の前に児童用玄関
玄関まで教員が手を引いて行く
教員からのことばかけ
登校して来るたくさんの児童
登校待ちのたくさんの教員
児童用玄関に人混み
鞄を持っている
車から降り、児童用玄関に入る。 教員からの注目あり(↑)
ほめことばなし(↑)
教員との関わり(↑)
教員からの身体的接触(↓)

指導場面2 標的行動が生起しない時のABC分析
A:先行条件 B:行動 C:結果
登校時
祖父の送迎
児童用玄関前に祖父の車
送迎の祖父は車の中
ブレザーを着ている
担任教員が近くにいる
スクールバスが到着
スクールバスから降りてくる児童
玄関前に数人の教員
児童用玄関に人混み
担任教員からのことばかけなし
車を降りて、ブレザーを脱ぐ 担任教員からのことばかけ(↑)
担任教員による手引きで児童用玄関へ連れて行かれる(?)
周りの教員からの注目(↑)
周りの児童からの注目(↑)
ブレザーを脱げなかったことによる不快感(↓)



標的行動数の累計

データとグラフ:第一系列のタイトル: 正反応の有無(得点)
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
データとグラフ:第二系列のタイトル: プロンプト得点
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2007/10/26/17:14:44

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