200823



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事例担当者のイニシャル[HELP]M.K
事例研究のタイトル[HELP]小学部6年の自閉症児が、物を載せた猫車を300m押すことができるための支援
事例の概要[HELP] H君は,来年度中学部進学予定である。中学部になると,教育課程の中に「作業学習」が位置づけられ,高等部就業体験に向けて,または卒業後の生活(しごと・くらし・よか)を見据えて教育がおこなわれる。作業学習では,重い荷物を運んだり,猫車で農作業道具や抜いた草等を運ぶという学習もおこなわれている。H君もこの作業学習に向けて習得しておいた方がいい作業内容として猫車押しを取りあげ,実践に取り組んだ。
対象児のプロフィール[HELP]○養護学校小学部6年生,男子,自閉症
○諸検査の結果:PEP−R
発達年齢 1歳8ヵ月
芽生え  1歳11ヵ月
(平成20年7月23日実施)
○障害特性
・視覚的な提示媒体としては,具体物提示が良好である。スケジュールは活動内容を意味する具体物で動く。
・聴覚過敏がみられ,大勢の中での騒がしい音や高い声等が苦手である。
・コミュニケーション手段は,携帯しているウエストポーチから数種類のカードを出して要求する。
・砂やシュレッダーした紙の感触を好み,外での活動時に砂や土を触り,活動が中断することがある。
・振動する感覚を好み,台車に乗ることを遊びとして選択することがある。
・手先を使った活動を教えるために,本児の手や指先を身体的ガイダンスで伝えようとすると,嫌がる様子がみられる。
指導者の役割と人数[HELP]指導者A:M.K(担任)
指導者B:H.Y(担任外)
以上2名
長期目標[HELP]物を載せた猫車を300m(3往復)押すことができる。
短期目標[HELP]猫車を300m(3往復)押すことができる。
標的行動(増やしたい行動)[HELP]台を外した猫車を300m(3往復)押すことができる。
標的行動を取り上げる意義[HELP]H君が中学部入学後,作業学習の園芸でできる活動を考えたときに,猫車押しは必ずおこなう学習活動であり,習得しておくと今後の学習活動に拡がりが出てくると思われるため,この標的行動を取り上げた。
事例に関する情報[HELP] 猫車を押すことは3年前に5mできていたが,しばらく実施していなかったので,猫車の台を外した状態で3往復(300m)行うことから始めた。
般化を狙う場面[HELP]・重い物を自分で猫車に載せて押し(往路50m),行った先で物を下ろして帰ってくる(復路50m)活動を3往復(300m)する。
・抜いた草や農作業に使用する物を載せて,猫車を押す。
・物を載せて押す距離を長くする。
指導場面[HELP]自立活動の時間
運動場側の中庭で
指導手続き[HELP] はじめは,猫車の台を外して押す指導をおこなう。
(指導手続き)
1.砂場に逸脱しないようにするために,H君の1m左後方について,猫車を置いてある場所までついて行く。
2.猫車を5m押す(砂場を通り過ぎた位置)まではH君の1m左後方について歩き,その後は1m右後方を歩き,ついて行く(砂場に逸脱しないようにするため)。
指導1・・・台を外した猫車を300m(3往復)押す。
指導2・・・台をつけた猫車を300m(3往復)押す。
指導3・・・1キログラムの物(ソフトブロック)を載せて猫車を300m(3往復)押す。
指導4・・・5キログラムの物(ソフトブロック)を載せて猫車を300m(3往復)押す。

利用可能な好子[HELP]お菓子
教材教具など[HELP]猫車,ワークシステム,(赤い輪状のジグ,輪状のジグさし,お菓子交換券(フリスク容器))
記録の取り方[HELP]猫車から手を離そうとするなどの逸脱行動がみられた場合は,すぐにプロンプトを出す。プロンプトの種類は次の通りである。
・身体的ガイダンス(2秒以上)・・1回につき5点
・身体的ガイダンス(1秒)・・・・1回につき4点
・声かけ+指さし・・・・・・・・・1回につき3点
・指さし・・・・・・・・・・・・・1回につき2点
・声かけ・・・・・・・・・・・・・1回につき1点

指導期間と達成基準[HELP]指導期間:平成20年6月18日〜平成20年12月16日
達成基準:指導1・・・・プロンプト得点が3点以下の日が3日間続いたら達成とする。
指導2〜4・・プロンプト得点が3点以下の日が5日間続いたら達成とする。
結果[HELP] 6月23日(指導開始2日目)から0点(プロンプトなし)の日が出始めたが,3日連続して3点以下になる日が続かなかった。9月に入って5点以下の日や0点の日が増え始め,10月後半(29日目)になって達成した(指導1)。
 台を取り付けて指導を始めてからは,5日目にプロンプト得点が12点になった以外は0点の日が多く,12日目で達成した(指導2)。
1キログラムの物を載せての指導では,2日目から5日連続して0点が続き,達成した(指導3)。
5キログラムの物を載せての指導では,1日目から5日連続して0点が続き,達成した(指導4)。
考察[HELP] ・H君は,動きのある学習活動については繰り返し行うことによって定着を図ることができる児童である。
・最初は週に1〜2時間だけの活動だったため,猫車の押し方やバランスの取り方等の扱いを習得するまでに日にちを要したと考えられる。
・猫車を押す時の振動が感覚性好子として機能した可能性や,逸脱したときに身体的ガイダンスで触られることが嫌子となった可能性も考えられる。
・猫車の扱いに慣れたことで台を取り付けたり重い物を載せてたりしても,短期間で達成できたと考えられる。
・猫車に物を載せて移動できるようになったことで,中学部入学後の作業学習での活動内容に拡がりが出てきたと考えられる。
・今後は,鍬などの農作業道具を載せて移動したり,抜いた草を載せて長い距離を移動したりといった活動に般化させていくことが大切だと考えられる。
・実際に中学部で行っている猫車の活動に挑戦してみることや,教員が離れた位置にいても猫車の活動ができるよう支援を工夫していくことが必要だと考えられる。


台車を外した猫車を300m(3往復)押す

台車を付けて押す(指導2),1キログラムの物を載せて押す(指導3),5キログラムの物を載せて押す(指導4)
記入日時 2009/03/03/19:50:38

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