2004-10



[TOP]  [新規データ登録]  [検索]  [修正・削除・データ処理


教室を出るときに行く場所のカードを教師に手渡して伝える指導
概 要
教室の外に出るとき、教師に行く場所を伝達してから出ることは、将来の自立した生活や職業行動においても非常に重要なスキルである。この事例では、写真カードを利用し、それを教師に手渡して伝達する指導を実施する。

対象児のプロフィール
J児
小5男児 自閉症

諸検査結果
PEP-R:1歳10ヶ月
S-M社会生活能力検査:1歳10ヶ月

指導者
DJ

長期目標
教室外に出るとき(お手伝い・遊び)には、これから行く場所のカードを取り、指定された教師に手渡すことができる。

短期目標
教室外に出るとき(お手伝い・遊び)には、これから行く場所のカードを取り、離れた位置(4〜5m)にいる教師に手渡すことができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
教室外のお手伝い(洗濯室、西ホール2階)に行くときには、これから行く場所のカードを取り、すぐ側にいる教師に手渡すことができる。
【Step1】教師が出口をブロックする条件
【Step2】教師が出口から2m離れた位置に立つ条件
【Step3】教師が場所ボードから見えない位置に立つ(4mぐらい)条件

標的行動とこれを選んだ理由
これまで要求機能のコミュニケーションは、様々な場面で行うことができている。しかし、報告機能のコミュニケーションは、見られていない。職業行動の前段階として、行く先を教師に伝達することは、非常に重要なスキルであると思われる。また、保護者からの要望もあった。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
本児の要求場面におけるコミュニケーション手段としては、主に援助カードや写真カードを手渡すことであり、時々ことばで「△△お願いします。」と言うこともある。学校での要求場面としては、品物の不足・遊び選択ボード・お茶・給食のおかわり等があり、カード手渡すことはほぼ自発できている。報告等、要求場面以外でのコミュニケーションスキルは習得できていない。実際の場所と写真カードとの一致は、確実にできる。
7月より、【Step1】の指導を数回試行したが、場所カードを取らない、場所カードは取るが教師に手渡さずに近くの台においてそのまま行くことが見られた。声かけや指差しのプロンプトで、手渡すことができている。(記録なし)

般化場面
1)学校:違う場所でのお手伝い活動時
 (洗濯室、教材室、東ホール1階)
2)学校:担任以外の教師に手渡す
3)家庭:家の外に出るときに、母親にカードを手渡す

指導場面
教室外に出て行くお手伝い活動場面

指導手続
出口の1m手前の左壁に、専用のボードを貼る。そのボードには、場所の写真カード(洗濯室、西ホール2階、東ホール1階)を添付しておく。そのうち、実際に指導を行うのは、洗濯室と西ホール2階のみとする。

【Step1】教師が出口をブロックする条件
教室外での指定されたお手伝いになると、教師は本児がスケジュールを確認する時に、出口前に立っておく。
*ABC分析1参照

【Step2】教師が出口から2m離れた位置に立つ条件
教室外での指定されたお手伝いになると、教師は本児がスケジュールを確認するときに、2m下がった付近(出口→ボード→教師)に立っておく。
*ABC分析2,3参照

【Step3】教師が場所ボードから見えない位置に立つ(4mぐらい)条件
教室外での指定されたお手伝いになると、教師は本児がスケジュールを確認するときに、スケジュールボードや場所ボードから見えない位置に立っておく。
(出口→ボード→教師)
*ABC分析4参照

教材教具など
場所カード、ボード

達成基準
洗濯室、西ホール2階とも正反応が見られ、それが3日間連続したら達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
各場面、各行動において
プロンプトなくできた・・1点
プロンプトあり・・0点
(声かけ、指差し、身体的ガイダンス)

*各行動(般化場面、指導場面共通)
1.場所ボードに行く
2.正しい場所カードを取る
3.教師に手渡す

*1場面全てプロンプトなくできた場合は、3点満点とする。

グラフ下の文字列
第一系列のタイトル: 西2階に行くとき場所カードを教師に手渡した得点【STEP1】
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4
第二系列のタイトル: 洗濯室にいくとき、場所カードを,教師に手渡した得点【STEP1】
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4

指導期間
2004年9月8日〜12月7日

結果
STEP1では、指導開始3日間(6試行)は、「場所ボードに行く」ことを忘れてそのまま出て行こうとした。ブロックし、ボードを指さしすると、正しい場所カードを取り、場所カードとこれから行く場所との一致は確実にできていた。5日目(9試行目)からは、確実にできた。
STEP2では、場所カードを取るまでは一人でできたが、教師に手渡さず、近くの台に置いていくことが続いた(16/30試行)。その状態が8試行連続続いたため、修正の手続きを変更した。変更後(STEP2´)、再試行(やり直し)の修正をしたのは、4試行あり、5日目(9試行目)から確実に教師に手渡すことができるようになった。
STEP3では、1日目(2試行目)のみ教師に手渡すのを忘れたことがあったが、それ以降は全て正反応であった。

考察
STEP1 では、教師が出口をブロックしている条件であった。そのため、\x{2460}教師がボード位置から見て進行方向に立っており、本児の視界に入りやすかった、\x{2461}出口が教師によってふさがれているので、外に出るため(教師にそこを退いてもらうため)の要求手段としてカードを手渡すことが必須条件であった、という2点からスムーズに行動が獲得できたと思われる。
 STEP2(ブロックなし条件)では、進行方向(出口)とは反対の位置に教師が立って実施した。指導当初、場所カードを取るまでは一人でできたが、教師に手渡さず、近くの台に置いていくことが続いた。声かけすると確実に手渡すことはできたが、これは、自分の(前の)行動が弁別刺激になっているのではなく、教師の声かけが弁別刺激になっていたと考えられる。

A)
(場所カードをとり)「Jくん」と呼ばれる
B)
教師にカードを手渡す
c)
教室外に出られる

そのため、修正の手続きを変更し実施した(STEP2´)。
修正の手続きを声かけではなく、トランジションカードを入れる所から再試行(やり直し)するように変更することで、本児にとって「やり直しすること」が嫌子となり、カードを教師に手渡す行動が強化されたと考えられる。今回の指導において、本児にとっては、再試行(やり直し)をさせることが、修正方法として有効であることがわかった。

STEP3では、教師が場所ボードから見えない離れた位置
に立つ条件で実施した。これまでのSTEPを踏まえ、教師の立ち位置に関係なく、カードを取ると教師に手渡すことが定着し、達成するまでの期間が短期間であった。

冬休みの期間指導の機会がなくても、行動は維持できている。

般化については、1)違う場所でのお手伝い活動、2)担任以外の教師に手渡す、ともに般化した。1)では、
洗濯室、教材室、東ホール1階において達成した。2)では、担任が教室内にいない時に、教室外の近くにいた教師に手渡すことが見られた。家庭場面での般化については、まだ取り組めていないため、家庭と協力して実施していきたい。

【Step1】教師が出口をブロックする条件
A:先行条件 B:行動 C:結果
洗濯室、西ホール2階のお手伝いにいくとき 《正反応》
a)壁に設置されたボードから、正しい場所カードを選択し、出口に立っている教師に手渡すことができる。

《誤反応》
b)場所カードを取らずに出て行こうとする。
c)場所カードは取るが、教師に手渡さずに出て行こうとする。
d)間違ったカードを手渡す。

《無反応→5秒間》
e)無反応
《正反応》
a)「はい、わかりました。」と言い、出口を開ける。

《誤反応》
b)5秒間は無反応で待つ。それでも正反応が見られない場合は、「カード」と声かけ。その後、ボードを指さす
c)「カード」と声かけし、手渡すように手を出す。
d)「よく見て」と言い、カードを指さす

《無反応→5秒間》
e)「次は」と声かけし、それでも正反応が見られない場合は、「カード」と声かけ。

【Step2】教師が出口から2m離れた位置に立つ条件(声かけで修正)
A:先行条件 B:行動 C:結果
洗濯室、西ホール2階のお手伝いにいくとき 《正反応》
a)壁に設置されたボードから、正しい場所カードを選択し、出口より2m離れた位置に立っている教師に手渡すことができる。

《誤反応》
b)場所カードを取らずに出て行こうとする。
c)場所カードは取るが、教師に手渡さずに出て行こうとする。
d)間違ったカードを手渡す。

《無反応→5秒間》
e)無反応
《正反応》
a)「はい、わかりました。」と言い、出口をさす。

《誤反応》
b)教室を出るまでは、無反応で待つ。それでも正反応が見られない場合は、再度教室に戻るように促し、「カード」と声かけ。
c)「カード」と声かけし、手渡すように手を出す。
d)「よく見て」と言い、カードを指さす

《無反応→5秒間》
e)「次は」と声かけし、それでも正反応が見られない場合は、「カード」と声かけ。

【Step2´】教師が出口から2m離れた位置に立つ条件(スケジュールカードを取るところから再試行)
A:先行条件 B:行動 C:結果
洗濯室、西ホール2階のお手伝いにいくとき 《誤反応》
教師に手渡さずに、台に置いていく
《誤反応》
教室まで戻るように身体介助し(声かけなし)、教師は荷物やカードを元の位置に戻す。スケジュールを取るところから、再試行するように促す。2試行目も手渡さずに行こうとした場合は、声かけする。

【Step3】教師が場所ボードから見えない位置に立つ(4mぐらい)条件
A:先行条件 B:行動 C:結果
洗濯室、西ホール2階のお手伝いにいくとき 《正反応》
a)壁に設置されたボードから、正しい場所カードを選択し、場所ボードから見えない位置に立つ(4mぐらい)教師に手渡すことができる。

《誤反応》
b)場所カードを取らずに出て行こうとする。
c)場所カードは取るが、教師に手渡さずに出て行こうとする。
d)間違ったカードを手渡す。

《無反応→5秒間》
e)無反応
《正反応》
a)「はい、わかりました。」と言い、出口をさす。

《誤反応》
b,c,d)教室まで戻るように身体介助し(声かけなし)、教師は荷物やカードを元の位置に戻す。スケジュールを取るところから、再試行するように促す。2試行目も手渡さずに行こうとした場合は、声かけする。

《無反応→5秒間》
「次は」と声かけし、それでも正反応が見られない場合は再試行。


記入日時 2006/02/24/05:09:12  No.193
記入者 管理者  E-Mail

教室を出るときに行く場所のカードを教師に手渡して伝える指導
概 要
般化場面の記録

記録の取り方(般化場面と指導場面)
グラフ下
第一系列のタイトル: 東ホール1階に行くときに場所カードを手渡した正反応率【STEP1条件】
Baseline: 般化場面 Intervention1: Intervention2: Intervention3: Intervention4:
第二系列のタイトル: 教材室に行くときに場所カードを手渡した正反応率【STEP1条件】
Baseline: 般化場面 Intervention1: Intervention2: Intervention3: Intervention4:


記入日時 2006/02/27/14:16:43  No.252
記入者 管理者  E-Mail

現行ログ/ [1]
++コラボネット++

++マニュアル++
TOP
shiromuku(h)DATA version 4.00